これまで、発電には石油や石炭といった「化石燃料」が多く使われていました。実際に日本では、エネルギー源のうち80%以上を化石燃料が占めています。しかし、化石燃料はそれらを燃やしてエネルギー化するため温室効果ガスを排出し、環境負荷が高い点で問題となっています。
一方で近年、環境負荷が低いと注目されているのが「再生可能エネルギー」です。
そこで、再生可能エネルギーの種類やエネルギー別の特徴について、詳しく解説します。
<この記事で学べること>
- 再生可能エネルギーにはどんな種類があるのか
- 各再生可能エネルギーにおける発電の仕組み
- 各再生可能エネルギーにおけるメリットとデメリット
- 日本と世界における再生可能エネルギー普及の状況
再生可能エネルギーの種類
再生可能エネルギーは、主に下記の種類が挙げられます。
- 太陽光
- 風力
- 水力
- 地熱
- バイオマス
- 波力
- 潮力
- 海洋熱
- 地球温度差エネルギー(OTEC)
その中でも実用性が高く、導入が進められている主要なものが、水力、風力、地熱、バイオマス、太陽光の5つです。
再生可能エネルギーは、環境に優しく持続可能なエネルギーであり、地球温暖化の原因となる温室効果ガス排出を抑制することができるため、今後のエネルギー政策の主軸となることが期待されています。
また、化石燃料資源の枯渇や価格変動のリスクからエネルギー安全保障を高める効果もあります。
再生可能エネルギー種類別の発電の仕組み
再生可能エネルギーの多くは、電力として利用されます。そのほか、自動車燃料や冷暖房用のエネルギーとして利用されることもあります。ここでは再生可能エネルギーの種類ごとに、エネルギー化する仕組みを見ていきます。
水力発電の仕組み
水力エネルギーは、流れる水の運動エネルギーや水位差から生じるポテンシャルエネルギーを利用して発電する方法です。ダムや水車などが代表的な発電設備です。
水力発電のメリットとデメリット
<メリット>
- 環境に優しく、温室効果ガスの排出が少ない
- 燃料コストがかからないため、運用コストが低い
- 安定した発電が可能で、ピーク需要に対応しやすい
<デメリット>
- ダム建設などの初期投資が高額
- 水資源が豊富な地域に限定される
- ダム建設に伴う自然環境への影響が懸念される
風力発電の仕組み
風力エネルギーは、風の力を利用して発電する仕組みです。風力タービンのプロペラが風によって回転し、その回転運動を発電機に伝えて電気を生成します。風力発電は、風の速度や風向によって発電量が変化します。
風力発電のメリットとデメリット
<メリット>
- 環境に優しく、温室効果ガスの排出が少ない
- 燃料コストがかからないため、運用コストが低い
- 適切な風向・風速があれば、大規模な発電が可能
<デメリット>
- 初期投資が高額であることが多い
- 風の強さや風向によって発電量が不安定
- 鳥類への影響や景観への悪影響が指摘されることがある
地熱発電の仕組み
地熱発電は、地下の高温・高圧の蒸気や温水を利用して発電する方法です。地下の熱源となるマグマや地熱水が加熱され、そのエネルギーを利用してタービンを回し発電します。
地熱発電のメリットとデメリット
<メリット>
- 環境に優しく、温室効果ガスの排出が少ない
- 燃料コストがかからないため、運用コストが低い
- 安定した発電が可能で、天候や時間帯の影響を受けにくい
<デメリット>
- 初期投資が高額であることが多い
- 地熱資源が豊富な地域に限定される
- 掘削や開発による地域環境への影響が懸念される
バイオマス発電の仕組み
バイオマスエネルギーは、植物や動物由来の有機物質を燃料として利用する発電方法です。バイオマスは、燃焼やガス化・発酵などのプロセスを経て、電気や熱を生成します。
ものを燃やす発電方法でありながら、燃やすものが有機資源であることからCO2の増減に影響を与えないといわれ、再生可能エネルギーとして活用されています。
バイオマス発電のメリットとデメリット
<メリット>
- 環境に優しく、CO2の排出量を抑えることができる
- 廃棄物や農業副産物などを活用できる
- バイオマス資源が豊富な地域では、地域活性化につながる
<デメリット>
- 初期投資が高額であることが多い
- バイオマス資源の確保や運搬コストが高い場合がある
- バイオマス燃料の品質によって発電効率が変動する
太陽光発電の仕組み
太陽光発電は、太陽からの光を受ける太陽電池(ソーラーパネル)によって、光エネルギーを電気エネルギーに変換する仕組みです。太陽電池は、半導体素材を利用しており、光を吸収することで電子が励起され、電気が発生します。
太陽光発電のメリットとデメリット
<メリット>
- 環境に優しく、温室効果ガスの排出が少ない
- 燃料コストがかからないため、運用コストが低い
- 設置スペースが柔軟で、屋根や壁面などにも設置可能
<デメリット>
- 初期投資が高額であることが多い
- 日照時間や天候に影響を受けるため、発電量が不安定
- 太陽電池の性能劣化により、長期的な発電量の低下がある
その他の再生可能エネルギーの種類
波力発電
波力発電は、海の波の上下運動を利用して電力を生成する再生可能エネルギーの一種です。波力発電の仕組みとしては、波の動きを機械的なエネルギーに変換し、さらにタービンを回して発電します。
発電設備の初期投資コストが高いことや、潮流や生物への影響が懸念されることがデメリットとして挙げられます。
潮力発電
潮力発電は、潮の満ち引きによる水位の変化を利用して電力を生成する再生可能エネルギーです。潮力発電の仕組みは、潮の流れによって回転するタービンを設置し、その回転力を電力に変換します。
海洋熱発電
海洋熱発電は、海洋の温度差を利用して発電する再生可能エネルギーの一種です。主に熱帯地域で有効な方法で、海面近くの暖かい表層水と、深海の冷たい水を利用して発電します。
基本的な仕組みは、海面近くの暖かい水を用いて流体(通常はアンモニアなどの低沸点物質)を気化させ、その蒸気でタービンを回し発電します。その後、深海の冷たい水で蒸気を冷やし、再び液体に戻して繰り返し利用します。
地球温度差発電
地球温度差発電は、地表近くと地下深部の温度差を利用して発電する再生可能エネルギーの一つです。
地球温度差発電の仕組みは、地表近くの暖かい地熱水を利用して流体を気化させ、その蒸気でタービンを回して発電します。その後、地下深部の冷たい地熱水で蒸気を冷やし、再び液体に戻して繰り返し利用します。
再生可能エネルギー活用のメリット
日本にとってこれらの再生可能エネルギーを活用するメリットは、環境負荷低減とあわせてもう一つあります。それが、“エネルギー自給率の向上”です。日本のエネルギー自給率、つまり、自国でのエネルギー生産率は2018年時点で12%。そのほかはすべて、海外からの輸入に頼っている状態です。
日本はエネルギー源のうち約80%を化石燃料に頼っているものの、日本での石油・石炭の産出量が少なく、海外からの輸入に頼らざるを得ない状況です。
そのため、化石燃料の使用を続ける限り、日本のエネルギー自給率向上は望めません。そこで日本は、水力や風力といった自国に存在するエネルギー源を活用し、エネルギー自給率の向上をしようとしています。
エネルギーの自給率を上げることで、さらに2つのメリットがあります。それは、国際情勢や輸入元となる国の気候に左右されず、安定的な供給ができること。そして、輸入にかかるコストを抑えられること。再生可能エネルギーの導入には、費用や土地面積といったコストが大きくかかる反面、こうした大きなメリットを得られることからも、日本での早期導入が期待されています。
各国における再生可能エネルギーの普及状況
世界では、再生可能エネルギーの普及が進んでおり、多くの国で再生可能エネルギーの割合が増加しています。特に、ヨーロッパ諸国や中国などは、積極的な政策や投資により、再生可能エネルギーのシェアが大幅に拡大しています。
国際エネルギー機関(IEA)によると、世界の発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合は、2010年の20%から2020年には28%へと拡大しました。ヨーロッパにおけるドイツとデンマークの事例を簡単に紹介します。
先進国の取り組み事例
<ドイツ>
再生可能エネルギーの普及を目指し、政府主導で太陽光や風力発電の導入が進められています。また、エネルギー消費効率の向上や地域協力を通じた分散型エネルギー供給体制の構築が進んでいます。
<デンマーク>
世界有数の風力発電国であり、風力発電による電力供給率が高い。また、バイオマスエネルギーや地熱エネルギーの利用も進めています。
参照元:Renewable Capacity Statistics 2022
日本における再生可能エネルギーの種類別の割合
日本で再生可能エネルギーを活用した割合を種類別にみると、環境NPO法人 環境エネルギー政策研究所が2019年に発表した資料では、2019年時点での割合は以下の通りです。
発電方法 | 割合 |
水力 | 7.4% |
太陽光 | 7.4% |
バイオマス | 2.7% |
風力 | 0.76% |
地熱 | 0.24% |
再生可能エネルギー合計 | 18.5% |
出典:環境NPO法人 環境エネルギー政策研究所「2019年(暦年)の自然エネルギー電力の割合(速報)」
日本の発電電力量に占める再生可能エネルギー比率は、2019年度時点で18.5%。世界的に見て決して高い数字ではありません。
ではなぜ、日本での再生可能エネルギーの使用率が低いのでしょうか?それは、諸外国と比較して日本の日照時間や平野部が少ないことが原因です。日照時間が少なければ当然、太陽光による発電は増えません。また、平野部が少ないことで風力も充実していないという現状があります。
さらに、発電設備の価格の高さ、人件費の高さといった問題もあり、エネルギーの切り替えに時間が掛かっています。
そこで日本政府は、2030年までに再生可能エネルギー比率を22~24%に引き上げる目標を掲げています。その目標を達成するためには、現在抱えている問題を解決することが必要です。具体的には、設備や人権費も含めた発電コストの削減、エネルギーの安定供給が早急に必要です。
過去に行われてきた日本の取り組みとして、コストの削減を目的に2012年7月、FIT制度が導入されました。FIT制度は固定価格買取制度とも呼ばれ、家庭や一般事業者が再生可能エネルギーで発電した電力を、電力会社が一定価格で買い取る仕組みをいいます。
この仕組みにより、一般家庭や事業者が発電に参画しやすくなり、電力会社は大きな設備投資をせずに電力を確保できるようになりました。
再生可能エネルギーを複数種類バランスよく活用して 環境負荷低減へ
上記で説明したように、再生可能エネルギーには、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど多様な種類があります。それぞれの発電方法にはメリットとデメリットが存在し、地域や状況に応じた適切な選択が求められます。
ただし、共通して言えることとして、再生可能エネルギーは、環境に優しく持続可能なエネルギー供給を実現するための鍵となります。各国の政策や技術開発、そして個人や企業の取り組みが重要です。私たち一人ひとりが、エネルギー消費を抑制し、再生可能エネルギーの普及に貢献することで、地球環境の保全と持続可能な社会の実現につながります。
参照元:
・再生可能エネルギーとはなんですか|関西電力 HP
・よくあるご質問|関西電力 HP
・再生可能エネルギー早わかり|J-POWER電源開発株式会社 HP
・太陽光発電のしくみ|中部電力 HP
・再生可能エネルギーの導入は進んでいますか|経済産業省 資源エネルギー庁 HP
・再生可能エネルギーの種類と特徴|鹿児島市 HP
・日本のエネルギー政策|日本原子力文化財団 HP
・日本における再生可能エネルギーの割合は?|セレクトラジャパン HP