私たち一人ひとりに、生まれながらにして備わっている「人権」。
しかし人権は目に見えないので、その概念はとても抽象的でわかりにくいものです。
そこで日本においては「自分の大切さとともに他の人の大切さを認める」ための人権教育を小学校からおこなっています。
この記事では、日本で行われている人権教育と、その4つの視点について見ていきましょう。
人権教育とは
人権は、人が生まれながらにして持つ権利。
一人ひとりが人間として大切にされるべきですが、人権を守るためには「人権とはどういうものか」を知らなくてはなりません。
人権教育は、人権について教え理解を深め、実際に自分と他人の人権を守るとはどういうことなのか、どういう態度を取るべきなのかを、学校教育をはじめとした学習の場を通じて伝えていくことです。
それにより、人権が持つ価値や重要性が直感的に感じられるようになり、他者の人権についても共感的に受けとめるような感性や感覚、すなわち人権感覚を育成することにつながります。
SDGsの目標4と人権教育
SDGsのなかでも、人権教育にとりわけ関係が深いのは、目標4「教育」です。
ここでは「すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」と目標を掲げています。
SDGsの目標4では、ターゲット4.1~6までで「全ての人が教育を受ける権利」を規程し、4.7でその内容や質を定めました。
ターゲット4.7では「2030年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする。」とあります。
現代の人権教育は「人権」について学ぶだけではありません。
男女平等、グローバル・シチズンシップ(すべての人間は、世界の一員であり権利と市民的責任を有するという考え方)などを理解することが、持続可能な開発に繋げるというものです。
参照元:SDGグローバル指標|JAPAN SDGs Action Platform|外務省
人権教育の4つの視点
人権教育は、現在すでにある人権課題の解決と人権が尊重された社会づくりを目指して行われるものです。
日本ではその取組を効果的に進めるために、「4つの視点」から教育を行っています。
(1)人権としての教育
「教育を受けること」それ自体が、重要な人権です。
就学の機会を均等にするという保障、子どもたちの「生きる力」を培う教育を受けることは、保障されているでしょうか?
「教育を受ける権利」は、子どもの個性や特性を尊重して「自己実現」を可能とする力を身に付ける場所を保障することです。
子どもたちの家庭環境や、障害などは、子どもたちの責任ではありません。
全ての人々に教育を保障していくことは、人権教育を進める前提です。
(2)人権を通しての教育
学校教育において、子どもたちが「人権」の大切さを感じながら学習することができる環境を、作り出すことができているかどうかという視点です。
学校での人間関係は、人権教育の基盤となります。
(3)人権についての教育
人権についての教育は、子どもたちが「人権」についての理解を深めるだけではありません。
学習を通して「人権」を守る気持ちや振る舞いを身に着け、問題解決のために行動できる力を培うことができているかという視点です。
学校では「人を傷つけてはいけない」という概念を習います。
しかし、具体的にどのような行動が人を傷つけるのか、自分の人権だけでなく他人の人権を大事にするというのは、どのようなことなのか、個人の自由や権利には自ずと制約が生じることを落とし込むことが重要です。
(4)人権のための教育
学校教育活動全体を通して、全ての人々の人権が尊重される社会を実現するのが人権教育の目的です。
人権教育自体が、未来社会を担う人間として成長することを目指して子どもへの教育実践が行われているかどうかいう視点が重要になります。
人権教育の充実をはかるためには、人権の大切さを理解するだけでなく、その尊重をベースとした行動が取れなくてはなりません。
例えば「他の人の立場に立って、必要なことやその人の考えや気持ちなどがわかるような想像力や共感力」「自分の気持ちや考えを的確に表現できるコミュニケーション能力」「自分の要求を通すだけでなく、他の人との関りを前提として自他ともに納得できる解決方法を実現される能力や技能」などです。
まとめ
人権教育は、最終的には世界中どこにいても人権が大切にされ、守られる社会を作ることを目指しています。
そのために必要なのは、まず「人権について」の知識です。
さらに、実際に自分と他人の人権を守るとはどういうことか、その手段や社会生活において「人権を大切にする」態度や振る舞いを育むことを、学校教育や研修、トレーニングや生涯学習の場を通して学びます。
みんなが人権を守る未来社会を作るために、子どもだけでなく大人も改めて人権について学び、実践する必要があるのではないでしょうか。