静岡県沼津市に位置する「循環ワークス」は、持続可能な社会を目指して、人々が経験や技術を共有し、モノの再利用を促し、地域コミュニティを育てるユニークな取り組みをしています。
今回は、地球環境に配慮したライフスタイルを実現するための取り組みについて、循環ワークス 工場長の山本広気さんに、MIRASUS編集部が聞きました。
コミュニティスペース「循環ワークス」とは?
ー事業内容・商品サービスを教えてください。
静岡県沼津市の我入道というエリアで「循環ワークス」という、環境に寄り添い「ヒト、モノ、コト」の循環を生み出すコミュニティスペースを運営しています。
「ヒト」の循環として、ヒトの経験や技術のシェアして、食・DIY・手仕事・パーマカルチャーなど、暮らしや季節にまつわる多様なワークショップをこれまで360回以上開催しています。「モノ」の循環としては、古物の回収と販売をしています。ゴミとして処分されるものを回収し、必要な人に引き渡す活動で、通常のリユースショップより安価に設定し、循環を促しています。そして、「コト」の循環として、ワークショップやリノベーションの共同作業など、同じ場を共有する体験を大切にしながら、人々の挑戦を応援する機会を作っています。
ーサービス名の由来を教えてください。
日々の暮らしの中で「もったいない」が、いつも頭をよぎっていました。地球を汚し続けている、という罪悪感にもとらわれていました。
江戸時代には、排泄物までをも循環させ、人にも環境にも負担なく、「モノ」と人が共存できていた時代があったのです。「モノ」があふれる現代、まだ使える「モノ」も、新しい「モノ」に買い替えたい、人に自慢したいなどという理由から、捨てられてしまう日用品や衣料品。それらは本当に「ごみ」なのでしょうか。
「使い捨て」ということばにも違和感を覚えます。生産して終わり。使い終わったそれらを処分するとき、その「モノ」の成分や性質は、環境に配慮したものとは思えません。
「使う」ことに特化した「モノ」だらけで、「その後」についてまで考えて作り上げられたものは数少ないのが実状です。つまり「一方通行」な世の中なのです。
そこでわたしは、家族という最小単位で、環境に配慮した生活を始めました。電気は自給し、「天ぷら油(廃油)」で車を走らせ、古民家に住み、薪をくべて暖を取ること、無農薬で野菜を作ることなどです。
しかし、わたしたち家族だけでは、地球の環境を変えることは到底できません。わたしたちが住んでいる地球への責任は、わたしたちがとらなければなりません。まずはその問題を多くの人に知っていただき、だれもが「できることがある」という認識を広めていくことが、わたしの役目だと思うようになり、この工場での活動を始めました。
わたしたちは、一方通行の矢印をぐるっと回し、「循環」させたい想いで、この工場を経営しています。「いらない」「使わない」という「モノ」を受け取り、違うかたちで販売し、その「モノ」の第2のストーリーを作り出します。
また、たくさんの人が出入りする中で、次の人生や仕事につなげられるような、橋渡しもしていきます。自然や、様々な人と共存できる、持続可能な生活を、みんなでめざしたいと思っています。
貨幣経済に頼らない「助け合い=ギフト経済」
ー事業を始めたきっかけを教えてください。
20代から9年ほど、ワーキングホリデーでオーストラリア、映像を勉強するためにアメリカ、その後、南米、中国、東南アジアなど世界各国を旅していました。旅先で目にしたのは、街にはプラスチックゴミが溢れ、劣悪な環境下で、貧しい生活をしている多くの人々。もう一方で、先進国では、環境問題を感じさせない様な一見キレイな環境下で、たくさんのモノに溢れ、大量に消費している人々が暮らしていました。そんな、両極端な2つの世界を目にして、現代社会の生活に違和感を覚えるようになったのです。
2010年に、旅の途中で出会った真紀と結婚しましたが、そんな時に起きたのが、東日本大震災でした。スーパーやコンビニからは食料品や物品が無くなり、電気が自由に使えない。自然災害により、人々がたちまちパニックに陥る、誰かが供給している仕組みに過度に依存していることにショックを受け、持続可能な生活をしていくことを決意しました。
いまは、沼津市近隣の函南町で、古民家を改修し、電気を自給し、無農薬で野菜を作り、暮らしています。
多少、人間が不便になっても、環境に負荷を与えないことを優先していく。それは、難しいことではなく、大変なことでもなく、ほんの少しでも、誰もが、地球環境のためにできることがある、ということを広めたいと思って『循環ワークス』を運営しています。
ーサステナビリティや社会課題解決のための取り組みを教えてください。
ゴミとして捨てられるものを減らすことや、「循環ワークス」の工場も廃工場をDIYでリノベーションすることで使われなくなった地域資源の活用に取り組んでいます。
活動は多岐に渡りますが、大事にしているのは、人とのつながりです。地域での農家・アーティスト・飲食店など様々な人との関係を大切に、貨幣経済に頼らない「助け合い=ギフト経済」を生み出し、活動を継続していける関係性が育まれています。
また、中高生の社会科見学の受け入れや、沼津市行政との取り組み、講演活動も行い、地域外への社会貢献も担っています。
ー環境に優しい点があれば具体的に教えてください。
2020年、工場の準備を始めて以来、一度も、既存の電力会社と契約をせず、店内の電力は100%自家発電でまかなっています。太陽光発電に使用するパネルとバッテリーも、リユースのものを再利用しています。
また、エネルギーや資源もできるだけ自給しています。バイオディーゼルではなく廃油を自作の濾過機で濾過しそのまま使用する「天ぷら油カー」で古物の回収を行っています。店内の電力が太陽光パネルだけでは足りない場合、この廃油も活用しています。冬場の暖房は、廃材となる薪を活用し、電力以外のエネルギー再生も行っています。また、井戸水を古物の洗浄に利用したり、雨水タンクで屋上ガーデンの水やりに活用するなど、万一のときに、ライフラインがストップしても、自立して生き残れる場所を目指しています。
循環ワークスのこれから
ー現在注力している取り組みがあれば教えてください。
工場の大規模改修のためのクラウドファンディングを行っています。集まった資金では、工場を維持するために必要な火災報知器の設置や、現在仮設トイレしかないため洋式トイレの設置などをしたいと思っています。
1月16日までになるので、ぜひページをご覧いただき、ご支援やシェアのご協力をお願いいたします!
▼ 循環ワークス クラウドファンディングページ
「→」一方通行を「◯」に。みんなで大規模改修して、循環する世界をもっと広げたい!
ー独自性や他社との違い・ユニークな点など教えてください。
工場内のコミュニティスペースで、様々な人の考えに触れるコミュニケーションの場作りや、「チャレンジランチ」「投げ銭ライブ」などで、地域のこどもから大人までたくさんの人の「やりたい」を応援する機会を作り出しています。
ー事業に対する想いを教えてください。
「自分が何も取り組まずに、次の世代に地球環境の問題を残して良いのか?」そんな想いから、これまで20校以上の中高生の社会科見学の受け入れや、地元の中学校で講演を行ってきました。
食材やモノを買い、電気を使う暮らしが、当たり前なのか?疑ってみてほしい。この先の社会を担う、こどもたちに、じぶんが望む生き方や、しあわせについて考えてもらうことが、環境問題を良くすることに繋がると思っています。
ーMIRASUSの読者にお伝えしたいことはありますか?
木曜日から日曜日までの週4日間、10時から16時まで工場を解放していますので
ぜひ一度遊びに来て雰囲気を体感してほしいです。
最新情報などはinstagram @junkanworksで発信しています。
ー今後の事業方針を教えてください。
豊かな生き方の選択肢を発信する唯一無二の「ヒト、モノ、コトの循環工場」 になることを目指しています。
目標は「知らない内に自然環境に負荷を与える事、地球環境の問題を知らない人をゼロにすること、地球環境の問題を誰しもが考えている世界を作ること」です。
ー今回はお話を聞かせていただきありがとうございました。
▼ 今回活動をご紹介した「循環ワークス」のホームページはこちら
https://junkanworks.com/