温暖化対策のひとつとして、再生可能エネルギーの利用が重要視されています。しかし、再生可能エネルギーは発電コストが高く、利用推進における課題となっています。
特に日本では、他国と比較しても発電コストが高く、再生可能エネルギーの導入の遅れという問題を抱えています。そこで今回は、再生可能エネルギーコストが高い理由や、コスト低減に向けた取り組みについて解説します。
発電コストの高さは、私たち国民の生活にも影響を及ぼします。ぜひ、記事を読んで参考にしてください。
再生可能エネルギーとは?
再生可能エネルギーとは、自然界に常に存在するものを燃料としてうまれるエネルギーを指します。
主にに5種類あり、水力・風力・地熱・バイオマス・太陽光によるエネルギー化が進んでいます。
環境負荷が低く、地球温暖化対策のひとつとして利用推進されているほか、枯渇する危険性がほぼないため、恒久的なエネルギー供給が期待されています。
世界と日本の再生可能エネルギーコスト比較
2021年3月1日に資源エネルギー庁が発表した「今後の再生可能エネルギー政策について」には、太陽光発電と風力発電における世界と日本のコスト推移が掲載されています。
再生可能エネルギーの発電コスト比較として、代表的な2つの発電方法のコストを見ていきましょう。
太陽光発電の場合
引用:事業用太陽光発電のコスト動向と中長期目標について
2014年と2020年を比較すると、世界・日本いずれも事業用太陽光発電のコストが下がっていることがわかります。特に日本では、1kwhあたり40円前後もコストが下がっていて、大幅低減と言えます。
しかし、2020年上半期の世界と日本の発電コストを比較すると、1kwhあたり7.7円の差があり、日本の発電コストが高いことが明確です。
年々、その差は小さくしているものの、世界的に見るとまだコストが高い現状です。
風力発電の場合
引用:風力発電のコスト動向と中長期目標について
陸上風力発電においても、2014年と2020年の世界と日本の陸上風力発電コストを比較すると、時間の経過とともにコストが下がっていることがわかります。
日本で顕著にコストが下がっている点も、太陽光発電と同様です。しかし、2020上半期時点で世界と日本の陸上風力発電のコストを比較すると、1kwhあたり8.1円もの差があります。
太陽光発電における差額よりもさらに高く、日本の発電コストが高いことが示されています。
日本の再生可能エネルギーコストが高い3つの理由
なぜ、世界の他国と比較して、日本の再生可能エネルギーコストは高いのでしょうか?
その理由は大きく3つに分けられるので、それぞれ解説します。
1. 物価の高さ
日本は物価が高いうえ、再生エネルギーを利用するのに欠かせない太陽光パネルや風力発電機の価格が、日本と同じ物価水準の国と比較しても高いという問題があります。
そのため、再生可能エネルギーを生産するための設備投資に多額の費用が必要となり、発電コストが上がってしまいます。
2. 人件費の高さ
日本の人件費の高さも、世界的に見て発電コストが高くなる理由です。物価の高さに加え、人件費の高さによって、工事の施工費用が上がり、発電コストが上がることになります。
しかし、発電コストを抑えるために人件費を下げることは、もちろん現実的でありません。そのため、作業工程の効率化をおこない、徹底してコスト削減を実施する必要があります。
3. 自然条件と地理条件
自然条件、地理条件においても、日本は世界と比べて発電コストに関して不利になる点があります。たとえば、日本は他国と比較して日照時間が短いというデータがあります。
具体的には、日本の年間日照時間は、気象台およびアメダスの平均値で約1,850時間程度。世界平均は約2,500時間と言われており、日照時間が短いために太陽光発電をおこなうには不利な条件下と言えます。
2021年には東京大学 公共政策大学院から、欧州と日本の年間を通じた風況の違いに関するレポートが発表されています。
年間を通して、欧州7地点、日本4地点の月間平均風速を計測した結果、欧州では年間を通じて高い平均風速が得られている一方、日本は6〜9月に著しく風況低下が発生していることがわかりました。
こうした自然条件のほか、日本は平野部が少なく、地震や台風、津波が多いために発電設備の設置場所が限られるという点も、発電コストに影響を与えています。
再生可能エネルギーコスト低減に向けた取り組み
環境負荷の低いエネルギー源の利用割合を増やすため、そして、エネルギーに対する国民の負担額を下げるため、日本はさらに再生可能エネルギーコストを低減させようと取り組んでいます。そのための代表的な取り組みを2つ紹介します。
エネルギーミックス
従来からおこなわれている発電方法に加え、再生可能利用エネルギーを含めて複数の発電方法を効率よく組み合わせ、エネルギー供給する方法です。
自然環境の状況に応じて、最適な発電方法の割合を増やすことで、効率の良いエネルギー供給ができ、コストを下げられます。そのためには、タイムリーに自然状況を読み取り、こまめに発電方法の割合を変更できる仕組み作りも必要になります。
FIT・FIP制度の導入
2012年に、日本において、FIT制度と呼ばれる固定価格買い取り制度が導入されました。
これは、家庭や一般事業者が再生可能エネルギーで発電した電力を、電力会社が一定価格で買い取る仕組みです。
たとえば、社屋の屋上や住宅の屋上に設置された太陽光発電パネルで生産されたエネルギーを、電力会社が一定価格で買い取ります。すると、電力を生産した会社や家庭は利益を得ることができます。
一方で、電力を買い取った電力会社にとっては、そうした会社・家庭が増えて再生可能エネルギーによって生産される電力が増えることで、大規模な発電設備の建設費用や発電にかかるコストを抑えられるメリットがあります。
また、2022年度からのFIP制度の導入が検討されています。FIP制度が導入された場合は、発電事業者が卸電力市場というマーケットで電力を販売できるようになります。
再生可能エネルギーによって生産された電力の場合、販売価格にさらに利益が上乗せされるため、市場に競争をもたらし、再生可能エネルギー発電の本格的なコスト低減競争に繋げようとしています。
再エネ導入のため 私たちにできることを考えよう
年々深刻化する地球温暖化の対策として、また、私たちの暮らしに欠かせないエネルギー確保のため、私たちひとりひとりも再生可能エネルギー導入についてできることを考えなければなりません。
例えばそのひとつとして、再生可能エネルギーの使用割合が高い電力会社を選ぶことが考えられます。
そうした電力会社を多くの人が支持することで、より再生可能エネルギーに関する可能性を広げられます。また、住まいの条件によりますが、FIT制度に参加することも私たちにできる取り組みのひとつとなります。
参照元:資源エネルギー庁がお答えします!~再エネについてよくある3つの質問|資源エネルギー庁 HP
参照元:風況の違いによる日本と欧州の洋上風力発電経済性の比較 -洋上風力発電拡大に伴う国民負担の低減を如何に進めるか-|東京大学 公共政策大学院