児童労働問題は、日本を含む、世界中の国々や関連機関が取り組んでいる大きな課題です。
世界には1億6千万人もの児童労働者が存在しており、貧困問題や性的搾取に苦しむ子どもたちが数多くいます。
児童労働をなくすためには、さまざまな解決策を講じなければいけません。
今回は、児童労働とはなにか、児童労働の問題に対してどんな解決策や対策があるのかを考えてみましょう。
私たちのちょっとした意識や行動次第で、児童労働は減らしていけると気づく点も多いはずです。
【この記事で学べるポイント】
- 世界の児童労働の現状と児童労働が起きている原因
- 児童労働解決のために行われている世界の取り組み
- 私たちが児童労働解決のために貢献できること
そもそも児童労働とは?
解決策を知る前に、大前提として児童労働について知りましょう。
児童労働とは、義務教育に支障を及ぼす労働や、法律上禁止されている18歳未満の危険もしくは有害な労働のことを言います。子どもが働くこと全般を指すわけではありません。
たとえば、強制的に農場のコーヒー豆の収穫を任されて学校に通えない場合、児童労働と見なされるでしょう。
しかし学校には毎日通い、放課後に家業を手伝っている場合は、あてはまりません。
児童労働は「国連の子どもの権利条約」や「ILO(国際労働機関)の条約」で禁止されています。そして日本を始めとする世界中の国々が、これらの条約に批准しているのです。
児童労働の現状と原因とは
児童労働は、国際条約で禁止されています。それにもかかわらず、全世界の児童労働者は1億6千万人おり、子ども10人のうち1人は児童労働にあたると推計されています。
なぜ、児童労働はなくならないのか。その原因は、複数あります。
第一に考えられるのは、家計の貧しさです。発展途上国において、生産者たちの収入は低い上に不安定です。そのため、企業のコスト削減により収入が下がってしまえば、家計が逼迫し、子どもたちは働かざるを得ないのです。
また子どもたちを取り巻く環境自体も問題です。発展途上国では、いまだに「学校へ行ってもムダ」「女の子に教育は不要」「他人事だ」といった、児童労働を助長する考え方が染み付いているのです。
以上のように、児童労働をなくすことは、そう簡単ではありません。しかし、子どもの人権と未来を守るためにも、児童労働は世界中が国をあげて取り組むべき課題なのです。
児童労働をなくすための世界の解決策
実際に児童労働をなくすためにどんな取り組みをしているのか、解説しましょう。
ここでは下記の3つの組織・国を紹介します。
・国際労働機関ILO
・フィリピン・ガーナなどの諸外国
・日本
順番に詳しく解説していきます。
解決策①:国際労働機関(ILO)
国際労働機関ILOでは、児童労働撲滅のため、一貫性のある効果的な政策を打ち出し、良質な教育を提供することで、問題の解決を図っています。
子どもたちは、良質な教育を受けることで、高い知識や技能を習得できます。良質な人材に成長すれば、賃金が高くて安定した仕事に就け、結果的に家庭の収入は上昇するでしょう。
最終的には、国中に裕福な家庭が増え、国の経済そのものが豊かになる未来を目指せます。ILOは、他の国連専門機関と連携し、積極的に児童労働の解決に取り組んでいます。
解決策②:フィリピン・ガーナなどの諸外国
続いては、諸外国の取り組みを解説します。世界中の国々が児童労働の解決に当たっているものの、特にフィリピンとガーナは積極的な施策を打ち出しています。
ガーナでは「児童労働フリーゾーン制度」と呼ばれる施策を行っています。同制度は、児童労働問題に対して総合的なアプローチで解決するための仕組みです。この仕組みにより、児童労働がない地域、通称「児童労働フリーゾーン」を維持しています。
ガーナでは、政府と自治体が連携し、児童労働の撲滅・予防に当たっているのです。
またフィリピンでは、児童労働撲滅のため、社会保障制度に力を入れています。
医療を無料で受けられたり、無償で大学に通えたりできるなど、教育や医療環境が整っています。
結果、子どもたちは技術や能力を身に付けることができ、就学率も高まって、成人後には安定した仕事につけるのです。以上のように、諸外国では子どもたちの将来を見越して「人材的な価値」の向上に力を入れています。
解決策③:日本
最後に日本の施策を紹介します。日本国内における児童労働は、世界に見る「農林水産業」ではなく、「性的搾取によるサービス業」が大半です。売春や風俗店での性的搾取による児童労働は、一定数存在します。
そのため国内の児童労働は、労働基準法や性的搾取を防止する法律・条例などにより厳しい取締りが進められています。また、国内の貧困問題も無視できません。貧困により苦しんでいる家庭には、政府と自治体が連携して学業・福祉支援を行っています。
日本では、先述したガーナやフィリピンと違い、法律や条例によりコントロールしたり、給付金や割引を与えたりなど、直接的なアプローチに力を入れていると言えます。
さらに、日本の児童労働対策は、国内だけに留まらず、前述したガーナの「児童労働フリーゾーン制度」にも関わっています。日本は自国・他国問わず、児童労働の解決を図っているのです。
児童労働をなくすために私たちができること
最後に、児童労働をなくすために私たちができることを紹介します。
今回紹介するのは、下記の3点です。
①寄付・募金
②フェアトレード商品の購入
③児童労働を撲滅する運動に参加
児童労働をなくすためにも、国や関連機関が政策や制度を打ち出すだけでなく、国民一人ひとりが意識や行動により、支援していきましょう。
それでは、詳しく解説してきます。
①寄付・募金
NPOやNGOに寄付や募金を行うことで、間接的に児童労働をなくすことに貢献できます。
直接、海外に渡ることは難しくても、資金提供なら日本国内から協力可能です。
路上や広場で寄付や募金の呼びかけを見かけたら、気持ち程度でも良いので支援してみてはいかがでしょうか。
なお現在はWeb上でも受け付けている団体がたくさんあります。
②フェアトレード商品の購入
フェアトレード商品の購入を通して、間接的に児童労働をなくすことに貢献できます。
フェアトレード商品とは、生産から販売までの工程で、公平公正な貿易・取引であったことを示すものです。これらの商品を購入することで、開発途上国の生産者が搾取されない環境を支援できます。
日本国内でも「セブンプレミアム」を始めとする、多くの企業がフェアトレード商品を販売しています。日頃の買い物から、フェアトレード商品を示すラベルに注目し、購入を検討してみましょう。
③児童労働を撲滅する運動に参加
児童労働を撲滅する運動に参加する方法もあります。
直接現地に行くことは、現実的に難しいですが、現在はオンラインイベントも開催しています。
オンラインでの勉強会やバーチャルイベントに参加すれば、児童労働についてさらに理解を深めたり、自分ができる活動が見つかるかもしれません。
寄付や募金、フェアトレード商品の購入といった間接的な支援ではなく、直接的に関わって、より自分の力を発揮したい人は、挑戦してみましょう。
児童労働対策は小さな一歩から始めよう
最後に本記事のポイントをおさらいしましょう。
【まとめ】
・児童労働とは、義務教育に支障を及ぼす労働や、法律上禁止されている18歳未満の危険もしくは有害な労働のこと
・児童労働のなくすため、日本を含む世界中の国々や関連機関が、解決策を講じているものの、1億6千万人の該当者がいるのが現状
・私たちにできることは「寄付・募金」「フェアトレード商品の購入」「撲滅運動への参加」など
本記事で解説したように、児童労働問題は日本にとって無関係ではありません。いまこのときも、労働を強いられて、教育を受けられずにいる子どもたちが存在します。
そして児童労働を解決するためには、政府や関連団体だけでなく、私たち民間人の協力も不可欠です。まずは本記事でとりあげた「できること」から、少しずつ始めみてはいかがでしょう。