インターネットやスマートフォンの普及などIT環境の変化とともに、近年、注目を集めている「シェアリングエコノミー」。
限りあるモノやスキルを、ムダなく有効活用しようという活動です。
サステナブル(持続可能)な社会を目指すなかで目覚ましい成長を見せる一方、今後さらに発展を遂げるために抱えている課題もあります。
そこでこの記事では、「シェアリングエコノミー」について初めて知る人に向けて、シェアリングエコノミーが抱える課題や解決のための対策について解説します。
シェアリングエコノミーとは?
「シェアリングエコノミー」とは、個人や企業が保有するモノや場所、スキルなどを、インターネット上のプラットフォームを通じて貸し借りしたり、売買したりする新しい経済活動のことです。
シェアリングエコノミーは、遊休資産の有効活用や人手不足の解消など、現代社会が抱えるさまざまな問題を解決する手段のひとつとして、大きな役割を担っています。
シェアリングエコノミーの事例
シェアリングエコノミーは、その内容から大きく5つのサービスに分類できます。
ここでは、カテゴリーごとに、どのようなサービスが展開されているのか紹介します。
1. スペースのシェア
個人が持つ部屋や家、企業が所有する会議室や駐車場をシェアします。
例えば、民泊プラットフォームは個人の部屋や家を、旅行者に宿泊先として貸し出すサービスです。
このサービスの定着によって、提供者にとって空き家や長期不在となる家を有効活用できるだけでなく、周辺地域の治安維持にも効果が期待できます。
2. モノのシェア
最近、ビニール傘のシェアサービスも話題となりました。
街のあらゆる場所にビニール傘を借りられるステーションがあり、いつでも低額で傘を借りることができます。
利用者にとっては急な雨に備えて傘を持ち歩く必要や、ビニール傘の購入がなくなるほか、廃棄されるビニール傘が減ることで環境にとっても良いサービスと言えます。
3. 移動手段のシェア
近年、自転車や電動キックボードなどの、移動手段をシェアするサービスがリリースされています。
従来は自転車を個人所有していたため、保管スペースが必要なだけでなくメンテナンスも必要でした。
しかし、移動手段のシェアサービスによって、保管スペースやメンテナンスは不要となりました。
また、好きなときに自転車に乗り、好きな場所に返すことができるようになり、より気軽に利用できる移動手段となりました。
さらに最近では、タクシーの相乗りサービスも始まっています。
配車アプリ等を通じて、目的地の近い乗客同士を運送開始前にマッチングし、タクシーに相乗りさせて運送するサービスです。
参照元:新たにタクシーの「相乗りサービス」制度を導入します!~タクシーを割安に利用することが期待されます~|国土交通省HP
これまでタクシーは、便利である一方、高額な移動手段と認識されていました。
しかし相乗りサービスの開始によって、利用者にはより手軽な移動手段となったのです。
4. お金のシェア
近年、寄付を募るプラットフォームやクラウドファンディングのシステムが多くリリースされています。
個人や企業が持つ目標や志に賛同した人々から、資金を集めるシステムです。
このシステムの展開により、寄付や資金提供を募る起案者にとって多額の資金調達を叶え、実現が難しいと思われた目標の達成を叶えることができます。
支援者にとっても、社会貢献ができたり、高い目標を持つ人を応援することで満足感を得られたりするなどのメリットがあります。
5. スキルのシェア
個人が持つスキルを売買する、クラウドソーシングがスキルシェアサービスの代表例と言えます。
デザインやライティングといったスキルのほか、家事や育児のスキルもプラットフォームを介して売買できます。
スキルを募集する側にとって人手不足の解消になる一方、スキルを提供する側にとっては新たな収入源となるなど、双方にメリットの大きなサービスです。
シェアリングエコノミーの定着によるメリット
シェアリングエコノミーには、環境負荷低減や雇用創出といったメリットがあります。
そのほか考えられるメリットを、モノやサービスなどの提供者、利用者の立場に分けて解説します。
モノ・サービスなどの提供者にとってのメリット
- 遊休資産をフル稼働できる
- 遊休資産やスキルが新たな収入源となる
- コスト削減
モノやサービスなどの提供者にとって、シェアリングエコノミーの定着による最大のメリットは、これまで遊休資産となっていたモノやスペースをフル稼働させられることです。
それらは新たな収入源にもなり、シェアリングエコノミーがモノやサービスなどの提供者にもたらす利益は大きいと言えます。
また、限りあるスペースやモノを余剰なく稼働させられるため、コスト削減にも繋がります。
モノ・サービスなどの利用者にとってのメリット
- コスト削減
- 人手不足の解消
- 「所有」をせずに済む
これまでは企業から提供されていたモノやサービスが、シェアリングエコノミーのサービスでは個人から安価に提供されることも多く、コスト削減に繋がると言えます。
さらに、企業がモノ・サービスの利用者である場合、人材育成にかかっていた時間や費用を抑えることもできます。
シェアリングエコノミーのプラットフォームを利用することで即戦力の人材に仕事を依頼でき、これまで必要としていた時間や費用を削減できます。
ほかにも、モノやスペースを「所有」する必要がなくなり、維持にかかる費用や労力が不要となる点も大きなメリットです。
シェアリングエコノミーの定着に向けた課題
シェアリングエコノミーが今後さらに広まり定着するには、大きく2つの課題があります。
2つの面から詳しくみていきましょう。
法律に関する課題
シェアリングエコノミーは、新しい経済活動であるがゆえに、法整備が追い付いていない点が課題となっています。
例えば最近では、電動キックボードのシェアサービスがリリースされたものの、道路交通法が整っていなかったために利用者やサービス展開エリアの近隣住民に混乱をきたしていました。
また、インターネット上のプラットフォームを介して個人が誰でも自由にサービスを提供できることからトラブルも起こりやすく、責任や保証の問題も懸念されています。
こうした法整備の遅れがシェアリングエコノミーの成長の遅れを招き、定着への大きな課題となっています。
安全面に関する課題
考えられるもうひとつの課題は、安全面に関する課題です。
具体的には、モノやサービスの品質が挙げられます。
これまでは企業が、一定の水準を満たしたモノやサービスを、利用者あるいは消費者に提供していました。
しかし、個人が気軽にモノやサービスを提供できるようになったことで品質の水準があいまいになり、低品質のモノやサービスも提供されています。
また、プラットフォームの利用によって個人間でのやりとりが可能となり、トラブルに発展する事例も起きています。
こうしたトラブル事例の発生がシェアリングエコノミーへのネガティブなイメージをもたらし、定着を遅らせる要因となっています。
シェアリングエコノミーの課題解決策
まず、法律に関する課題解決への対策として、早急な法整備は欠かせません。
法整備に向けた取り組みは政府に限らず、シェアリングエコノミー協会という団体も行っていて、より安全な市場環境の整備もあわせて行っています。
またシェアリングエコノミー協会では、シェアリングエコノミー定着の課題となっていた利用者からの不安やネガティブなイメージを払拭する取り組みも行っています。
具体的には、政府が策定したガイドラインに適合する事業者が提供するシェアリングサービスに対して、認証マークを付与しています。
認証マークの付与は利用者が安心してサービスを利用できるようになっただけでなく、シェアリングエコノミーの定着に向けた大きな一歩となりました。
シェアリングエコノミーでサスティナブルな社会を実現しよう
シェアリングエコノミーは、希薄になった現代の人間関係に、新たな繋がりやコミュニティを創出するきっかけをもたらします。
さまざまなプラットフォームを通じて助け合いが循環することで、サスティナブルな社会が実現できるでしょう。
そのためには、今よりさらにシェアリングエコノミーの考えが認知され、ポジティブに理解されることが必要です。
また、シェアリングサービスがより発展することも必要です。
シェアリングサービスのプラットフォームは、助け合いが生まれる場所です。
この場所が今後より発展することで、助けてもらうこと、助けることが気軽に、そして当たり前にできる社会を目指したいものです。