第二次世界大戦後、日本は目まぐるしい発展を遂げてきました。
しかし、暮らしや経済が豊かになっていく反面、地球環境の悪化や天然資源の減少なども起きています。
そのうえ新型コロナウイルスの襲来もあり、私たちは「戦後つくりあげたシステムを、これからも使い続けるべきなのか?」と疑問をもちはじめました。
そこで注目されたのがグレート・リセットです。
本記事ではグレート・リセットの注目理由やSDGsとの関係性をまとめています。
まずはグレート・リセットとは何か知りましょう。
グレート・リセットとは?
グレート・リセットとは、今ある金融・社会経済など、すべてのシステムを一度リセットし、構築し直すことです。
現在のシステムは第二次世界大戦後から使われていますが、令和に突入した現代では時代遅れとなり経済システムも衰退しつつあります。
その衰退を防ぎ、持続可能で公平な世界経済をつくりあげるために、グレート・リセットは必要な考え方と言われているのです。
「ダボス会議」のテーマにも選ばれた
2021年5月に開催予定であった世界フォーラム(WEF)の「ダボス会議(※)」では、グレート・リセットがテーマに選ばれています。
残念ながら新型コロナウイルスの影響によりダボス会議は延期になりましたが、グレート・リセットに対して世界が注目する良いきっかけとなりました。
そして翌年に、オンラインで行われた「ダボス・アジェンダ2022」では、岸田総理大臣もグレート・リセットについてスピーチの際に触れています。
ここまでは、グレート・リセットについてお伝えしました。
続いては、なぜ今注目されているのかを詳しく見ていきましょう。
(※)ダボス会議:世界フォーラム(WEF)の年次総会。環境や世界経済など幅広い分野の中からテーマを決め話し合う。
参照元:
・グレート・リセットで変貌するコロナ後の世界と経済 ステークホルダー資本主義の観点から展望する【前編】|HITACHI HP
・ダボス・アジェンダ 岸田総理大臣によるスピーチ|外務省
グレート・リセットが注目されている理由
グレート・リセットが注目されるようになった理由は、大きく分けて3つあります。
①新型コロナウイルス
先述しましたが、現在の金融・社会経済システムは第二次世界大戦後から使われており、相当な年月が経っています。
同時に、時代が進むにつれて新しい課題も生まれ、これまでのシステムでは対応が難しくなってきました。
そこに新型コロナウイルスも襲来し、深刻な経済危機に陥ります。
多くの暮らしや人命が犠牲となり、他国間の交流も制限され孤立。
この危機的な状況に、システムをつくり直さなければいけないと気づいたのです。
②雇用市場の変化
業務の自動化や技術の発展は、効率化につながります。
しかしその裏では、必要ではないと判断された職業の人々が解雇され、失業に追い込まれているのです。
また近年は、新型コロナウイルスによる失業者も少なくありません。
現状を改善するためには、失業者の支援やグレート・リセットによる社会システムをつくり直すことが必要と言えるでしょう。
③環境問題
近年、気候変動による地球温暖化や異常気象など、環境問題が世界的に深刻化しています。
これまでの社会システムは、環境のことを考えずに構築されていました。
その結果、目まぐるしい技術の発展により私たちは便利な暮しを手に入れましたが、自然環境を犠牲にしたのです。
このままグレート・リセットを行わずにいると、環境問題はさらに悪化するでしょう。
グレート・リセット実現のために必要な3つの項目
グレート・リセットが何故注目されているのかを理解したところで、続いては実現のために重要な3つの項目を見ていきます。
①より公平性のある市場の実現
グレート・リセット実現に向けて、より公平性のある市場を目指していかなければなりません。
そのためには、政府が先頭に立ち、進めていく必要があるのです。
具体的には、税制や財政政策・貿易の取り決めの改善などが挙げられます。
また国によっては、
・富裕税の変更
・化石燃料補助金の廃止
・知的財産権
・貿易
・競争を管理する新たなルート
などが含まれています。
②新しく拡張された投資プログラムの活用
2020年5月に行われた欧州議会の本会議にて欧州委員会は、経済回復支援のために7,500億ユーロ(約92兆円)を借り入れる計画を発表しました。
また、日本や米国・中国でも欧州と同様に大規模な景気対策に向けた基金が用意されています。
世界経済フォーラムは、これらの資金や民間企業・年金基金からの投資を、「長期視点で、より弾力性があり、公平で、持続可能な新しいシステムを作るために使おう」と述べています。
例えば、
・「グリーン」な都市のインフラ構築
・ESG(環境・社会・ガバナンス)指標の実績向上に向けてインセンティブを産業界に与える
などが挙げられます。
③各専門分野を超えた協力と革新
第4次産業革命(※)のイノベーションを活用し、公共の利益に取り組むことも重要です。
そして公共の利益の中でも、健康と社会課題に取り組むことに重点を置いています。
新型コロナウイルスによって、さまざまな被害がでていますが、企業や大学・研究機関・病院など、異なる分野の人々が力を合わせ、
・診断方法や治療法の開発
・ワクチンの開発
・検査センターの設立
・感染症を追跡システムの構築
・遠隔医療の提供
などを行っています。
これらは、異なる分野の人々が協力しあったからこそ実現しました。
そして「異なる分野同士が協力する」ことをほかの分野でも同様にできれば、より良い未来につながるでしょう。
(※)第4次産業革命:IoT(モノのインターネット)やAI・ビッグデータを用いた技術革新。これまで不可能と言われていた、複雑な作業や単純労働の自動化などを実現しました。
参照元:
・「グレート・リセット」の時|世界経済フォーラム
・EU、経済回復を支援するために7,500億ユーロを借り入れる計画を発表|CNBC
グレート・リセットとSDGs
グレート・リセットを行うことで社会経済や環境など、さまざまな問題の改善に繋がります。
その結果、SDGsの目標達成にも貢献するのです。
まずはグレート・リセットとSDGsの関係性に踏み込んでいく前に、簡単にSDGsについておさらいしましょう。
SDGsとは
SDGsとは、Sustainable Development Goalsの略です。
2015年に開催された国連総会にて誕生しました。
日本では「持続可能な開発目標」とも呼ばれています。
国際目標であるSDGsは、2030年までに地球上で起きている環境・経済・社会の問題解決を目指し、17の目標と169のターゲットが設定されました。
グレート・リセットはSDGsの目標達成に貢献
グレート・リセットによって金融・社会経済システムを新しく構築すると、環境や雇用など今まで対応しきれずにいた課題の解決につながります。
そして、最終的にSDGsのさまざまな目標達成にも貢献するのです。
目標13「気候変動に具体的な対策を」を例に挙げてみましょう。
これまでの日本は、利益優先のシステムになっていたため、地球環境に多大なる被害を及ぼしてきました。
化石燃料を大量に使用したり排気ガスを出しながら長距離を移動したりと、地球温暖化の原因である二酸化炭素を大量に排出していたのです。
これ以上の悪化を防ぐためにグレート・リセットを行うことで、二酸化炭素の排出量が減少し地球温暖化の防止にもつながります。
そして、目標13の達成にも貢献するのです。
まとめ
第二次世界大戦後つくられた日本の社会・経済システムは、時代が進むにつれ、現代が抱えている課題への対応が難しくなりました。
同時に、新型コロナウイルスの流行やダボス会議のテーマとなったこともあり、グレート・リセットが注目されるようになります。
地球環境に優しく、異なる立場の人々が格差なく暮らせる経済システムを構築することで、誰一人取り残さない世界の実現にもつながるでしょう。
私たち個人もグレート・リセットについて学び、今後世の中がどのように動いていくのか理解する必要があります。
「社会全体で起こること=自分ごと」と考え、興味をもち、知ることから始めてみましょう。