エシカル投資とは環境や人、地域社会に配慮した企業活動を行う企業に投資することや金融機関を通じてそのような企業を応援することです。欧米を中心に普及している新たな投資手法であり、従来の財務データを重視した投資手法とは異なります。
この記事ではエシカル投資や私達がエシカル投資を推進するためにできることについて考えます。
エシカル投資とは?
多くの人は、銀行預金にお金を預けるという形で貯金をしていると思います。
実は銀行預金も立派な投資行為です。
銀行は人々から預金という形で薄く広くお金を集めて、お金を必要としている企業に融通しています。
企業は融資されたお金を活用して、新しく工場を新設したり、事業を開始し、得られたキャッシュフローから銀行にお金を返済します。
したがって、多くの人は銀行を通じて、企業やプロジェクトに投資をしています。
エシカル投資は、従来の投資とどのような点が異なるのでしょうか?
従来は企業のキャッシュフローなどの財務情報や利益率に着目して、融資が行われてきました。
しかし、エシカル投資では人、地球環境、地域社会などに配慮した企業やプロジェクトに投資が行われます。
日本ではエシカル投資について知らない人も多いようですが、欧米では環境保護意識の高まりとともに一般的な考え方になりつつあります。
個人がエシカル投資推進のためにできること
エシカル投資の指標の一つとして、国連の持続可能な開発目標(SDGs)が参考になります。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2019年に東証一部上場企業を対象に実施したアンケートによれば、「SDGsへの取り組みを始めている」と回答した企業が45%、「SDGsへの取り組みを検討中」と答えた企業は39%を占めました。
しかし、金融機関や企業ではない個人がエシカル投資を推進するためには、どのようなことができるでしょうか?
エシカルバンクを選ぶ
最も簡単な方法は、エシカルバンクに預金を預けることです。
貯金をしている方のほとんどが銀行預金を利用していると思います。
銀行預金を利用する際には、エシカルバンクを利用することで個人単位でエシカル投資を推進することができます。
エシカルバンクとは預金者から預かった預金を環境や社会、人に配慮した企業やプロジェクトに投資している金融機関であり、従来の利益のみを追求する金融機関とは一線を画します。
エシカルバンクの多くは融資先や投資先を公表し、透明性を確保することで顧客の信頼獲得を図っています。
エシカル投資を推進している国際NGO組織「国際環境NGO350.org」は、化石燃料・原発関連企業との取り引きがないとされている「地球にやさしい銀行」へと銀行口座を乗り換えることを市民に呼びかける「レッツ、ダイベスト!」キャンペーンを展開しており、定期的に金融機関に対してアンケート調査を実施しています。
2018年に同NGOが地方銀行、ネット銀行、信用金庫、労働金庫などに実施したアンケート調査によれば、以下の15の金融機関が化石燃料および原発関連企業への投資・融資が無いことが判明しています。
・楽天銀行
・中央労働金庫
・中国労働金庫
・東海労働金庫
・東北労働金庫
・長野県労働金庫
・新潟県労働金庫
・北陸労働金庫
・北海道労働金庫
・沖縄県労働金庫
・九州労働金庫
・近畿労働金庫
・四国労働金庫
・静岡県労働金庫
さらに2行(楽天銀行、神奈川銀行)が「事業経営において気候変動問題とその影響への対策を取ることが必要」だと回答し、または13の労働金庫が「気候変動や環境に配慮した投融・融資判断を行っている」答えるなど、前向きな反応が得られています。
地球にやさしくない銀行と取引をしない
国際NGO組織「国際環境NGO350.org」は化石燃料や原発関連企業にお金を流す銀行を公表し、これらの金融機関から資金を引き揚げることを呼びかけています。
同NGOが公表している銀行との取引を停止することも、エシカル投資を推進することになります。
同NGOが公表している「地球にやさしくない銀行」は、以下のとおりです。
・みずほ銀行
・三井住友銀行
これらメガバンクは石燃料関連企業や原発関連企業に投資を行っており、「地球にやさしくない銀行」に分類されています。
ダイベストメントを公表している金融機関を選ぶ
ダイベストメントとは、投資している株式や債券、投資信託などの金融資産を引き揚げることや他社への融資を停止することを指します。
従来は企業価値向上の観点から不採算事業からの撤退を指す言葉でした。
しかし、近年では投資判断の際にESG(環境、社会、企業統治)を重視する考えが普及し、環境や社会に配慮しない企業やプロジェクトから資金を引き揚げることを指します。
金融機関によっては、ダイベストメントを公表しています。
例えば、アメリカのバンク・オブ・アメリカ、シティ・グループ、モルガン・スタンレー、ウェルズ・ファーゴなどは石炭からの投融資削減・撤退方針を公表しています。
日系の金融機関ではダイベストメントを公表している金融機関は見られませんが、先進国でダイベストメントの流れが続いていることから日本でも今後普及する可能性があります。
銀行預金をダイベストメントを公表している金融機関に預けることもエシカル投資の一つです。
まとめ
エシカル投資を通じて、個人単位で地球環境や社会に貢献することができます。
個人であっても、金融機関の選別によってエシカル投資を推進することができます。
一人ひとりの消費者の行動がエシカル投資を推進することになります。