食べられるのに捨てられる食品、使われ続ける使い捨てプラスチック。どちらも長年にわたって課題とされてきた問題ですが、2025年度から2026年にかけて、国内外の政策や企業の取り組みに新たな動きが相次いでいます。日本の最新の統計や政策目標の改定、そして民間企業による再資源化の実証プロジェクトまで、注目の動向を整理します。
令和5年度の食品ロスは約464万トン|目標達成へ新たなフェーズへ
環境省・農林水産省・消費者庁は、令和5年度(2023年度)の食品ロス量を約464万トンと推計し、公表しました。内訳は家庭系が約233万トン、事業系が約231万トンで、ほぼ半々という状況です。
直近の数値として比較すると、令和4年度(2022年度)の食品ロス量は472万トンで、このうち事業系食品ロス量は236万トン
でした。
2000年度比で2030年度までに半減するという事業系削減目標を、2030年度目標の8年前倒しで達成していました。
令和5年度はさらに削減が進み、減少傾向が続いています。
国民一人あたりに換算すると、年37キログラム
(1日あたり約101グラム)の食品を捨てている計算になります。数字で見ると改善が続いていますが、依然として無視できない水準です。
こうした状況を受け、政府は目標自体を引き上げました。
食品ロス削減推進法に基づく「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針」(令和7年3月25日(火)に閣議決定)において、家庭系食品ロスについては2000年度比で2030年度までに半減(2030年を待たずに早期達成)、事業系食品ロスについては2000年度比で2030年度までに60%削減することの目標が定められており、これらの削減目標の達成を目指し、総合的に取組を推進することとされています。
なお、記事原稿にあった「農林水産省や環境省は、事業者を対象に、納品期限の緩和や未利用食品のフードバンクへの提供、賞味期限の表示を『年月日』から『年月』にする工夫なども努力義務として課す方向で検討が進められています」という記述は、この基本方針がすでに閣議決定済みであるため、該当部分の表現を事実に即して以下のとおり改めます。
食べ残しを持ち帰る「mottECO」とフードシェアリングの広がり
政策の変化と並行して、消費者が参加しやすい取り組みも広がっています。
環境省は「食品廃棄ゼロエリア創出モデル事業」等を通じて、外食時の食べ残しの持ち帰り(mottECO)や飲食店・小売店等におけるフードシェアリングをはじめとした取り組みを支援しています。
「mottECO(モッテコ)」は飲食店での食べ残しを消費者自身が自己責任の範囲で持ち帰る行動を指します。全国的な普及に向けて、ポスターやステッカーなどの啓発資材も整備されています。
企業のプラスチック再資源化|三菱ケミカル×三菱UFJ銀行の試み
プラスチック削減の分野でも、2026年3月初旬に注目の動きがありました。三菱ケミカルは、三菱UFJ銀行およびリファインバースグループと、オフィスから排出される使用済みプラスチックの再資源循環に向けた覚書を締結したと発表しました。三菱UFJ銀行日本橋別館で発生する使用済みプラスチックをリファインバースが回収・一次加工し、三菱ケミカル茨城事業所のケミカルリサイクル設備で油化、ポリプロピレン(PP)樹脂として再生した上で、三菱UFJ銀行行員向けの社員証カードホルダーとして再活用するというものです。CO₂排出削減量については30%以上が期待されているとされています。
オフィスから排出されるプラスチックをそのビルで働く人のアイテムに生まれ変わらせるという、閉じたループでの資源循環の実証事例として注目されます。
また、三菱ケミカルとポーラ・オルビスグループのポーラ化成工業は共同で、異なるプラスチック材質を分離する容器技術を開発したと発表しました。使用済み容器を水に浸して攪拌するだけで材質ごとに分離することが可能になる技術で、多層包装のマテリアルリサイクルが難しいという業界課題の解決に貢献するとしています。
EU規制と国際プラスチック条約|世界の潮流が日本企業にも波及
世界的な法規制の流れも加速しています。EUが定めた「PPWR(包装・包装廃棄物規則)」については、2025年に正式発効し、2026年から段階的な適用が始まるとされています。リユース可能な包装材の比率目標や不必要な包装の制限、再生プラスチックの使用率目標などが具体的に定められているとされています。
日本企業がEUへの輸出製品に使う包装材も対象となるため、国内の製造業にも直接的な影響が及ぶ可能性があります。
国際的な枠組みづくりも進行中です。国連は2022年から政府間交渉委員会(INC)を設置し、プラスチックのライフサイクル全体を対象とした「国際プラスチック条約」の協議を進めています。2024年11月には韓国・釜山でINC-5.1が実施されましたが最終草案への合意には至らず、2025年にスイス・ジュネーブでの「INC-5.2」での条約案の最終調整と合意が目指されているとされています。また、日本でも2025年の改正により、プラスチックの最終処分だけでなく、処分工程や各工程での処分量なども報告義務項目に追加されることが決まり、2026年から順次施行される予定となっているとされています。
私たちにできること
政策・企業の動きが進む一方で、日常の選択も変化を後押しします。賞味期限の近い商品から選ぶ「てまえどり」の習慣、食べ残しをmottECOで持ち帰ること、詰め替え製品やリユース容器を選ぶこと——こうした一つひとつの行動が、データとして集計され、政策の根拠にもなっていきます。
食品ロスもプラスチックも、「ゼロにする」という目標は高く険しいものの、技術・制度・消費者意識の三つが同時に動き始めているのが2026年の姿です。身近な一歩から、この流れに加わってみましょう。

