近年、世界で使用されているプラスチックの量は年間920億トンを超え、今後その量は増えていくと言われています。
私たちの生活に欠かせない便利で気軽に使用できるプラスチックも、資源の大量消費や二酸化炭素の排出、ゴミ問題など多くの課題が山積みとなっています。
この記事では、プラスチックの原料と廃棄量がどのぐらいなのか、そしてプラスチックから二酸化炭素が排出される過程と二酸化炭素排出削減への取り組みについてご紹介します。
プラスチックの原料とどこから来ているのか
まず、プラスチックがどのように作られているのかをご説明します。
プラスチックの原料は、石油です。
日本の石油は99.6%が輸入に頼っています。
主な輸入先は、中東地域です。
アメリカ合衆国と比べても日本の中東への依存度がとても高く、国別にみると、2019年度では、1位サウジアラビア、2位アラブ首長国連邦、3位カタールとなっています。
原料となる原油は、地下から掘り起こされタンカーで日本に運び、石油精製工場に送られます。
原油を熱することで、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油、重油、アスファルトが作られます。
この中のナフサから、プラスチックが作られます。
ナフサにさらに熱を加えて、エチレン・プロピレン・ベンゼンなどプラスチックの元になる製品原料が作られます。
これらの水素や炭素が結びついた分子をつなぎ合わせて、ポリエチレンやポリプロピレンなどのプラスチック原料が作られます。
プラスチックには、成分が違う多くの種類があります。
・レジ袋・ラップ・バケツ…ポリエチレン
・ペットボトル・卵の容器…ポリエチレン・テレフラタート
・CDケース・・発泡スチロールの箱…ポリスチレン
・医療器具・自動車部品…ポリプロピレン
・消しゴム・ホース…ポリ塩化ビニル
・定規・コンタクトレンズ…アクリル樹脂
さらにストローや、食品トレイ、シャンプーやコンディショナーの容器など、私たちの身の回りには多くのプラスチックが使用され、生活にはかかせない素材となっています。
参照元:財務省貿易統計「日本の原粗油輸入相手国上位10カ国の推移」
プラスチックの生産量と日本の廃棄量は世界で2位!
世界では、年間約4億トンものプラスチックが生産されています。
日本では国内で900万トンの生産、海外製品の輸入で200万トン、海外に83万トンを輸出しています。
日本で使用されているプラスチック製品の量は約1012万トン。
その内訳は以下です。
・一般家庭・・・約418万トン
・企業・・・約485万トン(うち廃プラスチック含む)
その後、使用されゴミとなる廃プラスチックの量は903万トン。
生産された量とほぼ同量のプラスチックが、ゴミとなっている状況です。
2018年6月に発表されたUNEP(国連環境計画)の報告によると、日本のプラスチックごみの廃棄量はアメリカについで2位です。
こんなに小さな国が、アメリカ合衆国の次にプラスチックごみを大量に出しているのです。
わたしたち日本人は、このプラスチックごみの排出量の多さに危機感を持つ必要があります。
また別の問題として、世界では年間約800万トンのプラスチックごみが海に流れ出ていると言われており、2050年には海の魚の量よりプラスチックごみの量が多くなると言われています。
参照元:
・資源・リサイクル促進センター プラスチック製品の廃棄とリサイクル|一般社団法人 産業環境管理協会
・プラスチックを取り巻く国内外の状況|環境省
二酸化炭素が排出される過程とその排出量
プラスチックによる二酸化炭素の排出は、
・石油の発掘と輸送
・製造と生産
・廃棄
のすべての過程で排出されています。
原油である石油の採掘から輸送、製造から廃棄までそれぞれの段階で二酸化炭素の排出量は、合計プラスチック1kgで約5kg排出されます。
また、都内の家庭やオフィスから出る廃プラスチックの80万トン中、70万トンが焼却処理され、145万トンもの二酸化炭素が排出されています。
二酸化炭素の排出量の半分は中国とアメリカが占めていますが、日本は5番目に多い国です。
しかも、1人当たりの二酸化炭素の排出量は中国より多く、アメリカに次いで2番目の多さとなっています。
二酸化炭素の排出量削減のための取り組みとリサイクル
そこで、二酸化炭素の排出を削減するための取り組みが行われています。
廃プラスチックとして出た903万トンのうち、86%にあたる775万トンは、
・焼却時の熱エネルギーを回収・・・発電や温水、冷暖房に活用
・マテリアルリサイクル・・・再生製品
・ケミカルリサイクル・・・鉄の原料
として活用されています。
東京都では、プラスチックの分別収集を拡大し、食品が付着したプラスチックもリサイクル材料にし、プラスチックの焼却量を減らす取り組みを強化しています。
平成30年度は、リサイクル業者などに引き取られたプラスチック製品65万トンのうち、約70%にあたる45万トンがリサイクル(プラスチック原料となる材料リサイクル、ケミカルリサイクル)により再商品化されています。
また、リサイクルに適さない残りのプラスチックは、焼却(廃棄物発電)、石炭代替え燃料(セメントなど)に利用されています。
65万トンすべてを焼却(廃棄物発電)するより、二酸化炭素の排出を削減効果の高い方法で活用されています。
しかし、推進してきたリサイクルに適さない廃プラスチックを廃棄物発電する方法では、二酸化炭素の排出を抑制できても、排出をゼロにすることはできません。
地球温暖化が深刻な中で、根本的な解決のために必要なことは、プラスチック消費量の削減し廃棄物発電をなくすことです。
今後はリデュース・リユースに加えて、材料リサイクルだけではなく、水平リサイクルの促進が重要となります。
以下は環境省が発表している戦略です。
・2030年までにワンウェイプラスチックを累積25%ない出抑制
・2025年までにリユース・リサイクル可能なデザインに
・2030年までに容器包装の6割をリユース・リサイクル
・2035年までに使用済みプラスチックを100%リユース・リサイクル等により、有効活用
・2030年までに再生利用を倍増(バイオマスプラスチック)
・2030年までにバイオマスプラスチックを約200万トン導入
引用元:プラスチック資源循環戦略
企業側だけでなく、わたしたち1人ひとりもプラスチックの消費量の削減を意識し、プラスチック消費量を減らす選択をすることが大切です。
まとめ
プラスチックによる二酸化炭素への影響をご紹介しました。
プラスチックによる影響は、二酸化炭素の問題だけでなく、廃棄物処理や海洋ごみなど多くの問題を抱えています。
わたしたち消費者がプラスチックに対する考え方や扱い方が変われば、他の問題も少しずつ解決に近づくのではないでしょうか?
「安いから買う」ではなく、「必要だから買う」という選択で、ごみを減らすことができます。
今日から少しずつ意識してみませんか?