SDGsの実現に向けて、避けては通れないのがゴミ問題。
ゴミ問題は、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」、目標13「気候変動に具体的な対策を」、目標14「海の豊かさを守ろう」に特に関連が強く、誰もが関わる問題がゆえに一人ひとりの心がけが重要である課題です。
ゴミ問題を解決するためには、ゴミの排出を減らすことはもちろんのこと、排出してしまったゴミをいかにリサイクルできるかも大きな鍵を握ります。
中でもプラスチックゴミは環境への影響も大きく、特にリサイクルが必要とされるものです。
本記事では、プラスチックのリサイクル方法の1つである「ケミカルリサイクル」に注目し、詳しくご紹介します。
プラスチックの3つのリサイクル方法
プラスチックのリサイクルには、3つの方法があります。
・マテリアルリサイクル
・ケミカルリサイクル
・サーマルリサイクル
それぞれ簡単に概要を解説します。
方法①:マテリアルリサイクル
マテリアルリサイクルは「材料リサイクル」とも呼ばれ、プラスチックを再生利用することを指します。
具体的には、使用済みのペットボトルをリサイクル工場にて再生原料にし、新たなペットボトルに生まれ変わらせたり、繊維化させて衣類など全く別のものを生み出したりする例が挙げられます。
私たちがイメージする最も一般的なリサイクル方法に近いでしょう。
方法②:ケミカルリサイクル
ケミカルリサイクルは、プラスチックを原料・モノマー化、高炉還元剤、コークス炉化学原料化、ガス化、油化などをした上で再生利用することです。
従来のマテリアルリサイクルでは、ペットボトルを新たなペットボトルに生まれ変わらせることは困難でした。
なぜなら、一度使われたペットボトルは衛生面や匂いの観点から、飲食向けのボトルの原料には適さないとされていたからです。
その点、ケミカルリサイクルでは、プラスチックを化学的に分解し、新たな原料にすることで再度ペットボトルを生み出すことを可能としました。
こうした経緯もあり、2004年からは「ボトルtoボトル事業」が推進されています。
方法③:サーマルリサイクル
サーマルリサイクルは、ごみを焼却する際に発生する熱を利用して発電するなど、焼却熱をエネルギー源として再利用するものです。
また、発熱量が高く燃焼性の良いセメント焼成用燃料として廃棄物を効率的に利用するセメント原・燃料化もサーマルリサイクルの一例です。
廃プラスチックを古紙と混ぜ合わせ、石炭やコークスなどの化石燃料の代替として活用するなど、新たな技術も次々に生まれています。
ケミカルリサイクルのメリット
プラスチックの3つのリサイクル方法をご紹介しましたが、ケミカルリサイクルのメリットはどんな点にあるのでしょうか?
メリット①:異物や汚れに関わらずリサイクルが可能
ケミカルリサイクルは高温での熱分解や化学的な分解を行うため、異なる種類のプラスチックが混在していたり、異物や汚れが付着していてもリサイクルが可能です。
この点は、マテリアルリサイクルとの違いとも言えます。
メリット②:CO2の排出量削減につながる
先述のとおり、使用済みペットボトルの再生が可能になると、新たに原油からペットボトルを作る場合に対して、製造過程で発生するエネルギーやCO2排出量が大幅に削減することができ、環境負荷の軽減につながります。
メリット③:限りある資源を守ることができる
ケミカルリサイクルでは、プラスチックを化学的に分解し、水素、メタノール、アンモニア、酢酸などの化学物質となり、製鉄工程で使用する高炉の還元材や燃料油などに活用されます。
廃プラスチックを活用することで、限られた資源を守ることができるのです。
ケミカルリサイクルのデメリット
一方、ケミカルリサイクルにもデメリットはあります。
主なデメリットを2つご紹介します。
デメリット①:分別を徹底する必要がある
ケミカルリサイクルは、廃プラスチックを原料化する工程において、プラスチック以外の異物の混入は避けなければなりません。
異物によって機械の損傷や品質劣化につながり、余計なコストがかかる可能性があるからです。
ケミカルリサイクルを実行するために、一人ひとりがより高い意識でゴミの分別を行う必要があります。
デメリット②:コストが高くなる
ケミカルリサイクルだけではなく、リサイクル全般に言えることではありますが、リサイクル工程では必ず作業コストや人件費が発生します。
コストが高くなってしまえばリサイクル活動を継続させにくくなるため、なんらかの措置で新品と再生品のコストのギャップを埋める工夫が必要になるでしょう。
企業の取り組み
ケミカルリサイクルに可能性を見出し、化学系企業の連携が進んでいます。
例えば2019年11月には、三菱ケミカルとJXTGエネルギーが、有限責任事業組合(LLP)を設立し、ケミカルリサイクルの技術検討を開始しました。
積水化学工業と住友化学もケミカルリサイクルの社会実装に向けた連携を図り、さらに住友化学は室蘭工業大学との共同研究を行っています。
ケミカルリサイクルを始め、ゴミ問題は個人にできることには限界があり、企業の積極的な取り組みは欠かせません。
大企業を中心にこうした動きが出てきていることは大きな前進と言えるでしょう。
参照元:【社説】ケミカルリサイクルで企業提携進む|化学工業日報
リサイクルを通じてサステナブルな社会を実現しよう!
サステナブルな社会を実現するために、私たちは今ある技術を駆使し、限りある資源を守りながら生活を営む必要があります。
今回ご紹介したケミカルリサイクルは、リサイクルの新しい可能性を切り拓く、画期的な手法です。
なるべくゴミを発生させない、しっかりと分別を行うといった一人ひとり心がけとともに、企業や地方自治体と連携した大きな仕組みづくりが求められています。