多様性が叫ばれる昨今、LGBTやLGBTQIAなどのセクシャルマイノリティに関する意識も高まっています。
LGBTQIAの「A」に当たるのが、アセクシャルです。
性的欲求を抱かないセクシャリティを表す言葉ですが、詳しく知らない人も多いでしょう。
「まったく恋愛をしないのではないか」と勘違いしている人も少なくありません。
今回は、アクセシャルについて詳しく解説します。
LGBTQIAとは
アセクシャルについて知る前に、多様な性について触れておきましょう。
近年、少しずつ浸透しつつある「LGBTQIA」は、セクシャルマイノリティの頭文字をとった言葉です。
特に、「LGBT」は「Lesbian」「Gay」「Bisexual」「Transgender」の略称であり、広く知られているでしょう。
「QIA」は、最近になって注目されており、LGBTよりもさらに多様性に広がりを持たせるために使用されるようになりました。
「QIA」のうち「A」が、アセクシャルを意味しています。
それ以外の「Q」「I」についての概要は、以下の通りです。
Questioning
自分の性が定まっていない人のことをQuestioning(クエスチョニング)といいます。
男性・女性、もしくは中間のところにいるのかといった性自認が決まっていない人や、恋愛感情を持つ対象が定まっていないケースです。
もしくは、その両方が定まっていない人もクエスチョニングにあてはまります。
Intersex
性器や卵巣、精巣などの性腺や染色体などが先天的に男性型・女性型に統一されていない、もしくは判別が難しい状態をインターセックスといいます。
ほとんどの場合、性自認ははっきりしているものの、体の発達が一般的な状態とは異なり、中には検査して初めて気がつくことも少なくありません。
参照元:多様な性について考えよう~性的指向と性自認~|法務省人権擁護局
アセクシャルとは
アセクシャルは、「エイセクシャル」とも表され、日本語では無性愛と言います。
アセクシャルの世界的なオンラインコミュニティ団体「Asexual Visbility and Education Network」による定義では、アセクシャルは恋愛感情の有無に関係なく、性的な魅力を経験しない人とされています。
宗教的な理由や立場的に恋愛をしない、性的な経験をしないという人もいますが、こうしたタイプの人はアセクシャルではありません。
アセクシャルは、本質的に性的な魅力を経験しないのであり、様々なセクシャリティと変わらない概念です。
参照元:Asexual Visbility and Education Network
ノンセクシャルやアロマンティックとの違い
性的マイノリティの人々の中には、「ノンセクシャル」や「アロマンティック」といったケースもあります。
どちらもアセクシャルによく似た定義を持っているので、わかりにくいという人も多いでしょう。
それぞれの違いを解説します。
ノンセクシャルとの違い
「ノンセクシャル」は、恋愛感情は抱くものの、他者に対して性的欲求を感じないタイプのセクシャリティです。
一方、アセクシャルの場合は、恋愛感情については関係なく、他者に性的欲求を感じない人のことを指すので、恋愛感情をまったく感じない人も含まれます。
アロマンティックとの違い
アロマンティックは、性的欲求の有無に関わらず、恋愛感情を抱かないタイプの人を指します。
例えば、恋愛感情・性的欲求ともに抱かない場合は「アロマンティック・アセクシャル」と呼ばれることもあるでしょう。
アセクシャルはどれくらい存在する?
アメリカの性的嗜好とジェンダーアイデンティティの問題を主に研究する期間「Williams Institute」が2019年に実施したアンケートでは、1,504人のセクシャルマイノリティの人が回答し、そのうち1.7%の19人がアセクシャルに該当しました。
また、日本でも同じような調査が行われています。
2019年に厚生労働省の事業として、大阪市で暮らす人の中から無作為に抽出した人を対象にしたセクシャリマイノリティに関する調査が行われました。
1万5,000人が対象となり、回答した人は4,285人でした。
ごく一部を対象にした調査ではありますが、アセクシャルに該当する人は日本でも一定数いることがわかります。
参照元:
・「性的指向と性自認の人口学―日本における研究基盤の構築
・Williams Institute
アセクシャルの結婚
アセクシャルと一括りにしても、全ての人が同じ考えを持つとは限りません。
性的欲求はないものの、恋愛感情を持つという人もあるでしょう。
また、結婚についても人それぞれに考え方が異なります。
性的欲求がなくても、結婚をしたいという人もあれば、結婚は必要ないけどパートナーは欲しいという人も少なくありません。
反対に、結婚にも興味がないだけではなく、人間自体に魅力を感じないという人もいます。
アセクシャルが抱える苦悩
性的欲求がないと人に話すと、「我慢しているのでは」とか「経験がないからではないか」といった視点で見る人もいます。
また、性的欲求を持たずに、恋愛をしていると言えば、本当の愛ではないと誤解されることもあるでしょう。
アセクシャルは意識的に性的欲求を避けているのではなく、根本的に性的欲求を抱かない人です。
様々なセクシャリティがあることを理解せずに、性的欲求や恋愛感情がない人に対して心無い言葉を発すると、相手を傷つけることになりかねません。
まとめ
アセクシャルに限らず、セクシャルマイノリティは、LGBTQIAではまとめきれないほど、人それぞれに異なるものです。
生き方や考え方が十人十色と言われるように、愛し方や性的な側面も一般的な事例だけで一括りにはできません。
誰もが暮らしやすい社会を作るためにも、セクシャルマイノリティについて正しく理解する必要があります。