地球上では毎年1,300万ヘクタールの森林が失われ、36億ヘクタールの土地が砂漠化しています。
そして環境や生物など、さまざまな場所に影響が出ているのが現状です。
日本は砂漠化の影響をあまり受けていませんが、「これからも被害を受けない」という保証はありません。
世界中で起きている砂漠化を防止するには、国や政府だけでなく、私たち個人の協力も不可欠です。
本記事では砂漠化防止のために、私たちができることをまとめました。
まずは、取り組み内容をお伝えする前に、「砂漠化はなぜ起こるのか」を知りましょう。
参照元:目標15森林の持続可能な管理、砂漠化への対処|国連広報センター
砂漠化の主な原因は2つ
砂漠化の主な原因は、「気候的要因」と「人為的要因」に分けられます。
気候的要因
気候的要因には、
・地球規模での気候変動
・干ばつ
・土地の乾燥化
・地球温暖化
・少雨
などが挙げられます。
もともと赤道に近い地域は、乾燥しやすく砂漠地帯も集中しています。
しかし最近では、気候的要因の影響で今まで以上に乾燥が進み、砂漠化が深刻な問題となっているのです。
人為的要因
人為的要因は、
・過放牧
・森林減少
・過耕作
・薪炭材の過剰摂取
・焼畑農業
など、人が生きていくために自然環境に手を加える活動を指します。
特に上記のような活動は、生態系が不安定な乾燥地域を中心に行われており、さらなる生態系の悪化につながる結果に。
そして、このような人為的要因には、貧困・人口増加・市場経済の進展が関係しています。
さらに、世界各国の人為的・気候的要因の割合は下記の通りです。
図を見ると、どの国も過放牧や過耕作・森林減少が大きな割合を占めています。
そのなかでも、アフリカとアジアの土地劣化は深刻な状態です。
この2つの地域には、多くの発展途上国が存在します。
発展途上国では電気が通っていない場所が多く、木を燃やして明りの代わりにします。
さらに農業が主産業となっており、広大な土地が必要です。
このような理由から、彼らは生きるために森林伐採や過耕作などを行っています。
砂漠化を止めるためには、発展途上国が抱える問題とも向き合わなければいけません。
ここまでは、砂漠化の主な原因についてお伝えしました。
次は砂漠化が、人や地球にどのような影響を与えるのかを見ていきましょう。
砂漠化が引き起こす影響
砂漠化によって、
・食料生産基盤の低下
・貧困の加速
・都市への人口集中
・難民の増加
・生物多様性の損失
・気候変動への影響
などの恐れがあります。
上記の影響を見て分かるように、砂漠化は「ただ森の木々が減少する」だけではありません。
例えば、
・砂漠化の影響で農作物が育たない
・食べる物がなくなる
・農産物が売れないため収入もなくなる
・貧困に陥る
・飢餓で苦しむ人が増える
・免疫力の低下によって病気になりやすい
・食べ物を求めて紛争が起こる
このように、さまざまな問題につながるのです。
すでに発展途上国では、このような負の連鎖が起こっています。
そして食料生産基盤の低下は、食料の大半を輸入に頼っている日本も他人ごとではすまされない問題です。
この現状を改善し砂漠化を防止するためには、世界中の人々が協力する必要があります。
そのため、全員で協力して誰一人取り残されない世界を目指す、SDGsの目標に設定されました。
砂漠化はSDGsの目標にも設定されている
これ以上の砂漠化を防ぐためには、この問題を「自分ごと」と考え、1人ひとりが行動し協力することが重要です。
さらに砂漠化は、SDGsの目標とも関係の深い問題になります。
まずは、SDGsのどの目標と関わりがあるのかを説明する前に、SDGsとは何かを簡単に紹介します。
SDGsとは
SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」のことです。
2015年に開催された国連総会にて、193の加盟国一致により採択された国際目標になります。
2030年までに「環境」「社会」「経済」の問題を解決するために、17の目標と169のターゲットが設定されました。
また169のターゲットには、17の目標を無理なく達成するために、「この年までに、この数値にたどり着くことを目指しましょう」という具体的な到達点が示されています。
それではSDGsとは何かを理解した所で、次は砂漠化と関りの深い目標13と15の内容に踏み込んでいきます。
SDGs目標13とは
SDGsの目標13は、「気候変動に具体的な対策を」です。
「自然的要因」の1つとされている気候変動を改善することによって、砂漠化を食い止められます。
さらに、安定した農作物の生産にもつながり、飢餓や貧困問題の改善にも貢献するでしょう。
そのため目標13では、
・温室効果ガスの削減
・災害に対するレジリエンス(回復力)と適応の強化
・気候変動の対策を国の政策や計画に盛り込む
・気候変動の影響の軽減・緩和策・適応策・組織の適応能力の改善
など、あらゆる角度から気候変動の解決を目指す内容となっています。
さらに目標を達成にむけて、5つのターゲットが設定されました。
【13.1】 | すべての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応力を強化する。 |
【13.2】 | 気候変動対策を国別の政策、戦略及び計画に盛り込む。 |
【13.3】 | 気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する。 |
【13.a】 | 重要な緩和行動の実施とその実施における透明性確保に関する開発途上国のニーズに対応するため、2020年までにあらゆる供給源から年間1,000億ドルを共同で動員するという、UNFCCCの先進締約国によるコミットメントを実施するとともに、可能な限り速やかに資本を投入して緑の気候基金を本格始動させる。 |
【13.b】 | 後発開発途上国及び小島嶼開発途上国において、女性や青年、地方及び社会的に疎外されたコミュニティに焦点を当てることを含め、気候変動関連の効果的な計画策定と管理のための能力を向上するメカニズムを推進する。 |
目標15とは
目標15の「陸の豊かさも守ろう」は名前の通り、自然環境や生態系に焦点を当てた目標です。
この目標は、砂漠化改善の鍵となる内容が多く組み込まれているため素通りはできません。
目標15では、
・陸の生態系の保護や回復
・持続可能な利用を推進
・持続可能な森林管理を行う
・外来種の問題
など、ただ陸上の環境や生態系を守るだけでなく、豊かな自然環境の「持続可能な状態」を目指す内容となっています。
そして目標15には、下記のターゲットが設定されました。
【15.1】 | 2020年までに、国際協定の下での義務に則って、森林、湿地、山地及び乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保する。 |
【15.2】 | 2020年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる。 |
【15.3】 | 2030年までに、砂漠化に対処し、砂漠化、干ばつ及び洪水の影響を受けた土地などの劣化した土地と土壌を回復し、土地劣化に荷担しない世界の達成に尽力する。 |
【15.4】 | 2030年までに持続可能な開発に不可欠な便益をもたらす山地生態系の能力を強化するため、生物多様性を含む山地生態系の保全を確実に行う。 |
【15.5】 | 自然生息地の劣化を抑制し、生物多様性の損失を阻止し、2020年までに絶滅危惧種を保護し、また絶滅防止するための緊急かつ意味のある対策を講じる。 |
【15.6】 | 国際合意に基づき、遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を推進するとともに、遺伝資源への適切なアクセスを推進する |
【15.7】 | 保護の対象となっている動植物種の密猟及び違法取引を撲滅するための緊急対策を講じるとともに、違法な野生生物製品の需要と供給の両面に対処する。 |
【15.8】 | 2020年までに、外来種の侵入を防止するとともに、これらの種による陸域・海洋生態系への影響を大幅に減少させるための対策を導入し、さらに優先種の駆除または根絶を行う。 |
【15.9】 | 2020年までに、生態系と生物多様性の価値を、国や地方の計画策定、開発プロセス及び貧困削減のための戦略及び会計に組み込む。 |
【15.a】 | 生物多様性と生態系の保全と持続的な利用のために、あらゆる資金源からの資金の動員及び大幅な増額を行う。 |
【15.b】 | 保全や再植林を含む持続可能な森林経営を推進するため、あらゆるレベルのあらゆる供給源から、持続可能な森林経営のための資金の調達と開発途上国への十分なインセンティブ付与のための相当量の資源を動員する。 |
【15.c】 | 持続的な生計機会を追求するために地域コミュニティの能力向上を図る等、保護種の密猟及び違法な取引に対処するための努力に対する世界的な支援を強化する。 |
ここまでの話から分かるように、砂漠化が進む現在の状況に、「これではいけない」と気づいた国や政府が改善へと動き始めています。
それでは、私たち個人には何ができるのでしょうか。
砂漠化を防ぐために私たちにできることとは?
ここからは砂漠化防止のために、私たちにできることを見ていきます。
砂漠化について理解を深めよう
まずは、砂漠化がどのようなものか理解することが大切です。
最近では環境問題に注目が集まり、さまざまな書籍が出版されています。
SNSを利用して気軽に調べることも可能です。
「何が原因で起こり」「どのような影響があるのか」を知ることで、「自分に何ができるのか」「何をしなければいけないのか」が自然と見えてくるでしょう。
寄付やボランティアに参加するなど行動に移す前に、まずは知ることから始めましょう。
肉類の消費量を見直す
「好きな食べ物は?」と聞かれると、「お肉」と答える人も多いのではないでしょうか。
しかし、この肉類のもとである家畜が砂漠化と大きく関係しています。
国連食料農業機関によると、公共交通機関よりも、家畜が排出する温室効果ガスの量が40%も上回っていることが分かりました。
これは1㎏の肉を食べると249㎞の距離を、時速80㎞で3時間走った普通自動車の温室効果ガス排出量に相当します。
温室効果ガスは地球温暖化や気候変動の原因の1つとされ、社会では削減が叫ばれています。
「肉は食べないようにしましょう」と言っているのではなく、1人ひとりが食べる量を減らすことで、温室効果ガス増加を防げるのです。
世界中の人々が少しずつ気をつけることで、大幅な温室効果ガス削減につながるでしょう。
参照元:肉食(畜産)が影響を及ぼす「地球環境・食糧危機」と「動物虐待」と「生活習慣病」|堆肥づくりあれこれ『ローズマリー』 環境・健康部
寄付を利用しよう
世界の砂漠化を改善するために、日本では現地へ足を運び植林活動を行う団体も存在します。
その活動をサポートするために、寄付や募金を行うことも私たち個人にできる取り組みの1つです。
「砂漠 植林活動 寄付」などで検索すると、さまざまな団体が出てきます。
ホームページを確認し、「この団体の力になりたい」と思った際は寄付してみましょう。
また、最近は利用すると金額の一部を植林活動に寄付できるサブスクなども登場しています。
自分の負担にならない方法で取り組んでみてください。
まとめ
砂漠化は、日本と関係のない問題だと思っている人も多いかもしれません。
しかし、世界が抱えている砂漠化の問題は、食料生産基盤の低下など別の形で日本へ影響を与えるでしょう。
このまま砂漠化が進むと、日本も発展途上国と同じ被害にあう可能性もないとは言いきれません。
最悪の事態を防ぐために、私たちは1人ひとりができることを取り組む必要があります。
「自分1人が取り組んでも意味はない」と思わずに行動してみましょう。
あなたと同じように行動に移す人は必ずいます。
緑豊かな世界を目指して、できることから始めてみませんか。