バングラデシュの貧困問題とは|抱える課題と私たちにできることを解説
post_id: 1927
original_date: 2021年7月13日
公開日: 2026年3月11日
url: https://mirasus.jp/sdgs/no-poverty/1927
カテゴリースラッグ: sdgs
関連SDGs: 目標1(貧困をなくそう)、目標4(質の高い教育をみんなに)、目標8(働きがいも経済成長も)、目標10(人や国の不平等をなくそう)
「成長著しい新興国」と評される一方で、数百万人が今も貧困ライン以下で暮らすバングラデシュ。長年の経済成長が貧困削減を後押ししてきたはずの国で、なぜ近年になって貧困率が再び上昇しているのでしょうか。この記事では、バングラデシュの現状と問題を最新データとともに整理します。
バングラデシュとはどんな国か
バングラデシュは南アジアに位置し、総面積14万7,570平方キロメートルという限られた国土に、2025年時点でおよそ1億7,000万人を超える人々が暮らしています。
日本の約4割の面積にこれだけの人口が集中しているため、
国際連合の推計によると人口密度は1平方キロメートルあたり1,366人にのぼり、人口規模でも世界第8位に位置しています。
イスラム教を主な宗教とするベンガル人が人口の大多数を占め、首都はダッカです。
バングラデシュは第二次世界大戦まではインドとともにイギリスの植民地でした。戦後の1947年にイギリスの支配が終わり、ヒンドゥー教地域はインドとして、イスラム教地域はパキスタンとして独立し、1971年にベンガル人の住むバングラデシュがパキスタンから独立して今の国土となりました。
豊富な水資源を持ち、かつては「黄金のベンガル」とも呼ばれるほど農業が盛んな地域でしたが、独立後の政情不安や自然災害の頻発などが重なり、長らく最貧国のひとつとして位置づけられてきました。
その後は順調な経済成長を背景に、2015年には世界銀行の分類で低中所得国となり、2018年3月には国連の後発開発途上国(LDC)卒業基準3項目を全て達成しました。2026年にLDCを卒業する予定です。
経済成長の陰で広がる貧困問題
上昇に転じた貧困率
バングラデシュは2000年代以降に急速な経済成長を遂げ、
1990年には約57%だった貧困率は、2015年までに約25%にまで削減されました。
ところが近年はその流れが逆転しつつあります。
世界銀行の報告によると、バングラデシュは根強いインフレ、失業、経済減速により家計の福祉が損なわれ、貧困と不平等が増加する可能性があります。全国の貧困率は2022年の18.7%から2025年には22.9%に上昇すると予測されています。
さらに
世界銀行のマクロ貧困見通しによると、極度の貧困率は2024〜25年度には7.0%に達すると予測されており、2021〜22年度の5.0%から3年連続で悪化している状況です。
世界銀行は貧困率上昇の主因として高インフレと賃金低下を挙げており、長期にわたる物価上昇が家計を圧迫し、特に低賃金労働者の実質賃金は2025年度に2%減少したとしています。
子どもの教育と栄養
食料品を中心とした物価高騰により、家計の多くが教育費を捻出できず、貯蓄を取り崩すか子どもを労働に就かせざるをえない状況に追い込まれているとされています。
バングラデシュでは学校に通えない就学年齢の子どもが依然として多いとされており、制服・給食費などの間接費用が通学を阻む壁になっています。教育の質の課題も残っており、資格を持たない教員が授業を担当するケースや、衛生環境が十分でない学校施設も見られるといわれています。
乳幼児の健康面では、2024年に乳児死亡率が3.7%低下するなど改善が見られますが、5歳未満の死亡率は2022年時点で1,000人あたり31人で、最貧困層の5歳未満児に限ると同49人と格差が大きい状況が続いています。
インフラと経済格差
日常生活水準に目を向けると、1日あたり3.20ドル未満で生活する人口の割合は依然として約53%にのぼり、上位5%の世帯が総所得に占める割合は約28%という数字が出されており、所得格差の拡大が傾向として確認されています。
縫製業を中心とした輸出産業や外資企業の進出により経済は拡大してきましたが、電力不足や道路渋滞など基本的なインフラの課題が経済成長の足かせとなっているとも指摘されています。
大学卒業者に見合う雇用機会の不足が経済的な上昇移動を妨げており、こうした状況は2024年7月の学生運動による政治的混乱の大きな背景のひとつとなりました。
児童労働
経済成長により貧困率は改善傾向にあるものの、貧困層がいなくなったわけではなく、今も多くの子どもが働かなければ家計が苦しい家庭が存在しています。
国際労働機関(ILO)は「最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時行動に関する条約(第182号条約)」を定め、各国に履行を求めていますが、信頼できる統計データの不足や定義の曖昧さが対策の障壁になっているという見方があります。
ハルタル(ゼネスト)
政治不安も生活に影響します。バングラデシュでは「ハルタル」と呼ばれるストライキに似た抗議行動が南アジア特有の形で行われることがあります。選挙前後にとくに多発するとされており、商店・ガソリンスタンドの一斉閉鎖など市民生活やビジネスに大きな打撃を与えます。
2024年8月には学生を中心とした大規模抗議活動によりハシナ首相が辞任し、モハマド・ユヌス氏を首席顧問とする暫定政権が樹立されるという大きな政治変動もありました。
国際社会とNGOの取り組み
国連児童基金(UNICEF)はバングラデシュで教育・栄養・子どもの保護などの支援活動を展開しており、就学率の向上や発育阻害の予防、児童労働・児童婚の予防などに取り組んでいます。
また、バングラデシュ発祥のグラミン銀行によるマイクロファイナンス(小口融資)は、担保なしで貧困層への融資を実現し、世界的に注目を集めてきた取り組みです。
創設者のムハマド・ユヌス博士は2006年にノーベル平和賞を受賞しており、バングラデシュ以外の国にもマイクロクレジットの仕組みが波及しました。
日本もODAを通じてバングラデシュへの支援を継続しています。インフラ整備・人材育成・難民支援など多岐にわたる協力が行われており、二国間の関係は長期にわたって維持されています。
バングラデシュの実情を知ることから始めよう
バングラデシュは「成長著しい新興国」という側面と、「貧困と格差が今も深刻」という側面を併せ持っています。
世界銀行は、金融セクターの再編・投資と貿易の拡大・インフレ抑制などの経済改革が効果的に実施されれば、2026〜27年には経済が安定し貧困率が大幅に低下すると見込んでいます。
しかし、その実現には国際社会の継続的な関与と支援が不可欠です。
私たちにできることとして、まずはバングラデシュをはじめとする南アジアの貧困問題について正確な情報を得ることが第一歩です。フェアトレード認証製品の購入や国際NGOへの寄付・ボランティア参加なども、現地の状況改善につながる具体的な行動の一つです。SDGs目標1「貧困をなくそう」の達成は、遠い国の話ではなく、私たちの日常の選択ともつながっています。
バングラデシュの貧困問題とは|最新データで読む現状と課題
【学べるポイント】
✅ 貧困率は2022年の18.7%から2025年に22.9%へ上昇予測(世界銀行)
✅ 経済成長と格差拡大が同時進行している実態
✅ フェアトレードやNGO支援など私たちにできる行動がある

