インクルーシブデザインとは、年齢や障害の有無、国籍などを理由に使いにくいと感じていた人でも快適に利用できるデザインのことです。
言葉の「インクルーシブ」は「包括する・包み込む」という意味で、これまで製品やサービスの企画から除外されてきた人々を積極的に巻き込み、一緒に創り上げていくアプローチが特徴です。
インクルーシブデザインの基本的な考え方
インクルーシブデザインは、高齢者、障がい者、外国人など、従来デザインプロセスから除外されてきた多様な人々を、デザインプロセスの上流から巻き込むデザイン手法です。
重要なのは、デザイナーだけで完結させるのではなく、実際に困難を感じている当事者の声を聞き、その人たちと一緒に解決策を考える点にあります。
イギリス・ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートのロジャー・コールマン教授は、車椅子の女性から自宅キッチンのデザインを依頼された経験を通じて、「本当は何を望んでいるのか」を障害者と同じ目線で考える大切さに気づきました。
ユニバーサルデザインとの違い
インクルーシブデザインとユニバーサルデザインは、誰でも使いやすいデザインを行うという目的は同じですが、ユニバーサルデザインはデザイナーが考案するのに対し、インクルーシブデザインは実際に使用するユーザーや消費者の意見をデザインに反映するという手法が異なります。
つまり、ユニバーサルデザインは「万人向け」を目指すのに対し、インクルーシブデザインは「除外されてきた人のニーズ」を起点に考える違いがあります。
私たちの社会におけるインクルーシブデザインの役割
インクルーシブデザインやインクルーシブ教育、保育、雇用政策などは密接に関係し、SDGsの「誰一人取り残さない」という理念に直結しています。
近年、プロダクトやサービスなどのデザインに、インクルーシブデザインが広く活用されています。
公園の遊具から商品、施設、教育現場まで、様々な場面での導入が進んでいます。
インクルーシブデザインの実例
具体的には、複数の肌色に対応した絆創膏の開発、視覚障害者向けの腕時計、車椅子利用者でも使いやすいトイレ設備、複数の遊び方ができるスポーツ用品など、身近な場所で活用されています。
教育現場にインクルーシブデザインを導入すると、多様な背景や能力を持つ子どもたちが共に学び合う環境をつくることができます。
誰もが「除外される可能性」を持っている
出張先の海外で自分が理解できる言葉での表示がない、圏外になった際にオフラインで地図アプリが使えないなども除外の一例です。このように、誰もが除外対象になる可能性があります。
つまり、インクルーシブデザインは障がい者や高齢者だけのためのものではなく、人生のどの段階でも「使いにくさ」に直面する可能性があるすべての人にとって関わりのあるものなのです。
企業・個人が取り組めることの第一歩
インクルーシブデザインを実現するには、多様な背景を持つ人々の声に耳を傾けることが不可欠です。
デザインを考える際には、チームメンバーだけでなく、さまざまな人に意見を聞くことが大切です。
企業や組織が商品やサービス、オフィス環境を検討する際に、異なる視点や経験を持つ人を意思決定プロセスに含めることで、より多くの人にとって快適で使いやすい環境が実現できます。私たち自身も、「この使いにくさは他の誰かも感じているのではないか」と想像力を働かせることが、インクルーシブな社会の第一歩となるでしょう。

