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SOCIETY

北欧のジェンダー平等、世界に「前進を続けよう」|CSW70で北欧5か国が共同発信

2026年3月9日から19日にかけてニューヨークの国連本部で開催されている国連女性の地位委員会(CSW)第70回会合。
北欧5か国のジェンダー平等担当大臣たちは「Pushing for progress(前進を続けよう)」という共同メッセージを掲げ、世界的に高まるジェンダー平等への反動に対して声を上げています。世界のジェンダー平等の最先進地域として知られる北欧が、いま何に取り組み、何に危機感を抱いているのかを読み解きます。

北欧5か国がCSW70で「前進を続けよう」と共同発信

国連女性の地位委員会(CSW)の第70回会合は3月9日から19日にかけて開催されています。

北欧諸国は共同メッセージ「Pushing for progress(前進を続けよう)」を掲げ、これまでの前進を守り、後退に抗い、世界でジェンダー平等への反発が強まるなかでもその取り組みを継続することの重要性を訴えています。
北欧閣僚たちが参加するパネルが設けられ、これまでの成果と今後の課題について議論が行われました。

今回のCSW70の優先テーマは「すべての女性と少女の司法アクセスの確保と強化――包摂的で公正な法制度の促進、差別的な法律・政策・慣行の撤廃、構造的障壁への対処を含む」であり、差別的な法律・政策・慣行の撤廃や構造的障壁への対処が議題の中心となっています。

北欧諸国がこれほど強い姿勢でジェンダー平等の「守り」に入っている背景には、近年グローバルでジェンダー平等への反動(バックラッシュ)が強まっているという認識があります。世界最先端を走る北欧でさえ「前進を続けること」を改めて誓わなければならない時代に入ったということは、世界全体の潮流を映した深刻なシグナルといえます。

北欧が世界トップを走り続ける理由

世界経済フォーラム(WEF)のグローバル・ジェンダー・ギャップ指数において、北欧諸国は世界で最も平等な国々として上位にランクインしているとされています。ただし、北欧においても完全なジェンダー平等にはまだ至っていないと認識されています。

北欧がこの地位を維持できている理由は、制度・文化・経済の三つが組み合わさっているからだとされています。

育児休業の「父親クオータ」制度

北欧地域では父親が取得する育児休業の割合が過去20年間で着実に増加しているとされています。両親はともに充実した有給育児休業を取得できる権利を持ち、政策的にも均等な取得が促進されています。一定の週数は各親専用に確保されており、北欧の父親は世界のどの地域の父親よりも多くの育児休業を取得しているという見方があります。
アイスランドでは父親も育児休業を取ることができる制度が導入され、その後「共有育児休業制度」に拡充されたとされています。
育児を「母親だけの仕事」とせず、社会全体で子育てを担う文化がジェンダー平等の土台を作っています。

企業役員へのクオータ制

ノルウェーは上場企業の取締役会に少なくとも40%の女性を求めるクオータ制を世界で初めて導入したとされています。この法律の施行以来、ノルウェーの企業役員に占める女性の比率は大幅に上昇したとされています。
北欧地域の企業役員における女性比率はEU全体と比べて高い水準にあるとされています。一部の国では企業役員へのジェンダークオータが法定されており、アイスランドとノルウェーが役員会のジェンダーバランス達成に最も近いという見方があります。ただし女性CEOはすべての北欧諸国でいまだに少ない状況です。

公共調達とインセンティブ設計

スウェーデンでは、企業が公共機関と契約する際にジェンダー平等への取り組みが考慮される場合があるとされています。民間企業に対しても、平等を推進する取り組みへのインセンティブが設けられており、企業側にとっても経済的な動機付けが整っているという見方があります。

2026年、北欧ジェンダー平等基金が新たなプロジェクトを公募

直近のニュースとして、北欧閣僚理事会の下部機関であるNIKK(北欧ジェンダー情報センター)が2026年の取り組みを本格化させています。

北欧閣僚理事会を代表してNIKKが運営する北欧ジェンダー平等基金は、北欧地域全体でジェンダー平等を前進させる共同イニシアティブを支援するものです。女性と男性、少女と少年の生活状況における構造的差異に取り組むとともに、世界的・北欧地域内で強まるジェンダー平等への反発にも対応することを目的としているとされています。
北欧の各閣僚は、高まる分極化のなかでも、ジェンダー平等で達成した成果を守り、さらなる前進のために取り組むことをコミットしています。
申請できるプロジェクトは、少なくとも3か国の3つ以上の組織が関与するものであることが条件であり、一定の助成額の範囲で申請できるとされています。

賃金格差・女性管理職・暴力問題…残る課題

北欧がトップを走りながらも「まだ道半ば」であることは、各種データからも読み取れます。

北欧地域では過去10年間で男女の賃金格差は全体的に縮小しているものの、依然として女性の賃金は男性より低い水準にあるとされています。賃金の不平等は他の分野における不平等を示す重要な指標であり、教育・労働市場・家庭でのジェンダー固定観念が経済的不平等を生んでいるとされています。
社会規範が男性と少年に与える影響、危機における男性の役割、そして「ポジティブな男性性」をどのように促進するかを取り上げる議論も北欧では行われています。
ジェンダー平等は女性だけでなく、男性にとっての問題でもあるという視点が北欧でも広がっています。

また、欧州委員会は新たな「ジェンダー平等戦略」を策定し、オンライン・オフラインを問わず、教育・保健から仕事・公共生活に至るまで生活のあらゆる側面にジェンダー平等を組み込む方針を示したとされています。
北欧諸国もこのEUの戦略と連携しながら取り組みを強化していく方向にあります。

日本が北欧から学べること

日本のジェンダーギャップ指数の順位は、世界でいまだ下位に位置しているとされています。北欧の取り組みをそのまま輸入することは難しくとも、制度設計から学べるエッセンスは多くあります。

父親の育児休業取得を「義務」と捉えず「権利」として文化に定着させること、企業のジェンダー平等の取り組みを経済的インセンティブや調達条件と結びつけること、そして政治・行政・民間が一体となってジェンダーの視点を予算や政策立案に組み込む「ジェンダー主流化」の実践——これらはいずれも、日本でも実装可能な施策として議論が始まっています。

CSW70で北欧各国が発したメッセージは、「前進を続けること」は自動的には起きないという警告でもあります。ジェンダー平等は一度達成したら終わりではなく、社会の変化に合わせて継続的に守り、更新していくものです。北欧の経験は、その長い道のりを歩み続けるすべての社会にとっての道標となっています。

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