ピンクの愛らしいルージュに色とりどりのアイシャドウ、資生堂の店頭には、心がときめくくような化粧品が並んでいます。
資生堂は、人々の美と健康とともに、環境の美しさを守りたいとの思いからSDGsを推進。
「Sustainable Beauty Initiative(サステナブル・ビューティー・イニシアティブ)」を掲げ、SDGs達成のために様々な取り組みを行っています。
資生堂とはどのような会社?
資生堂は、1872年、明治時代に創業された歴史ある企業です。創業者の福原有信氏が1872年に東京の銀座で調剤薬局が始まりです。福原氏はこの薬局を「資生堂」と命名しました。
資生堂は西洋薬学にもとづく薬局でしたが、東洋哲学から名づけられました。
資生堂は、「易経」という中国の古典から命名されています。易経には、「大地の徳の素晴らしさを称え、世の中のものすべては大地から生まれる」という一節があります。
福原氏はこの一節より、新たな文化をつくりだすことを決め、薬局に資生堂という社名をつけたのです。
福原氏はそれまでになかったスタイルで資生堂を経営。「本物をお客様に届けたい」と考えた福原は、品質にこだわり抜いた薬品を店頭に並べます。
先進的な方針はなかなか人々に受け入れられず、資生堂の経営は難航しました。
しかし、やがて人々は資生堂の薬品の品質の高さに気づき始めます。資生堂は徐々に人々の信頼を勝ち得ていくようになります。
その後、福原氏は、進歩的な感覚で様々な新事業を展開。資生堂のシンボルともなる花椿の商標登録を行い、日本で初めて本格的な香水を販売します。
福原氏は、創業当時から自らの理念を信じ、未来を見据えていました。人々の美と健康を支えることを通じて資生堂を発展させ、文化の発展にも貢献してきたのです。
福原氏の理念は、現在の資生堂のサステナビリティ戦略に脈々と続いています。
資生堂の掲げるサステナビリティ戦略
資生堂は創業者福原の理念を受け継ぎ、「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(ビューティーイノベーションでよりよい世界を)」という企業理念を掲げています。
資生堂が目指す「よりよい世界」とは、女性たちが美しく輝くだけでなく、持続可能な社会であること。資生堂は、SDGsを推進するため、独自にESCGを提唱しています。
ESCGとは、企業投資の指標であるESGにCを加えたもの。ESGとは、環境( Environment)、社会(Society)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったもので、資生堂はそれに文化(Culture)をプラス。
資生堂は、自然環境のみならず、文化も重視してサステナビリティ戦略を展開しています。
2020年1月、資生堂は「Sustainability Committee」を設立。コミッティを定期的に開催し、サステナビリティ戦略について議論しています。
資生堂のSDGsへの取り組み
資生堂は、原材料の調達から商品開発、生産、そしてお客様に商品をお届けし、商品の使用後に廃棄されるまでのシーンで、サステナブルであることを目指しています。
樹木とともに生きるブランドBAUMを展開
資生堂は2020年、地球環境に配慮した化粧品の新ブランドを発表しました。その名前はBAUM。このラインのコンセプトは、樹木ともに生きることです。
森の樹々は、何年も何十年も、時は何百年も生き続けます。年百年もの年輪を重ねた樹木は、その間の環境の変化に耐え、自然の中で生きてきました。
BAUMは、樹木のように長い時間輝き続けられるよう「貯水」「成長」「環境防御」の3つの機能を発揮できる設計に。葉脈が美しく透き通るような健康な肌へ導くブランドを開発しました。
BAUMの全ての化粧品は、水を含めて自然由来成分が90%以上。樹木からつくられた天然の香料を使用し、森の中を散策しているような香りを調合しました。
BAUMは、パラベンといった防腐剤やシリコンなどは使っていません。BAUMの90%以上は天然由来の原料からできています。自然環境に配慮し、使う人にも自然の恵みをもたらします。
さらにBAUMのパッケージには樹木をより鮮明にイメージしてもらえるようアップサイクル木材を採用。アップサイクル木材とは、廃材のことです。BAUMのパッケージには北海道、東北地方で廃棄された細かい木材を再利用しています。
木製家具メーカーであるカリモク家具株式会社と提携し、カリモクが家具を作る際に出る廃材を活用してパケージ開発を行いました。
また、レフィル商品を販売し、プラスチック容器の使用を減らしています。BAUMの容器には植物由来のバイオPETを使用。リサイクルガラスを使った容器も採用しています。
資生堂では、住宅メーカー住友林業株式会社からの協力を得て「BAUMの森」を育てる計画をしています。この森には、BAUMのイメージであるオーク(ナラ)を主に植樹する予定です。
参考:資生堂HP新ブランド「BAUM(バウム)」誕生 | ニュースリリース詳細 | 資生堂 企業情報
すべてのバリューチェーンにおける地球環境への配慮
地球環境を守るため、温室効果ガスのひとつである二酸化炭素の排出を減らすことは国際的な課題です。企業には、環境負荷を軽減するための配慮が求められています。
資生堂は、産業革命以前より気温上昇を1.5℃以内とする「1.5℃目標」を重要視。二酸化炭素の排出量削減のため、様々な取り組みを行っています。
二酸化炭素だけではなく、水資源や使用後に廃棄される容器などに関して目標を掲げ、地球環境を守る配慮を行っています。
二酸化炭素の排出削減については、2020年には資生堂グループ全体で前年より約12%の二酸化炭素を減らすことに成功。脱炭素化社会に向けてサステナブルな活動を展開しています。
資生堂は、これまで利用されてきた石油資源由来エネルギーではなく、再生可能エネルギーを使用することで、二酸化炭素の排出削減を目指します。
太陽光や水力発電による再生可能エネルギーを積極的に使用。2020年には、前年より再生可能エネルギーの利用が95%増やすことに成功し、33%の構成比となりました。
工場の敷地内に太陽光発電パネルを設置。2019年に稼働した日本の那須工場では、水力発電による電力を使用し、工場で使用する電力の100%を再生可能エネルギーに切り替えることに成功しています。
参考:資生堂HP 地球環境の負荷軽減 | Environment | サステナビリティ | 資生堂 企業情報
いちはやくジェンダーギャップ解消へ向けて活動
日本は「男性は外で働き、女性は家庭で家事や育児を担う」というジェンダーギャップが根強い国と言えます。SDGsではジェンダー平等が掲げられていますが、資生堂は、さらに早い時期からジェンダーギャップの解消に挑んでいます。
資生堂では、1934年から「ミス・シセイドウ」という専門職を育成し、女性の就労を推進しています。いちはやくジェンダーギャップに気づき、女性をエンパワメントしている企業なのです。
参考:資生堂HP Society | サステナビリティ | 資生堂 企業情報 (shiseido.com)
私たちにできること
女性なら誰もが使ったことのある化粧品。化粧品を通じて私たちがSDGsのためにできることは何でしょうか?
環境庁では、令和元年5月にプラスチック資源循環戦略を発表しました。
日本はプラスチック容器包装の廃棄量が世界で2番目に多い国です。環境庁は、プラスチックごみが海に捨てられるのを減らし、海洋環境を守ることを目的に、廃プラスチックの削減、再利用をすすめています。
私たちができることは、例えば、使用後の化粧品のパッケージを分別し、リサイクルに出すこと。化粧品のパッケージにはプラスチックが使われていることが多く、リサイクル可能です。
また、レフィルという化粧品の中身を詰め替えたり差し替えたりする商品があります。レフィル商品を選ぶことでプラスチックを再利用し、海洋環境を守ることにつながります。
資生堂は美を創り出してきた企業。美しくなるとともに瑞々しい森や海などの自然環境も守りたいという理念のもと、今日も新たな価値を創造しています。