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移民が増えると犯罪が増える?データで読み解く移民と犯罪の関係|最新の犯罪白書から

移民の犯罪について、移民が増えると犯罪が増えるというのは本当?

「移民が増えると犯罪が増える」という言説は、選挙や大きな事件報道のたびに繰り返されます。日本政府は「いわゆる移民政策はとらない」としてきましたが、この記事では、統計上の在留外国人を中心に、中長期に日本で暮らす人たちを広く「移民」としてとらえます。そのうえで、法務省の犯罪白書や警察庁、出入国在留管理庁などの公的統計から、「外国人が増えると犯罪が増えるのか」を確かめます。結論を先に言えば、「増えた分だけ治安が悪化する」という単純な因果は統計から読み取れません。ただし、「まったく問題がない」とも言えず、数字の読み方には注意が必要です。

この記事で学べること

  • 在留外国人と外国人労働者が現在どのくらいいるのか
  • 犯罪白書から読み取れる外国人の検挙の長期推移と、直近2年の増加
  • 人口比較で見落としやすい年齢構成や統計の対象範囲の違い
  • 「外国人犯罪」を国籍・罪種・件数と人員に分けて読む視点
  • 日本語教育など共生に向けた制度の動きと、自分で数字を確かめる方法

在留外国人は412万人に|増加の背景にある人手不足

「外国人が増えた」という実感は、統計でも裏づけられます。まず、何人が日本で暮らし、働いているのかを確認します。犯罪との関係を考えるには、分母となる人口の変化を押さえておく必要があります。

初めて400万人を超えた在留外国人

出入国在留管理庁の統計によると、2025年末の在留外国人数は412万5,395人でした。前年末の約377万人から35万6,418人、率にして9.5%増え、初めて400万人を超えています。国籍別では中国が約93万人、ベトナムが約68万人、韓国が約41万人の順です。在留資格別では永住者が約94万7,000人で最も多く、特定技能は約39万人と、前年から37.2%伸びました。総人口に占める割合は3%台で、欧米の主要国と比べれば低い水準にとどまります。

外国人労働者は257万人、人手不足が背景にある

厚生労働省の届出状況では、2025年10月末の外国人労働者数は257万1,037人でした。前年から26万8,450人増え、届出が義務化された2007年以降の最多を更新しています。国籍別ではベトナムが約60万6,000人、中国が約43万2,000人、フィリピンが約26万1,000人です。外国人を雇う事業所も37万1,215所に増えました。

増加の背景には、日本人の働き手が減るなかで、介護、建設、製造、外食、農業などの現場が外国人材に支えられている事情があります。2019年に創設された特定技能のように、政策として受け入れを広げてきた経緯もあります。つまり、外国人の増加は偶然ではなく、国内の労働需要に応じた結果です。この増加が治安にどう影響したのかを、次の章から検証します。

犯罪白書で見る検挙の長期推移|2005年のピークと直近2年の増加

「増えているのは事実なのか」を確かめるには、数年分の変化ではなく、20年分の推移を見る必要があります。令和7年版犯罪白書(2025年)の外国人犯罪の章に載っている数字で整理します。

検挙人員は2005年のピークより約3割少ない

外国人による刑法犯の検挙人員は、2005年(平成17年)の1万4,786人がピークでした。その後は減少傾向が続き、2024年(令和6年)は1万464人です。検挙件数も、2005年の4万3,622件に対して2024年は1万8,861件で、ピーク時の半分以下です。この間に在留外国人数は大きく増えているため、「外国人の増加に比例して犯罪も増えた」という見方は、長期の推移とは合いません。

2023年から2年連続で増加している点も事実

一方で、都合の悪い数字を伏せてはいけません。外国人による刑法犯の検挙人員は2023年から2年連続で増えています。2024年は前年比7.6%増で、検挙件数は21.4%増です。さらに、永住者などを除いた「来日外国人」に限ると、検挙件数は1万3,405件で前年比33.5%増、検挙人員は6,368人で前年比11.0%増でした。コロナ禍の入国制限で人の往来が止まっていた時期から、入国者や在留外国人が一気に戻ったことが影響していると考えられます。

刑法犯全体に占める割合は5.5%

2024年の刑法犯検挙人員の総数は19万1,826人で、そのうち外国人は5.5%でした。9割以上は日本人です。割合としては小さく見えますが、在留外国人が総人口に占める割合(3%台)と比べると、検挙人員の割合のほうがやや高いのも事実です。この差をどう読むかが、次の章のテーマです。

人口あたりで比べるときの落とし穴|年齢構成と統計の範囲

「外国人は人口の3%台なのに、検挙人員の5.5%を占める」という比較は、一見わかりやすい一方、そのまま信じると誤読につながります。比べる条件がそろっていないからです。

年齢と性別の構成が違う

犯罪で検挙される人の割合は、日本人どうしでも年齢や性別によって大きく違い、一般に10代後半から20代の男性で高くなります。在留外国人は、留学生や技能実習生、就労目的の若い世代が多く、日本人より20代・30代の割合が高いと指摘されています。そのため、総人口どうしで単純に割り算すると、外国人のほうが高く出やすくなります。研究者や弁護士が、年齢や性別をそろえて独自に試算した例もあり、そろえると差は縮まるとされています。ただし、試算の方法によって倍率が変わるため、「差が消える」とまでは言えません。

検挙人員と在留外国人数は、対象が一致しない

もう一つの注意点は、分子と分母の対象が違うことです。犯罪白書の外国人の検挙人員には、短期滞在などで一時的に日本にいる人も含まれます。一方、在留外国人数は中長期に暮らす人の統計です。また、外国人にしか成立しない入管法違反などの特別法犯は、日本人との比較になじみません。検挙は「疑いで捜査の対象になった」段階の数字であり、有罪の人数でもありません。こうした事情から、公表された数字だけで日本人と外国人の「正確な犯罪率の差」を断定することはできないのです。

見るべきは「差があるか」より「何が起きているか」

人口比の議論は、「外国人は危険か、安全か」という二択になりがちです。しかし、対策を考えるうえで役に立つのは、どんな人たちが、どんな犯罪で、どんな背景のもとに検挙されているのかという中身の情報です。次の章では、その中身を見ていきます。

「外国人犯罪」と一括りにできない理由|国籍・罪種・件数と人員のずれ

「外国人犯罪」という言葉は、実態を粗くしか表せません。国籍や罪種、在留資格によって傾向が大きく違うからです。

罪種は窃盗が中心で、凶悪犯の割合は小さい

犯罪白書によると、2024年の来日外国人による刑法犯のうち、殺人は60件(0.4%)、強盗は81件(0.6%)でした。大半を占めるのは窃盗です。窃盗の検挙件数を国籍別に見ると、ベトナムが4,964件(834人)と最も多く、中国が938件(553人)、カンボジアが603件(43人)と続きます。警察庁も、令和6年の来日外国人犯罪が増えた要因として、ベトナム人やカンボジア人による窃盗の増加を挙げています。

件数と人員のずれが示すもの

この数字で注目したいのは、件数と人員の差です。カンボジアは603件に対して検挙人員が43人で、1人あたり十数件にのぼります。少数の人物や組織的なグループが、短期間に多くの窃盗を重ねたケースが数字を押し上げている可能性があります。「件数が増えた」ことは「犯罪に関わる人が同じ割合で増えた」ことを意味しません。ニュースで「検挙件数が過去最多」と聞いたときは、人員の数字もあわせて見る習慣が役に立ちます。

国籍別の数字は「その国の人全体」の傾向ではない

警察庁の令和7年版警察白書は、ベトナムと中国の2か国で、来日外国人の検挙件数全体の約6割、検挙人員全体の約半数を占めると示しています。ただし、この2か国は在留外国人の人数そのものが多い国でもあります。検挙された人数が多いことと、その国の人が犯罪に走りやすいことは別の話です。国籍で人を判断することは、統計の読み方としても誤りですし、地域の中で暮らす個人への偏見につながります。

イメージが先行する理由と、自分で数字を確かめる方法

統計が示す姿と、人々の体感のあいだにはずれがあります。そのずれを生む仕組みを知り、自分で確かめる手段を持っておくことが、不安や偏見に流されない近道です。

報道とSNSが「身近な脅威」の感覚をつくる

全国的には珍しい事件でも、SNSで拡散されると、近所で頻繁に起きているように感じられます。外国人による事件は国籍や在留資格が強調されやすく、日本人による事件にはそうした属性が付かないことが多い、という指摘もあります。その結果、「外国人だから起こした」という印象が残りやすくなります。人は、目立つ事例を思い出しやすいほど、その頻度を高く見積もる傾向があります。これは外国人に限らない、人間の認知の癖です。

犯罪の背景には、国籍より生活の条件がある

一部の犯罪の背景には、低い賃金、借金、孤立、日本語が通じず相談先がないといった生活の条件があります。これらは国籍とは別の要因で、日本人でも同じ状況に置かれれば犯罪のリスクは高まります。「外国人だから」と見るより、「どんな環境に置かれた人が事件に至りやすいか」と見るほうが、再発防止の議論に結びつきます。

自分の地域の数字を見る3つの手順

自分で確かめる手順を3つ挙げます。1つ目は、法務省の犯罪白書と警察庁の統計で、全国の長期推移を見ることです。2つ目は、住んでいる自治体や都道府県警が公表する犯罪発生件数を見ることです。たとえば埼玉県川口市のように、市のサイトで月ごとの犯罪件数を公開している自治体もあります。3つ目は、外国人住民の人数の推移と並べて見ることです。ただし、地域の犯罪件数には日本人による犯罪も含まれるため、外国人の増減との前後比較だけで因果関係は示せません。「増えた、減った」だけで結論を出さず、年齢構成や産業構造などの背景も見る姿勢が大切です。

共生に向けた制度と地域の動き|日本語教育と受け入れ制度の見直し

統計が示すのは過去の姿です。これから問われるのは、増え続ける外国人住民との暮らしを、どう安定したものにするかです。制度の面では、いくつかの動きがあります。

日本語教育の法整備が進んでいる

2019年6月に「日本語教育の推進に関する法律」が施行され、国や自治体、受け入れ企業が外国人の日本語学習を支える責務が定められました。2024年4月には、日本語教育機関の認定と登録日本語教員の資格を定める法律が施行され、質の担保された日本語教育の土台がつくられています。言葉が通じることは、仕事や生活のトラブルを相談できる前提でもあり、孤立を防ぐ意味でも重要です。一方で、予算の確保や地域ごとの教室の数など、実施体制の課題は残っているとされています。

受け入れ制度の転換と政府の方針

技能実習制度に代わる「育成就労」制度が、2027年4月に始まる予定です。技能実習では、低賃金や転職の制限といった問題が指摘されてきました。新制度では、人材育成を明確な目的に掲げ、一定の条件のもとで転職を認めることなどが盛り込まれています。また、2026年1月には、政府が外国人の受け入れと共生に関する総合的な対応策をまとめ、ルール違反への厳正な対応とあわせて、入国前の日本語教育や社会規範の理解促進を打ち出したと報じられています。制度が「取り締まり」と「支援」のどちらに重心を置くのかは、今後も注視が必要です。

自治体と住民にできること

国の制度が整っても、暮らしの現場は自治体や地域にあります。多言語での生活情報の提供、日本語教室、ごみ出しなど地域ルールの説明、相談窓口の設置といった取り組みは、各地の自治体や国際交流協会が担っています。住民として関われる入口は、日本語ボランティアや地域の国際交流イベントへの参加です。顔の見える関係ができると、「外国人」という大きな括りではなく、一人ひとりの隣人として見えてきます。

まとめ

在留外国人は2025年末に412万人を超え、外国人労働者も257万人に達しました。一方、犯罪白書によると、外国人による刑法犯の検挙人員は2005年のピークより少なく、「外国人が増えた分だけ犯罪も増えた」という単純な図式は統計から読み取れません。ただし、2023年から2年連続で検挙件数・人員が増えている点や、検挙人員の割合が人口比よりやや高い点も事実です。

そのため、見るべきは「増えたか、減ったか」ではなく、数字の中身です。年齢構成や統計の対象範囲による見かけの差を考慮し、国籍・罪種・件数と人員を分けて読むと、「外国人犯罪」という大きな括りでは見えない実態が見えてきます。そのうえで、日本語教育や労働環境の整備といった生活の条件を整えることが、地域の安心につながります。まずは、住んでいる自治体の犯罪件数と外国人住民数の推移を、公式サイトで一度並べて見てみてください。

  • 外国人による刑法犯の検挙人員は、2005年の1万4,786人から2024年は1万464人と少なく、2023年から2年連続で増加している
  • 検挙人員の割合(5.5%)と人口比の単純比較は、年齢構成や統計の対象範囲の違いで誤読しやすい
  • 窃盗が中心で、国籍別では件数と人員のずれもあるため、「外国人犯罪」と一括りにせず中身を読む
  • 犯罪の背景には国籍より、賃金・孤立・言葉の壁といった生活の条件がある
  • 日本語教育の法整備や育成就労など、共生に向けた制度が動いており、地域での関わりが力になる

参考文献

  • 記事を書いたライター
  • ライターの新着記事
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