食品ロスとは、本来は食べられるのに捨てられてしまう食品のことです。令和5年度(2023年度)の国内発生量は約464万トンでした。2026年6月30日に農林水産省と環境省が公表した令和6年度(2024年度)の推計は約461万トンで、3万トン減っています。国は2025年3月25日に変更した「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針」で、事業系食品ロスを2030年度までに2000年度比で60%削減する目標を掲げました。この記事では、最新の数字と「60%削減」までの距離を確認します。あわせて、食品の現場の動き、そして包装にも関わるプラスチック規制(EUのPPWR、国際条約の交渉、日本の法律)の現在地をたどります。
食品ロスは464万トンから461万トンへ|最新推計の読み方
2026年10月のいまは、食品ロス削減推進法が定める「食品ロス削減月間」にあたります。10月30日は同法で「食品ロス削減の日」とされています。まず、直近の推計値が何を示しているかを確認します。
令和6年度は約461万トン、前年度より3万トン減
環境省と農林水産省の発表によると、令和6年度の食品ロス発生量は約461万トンで、内訳は家庭系が約224万トン、事業系が約237万トンです。令和5年度の約464万トン(家庭系約233万トン、事業系約231万トン)から、全体で3万トン減少しました。
令和5年度の数字を前提に書かれた情報はまだ多く残っています。検索で「464万トン」を目にしたときは、令和6年度の推計で更新されていると考えてください。
家庭系は減り、事業系は増えた
内訳を見ると、動きは逆でした。家庭系は233万トンから224万トンへ9万トン減り、事業系は231万トンから237万トンへ6万トン増えています。
事業系が増えた理由として、公表を伝える報道では外食需要の回復に伴う利用増加が挙げられています。外食産業から出る食品ロスは約66万トンから約70万トンに増えたと報じられています。納品期限の緩和(いわゆる1/3ルールの見直し)や、需要予測・発注管理の高度化が、全体の減少に寄与したという説明もあります。
数字を読むときに押さえたい点
外食の利用が増えれば、提供する食事の量が増えるため、廃棄の割合が同じでも総量は増えます。事業系の増加を、取り組みの後退と受け取るのは早計だと考えられます。
一方で、家庭系と事業系を合わせると、国内の食品ロスの約半分は家庭から出ています。「企業が減らす問題」とも「家庭の問題」とも言い切れません。どちらにも手を打つ余地がある、というのが最新の数字の素直な読み方です。
「60%削減」目標までの距離|2030年度の数字で確認する
2025年3月の基本方針の変更で、事業系の目標が引き上げられました。目標の数字と現状を並べると、残りの距離が見えてきます。
2030年度の目標は事業系219万トン、家庭系216万トン
報告されている数値では、2000年度の事業系食品ロスは約547万トン、家庭系は約433万トンです。2030年度までに事業系を60%削減すると約219万トン、家庭系を半減すると約216万トンになります。
旧方針の事業系目標は「半減」で、約273万トンが基準でした。事業系は令和4年度の推計でこの水準を8年前倒しで達成しており、その実績を受けて目標が60%削減へ引き上げられています。
令和6年度の実績との差
令和6年度の実績と目標値を比べると、事業系は237万トンに対して219万トンで、差は約18万トンです。家庭系は224万トンに対して216万トンで、差は約8万トンです。
家庭系は前年度に9万トン減ったため、目標に近づいています。事業系は逆に6万トン増えており、目標へ向けて下げ幅を取り戻す必要があります。
目標が事業者に求めること
事業系の目標が上がったことで、食品製造・卸・小売・外食の各段階で、発注量の調整や商慣習の見直しがこれまで以上に求められます。次の章で、その具体的な中身を見ていきます。
現場では何が変わっているか|商慣習の見直しと自治体の呼びかけ
目標の数字だけでなく、現場での取り組みも確認しておきます。ここでは国が進めている商慣習の見直しと、自治体の事例を取り上げます。
「1/3ルール」と納品期限の緩和
食品業界には、賞味期間の3分の1以内に小売店舗へ納品するという慣習があります。「3分の1ルール」と呼ばれ、賞味期限まで日数が残っていても納品できず、廃棄につながる可能性が指摘されてきました。農林水産省は、小売事業者に納品期限の緩和を、食品製造業者に賞味期限表示の大括り化(年月表示、日まとめ表示)を呼びかけています。
毎年10月30日は、同省が「全国一斉商慣習見直しの日」と位置づけている日です。食品ロス削減の日と同じ日で、事業者側の取り組みを確認しやすい時期でもあります。
賞味期限の「年月表示」は何を変えるか
賞味期限が日単位で表示されていると、わずかな日付の違いで商品が納品できなかったり、店頭で値下げや廃棄の対象になったりします。年月表示にすると、同じ月に製造した商品をまとめて扱えるため、在庫の管理がしやすくなります。
消費者の目線では、「日付が古いものを避ける」判断を少し緩めやすくなる変化です。賞味期限の表示方法が変わった商品に出会ったら、見直しの結果だと知っておくと役に立ちます。
自治体の呼びかけ
自治体も、食品ロス削減月間に合わせた取り組みを進めています。横浜市は、横浜F・マリノスと一緒に食品ロス削減を呼びかけるポスターなどを作成し、約1,200か所で掲出していると案内しています。全国の市区町村では、「食べ切り協力店」の一覧を公式サイトに載せ、少なめの量や食べ切りサイズを選べる飲食店を紹介する例もあります。お住まいの自治体のサイトに、似た取り組みがないか確認してみてください。
家庭と外食でできること|10月から年末に向けた実践
家庭系の約224万トンは、毎日の買い物と食事の積み重ねです。これから年末にかけては、行楽や会食、忘年会など、食べ物を扱う機会が増えます。そこで使える行動を、場面ごとに整理します。
家庭では買う前と食べる前の2か所を押さえる
家庭で出る食品ロスは、主に食べ残し、手つかずのまま捨てる食品、皮を厚くむくなどの過剰除去に分けられます。買い物の前に冷蔵庫と食品庫を見る習慣は、手つかずの食品を減らすのに役立ちます。
もう1つは、期限表示の見分け方です。賞味期限は「おいしく食べられる期限」で、過ぎてもすぐに食べられなくなるわけではありません。一方、消費期限は「安全に食べられる期限」で、こちらは守る必要があります。この違いを知っておくだけで、まだ食べられる食品を捨てる場面が減ります。
会食では最初の30分と最後の10分を意識する
忘年会などの宴会では、乾杯の後の30分は席で料理を楽しみ、お開き前の10分は自分の席に戻って食べ切る「3010運動」が多くの自治体で呼びかけられています。幹事なら、人数に合わせてコース料理の量を調整できる店を選ぶのも有効です。
外食の食べ残しは「mottECO」を選択肢に
環境省などは、飲食店での食べ残しを、消費者の自己責任の範囲で持ち帰る行動を「mottECO(モッテコ)」として推奨しています。持ち帰りには一定の食中毒リスクがあるため、店が説明する衛生上の注意事項を理解したうえで行うことが前提です。ガイドラインでは、次のような注意点が示されています。
- 容器への移し替えは自分で行う
- 帰宅後はできるだけ早く食べ、十分に再加熱する
- 生もの、傷みやすいもの、スープやドリンク類の持ち帰りは控える
- 暑い時期や長時間の持ち運びは避ける
- においや味に異変を感じたら食べない
自分に合う行動の選び方
行動は、食品ロスが出やすい場面に合わせて選ぶと続けやすくなります。自炊が中心で食材を余らせがちな人は、買い物前の在庫確認から始めてください。外食や会食が多い人は、注文量を最初に絞ることと、持ち帰りができる店かどうかの確認が先です。賞味期限が近いのに食べきれない未開封の食品は、自治体や団体が実施するフードドライブに出す選択肢もあります。
プラスチック規制の現在地① EUの包装規則PPWRが2026年8月に適用開始
ここからはプラスチックの話題に移ります。食品は包装されて流通するため、食品ロスと包装は切り離せません。まず、EUの動きを確認します。
PPWRとは何か、いつから動くのか
EUの包装・包装廃棄物規則(PPWR、Regulation (EU) 2025/40)は、2025年2月11日に発効しました。2026年8月12日以降、要件ごとに順次適用が始まっています。EU規則のため、加盟27か国に直接適用され、国ごとの法律に置き換える手続きは必要ありません。
規則が求める内容
JETROの案内によれば、事業者が対応すべき主な項目は次のとおりです。包装のリサイクル可能性、特定の包装の再利用目標、包装に含める再生材の使用率、食品に触れる包装でのPFAS(有機フッ素化合物)の制限、指定された使い捨て包装の禁止です。各項目の期限は要件ごとに異なるため、詳細はJETROやEU公式の資料で確認する必要があります。
日本企業と消費者への影響
EUで流通する製品の包装は規制の対象になるため、EUへ食品や日用品を輸出する日本企業は対応を迫られます。日本の店頭に並ぶ商品の包装でも、EU向けの基準に合わせた設計が広がる可能性があります。ただし、日本国内の包装に直ちに同じ義務がかかるわけではありません。
プラスチック規制の現在地② 国際条約の交渉と日本の法律
EUが規則で動く一方、国際的な枠組みの交渉は難航しています。国内の法律とあわせて整理します。
国際プラスチック条約は交渉が続いている
国連では、プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際条約の策定に向けて、政府間交渉委員会(INC)が議論を重ねてきました。2024年11月の韓国・釜山での会合では最終合意に至らず、2025年8月にスイス・ジュネーブで開かれた再開会合(INC-5.2)でも合意できませんでした。プラスチックの生産そのものを規制するかどうかをめぐり、各国の立場が分かれたと報じられています。
INC-5.2の後に議長が辞任し、2026年2月7日にジュネーブで開かれた再開会合(INC-5.3)で、チリのフリオ・コルダノ氏が新議長に選ばれました。環境省の発表時点では、交渉妥結のための次の再開会合の日程は調整中とされています。日本は、主要なプラスチック大量消費国・排出国を含む多くの国が参加する実効的かつ進歩的な条約の早期策定に向けて、議論に関与していく方針を示しています。
日本はプラスチック資源循環法が軸
日本国内では、2022年4月1日に「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(プラスチック資源循環法)が施行されました。使い捨てプラスチックの過剰な使用を抑えるため、フォーク、スプーン、テーブルナイフ、マドラー、飲料用ストロー、ヘアブラシ、くし、かみそり、シャワーキャップ、歯ブラシ、衣類用ハンガー、衣類用カバーの12品目が「特定プラスチック使用製品」に指定されています。これらを提供する事業者には、使用の合理化に取り組むことが求められます。
飲食店やコンビニでスプーンやストローを渡すかどうかを聞かれたり、素材が変わったりしているのは、この制度を背景にした動きです。消費者としては、いらないものを断ることが、法律が想定する削減の一部になります。
食品ロスとプラスチックは両立できるか|誤解されやすい3つのポイント
食品ロスとプラスチックの話は、どちらも「減らす」方向で語られがちですが、実は単純に足し合わせられない部分があります。食品ロスの最新推計とEU・国際条約・日本の法律を並べて見ると、判断が分かれる論点が3つ浮かびます。
あわせて、2つのテーマを一続きの流れで読み解いた記事もあります。
「包装を減らせば必ず環境に良い」とは限らない
包装には、中身の食品を傷みから守る役割もあります。包装を減らす判断をするときは、中身が傷みやすいかどうかとセットで考える視点が欠かせません。プラスチックを減らした結果、食品が早く傷んで捨てられるなら、環境への効果は小さくなる可能性があります。商品を選ぶ側でも、「包装が少ない」ことだけで判断せず、使い切れる量かどうかを見てください。
「事業系が増えた=取り組みが後退した」とは言い切れない
先に見たように、令和6年度の事業系の増加は、外食需要の回復が影響したと報じられています。総量の増減だけで評価せず、発注の精度や商慣習の見直しといった中身の変化も見る必要があります。数字の見出しだけで結論を出さない読み方が大切です。
「家庭か企業か」ではなく両方に伸びしろがある
家庭系と事業系は、ほぼ半々です。家庭系は目標まで約8万トン、事業系は約18万トンの差があり、どちらか一方に任せて済む状況ではありません。企業の商慣習の見直しと、家庭や外食の場での選択は、互いを補う関係にあります。
まとめ
食品ロスは、令和5年度の約464万トンから令和6年度の約461万トンへ、3万トン減りました。家庭系は9万トン減って約224万トンに、事業系は外食需要の回復などで6万トン増えて約237万トンになっています。2030年度の目標は、事業系が2000年度比で60%削減(約219万トン)、家庭系が半減(約216万トン)で、現状との差は事業系で約18万トン、家庭系で約8万トンです。
プラスチック規制では、EUのPPWRが2026年8月12日から要件ごとに順次適用され、包装の設計に影響が及び始めています。国際プラスチック条約は、INC-5.3で新議長が選ばれたものの、次の再開会合の日程が調整中の状況です。日本では、2022年4月施行のプラスチック資源循環法が、使い捨てプラスチックの削減を促す軸になっています。
食品ロスもプラスチックも、制度と現場と日々の選択がつながって動いています。10月は食品ロス削減月間です。まず1つだけ、今週の買い物の前に冷蔵庫の中身を確認するところから試してみてください。
- 令和6年度の食品ロスは約461万トンで、家庭系は減少、事業系は増加した
- 2030年度の目標は事業系60%削減、家庭系半減で、事業系は約18万トン、家庭系は約8万トンの差がある
- 商慣習の見直しや、食べ切り・持ち帰りの工夫など、現場と家庭の両方で打てる手がある
- EUのPPWRは2026年8月に適用が始まり、国際条約は交渉が続いている
参考文献
- 環境省「令和6年度の食品ロス量の推計値について」(2026年)
- CE Hub「2024年度の食品ロス量、前年度比3万トン減少。事業系は外食需要回復などで増加」(2026年)
- 農林水産省「食品ロス削減のための商慣習の見直し」
- 横浜市「食品ロス削減月間」(2026年)
- JETRO「EU包装・包装廃棄物規則(PPWR)」(2026年)
- 環境省「プラスチック汚染に関する国際文書(条約)の策定に向けた第5回政府間交渉委員会再開会合(INC5.3)」(2026年)
- 環境省「プラスチック資源循環法」


