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ノンバイナリーとは?概要や類似するジェンダーとの違いを徹底解説|日本の制度と職場の現在地

ノンバイナリーとは?概要や類似するジェンダーとの違いを徹底解説

ノンバイナリーとは、自分の性自認が「男性」「女性」のどちらか一方に収まらない、あるいは収めたくないと感じている人のあり方を指す言葉です。「ノンバイナリージェンダー」とも呼ばれます。定義はここまでです。

本当に知りたいのは、その先ではないでしょうか。Xジェンダーやクィアとは何が違うのか。日本の戸籍や役所の書類は、いまどうなっているのか。身近な人から打ち明けられたら、何をすればよいのか。この記事では、2023年の最高裁決定、2026年に決まった国の基本計画、自治体や企業の実践までを、出典を示しながら整理します。

この記事で学べること

  • ノンバイナリーを「性自認・性表現・性的指向」の3つの軸で整理する考え方
  • Xジェンダー・クエスチョニング・クィア・ジェンダーレスとの使い分け
  • 日本の法律、国の基本計画、自治体の性別欄見直しの現在地
  • 海外の法的な扱いと、近年の揺り戻し
  • 職場や身近な場面で、今日からとれる具体的な行動

ノンバイナリーとは|男女のどちらかに収まらない性自認

ノンバイナリーの「バイナリー」は「二つに分ける」という意味です。ノンバイナリーは、人の性別を男女の二つだけで捉える枠組みに、自分はあてはまらないと感じている人のあり方を指します。男性でも女性でもないと感じる人もいれば、両方の要素があると感じる人、日によって感じ方が揺れる人、性別という区分自体をあまり意識しない人もいます。ひとつの型があるわけではなく、グラデーションのように幅があります。

整理するときは、性にまつわる要素を3つの軸に分けると混乱が減ります。

性自認、性表現、性的指向は別々の軸

性自認は、自分が自分の性別をどう認識しているかを指します。性表現は、服装や髪型、話し方、名前の使い方など、外に向けた表し方です。性的指向は、恋愛感情や性的な関心が誰に向かうかを指します。

ノンバイナリーは、このうち性自認に関わる言葉です。性自認がノンバイナリーの人の恋愛対象は、同性とは限りません。異性や複数の性別、あるいは誰にも向かない人もいます。見た目が中性的かどうかも、性自認とは別の話です。ノンバイナリーの人が、あえて「女性らしい」服や「男性らしい」服を選ぶこともあります。

日本の当事者層はどれくらいか

日本でノンバイナリーだけを取り出した公的な全国統計は、今回確認した範囲では見当たりませんでした。参考になるのは民間調査です。電通グループは2023年6月に全国の20〜59歳57,500人を対象にインターネット調査を行い、LGBTQ+の当事者層を9.7%と報告しています。

この数値には、レズビアンやゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーなど、性的マイノリティ全体が含まれます。ノンバイナリーの人の割合を示す数字ではない点に注意してください。調査の設計や質問の仕方によって数値は大きく変わるため、ひとつの数字を「正解」として受け取らないことも大切です。

Xジェンダー・クエスチョニング・クィア・ジェンダーレスとの違い

ノンバイナリーと似た言葉は、重なる部分が多く、はっきり線を引けないことがよくあります。どの言葉を名乗るか、あるいは名乗らないかは本人が決めることです。ここでは、使われ方の傾向を整理します。

Xジェンダー

Xジェンダーは、日本で生まれ、日本で広く使われてきた言葉です。性自認が男性・女性のどちらにもあてはまらない人を指し、ノンバイナリーとほぼ同じ意味で使われる場面が多くあります。ノンバイナリーは英語圏から広まった言葉で、国際的に通じやすいのが特徴です。両方を同じ意味で使う人もいれば、どちらかをしっくりくる言葉として選ぶ人もいます。

クエスチョニング

クエスチョニングは、自分の性自認や性的指向を探している途中、あるいはあえて決めないでいる状態を指します。「いまは答えを出していない」という過程や姿勢を表す言葉です。ノンバイナリーは、自分のあり方として言葉を見つけた人が使うことが多い一方、その前にクエスチョニングの時期を過ごす人もいます。二つは対立する言葉ではなく、同じ人の中で順番に、あるいは同時に使われることがあります。

クィア

クィアは、もともと侮蔑の意味で使われてきた言葉を、当事者が自分たちの言葉として取り戻した経緯があります。現在は、性的マイノリティ全体を指す包括的な言葉として使われることがあります。ただし、いまでも苦い記憶と結びつく人がいて、使うかどうかには世代や個人差があります。他人に対して「あなたはクィアだ」とラベルを貼るのは避けてください。

ジェンダーレス

ジェンダーレスは、服や商品、制服、トイレの設計など、性別による区別を設けない状態を指して使われることが多い言葉です。人のアイデンティティそのものを表すというより、物事のデザインや価値観を表す場面が目立ちます。「ジェンダーレス男子」のような表現は、本人の性自認とは別の話として使われがちです。外見の印象だけで、その人の性自認を決めつけないことが大切です。

ノンバイナリーをめぐって誤解されやすい4つのこと

言葉を知ったあとに起きやすいのが、誤解にもとづく声かけです。善意であっても、相手に負担をかけることがあります。ここでは特に多い4つを取り上げます。

一時的な迷いや流行ではない

「若い人の流行では」「そのうち変わる」という受け止め方は、当事者の経験を軽く扱ってしまいます。自分の性別に違和感を持ち続け、あとから言葉に出会って安心したという人は少なくありません。呼び方が変わる人もいますが、それは自分に合う言葉を探し続けている途中のことで、「迷っているだけ」という意味ではありません。

「どちらかを選べば楽になる」とは限らない

「男か女か決めたほうが生きやすい」という助言は、選べないことが悩みの中心にある人には届きません。ノンバイナリーの人にとって、二択のどちらかを選び続けることがすでに負担になっている場合があります。必要なのは、選び直させることではなく、選ばなくても困らない環境です。

性的指向と混同しない

「ノンバイナリーなら恋愛対象も男女どちらでもない」という理解は誤りです。性自認と性的指向は別の軸にあり、どの組み合わせもあり得ます。恋愛や結婚の話題で「相手は男性?女性?」と聞くより、「どんな人が好き?」と聞くほうが、誰にとっても答えやすくなります。

トランスジェンダーとの関係は人によって違う

トランスジェンダーは、出生時に割り当てられた性別と性自認が異なる人の総称です。ノンバイナリーの人の多くはこの定義にあてはまりますが、自分をトランスジェンダーと呼ぶかどうかは人によって異なります。性別移行の手続きや医療を望む人もいれば、望まない人もいます。ここも本人の言葉に合わせるのが基本です。

日本の制度の現在地|戸籍、最高裁、国の基本計画、自治体

日本には、ノンバイナリーという性別を戸籍や公的書類に記載する制度は、現時点で確認できる範囲では設けられていません。制度は「男性か女性か」を前提に動いています。そのうえで、ここ数年は動きがありました。

2023年の最高裁決定

2023年10月25日、最高裁大法廷は、性同一性障害特例法が戸籍上の性別変更に求めていた「生殖能力をなくす手術」の要件(生殖不能要件)について、憲法に反するとして違憲と判断しました。一方、変更後の性別の性器に似た外観を求める要件(外観要件)は、高裁での審理が尽くされていないとして差し戻されました。

この決定は、性別変更を望むトランスジェンダーの人の身体の自由を守る判断です。男性・女性以外の性別を認める判断ではありません。ノンバイナリーの人が直接の対象になったわけではない点は、正確に押さえておく必要があります。

理解増進法と、2026年に決まった初の基本計画

2023年6月に「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」(いわゆるLGBT理解増進法)が成立し、同月に施行されました。この法律に基づく初の基本計画は、2026年6月16日に閣議決定されたと報じられています。学校・地域・職場での啓発を進め、国がリーフレットや研修動画を作って自治体に提供すること、行政職員や教職員向けの研修、相談体制の整備などが柱です。

つまり国の動きは、いまのところ「理解を広める」段階にあります。戸籍の性別欄を増やすような制度の変更は含まれていません。

自治体では性別欄の見直しが先行している

制度を変えにくい国に先行して、自治体の窓口では書類の性別欄を減らす動きがあります。兵庫県明石市は、2021年4月から印鑑登録証明書の性別欄を削除する方針を示しました。報道によると、市が洗い出した613種類の公文書のうち、国や県が様式を決めている240種類を除く373種類を検討し、225種類で削除が可能と判断、すでに174種類で削除したとされています。一方、人間ドックの受診票など148種類は当面そのままで、「その他」「答えない」といった選択肢を増やす対応を担当課に促す方針でした。

「全部なくす」のでも「そのままにする」のでもなく、一枚ずつ「本当に必要か」を問い直す進め方は、他の自治体や企業にも応用できる考え方です。

日本全体のジェンダー平等の位置づけについては、次の記事も参考になります。

海外の動き|認める国が増える一方で、揺り戻しも起きている

日本の現在地を測るには、海外の状況も参考になります。ただし、世界の動きは一方向に進んでいるわけではありません。

男女以外の選択肢を設ける国

PinkNewsは2024年9月、データベースのEqualdexをもとに、ノンバイナリーを何らかの形で法的に認める国を18か国と報じました。カウントの仕方は情報源によって異なるため、数字はあくまで目安です。同記事によると、オーストラリアは2011年からパスポートに「X」の性別表記を認めています。ドイツは自己決定法を2024年11月に施行し、これまで医学的な証明を必要としていた「diverse」の登録を、より広い人に開く内容だと伝えています。

欧州では、オーストリアが2025年に憲法裁判所の決定を受け、ノンバイナリーの人が4つの性別表記から選べるようになったと、ILGA-Europeが伝えています。

制度は後退することもある

米国では2022年からパスポートに「X」の表記が選べるようになりました。しかし2025年1月20日の大統領令を受け、国務省はXの表記での発行を止める方針を示しました。連邦地裁の差し止めを経て、2025年11月に連邦最高裁が差し止めの効力を止める判断をしたと、ACLUが説明しています。これは最終的な判断ではなく、訴訟は続いています。

制度で認められていた権利が、政権や裁判所の判断で変わることがあります。日本で制度を考えるときにも、「一度決まれば安心」ではなく、継続的に見ていく視点が必要です。

職場や身近な場面で何ができるか

制度を待たなくても、職場や日常でできることがあります。ここでは、すでに動いている例と、個人が今日からできることを分けて紹介します。

先行している企業・自治体の取り組み

日本航空(JAL)は2020年9月18日、機内・空港の英語アナウンスで使ってきた「Ladies and Gentlemen」をやめると発表しました。同年10月1日から「Everyone」「All Passengers」などの表現に切り替えています。日本語のアナウンスはもともと「皆様」など性別に触れない表現のため、変更の対象は英語を中心とした外国語のアナウンスです。

明石市のように書類から性別欄を減らす自治体、アナウンスの言葉を変える企業。いずれも「誰かを特別扱いする」のではなく、「最初から誰も除かない設計にする」やり方です。ノンバイナリーの人だけでなく、多くの人が居心地よく使える仕組みにつながります。

職場で見直せるポイント

次のような項目は、費用がほとんどかからず、すぐ点検できます。

  • 社内の申請書やアンケートに、性別欄が本当に必要かを確認する
  • 必要な場合は「その他」「回答しない」の選択肢を加える
  • 「男性社員・女性社員」「ご主人・奥様」など、性別を前提にした呼びかけを避ける
  • 名簿や座席表で、性別で分けて並べる習慣を見直す
  • 相談窓口に、性の多様性に関する相談を受け付けると明記する

身近な人から打ち明けられたら

打ち明けられたとき、最初にできることは、話してくれたことへのお礼を伝えることです。そのうえで、次の3点を意識してください。

まず、本人が望む名前や呼び方を聞き、それに合わせます。次に、誰に話してよいかを確認します。本人の同意なく第三者に伝えることは、アウティングと呼ばれ、本人の安全や人間関係に深刻な影響を与えることがあります。最後に、すべてを理解しようとして質問攻めにしないことです。わからないことは、本人に聞く前に、信頼できる資料で調べておくとよいでしょう。

まとめ

ノンバイナリーは、性自認が男性・女性の二つに収まらない人のあり方を指す言葉です。Xジェンダーとはほぼ重なって使われ、クエスチョニングやクィア、ジェンダーレスとは、指している対象や文脈が異なります。大切なのは、言葉の正確な使い分けより、本人がどの言葉を選ぶかを尊重することです。

日本では、戸籍の性別は男性か女性かのままで、国の基本計画も当面は啓発と相談体制の整備が中心です。一方で、自治体の書類や企業のアナウンスなど、現場から性別を前提にしない設計に変える動きが出ています。海外では認める国が増えつつも、制度が後退する例もあり、状況は流動的です。

読み終えたあとは、まず1つだけ試してみてください。たとえば、自分の職場や学校で使う書類を1枚選び、性別欄が本当に必要かどうかを確かめることから始められます。

  • ノンバイナリーは性自認の言葉で、性表現や性的指向とは別の軸にある
  • Xジェンダーとは重なる部分が多く、どの言葉を使うかは本人が決める
  • 日本の戸籍には男女以外の記載がなく、国の動きは啓発と相談体制が中心
  • 自治体や企業では、性別欄の見直しや呼びかけの言い換えが進んでいる
  • 打ち明けられたら、呼び方を聞き、本人の同意なく他の人に伝えない

参考文献

  • 記事を書いたライター
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