技術の発展により、各地で都市開発が進む日本。
より便利に暮らしやすくなることは良いことですが、その裏ではさまざまな弊害が起きています。
そして、それらの問題を解決するために、グリーンベルトが注目されているのです。
本記事では、グリーンベルトの導入事例やSDGsとの関係性などを紹介します。
まずは、グリーンベルトとは何かを詳しく見ていきましょう。
グリーンベルトとは
直訳すると「みどりの帯」であるグリーンベルトは、「緑地」や道路で見かける「路側帯」などを示す言葉です。
「開発しないエリア・都市計画」を指す場合もあります。
近年、環境保全や災害対策・交通安全など、さまざまな分野で注目されるようになりました。
そして、グリーンベルトには主に4つの目的があります。
グリーンベルトの4つの目的
グリーンベルトには、下記の4つの目的があります。
交通事故の防止
歩道が整備されていない道路は車道との境目が分かりづらく、歩行者と自動車の接触事故が起こる危険性が高まります。
そのため路側帯を緑色に塗り、グリーンベルトをつくることによって、路側帯と車道の境目を視覚的に認識しやすくしたのです。
これにより接触事故を防ぎ、交通安全につながるでしょう。
都市計画・緑地計画
日本では大都市を無秩序に拡大しないように、「緑地」としてグリーンベルトを取り入れました。
昭和7年に「東京緑地計画協議会」が設立され、グリーンベルト(環状緑地帯)を内容に含む「東京緑地計画」が策定。
この計画により、広大な緑地が生まれました。
戦後の農地改革によって緑地は減りましたが、現在も小金井公園や砧公園などとして残されている場所もあります。
環境保全
グリーンベルトには、土砂が海へ流出することを防ぐ役割もあります。
樹木や草木を帯状に植えることによって、水流を弱めたり赤土の流出を防いだりするのです。
赤土が海や川に流出すると、観光資源の破壊や海洋資源の減少などにつながります。
そのような事態を防ぐためにも、グリーンベルトは最適だと言えるでしょう。
参照元:グリーンベルトについて|NPO法人おきなわグリーンネットワーク
災害対策
地震や大雨などの自然災害が発生すると、地盤がゆるみ土砂崩れや地割れなどの二次災害を引き起こす危険性があります。
被害を最小限に抑えるためにも植樹し、グリーンベルトをつくる必要があるのです。
植樹をし、森林整備を行うことによって「災害緩衝機能(※)」の向上にもつながります。
(※)災害緩衝機能:土石流や落石が発生した際に樹木を利用し、土砂崩れのスピードやエネルギーを抑え、徐々に減少させる機能
世界のグリーンベルト導入事例
グリーンベルトの目的を理解したところで、続いては、世界の導入事例を確認していきましょう。
【ドイツ】グリーンベルト保護プロジェクト
ドイツのザクセン=アンハルト州では、「グリーンベルト保護プロジェクト」を実施。
このプロジェクトは、グリーンベルト内に存在する脆弱な地域に対する保護の強化が目的です。
グリーンベルトは、ドイツ国内の9州にまたがり形成され、旧東西ドイツ国境地帯も含まれています。
距離にすると約1,400㎞。
自然保護団体BUNDが中心となり進めており、ザクセン・アンハルト州以外の地域で減少がみられる鳥、「マミジロノビタキ」の生息数が増加したという報告もありました。
またグリーンベルトは、1,200種以上の絶滅危機にある動植物も生息しています。
参照元:ドイツ、農業との協働を通じてグリーンベルトの保護に取り組むBUNDの活動を評価|国立環境研究所
日本でも進むグリーンベルトの導入
続いては、日本のグリーンベルト導入事例を見ていきます。
【兵庫県】六甲山系グリーンベルト整備事業
平成7年1月に発生した兵庫県南部地震。
その影響で六甲山系では、地割れや土砂崩れなどの被害が多発しました。
さらに、地震発生後に降った雨によって被害は拡大し、被害ヵ所は1,000以上にも及んだと報告されています。
再びこのような事態が起きないように、兵庫県では「六甲山系グリーンベルト整備事業」が開始されました。
六甲山系の一帯に植樹し、グリーンベルトを形成する計画です。
この整備事業は、土砂災害に対する安全性の向上だけではなく、自然豊かな景観づくりと都市環境の形成にもつながりました。
ここまでは、世界と日本のグリーンベルト導入事例をお伝えしました。
続いては、SDGsとの関係性を確認していきましょう。
グリーンベルトとSDGs
グリーンベルトを用いることによって、SDGsの目標達成にもつながります。
関係性をお伝えする前に、まずはSDGsについて知りましょう。
SDGsとは
SDGsとは、2015年に開催された国連総会にて、全加盟国が賛同した国際目標です。
環境・社会・経済の世界的課題の解決を目指します。
そのために、17の目標と169のターゲットが設定されました。
2030年までにすべての目標を達成し、「誰一人取り残さない」世界を実現します。
そして、グリーンベルトと特に関係の深い目標は、
目標3「すべての人に健康と福祉を」
目標11「住み続けられるまちづくりを」
目標13「気候変動に具体的な対策を」
目標14「海の豊かさを守ろう」
目標15「陸の豊かさも守ろう」
などがあります。
今回は、そのなかでも特に関わりの深い目標11「住み続けられるまちづくりを」について見ていきましょう。
目標11「住み続けられるまちづくりを」
目標11は、都市や居住地を誰も排除せずに、安全で持続可能にする内容となっています。
そしてターゲットには、
・総合的な災害リスクの管理
・気候変動の緩和と適応
・すべての人々が、安全な緑地や公共スペースを利用できるようになる
などが含まれています。
グリーンベルトは、植樹によって災害リスクを軽減したり、地球温暖化の原因である二酸化炭素を減少したりと、さまざまな効果があります。
手入れの行き届いていなかった共有スペースも緑地化されると、誰もが安心して利用できるようになるでしょう。
このように、グリーンベルトを導入することによって、SDGs目標11の達成に貢献できるのです。
まとめ
日本でも、広まりつつあるグリーンベルト。
その役割は、環境保全や災害対策などさまざまです。
また、グリーンベルトを導入することによって、景観の向上や緑豊かな都市形成にもつながります。
そして、暮らしやすい街や自然環境が増えるとSDGsの目標達成にも貢献するのです。
都市開発を行うことで私たちの暮らしは豊かになりますが、それによって失うものがあることも覚えておかなければいけません。
都市の発展と自然環境の保全を同時に行えるグリーンベルトは、これから更に増えていくでしょう。