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海洋プラスチックごみとは?生じる原因から影響、日本の対策と私たちにできることまで解説

海洋プラスチックごみ問題を解決するための対策とは?

海洋プラスチックごみとは、レジ袋や容器などのプラスチックが海に流れ込んだもののことです。直接海へ捨てられる場合もありますが、多くは街でのポイ捨てや管理しきれなかったごみが、雨や風で川へ運ばれ、最終的に海へ届きます。大きなごみが紫外線や波で砕けて生じる5mm以下の破片は「マイクロプラスチック」と呼ばれ、これも海洋プラスチックごみに含まれます。

定義を知ったあとに気になるのは、「どれくらいの量なのか」「日本は関係あるのか」「国際ルールはどこまで進んだのか」「自分は何をすればいいのか」ではないでしょうか。この記事では、2025年から2026年にかけて動いた条約交渉と、日本の自治体・企業の実践を中心に、これらの疑問へ順に答えていきます。

この記事で学べること

  • 海に入るプラスチックの量が、なぜ資料によって違う数字になるのか
  • 海に流出するごみの約8割が「街」由来とされる理由
  • 国際プラスチック条約の交渉が2026年10月時点でどこまで進んでいるか
  • 日本の制度、自治体と企業の取り組み、暮らしの中で効く行動

海洋プラスチックごみの量はどれくらい?数字の幅と読み方

「年間800万トン」という数字を見かけたことがある方は多いと思います。ただ、この数字を含め、海洋プラスチックごみの量は資料によって異なります。推計の対象や方法が違うためです。数字を比べるときは、何を数えているのかを確認する必要があります。

世界の推計値

外務省の『開発協力白書』は、海に流出するプラスチックごみを「一般的には毎年800万トンとも言われている」と紹介しています。一方、OECD(経済協力開発機構)の『Global Plastics Outlook』(2022年)は、2019年に河川・海洋・湖沼などの水環境へ流出したプラスチックを最大で610万トンとしました。この数字には湖沼など海以外の水域が含まれます。

OECDは蓄積量も推計しており、河川に約1億900万トン、海洋に約3000万トンがたまっているとしています。川にたまった分が、のちに海へ流れ出る可能性もあります。同じ報告書は、2019年に世界で出た約3億5300万トンのプラスチック廃棄物のうち、リサイクルされたのは9%にとどまると示しています。

「2050年に魚より多くなる」という予測の位置づけ

海洋プラスチックごみの話題で必ず出るのが、「2050年には海のプラスチックが重量で魚を上回る」という予測です。出どころは、エレン・マッカーサー財団が2016年のダボス会議に合わせて公表した報告書です。

この予測は、魚の量を一定とみなすなど、いくつかの仮定の上に成り立っています。オーストラリアのファクトチェック機関AAPは、前提が不確かで証明された数字ではないと評価しています。予測が絶対だと受け取る必要はありませんが、プラスチックが分解されにくく、流入が続けば蓄積が進むという方向性は、各種の推計に共通しています。

日本から流出する量

環境省は、日本から海洋へ流出するプラスチックごみの量を、発生源や品目ごとに積み上げて推計しています。令和7年度の推計は年間1万6千〜3万1千トン程度です。令和6年度は1万3千〜3万1千トン程度でした。

環境省自身が、結果は確定値ではなく、推計式とデータはすべて暫定のものだと断っています。別の手法であるマクロ統計による試算は年間2,300〜24,000トンで、両者に大きな差はないと説明されています。世界の数字に比べると小さく見えますが、日本は流出元として無関係ではありません。推計の精度も年ごとに見直されている段階です。

海洋プラスチックごみの種類を整理したい方は、次の記事も参考になります。

海に届く前に始まっている|海洋プラスチックごみが生じる原因

海洋プラスチックごみというと、船から捨てられたごみを思い浮かべるかもしれません。環境省は、海に流出するごみの約8割は内陸(街)由来とされており、一度海に出たごみの回収は困難だと説明しています。海のごみ問題は、海に着く前の暮らしの場面から始まっています。

街から川、川から海へのルート

道路や公園にポイ捨てされたペットボトルや袋は、雨で側溝に流れ込み、川を下って海に出ます。強い風でごみ置き場から飛ばされるプラスチック、収集後に管理しきれず散らばったごみも、同じルートをたどります。ごみ出しのルールが守られず分別されなかったものは、リサイクルされずに処分されます。そのどこかで外に漏れ出すと、海への入り口になります。

分解されにくい性質が、問題を長引かせる

プラスチックは水に溶けず、土にも還りません。小さく砕けても、プラスチックであることは変わらず、量が減るわけではありません。生ごみのように自然に消えず、海に入れば長く残ります。使い捨ての容器や包装が増えた生活では、使った量に比例して「出口」の管理が問われます。

漁具や人工芝など、容器以外の発生源

海に流れ出るのは、ペットボトルや食品容器だけではありません。環境省は、発生源と品目ごとの流出量推計を続けています。漁具、農業資材、人工芝、タイヤの摩耗粉じんなども、検討の対象です。

漁網やロープは、海上で失われると「ゴーストフィッシング」と呼ばれる状態を生むこともあります。漁具が長く海中に残り、魚や海の生き物を捕らえ続けることです。私たちが日々買う製品の行く末だけでなく、暮らしを支える産業の資材も原因に含まれます。

海洋生態系・経済・健康への影響

プラスチックごみは、海の生き物、地域の経済、人の健康と、複数のかたちで影響を及ぼします。ただし、確認されている影響と、まだ解明途上の影響は分けて理解する必要があります。

生き物への影響|誤食と絡まり

ウミガメ、海鳥、クジラなどの消化管から、プラスチックが見つかる例が各地で報告されています。2019年にはフィリピンで、打ち上げられたクジラの胃から約40kgのプラスチックごみが出たと報じられました。日本でも2018年に、神奈川県鎌倉市の浜辺で見つかった子どものクジラの胃からプラスチックごみが出たと報じられています。

胃にプラスチックがたまると、満腹に感じてエサを食べられなくなったり、消化管を傷つけたりして、衰弱につながることがあります。漁網やひもに体が絡まって傷つく例も報告されています。マイクロプラスチックは、プランクトンなど小さな生き物にも取り込まれ、食物連鎖を通じて広がります。

観光・漁業・自治体への影響

浜辺に漂着したごみは、景観を損ない、観光地のイメージに影響します。回収や処理の費用は、自治体にとって継続的な負担です。漁業者にとっては、漁網にごみがかかったり、船のスクリューに漁具が絡まったりして、操業の妨げになります。海のごみは、環境の問題であると同時に、地域の暮らしの問題でもあります。

人の健康への影響は、まだ解明の途上

マイクロプラスチックには、製造時に加えられた添加剤が含まれることがあり、水中の化学物質を吸着する性質も指摘されています。魚介類を通じて人の体に入ることも考えられます。ただし、現在の摂取量で人の健康にどの程度の影響が出るかは、研究が続いている段階で、明確な結論は出ていません。

「危険だ」と断定することも、「問題ない」と言い切ることも、現時点では根拠が足りません。不安をあおるより、まず発生を減らす対策に取り組むことが現実的な対応です。

国際的な動き|海洋プラスチックごみ対策の現在地

海のごみは国境を越えて漂うため、国際的なルールづくりが進められています。ここでは、2026年10月時点で確認できる範囲をまとめます。

大阪ブルー・オーシャン・ビジョン

2019年のG20大阪サミットで、2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにすることを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が共有されました。環境省によると、多くの国・地域に共有されています。法的な拘束力はなく、各国の自主的な取り組みを促す枠組みです。「追加的な汚染をゼロ」とは、すでに海にあるごみの削減ではなく、これから新たに出る分をなくす目標です。

国際プラスチック条約の交渉

法的拘束力のある国際条約をつくる交渉は、2022年に国連環境総会の決議で始まりました。2025年8月にスイス・ジュネーブで開かれた再開会合(INC-5.2)でも、プラスチックの生産量の削減目標などをめぐって各国の意見がまとまらず、合意に至りませんでした。

2026年2月7日にはジュネーブでINC-5.3が開かれ、前議長の辞任を受けて、チリのフリオ・コルダノ氏が新議長に選ばれました。環境省の結果概要によると、この会合で実質的な交渉は行われていません。次回の再開会合の日程は調整中とされています。条約の発効まで、まだ道のりは長い状況です。

EUの使い捨てプラスチック規制

EUは、2019年の使い捨てプラスチック指令にもとづき、2021年7月3日から一部の規定の適用を始めました。ジェトロ(日本貿易振興機構)によると、代替品を手に入れやすい製品が対象で、綿棒の軸、カトラリー、皿、ストロー、マドラー、風船の棒、発泡ポリスチレン製のカップや食品容器などの市場流通が禁止されました。条約が停滞する間も、地域単位の規制は動いています。

日本の制度と、自治体・企業の実践

日本でも、制度、自治体、企業のそれぞれで対策が進んでいます。

制度|レジ袋有料化とプラスチック資源循環促進法

2020年7月にレジ袋が有料化されました。2022年4月1日には、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック資源循環促進法)」が施行されています。環境省の資料によると、飲食店や小売店、宿泊施設、クリーニング店などが無償で提供する、次の12品目が対象です。

  • フォーク、スプーン、テーブルナイフ、マドラー、飲料用ストロー
  • ヘアブラシ、くし、かみそり、シャワーキャップ、歯ブラシ
  • 衣料用ハンガー、衣料用カバー

事業者には、受け取りの意思確認、有料化、ポイント還元、軽量化、代替素材への切り替えなど、使い捨てを減らす工夫が求められています。コンビニや飲食店で「スプーンは必要ですか」と聞かれる場面は、この法律にもとづく取り組みの一つです。

自治体|企業と組んで「街の側」から減らす

環境省は「ローカル・ブルー・オーシャン・ビジョン推進事業」で、自治体と企業等が連携して海洋ごみの回収や発生抑制に取り組むモデル事業を支えています。令和6年度は、三重県度会町、兵庫県、奈良県生駒市と長崎県対馬市(共同申請)、愛媛県今治市の4自治体が選ばれました。

令和7年度は5自治体が決まり、その後1自治体が追加されています。環境省の資料には、宮城県東松島市(連携先にベガルタ仙台)や三重県度会町(連携先に住友電気工業)が掲載されています。内陸の自治体が加わっている点が特徴です。海から遠い地域も、川の上流として当事者になるという考え方がうかがえます。

企業|回収した漁網を製品に生かす

漁具の回収・再利用は、企業と漁業関係者が連携しやすい分野です。日本財団が立ち上げた「ALLIANCE FOR THE BLUE」の枠組みでは、回収された廃棄漁網を原料の一部に使った製品が出ています。コクヨは廃棄漁網を原料の一部にしたペンケースを発売しました。2021年には、漁網を回収する企業、再生ペレットをつくる企業、生地や部材を手がける企業、鞄メーカーが連携して、豊岡鞄の製品が生まれたと報じられました。2026年4月には、FUMIKODAが廃棄漁網由来のナイロンと、漁業用フロートを再生した人工皮革を組み合わせたバッグを発表しています。

こうした製品は、海のごみを直接なくすものではありません。回収した資源に出口をつくることで、回収活動を続けやすくする役割があります。買う側の選択が、その循環を支える一部になります。

海洋プラスチックごみをめぐる誤解と「次の疑問」

ここでは、読者が抱きやすい疑問に答えます。

生分解性プラスチックなら、海に捨てても大丈夫?

「生分解性」と表示された素材でも、分解に必要な温度や微生物の条件は素材ごとに異なります。環境や素材によっては、分解に時間がかかる場合もあります。そのため、海に捨てても安全という意味ではありません。「生分解性」の表示は、使用後にどう処理すべきかとセットで確認する必要があります。

分別してリサイクルに出せば、海には出ない?

正しく分別して出したプラスチックの多くは、収集・処理の過程で管理されます。ただし、収集日までの間に風で飛ばされたり、集積所から散らばったりすると、街に出てしまうことがあります。OECDによると、2019年の世界のプラスチック廃棄物のうち、約22%は管理されない処分や野焼き、環境への漏れ出しとなっていました。分別は大切ですが、「出す前に漏らさない」ことも同じくらい重要です。

日本のごみが海に出ているわけではない?

環境省の推計では、日本からも年間1万トンを超えるプラスチックが海に流出していると見積もられています。国内の海岸には、国外から漂着するごみもあれば、国内由来のごみもあります。環境省が「約8割が街由来」と述べているとおり、国内の街の状況も問われています。

一人の行動に意味はあるの?

意味はあります。街由来のごみが多いなら、街の暮らしを変えることが海への流出を減らす入り口になります。使い捨てを減らす選択、ポイ捨てをしないこと、地域の清掃に参加することは、その入り口にある行動です。

今日からできること|減らす・繰り返す・漏らさない

原因が街にあるとわかれば、行動の方向も見えてきます。ここでは、暮らしの中で試しやすいものを選びました。

減らす

マイバッグとマイボトルを持ち歩けば、レジ袋やペットボトルが減ります。飲食店でスプーンやストローが不要なら、断ります。プラスチック資源循環促進法の対象品目では、「いりません」と伝えること自体が、事業者の削減を後押しします。

繰り返し使う

詰め替え用の洗剤やシャンプーを選べば、ボトルのごみが減ります。壊れたら捨てる前に修理できないか考える、中古で買うといった選択も、プラスチックの量を抑えます。

漏らさない

分別ルールを守って出し、収集日の前にごみ袋を風で飛ばされないよう管理します。屋外のイベントや行楽でも、持ち帰りを徹底します。秋は行楽の機会が増える時期なので、使い捨ての容器が増えやすい場面ほど、持ち帰り用の袋を一枚入れておくと便利です。

街で拾う

川沿いや公園の清掃活動に参加すれば、海に出る前のごみを止められます。自治体や市民団体が開く清掃活動は、ウェブサイトの告知で探せます。

脱プラスチックの具体的な進め方は、次の記事にまとめています。

まとめ

海洋プラスチックごみの量は、世界で年間約800万トンとも、OECDの推計で最大610万トンともされ、資料によって違います。数字は推計であり、日本からの流出量も暫定値です。それでも、プラスチックは分解されにくく、環境にたまり続けるという方向性は変わりません。環境省は、海に流出するごみの約8割が街由来だと説明しており、原因は海に着く前の暮らしの場面にあります。

国際的には、2026年2月のINC-5.3で新議長が選ばれたものの、条約の実質的な交渉は止まっており、次回会合の日程は調整中です。一方、EUの使い捨てプラスチック規制や、日本のプラスチック資源循環促進法、自治体と企業の連携は進んでいます。国際ルールが固まるのを待たなくても、街での削減や回収は始められます。

まず1つだけ試すなら、次に飲食店で使い捨てのスプーンやストローを渡されたとき、「いりません」と伝えてみてください。

  • 世界の流入量は推計で、資料ごとに対象と方法が異なる
  • 海に流出するごみの約8割は内陸(街)由来とされる
  • 国際プラスチック条約は、2026年2月に新議長が選ばれたが交渉再開待ち
  • 日本では、プラスチック資源循環促進法の施行や自治体・企業の連携が進んでいる
  • 減らす・繰り返す・漏らさない・街で拾う、の4つが暮らしで試しやすい行動

参考文献

  • 記事を書いたライター
  • ライターの新着記事

ICU卒業後、出版社にて女性誌の編集・ライティングに約10年間従事。その後NPOや財団法人で機関誌の編集・執筆を担当するなかで、社会貢献・慈善活動についての知見を深める。米・ペンシルバニアに滞在経験があり、現地の人々の寄付活動の熱心さに感銘を受ける。得意分野は、SDGs、多様性、フィランソロピー。

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