2022年現在、新型コロナウイルス感染症が蔓延し、日本でも多くの人が感染し経済的にも厳しい状況にあります。
世界に目を向けると、新型コロナウイルス感染症が広まる以前から、三大感染症である「HIV/エイズ」「結核」「マラリア」で苦しむ人たちが多くいるのが現状です。
日本に暮らしていると、これらの三大感染症を身近に感じにくいですが、全く縁のない話ではありません。
今回は、世界の三大感染症について、現状に触れるとともに改善するための支援活動や私たち個人ができることを考えていきます。
三大感染症とはどんな病気?
SDGsのゴールで掲げられる「すべての人に健康と福祉を」でも、世界三大感染症の根絶を目指しています。
未だ多くの人が苦しむこれらの感染症を改善するためには、まず、それぞれの感染症に関する現状を知らなければなりません。
感染症とは、人体や動物の体にとって有害なウイルスや細菌が口や鼻などの粘膜から入り、増殖した結果引き起こされる様々な症状です。
病原体によって症状は異なり、最悪の場合死に至ることもあります。
三大感染症がどのような病気なのかを紐解いていきましょう。
HIV/エイズ
ヒト免疫免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus)の略称をHIVといいます。
HIV感染によって引き起こされる症状がエイズです。
エイズは「acquired immunodeficiency syndrome」の略称で、後天性免疫不全症候群を意味します。
健康な体の人であれば、免疫があるためある程度の病原体や日和見感染症の影響は受けません。
しかし、HIVに感染しエイズを発症すると、免疫力が低下し、様々な病気にかかりやすくなります。
HIVは、人の体液から感染することが多く、特に血液や精液、膣分泌液、母乳がメインです。
そのため、性的行為による感染や輸血、母子感染などが主な感染経路となっています。
国際合同エイズ計画UJNAIDSによると、世界中で2020年に新たにHIVに感染した人は、150万人に上り、68万人の人がエイズに関連する病気で亡くなりました。
日本でも、毎年1,000件前後の感染者が出ており、他人事ではありません。
参照元:世界のHIV&統計-ファクトシート|国際合同エイズ計画UJNAIDS
結核
結核は、「結核菌」によって引き起される感染症です。
結核が怖いのは、空気感染で広がる点で、結核患者の咳やくしゃみによって結核菌が飛び散ります。
自分が結核になっているとは知らずに、周囲の人に感染させてしまう可能性も否めません。
特に、免疫力が低い子供や高齢者、慢性疾患を患っている方は発症しやすいのが特徴です。
世界の死亡原因トップ10にも入るほどの病気で、実に世界の人口における23%もの人が結核に感染しているといいます。
そのうちの多くが、インド・インドネシア・中国・フィリピン・パキスタン・ナイジェリア・南アフリカ共和国です。
日本では、減少傾向にあるものの、2020年には新たに12,739人が結核患者として登録されました。
参照元:
・2020年 結核登録者情報調査年報集計結果について|厚生労働省
・国際協力|JATA 公益財団法人結核予防会
マラリア
蚊を媒体として感染するのがマラリアです。
マラリア原虫を保有するハマダラ属の蚊に刺されると感染すると言われています。
もっとも流行しているのが熱帯夜亜熱帯で、2018年には1年間に2億2,000万人が感染しました。
日本ではほとんど見られませんが、それでも60人前後が輸入感染症として届けられているのが現状です。
マラリアに感染すると、発疹や呼吸困難に見舞われ、意識が朦朧とし異常な出血が起こります。
発症してすぐに治療する必要があり、24時間以内に治療が行われなければ死に至る可能性もあるのが特徴です。
参照元:厚生労働省検疫所FORTH
三大感染症を改善するための支援
三大感染症が起こる原因は、不衛生な生活環境です。
しかし三大感染症が広まっている地域では、劣悪な環境下で暮らすことを余儀なくされた人たちが多くいます。
こうした状況を打破するためには、地球規模でのサポートが欠かせません。
世界では、三大感染症改善を目的とした様々な支援が行われています。
医療活動による支援
三大感染症に感染する人の多くは、紛争や自然災害、貧困などを原因として適切な医療サービスが受けられない状況です。
こうした人たちを対象に、様々な民間団体や非営利の国際団体が支援を行っています。
例えば、2001年に設立された、「ストップ結核パートナーシップ」もその一つです。
結核になる恐れがある全ての人をサポートし、クオリティの高い診断や治療、ケアが受けられるような仕組みを作っています。
ジュネーブのWHOから始まり、日本では2007年に設立されました。
参照元:ストップ結核パートナーシップ日本
清潔な水を確保する支援
三大感染症が広まる原因の一つとして、不衛生な水が挙げられます。
2020年の段階でも、世界の20億人が安全な水の確保ができていません。
さらに、36億人は清潔なトイレを使用できない状況です。
ユニセフでは、感染症を引き起こす劣悪な環境を改善するため、清潔な水を確保する支援を行なっています。
井戸を使った給水設備を作ったり、清潔なトイレの設置や衛生習慣を啓蒙する活動です。
栄養に関する支援
三大感染症が広まるエリアでは、重度の栄養不良に苦しんでいる状況です。
2020年の段階で、世界の5歳未満の子供達のうち22.0%が栄養不良に陥っています。
栄養が不足すると、免疫が弱り健康を維持することができません。
WFP(国連世界食糧計画)は、国連唯一の食糧支援機関です。
活動は全て、各国政府の拠出金や企業、団体、個人によって行われた寄付金でまかなわれ、2020年に日本で寄せられた寄付金は19億円以上になっています。
参照元:
・WFP(国連世界食糧計画)
・世界の子どもたち|ユニセフ
三大感染症を改善するために私たちができること
三大感染症を改善するためには、私たち個人の行動も欠かせません。
まずは、身近なことから一つずつ始めていきましょう。
続いては、三大感染症について私たちができることを解説します。
三大感染症を知る
行動を起こすためには、現状を知ることが大切です。
特に、三大感染症は日本人に馴染みのないことも多く、発展途上国のみで起きていると考える人も少なくありません。
しかし、日本にも関わりのある病気であり、自分ごととして捉える必要があります。
また、三大感染症で苦しむ地域が、どのような状況下にあるのかを把握することも欠かせません。
ニュースや新聞で目にする内容からでもいいので、少しずつ世界の状況を知っていきましょう。
寄付をする
三大感染症を改善するために、様々な団体が活動をしています。
その活動資金のほとんどは、企業や個人からの寄付によるものです。
ユニセフやWFPのホームページなどを訪れると、寄付の仕方が記載されています。
数千円単位から寄付をすることができるので、余裕がある人はぜひ参加してみてください。
また、コンビニや店舗などでは、三大感染症のための募金箱が設置されていることがあります。
小さな一歩が大きな支援につながるため、世界に思いを馳せながら募金してみるのもいいでしょう。
まとめ
世界では、まだまだ三大感染症に苦しむ人たちがたくさん存在します。
近年、世界で広まる新型コロナウイルス感染症をきっかけに、感染症の恐ろしさに気づいた人も多いでしょう。
三大感染症は、劣悪な環境が引き起こす病気といっても過言ではありません。
誰もが清潔な水を得られて、安心して美味しい食事ができる環境で過ごせるように、私たちもそれぞれにできる活動をしていくことが大切です。
未だ続く、三大感染症の改善を目指すSDGsゴール3の達成は急務といえます。