2020年7月、スーパーなどで配布されていたレジ袋が有料化されるという、センセーショナルなニュースが世間を賑わせました。
「お金を払えばレジ袋がもらえてしまうのに果たして環境は改善されているのか」「レジ袋が配布されなくなったためゴミ箱に設置する袋が無くなってしまい、結局お店でごみ箱に設置するための袋を購入している」などという声が、あちらこちらで聞こえていました。
思い返せばレジ袋が有料化されて以降、スーパーや衣料品店ではお洒落なエコバッグや自前の袋を持つ人が増え、「袋いただけますか?」と声をかけなければ、商品だけをそのまま手渡しされるようになりました。
そして、最近では、バイオマス素材をレジ袋を使うお店も増えてきました。
そこで今回は、レジ袋の有料化の背景にあわせて、バイオマスレジ袋について紹介していきます。
レジ袋有料化の謎について
先に述べたように、「レジ袋有料化」には大きな謎がありました。
例えば家庭のごみ箱の中には常に何らかの袋が必要であり、ほとんどの家庭ではレジ袋が再利用されてきたケースが多いはずなのです。
そのためレジ袋を失った今、私たちはレジ袋に変わる有料ビニール袋をお店で購入しています。
環境を守るためにレジ袋が有料化されたのに、違うビニール袋を購入してしまうという循環で、本当に環境が守られているのだろうか?本当にプラスチックゴミが減っているのだろうか?という謎は、深まるばかりです。
環境省によると、「レジ袋有料化」という取り組み以降、レジ袋をもらわない人は以前に比べ約2倍に増えているということです。
そして、レジ袋をもらった人の81.8%はそのレジ袋を再利用しているということがわかりました。
人々は、この施策を受け止め、環境を守るためにレジ袋を敢えてもらわず、自前のお洒落なエコバッグをスーパーに持参するようになったのです。
しかし、なんでしょう。この心のもやもやは。
レジ袋が有料になれば環境は守られるのでしょうか?
その問いに、経済産業省が答えを出してくれました。
「普段何気なくもらっているレジ袋が本当に必要かどうかを考えていただき、私たちのライフスタイルを見直すきっかけとすることを目的としています」
レジ袋有料化は、なんと環境を守るために行った啓蒙活動だったのです。
レジ袋が有料化されることで直接的に環境が改善されるわけではないけれど、環境に良いものを選んでいこうとする人々の心に影響を与えることが目的だったということです。
多くの人がエコバッグを持参するようになったということは、国はこの施策により大きな成果を出しており、私たちが環境について考えるきっかけを作ることに成功していたのです。
有料化対象外のレジ袋
国が行った啓蒙活動が成功をおさめ、私たちはもはやレジ袋をもらえないことが当たり前な日常を送るようになりました。
購入した商品を、レジのおばさんが上手にレジ袋の中に収めてくれていたあのころの事が、今では良い思い出となりました。
環境を守るために有料化されたレジ袋ですが、有料化されたのはプラスチック製の買い物袋だけとなります。
紙袋や環境に配慮したレジ袋は、レジ袋有料化の対象外とされています。
では、環境に配慮したレジ袋とはどんなものがあるのでしょうか。
・海洋生分解性プラスチックの配合率が100%のもの
・バイオマス素材の配合率が25%以上のもの
上記3点のレジ袋は有料化の対象にはならないため、無料配布することが可能です。
最近では、有料レジ袋にバイオマス素材のレジ袋を使用しているスーパーや、衣料品店で厚手のビニール袋を使用せずに紙袋に移行しているお店を数件見かけました。
本当に環境のことを考えたなら、既存のプラスチックバッグを廃止して環境負荷の少ないレジ袋や紙袋に移行していくことは当然の流れなのではないでしょうか。
バイオマスレジ袋とは
さて、バイオマス素材のレジ袋ですが、どんなものなのでしょうか。
バイオマス素材の配合率が25%以上のもの
通常のプラスチックバッグは、石油を使用したポリエチレンからできています。
人間が以前のまま石油を使い続けると、近い将来石油は枯渇してしまいます。
その問題に対し、少しでも石油の利用を減らそうと考えられたのがバイオマスポリエチレンです。
バイオマスポリエチレンは、主にサトウキビを主原料として作られたポリエチレンで、サトウキビの搾汁から砂糖を生成するときにでる残液(廃糖蜜)を発酵して作られます。
バイオマスレジ袋は、石油由来のポリエチレンとこのバイオマスポリエチレンを重合して作られたものとなります。
バイオマスレジ袋は、袋の下側に「この袋が何%のバイオマスを使用している袋なのか」ということが明記されています。
生分解性プラスチックが100%のもの
生分解性プラスチックには、主に生分解性プラスチックと堆肥化可能プラスチックがあります。
これら生分解性プラスチックの定義は、「微生物によって完全に消費され自然的副産物(炭酸ガス、メタン、水、バイオマスなど)のみを生じるもの」です。
原料は、ポリ乳酸(トウモロコシやサトウキビなどの植物由来のもの)とポリヒドロキアルカノエートPHA(生物が貧栄養時に備える炭素やエネルギーの貯蔵物質)などとなります。
つまり、生分解性プラスチックは通常のビニール袋のようにずっと形を留めずに、いずれ自然に返ることが期待されるものとなります。
参照元:海中で分解される植物由来のレジ袋。しかし、環境保護の観点からは賛否両論?|データのじかん
バイオマスレジ袋の問題点
バイオマスプラスチックや生分解性プラスチックが通常のレジ袋の代替になれば、環境が守られるのかどうかが気になるところです。
バイオマスレジ袋については、石油由来の通常のポリエチレンにバイオマスポリエチレンを加えて作られているので、自然回帰することはできません。
つまり、海に捨ててしまえば今まで通り、海洋生物を傷つけ海洋汚染を起こす原因となります。
では生分解性プラスチックはどうなのでしょうか?
生分解性プラスチックについても、様々な実験や研究開発が行われていますが、未だ発展途上の段階です。
生分解性プラスチックは最終的に分解されなくなってしまうことを期待して作られていますが、分解されるには一定の湿度や温度、酸素などの条件が揃う必要があります。
しかし、自然界でその条件が全て満たされることは非常に難しく、放棄されればたちまち環境汚染の原因となる可能性が高いのです。
2019年3月にフィリピンの海岸に打ち上げられた鯨の死骸からは無数のプラスチックの中に「生分解性プラスチック」と書かれたビニール袋も見つかったということです。
様々なバイオマスレジ袋の開発が進む中、最大の問題は、自然由来の成分を使っている袋だからという理由でゴミの分別など自然環境に対する私たちの意識が薄くなってしまうことなのではないでしょうか。
・レジ袋有料化の「抜け穴」|GREENPEACE
・海中で分解される植物由来のレジ袋。しかし、環境保護の観点からは賛否両論?|データのじかん
・生分解性プラスチックは本当に分解するのか(上)|alterna
まとめ
愛媛県にある福助工業では、海洋・土壌両方での生分解性をもつバイオマスプラスチックが開発されています。
土壌では好気性バクテリアによる生分解性を持ち、海洋では嫌気性バクテリアにより生分解されます。
福助工業は、公認試験機関であるTUVオーストラリアで海洋生分解認証を申請中です。
様々な研究が進み新しい製品が次々と開発されていますが、環境にとって最も大事なことは人々がレジ袋に限らず「使い捨て」に頼らない社会が構築されることなのではないでしょうか。
参照元:植物由来プラスチック「バイオレフィン®」|福助工業株式会社