現代社会は、さまざまな人が集まり生活しているため、考え方や価値観の違いなどによって問題が発生することもあります。
その1つが「人種差別」です。
2020年にも、白人警察官の差別的な行動によって、黒人男性が死亡する事件がアメリカで発生しています。
そして、この事件は世界の人々が「blm運動」を知るきっかけにもなりました。
本記事では、blm運動の歴史やSDGsとの関係性、blmをサポートするために個人にできることなどを紹介します。
まずは、blmについて知りましょう。
blmとは
blmとは、アフリカ系アメリカ人のコミュニティが中心となり始まった、人種差別抗議運動「Black Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター)」の略です。
主に、黒人に対する構造的な人種差別や暴力に抗議することを目的としています。
blm運動の歴史
blm運動は、何をきっかけに誕生したのでしょうか。
続いては、blm運動が誕生するきっかけを歴史と共に確認していきますしょう。
きっかけは2012年にフロリダで発生した事件
blmが誕生したのは、2012年の2月。
フロリダ州で発生した、白人警察官による黒人少年射殺事件がきっかけです。
武器をいっさい所持していない黒人少年を、白人警察官が射殺したにもかかわらず、無罪判決がくだされたのです。
この時、全米各地では、「人種差別だ」と判決に対する批判の声が上がり、多数の抗議デモが発生しました。
そのためblmは、「警察官による、黒人への差別や暴力に対して戦う」という意味も込められています。
相次ぐ白人警察官による黒人への過剰な暴力
2012年の事件以降も、白人警察官の過剰な暴力によって黒人が死亡する事件が相次ぎました。
2014年の7月にはニューヨークで、翌月にはミズリー州ファーガソンで白人警察官による過剰な暴力や銃撃によって黒人が死亡しています。
そして2020年5月には、blmが世界に広まるきっかけとなる事件が発生しました。
ミネソタ州ミネアポリスで、黒人男性のジョージ・フロイド氏が、白人警察官から首を膝で押さえつけられ死亡したのです。
当時の様子はSNSにも投稿され、事件に対する抗議運動は全米から世界へと広がっていきました。
参照元:
・「ブラック・ライブズ・マター」とは?|大阪同和・人権問題企業連絡会
・フロリダの黒人少年殺害事件に無罪判決|CLAIRニューヨーク事務所
・米国の黒人が直面する構造的差別 ―行政・教育関係者に対する監査調査より―|東京財団政策研究所
blmをサポートする動きが各業界でも起きている
近年は、世界中に広まったblm運動をサポートする動きが、さまざまな業界で見られます。
スポーツ業界
テニスプレイヤーの大阪なおみ選手は、2020年に行われた全米オープンの各試合で、人種差別に遭った黒人被害者の名前がプリントされた黒のマスクを着用。
人種差別への抗議と、blm運動を支持することをアピールしました。
音楽業界
音楽業界では、2020年6月2日に「ブラック・アウト・チューズデー」という、黒人コミュニティの結束を示すストライキを行いました。
このストライキは、大手音楽レーベルを筆頭に多くの企業や個人も参加しています。
その他にも、黒人ラッパーのジョイ・Z氏は、ジョージ・フロイド氏が白人警察官に殺害された事件について、ミネソタ州の県知事と会談しました。
参照元:Black Lives Matter運動で音楽業界がストライキ、ジェイ・Zは州知事に直談判|FRONTROW
ファッション業界
ファッション業界では、黒人デザイナーのステラ・ジーン氏が、デザイナーズグループ「We are Made in Italy(WAMI)」を創設。
ファッション業界で起きている、黒人に対するあらゆる差別の根絶を目指します。
WAMIの創設以外にもファッション業界では、「マイノリティに配慮したチーム作りを行う」と発表するブランドが増えました。
ショーのランウェイを歩くモデルも、白人以外のモデルの割合が増加しています。
参照元:BLM支持から1年、ファッション界はどう変わった?|FIGARO.JP
このように、さまざまな業界がblmに賛同しています。
しかし、なかには、blmへのサポートを表明しているが、黒人の雇用比率や役職に就く黒人の割合が圧倒的に少ないなど、行動が伴っていない企業も存在するようです。
そのため企業には、表明だけではなく、行動が伴ったサポートが求められています。
blmをサポートするために私たちにできること
日本も多くの外国人が暮らしているため、人種差別は他人ごとではありません。
「自分ごと」として受け止め、「私たち個人にも、何ができるか」を考えることが大切です。
続いては、blmのために個人にもできるアクションを3つ紹介します。
blmに関する団体のサイトやSNSを見る
まずは、blmについて知ることから始めましょう。
下記の公式サイトや、日本でblmについて発信している団体のサイトなどを覗いてみてください。
・Black Lives Matter
・Japan in Solidarity
・HANSON
またSNSでは、「#Black Lives Matter」や「#BLM」などで検索すると、人種差別に関する投稿を確認できます。
映画や書籍を見る
人種差別を題材にした映画や書籍もあります。
映画は、ストーリー形式になっているうえに映像のため、文章より理解しやすいでしょう。
書籍は、自分のペースで読み進められる点がメリットです。
まとまった時間を確保しにくい人は、書籍を選ぶと良いでしょう。
人とblmについて話す機会をつくる
公式サイトや書籍などを活用しblmへの理解を深めたら、友人や会社の人に話してみましょう。
blmを広めるきっかけにもなり、自分以外の意見を聞くことで新しい気づきや考え方に出会えます。
ここまでは、blmの歴史や個人にもできるアクションなどについて説明しました。
続いては、blmとSDGsの関係性について触れていきます。
blmとSDGs目標10の関係性
SDGsとは、「Sustainable Development Goals」の略であり、2015年に開催された国連総会にて、193の加盟国が賛同した国際目標です。
日本では、「持続可能な開発目標」とも呼ばれています。
そしてSDGsは、世界中で起きている、環境・社会・経済の課題を解決するために、17の目標と169のターゲットが設定されました。
地球上に暮らす全員が協力して、2030年までにすべての目標達成を目指します。
SDGsについて理解したところで、続いてはblm運動とSDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」との関係性を確認していきましょう。
目標10「人や国の不平等をなくそう」
目標10はその名の通り、人や国の間で起こる経済格差や人種差別など、あらゆる不平等を少なくするための目標です。
10個のターゲットが設定されており、そのなかでもターゲット10.2には、
2030 年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々のエンパワーメント及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。
と記されています。
そのため、ターゲットの中でも特にblm運動と関係の深い内容といえるでしょう。
そして、このターゲットの達成には、多くの人がblm運動に対して関心を持ち、自分ごととして考え、行動することが鍵となります。
とはいえ、「blm運動への参加は、ハードルが高い」と感じる人も多いでしょう。
SDGsは「無理のない範囲で、自分ができることを続ける」ことが大切です。
そのため、まずはblmについて知ることから始めてみましょう。
まとめ
2020年に発生したジョージ・フロイド氏の事件によって、世界中に広まったblm運動。
地球上に暮らす人間は、全員が平等な立場にあるはずです。
私たちは、外見や宗教・学歴などによって、優劣をつけたり差別したりすることが許される世の中を変えていかなければいけません。
その一歩として、まずは人種差別やblmについての知識を深めましょう。
blmの歴史について調べ、どのような団体がサポートしているのか、現在の状況などを確認してみてください。
知ることによって、何かアクションを起こせるかもしれません。