2021年は戦後76年。世界で初めて原爆が投下された広島。広島市にある平和記念公園には、毎年多くの人が訪れて平和への祈りを捧げています。
広島市に本社を置く山本株式会社は、世界中から平和記念公園に送られた折り鶴を利用してレーヨン糸として再生しています。この記事では、山本株式会社のSDGsの取り組みをご紹介します。
山本株式会社とは
山本株式会社は、広島市に本社を置くタオル製品の企画製造、卸しを行っている会社です。タオル製品の他、寝装具、企業ユニフォームなどを生産しています。生産は主に、国内は今治工場、泉州工場、国外は中国とベトナムで行っています。
山本株式会社のSDGsの取り組み
山本株式会社は、タオルや寝具の製造・卸会社として培ったノウハウを活かしてさまざまなSDGsに取り組んでいます。山本株式会社が取り組むSDGsとはどのようなものでしょうか?
1. 折り鶴レーヨンプロジェクト(目標12,13,15,16,17)
世界で初めての被爆地である広島市。広島市にある平和記念公園には、世界中から平和への願いが込められた折り鶴が届けられています。折り鶴は、平和記念公園内の原爆の子の像に飾られています。
原爆の子の像に折り鶴が贈られるようになった理由
原爆の子の像は、2歳で広島にて被爆し、小学校6年生で白血病にて亡くなった佐々木禎子さんをモデルにしています。禎子さんは闘病中、病気の治癒を祈って千羽鶴を折りました。禎子さんは千羽以上の鶴を折ったものの、白血病が治ることはありませんでした。
のちに禎子さんの同級生が、禎子さんと被爆後に命を落としたすべての子どものために慰霊碑をつくることを市民に呼びかけます。多くの市民の賛同を得て、1958年5月に原爆の子の像が建立されました。禎子さんが千羽鶴を折っていたことにちなんで原爆の子の像に折り鶴が贈られるようになったのです。
原爆の子の像の周りに飾られたたくさんの折り鶴から、世界中でどれほど多くの人々が広島に心を寄せ、平和への祈りを捧げているかを知ることができます。
しかし、この折り鶴が環境問題につながる可能性があるとしたら、驚く人も多いのではないでしょうか。世界中から贈られる折り鶴の量は、年間およそ1,000万羽、重さにして約10トン。
以前は、折り鶴は飾った後に焼却していましたが、2002年に広島市長が焼却処分を中止しました。その後、折り鶴は保管倉庫にて保存されることになりましたが、折り鶴の量は年々増え続け、保管費用もかさんでいきました。これから折り鶴をどうするか議論されました。
折り鶴に関する問題は費用面だけではありません。再度焼却処分することになれば、折り鶴を焼く際に二酸化炭素が発生し、環境への負荷がかかってしまいます。地球温暖化がすすみ、脱炭素化が叫ばれる現代に適した処分方法とは言えません。
世界中の人々の祈りが込められた折り鶴を大切にしたいものの、保管を続けるのは難しい状況です。しかし、焼却処分するわけにはいないーー何か再利用する手立てはないかと広島市では試案が繰り返されました。
そこで山本株式会社は、折り鶴を再利用し、レーヨン糸として再生する方法でこの課題に挑みました。
折り鶴からどのようにしてレーヨン糸は作られるのでしょうか?
まず、回収された折り鶴を融解してパルプ化します。パルプにした折り鶴を溶解し、それを基にレーヨンわたを製造します。レーヨンわたと綿を混紡して糸にします。これで折り鶴による再生レーヨン糸が完成です。
出典元:折り鶴レーヨンHIROSHIMAの流れ|山本株式会社HP
山本株式会社はこの再生レーヨン糸を「折り鶴レーヨン糸」と名づけました。この再生レーヨン糸を使用してタオルやてぬぐい、Tシャツの製造に使用し商品化しています。
当初は広島市の平和記念公園の折り鶴だけを再生していましたが、現在は広島市の平和記念公園だけでなく、長崎市の平和公園や沖縄ひめゆりの塔に贈られている折り鶴も一緒に再生しています。
山本株式会社は、折り鶴に込められた世界中の人々の平和への願いを製品にカタチを変えて販売し、その売り上げの一部を平和国際交流費や原爆ドーム保存事業基金に寄付しています。折り鶴は再生レーヨン糸に生まれ変わることで、平和維持と地球温暖化防止のために役立っていると言えるでしょう。
2. ペットボトル再生糸の使用で環境保全に貢献(目標12,13,14,15)
山本株式会社は、ペットボトルの再利用にも力を入れています。適切に処分されなかったペットボトルは海に流れ着き、海洋汚染の原因になっています。山本株式会社は、ペットボトル再生糸を使用することで、プラスチック廃棄量の削減に取り組んでいます。
山本株式会社ではどのようにペットボトルの再利用を行っているのでしょうか?まず、回収したペットボトルのプラスチックを加熱してチップにします。そのチップを綿に加工し、紡績して再生糸にします。山本株式会社では、この再生糸を利用してタオル製品をつくることで、脱炭素化に貢献しています。
まとめ
平和への願いと環境保護。2つの世界の課題を、繊維事業で培ったノウハウを活かして取り組んでいる山本株式会社。ぜひ折り鶴レーヨン糸やペットボトルを再利用した山本株式会社の商品を手に取ってみてください。
今回ご紹介させていただいた山本株式会社のホームページはこちら