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SDGs

「消滅」か「再生」か|2030年を前に問われる地方のSDGsと、自治体が変わるための条件

「消滅」か「再生」か|2030年を前に問われる地方のSDGsと、自治体が変わるための条件

SDGsの達成期限まで、あと4年あまり。都市部ではESG投資やサステナビリティ経営の話題が増える一方で、日本の地方では別の「2030年問題」が静かに進行しています。人口の流出、産業の空洞化、そして自治体そのものの消滅リスク。地方こそがSDGsを必要とし、SDGsによって変わることができる——そんな実践の最前線を探ります。

「消滅可能性都市」という警告が意味するもの

2014年5月、元岩手県知事・元総務大臣の増田寛也氏を座長とする「日本創成会議」が「増田レポート」を発表しました。2010〜2040年に20〜39歳の女性人口が半数以下に減少する自治体を「消滅可能性都市」と定義し、その該当数が全体の約半数にあたる896市区町村に上ると推計されたこのレポートは、多くの自治体に看過できない衝撃を与えました。
実際、日本では2008年をピークに人口の減少が続いており、少子高齢化が加速する中で、働き手である若年層は地方から首都圏へと流出し、地域の持続性が失われつつあります。

これは「地方だけの問題」ではありません。
少子高齢化や首都圏への人口一極集中が進む中、地方の衰退化は日本全体の活力に関わる非常に重要な問題です。
だからこそ、国はSDGsを地方再生の「共通言語」として活用しようとしています。

SDGsを「原動力」に——地方創生との接点

地方が将来にわたって成長力を確保するには、人々が安心して暮らせるような持続可能なまちづくりと地域活性化が重要です。特に急速な人口減少が進む地域では、くらしの基盤の維持・再生を図ることが必要です。

こうした認識のもと、内閣府は「SDGsを原動力とした地方創生」を国の政策として位置づけています。
SDGsの理念を取り込むことで、政策の全体最適化や地域課題解決の加速化という相乗効果が期待でき、行政・民間事業者・市民など異なるステークホルダー間で地方創生に向けた共通言語を持つことが可能になります。

その具体的な制度の柱が「SDGs未来都市」です。
内閣府は、SDGsの達成に向けた取り組みを行う地方公共団体の中から、経済・社会・環境の三側面における新しい価値創出を通して持続可能な開発を実現するポテンシャルが高い都市・地域を「SDGs未来都市」として選定してきました。これまでに多数の都市が選定されており、そのうち特に先導的な取り組みが「自治体SDGsモデル事業」として支援されています。

官民が「分断」を超えるための仕組み

地方創生が成果を上げられない理由の一つに、官民の分断があると指摘されています。
住民側は「それは行政の仕事」と言い、行政側も「それは民間の仕事です」と積極的に関与しない——そうした「官民の分断」の事例は少なくなく、地域づくりの妨げになっているという実態があります。

この分断を乗り越えようとする場として、内閣府は「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」を設置しています。
プラットフォームでは、マッチングに向けた自治体の地域課題登録や、民間団体等からの課題解決につながる提案を受ける仕組み、プロジェクト具体化・事業化に向けた伴走支援事業者の紹介なども実施されています。自治体が地域課題を登録すると、民間団体等からの提案を受けることができ、交渉・連携へとつなげることが可能です。

地域に根ざした実践事例

先進事例として知られる岩手県紫波町の「オガールプロジェクト」は、国の補助金に依存しない官民連携の象徴的な取り組みです。
町役場付近を文化・生活の拠点と位置づけたまちづくり計画として始動し、基本的に民間主導で進められたとされています。官民複合施設「オガールプラザ」がオープンし、その後「オガールタウン」「オガールベース」と展開を続けているとされています。
こうした「補助金頼み」から脱却した持続可能なモデルは、各地の参考事例として広く共有されています。

岡山県西粟倉村では森林信託事業に関して三井住友信託銀行等と連携した取り組みを推進し、長野県はSDGs推進企業登録制度の構築、岡山県真庭市は「真庭SDGsパートナー制度・円卓会議」の運営など、地域の特性を生かした多様な取り組みが全国各地で展開されています。

「SDGsをやっている」で終わらせないために

一方で、課題もあります。SDGsをロゴや宣言に使うだけで、実際の地域課題が何も変わらないという「SDGsウォッシュ」的な状況も指摘されています。
地方自治体はSDGs達成へ向けた取り組みをさらに加速化させるとともに、各地域の優良事例を国内外に一層積極的に発信・共有していくことが期待されています。

大切なのは、SDGsを「外からの評価基準」ではなく「地域の内側にある問いへの答え」として捉えることではないでしょうか。人口が減っていく中でどう産業を維持するか、誰が地域のケアを担うか、若者が戻りたいと思える環境をどうつくるか——これらはすべて、SDGsの目標8(働きがい)、目標3(健康・福祉)、目標11(まちづくり)と直結する問いです。

SDGs目標11以外でも、高齢化社会であればSDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」、結婚・出産・子育てであれば目標5「ジェンダー平等を実現しよう」と一致するなど、ほぼすべてのSDGs目標が地方の抱える課題とマッチしています。

まとめ|「生き残る」より「豊かに続く」地域へ

SDGsの2030年目標と、日本の地方が直面する2030年問題は、時間軸を共有しています。制度の整備や選定制度の活用に加え、地域の中にある「問い」を丁寧に掘り起こすことが、これからの地方創生SDGsに求められる姿勢といえるでしょう。

補助金や選定制度に頼るだけでなく、地域の人々が当事者として関わる仕組みをどう育てていくか。2030年まであと4年あまり——その問いに向き合うことが、地方の未来を「消滅」ではなく「再生」へとつなぐ道になるはずです。あなたの地域でも、一つの問いから始めてみませんか。

  • 記事を書いたライター
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MIRASUS編集部。地球と人に優しい未来をつくるサステナビリティな事例をご紹介。誰にでもわかりやすくSDGsに関する情報は発信していきます。

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