2015年、北アフリカを出発した小舟が地中海を渡ってヨーロッパを目指し、たどり着いた人もいれば途中で命を落とした人もいたという「欧州難民危機」のニュースを覚えている方は多いのではないでしょうか。あれから10年以上が経ちましたが、アフリカ大陸で難民が生まれる状況は解消されるどころか、スーダンや東部コンゴなど新たな危機が加わり、むしろ深刻さを増しています。この記事では、なぜアフリカ出身の難民が多いのか、その背景と最新の状況、そして日本の私たちにできることを具体的に紹介します。
アフリカ難民の最新現状|世界の強制移動者数はどれくらいか
アフリカは50か国以上からなる巨大な大陸で、人口は約14億人にのぼるとされています。経済成長が進む国がある一方で、紛争や政治混乱によって国民が国を追われ続けている国も少なくありません。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)が公表する統計では、紛争や迫害によって住まいを追われた人の数は世界全体で年々増加しており、2020年代に入ってから1億人を超える水準が続いているとされています。この中には国内避難民(IDP)、難民、庇護希望者が含まれ、アフリカ大陸はその発生源としても受け入れ先としても大きな比重を占めています。
とりわけ2023年4月に始まったスーダンの軍同士の武力衝突は、国連機関から「世界最大級の人道危機」と位置づけられるようになりました。加えて南スーダン、コンゴ民主共和国東部、中央アフリカ共和国など、以前から難民を生み出してきた国々の状況も改善していません。つまりアフリカの難民問題は、特定の一国だけの一過性の出来事ではなく、複数の国で同時並行的に、しかも長期化しながら続いている構造的な課題だといえます。
なぜアフリカで難民が生まれ続けるのか|3つの構造的背景
「貧しい国だから難民が出る」という単純な理解では、アフリカで起きていることの実態をつかみきれません。難民を生み出し続けている国には、いくつか共通する構造的な背景があります。
内戦と紛争の長期化
南スーダンは2011年にスーダンから独立しましたが、独立直後から国内の権力争いを背景とした内戦状態に陥りました。和平合意と衝突の再燃が繰り返され、国民の多くが国内外への避難を余儀なくされています。独立から10年以上が経過した今も、和平プロセスの完全な履行には至っていないと報告されています。
政治混乱とクーデター
中央アフリカ共和国では2013年の政変以降、武装勢力による支配地域の奪い合いが続き、国内避難民と難民の双方が高止まりしています。西アフリカ・サヘル地域でも2020年代に入ってから軍事クーデターが相次ぎ、政情不安が住民の移動を後押しする要因になっています。政治の不安定さが治安の悪化に直結し、それが難民発生の引き金になるという構図は、複数の国で共通して見られます。
資源をめぐる利権対立
石油や金、ダイヤモンド、コバルトといった天然資源は国に富をもたらす一方で、その利権を巡る対立や紛争の火種にもなります。南スーダンでは油田の権益、コンゴ民主共和国東部ではコバルトや金などの鉱物資源が、武装勢力同士の対立を長引かせる一因になっているとされています。資源国であるがゆえに紛争が終わらないという皮肉な構造が、アフリカの複数の国に共通しています。
こうした資源紛争は、スマートフォンや電気自動車のバッテリーに使われる鉱物のサプライチェーンとも無関係ではありません。企業がどのように人権リスクへ対応しているかを知ることも、問題の背景を理解する手がかりになります。
資源をめぐる紛争と企業のサプライチェーンの関係をより詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

2023年から続くスーダン危機|「世界最大の人道危機」と呼ばれる理由
2023年4月、スーダン国軍と準軍事組織RSF(即応支援部隊)の間で武力衝突が発生し、首都ハルツームをはじめ各地で戦闘が激化しました。この衝突は長期化し、国内避難民の数は数百万人規模、国外へ逃れた難民も百万人単位にのぼると報告されています。避難先は隣国のチャドや南スーダン、エジプトなどに広がっており、なかでもチャドは受け入れ能力を超える規模の避難民を抱え、支援団体からたびたび資金不足への警鐘が発せられています。
特に注目すべきは、避難先となっている南スーダン自体が、すでに多くの難民を送り出してきた国だという点です。難民を送り出す国が同時に別の国からの難民の受け入れ先にもなるという事態は、この地域の危機がいかに複雑に絡み合っているかを示しています。
コンゴ民主共和国東部の緊迫化|資源紛争と大量避難
コンゴ民主共和国(DRC)東部の北キブ州・南キブ州では、武装勢力M23をはじめとする複数のグループが活動しており、2024年から2025年にかけて衝突が一段と激化しました。州都ゴマ周辺への攻勢によって住民の避難が急増し、国内避難民の総数はアフリカ大陸の中でも最大規模になっているとされています。避難民の多くは国内にとどまる一方、一部はウガンダやブルンジなど周辺国へ国境を越えて逃れています。
この地域はコバルトや金、スズなどの資源が豊富で、資源採掘の利権が武装勢力の資金源になっているとの指摘もあります。紛争が資源によって経済的に維持されてしまうことが、事態の収束を難しくしている一因です。
紛争や政治混乱が長引く国では、難民問題と貧困問題が切り離せない形で重なっています。世界の貧困の現状について知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。

難民はどこへ向かうのか|ヨーロッパへの道とアフリカ大陸内避難の現実
2015年の欧州難民危機では、中東・アフリカ・南アジアなどから短期間に100万人規模の人々が地中海を渡ってヨーロッパへ向かい、世界に衝撃を与えました。ドイツをはじめ北欧諸国が比較的多くの難民を受け入れてきましたが、実際にはアフリカ出身難民の大半はヨーロッパではなく、同じアフリカ大陸内の隣国にとどまっているというのが実情です。
とりわけウガンダは、南スーダンやコンゴ民主共和国からの難民に対して土地の割り当てや移動の自由、就労を認める寛容な難民政策を掲げており、アフリカ大陸で最も多くの難民を受け入れている国のひとつとされています。エチオピアやチャドも同様に、周辺国の紛争から逃れてきた人々を大量に受け入れています。
ここで見えてくるのは、難民受け入れの負担が必ずしも豊かな国に均等にかかっているわけではないという構造です。ヨーロッパの受け入れ国のニュースは大きく報道される一方、実際に難民一人あたりの負担が重いのは、経済的に厳しい状況にあるウガンダやチャド、エチオピアといった周辺国だといえます。難民キャンプでは資金不足から食料配給が削減される事例も報告されており、支援の担い手である国際機関やNGOのキャパシティも限界に近づいています。
難民として国境を越えた後も、生活が安定するとは限りません。難民認定の審査には長い時間がかかり、就労許可が下りるまで働けないケースや、言語・文化の違いから孤立してしまうケース、子どもが十分な教育を受けられないケースなど、避難先でも困難は続きます。こうした構造は、難民問題が世界的な貧困問題とも地続きであることを示しています。
日本にできること|寄付だけではない関わり方
遠いアフリカで起きていることだと感じてしまいがちですが、日本からできる関わり方はいくつもあります。まず知っておきたいのは、日本企業もこの分野に関わっているという点です。例えばファーストリテイリングは、店舗で回収した衣料をUNHCRと連携して難民キャンプなどへ届ける取り組みを長年続けています。こうした企業の活動を知ることも、問題を自分ごととして捉える入り口になります。
個人レベルでできることとしては、国連UNHCR協会などが実施している継続寄付(マンスリーサポーター制度)への参加が挙げられます。少額からでも継続的な支援は、難民キャンプでの食料や医療、教育支援の安定的な財源になります。また、認定NPO法人など難民支援に取り組む団体への単発の寄付や、緊急支援時の募金に参加することも直接的な支援になります。
寄付以外にも、日々の消費行動を通じてできることがあります。紛争地の資源に依存しない製品を選んだり、生産者に適正な対価が支払われているフェアトレード商品を選んだりすることも、間接的に紛争や搾取の構造から距離を置く選択になります。
- 国連UNHCR協会などの継続寄付(マンスリーサポーター)に参加する
- 緊急人道支援の募金活動に参加する
- 難民支援に取り組む企業やNPOの活動を知り、可能であれば商品やサービスを選ぶ
- 正確な情報を家族や友人と共有し、誤解や偏見を減らす
フェアトレードの基本や具体的な選び方を知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

まとめ|アフリカ難民問題を「知る」ことから始める
スーダン、南スーダン、コンゴ民主共和国東部、中央アフリカ共和国など、アフリカ大陸では今も複数の国で紛争や政治混乱が続き、多くの人が住まいを追われています。難民の多くは、報道で目にする機会の多いヨーロッパではなく、ウガンダやチャド、エチオピアといった周辺国にとどまっており、受け入れ側の負担も限界に近づいているのが現状です。石油や鉱物資源をめぐる利権対立が絡む場合は、解決がいっそう難しくなります。
日本に暮らしていると実感しにくい問題ですが、まずは現状を知ることから始めてみませんか。そのうえで、継続的な寄付や消費の選択など、自分にできる小さな一歩を探してみてください。まず1つだけ、月々の少額寄付か、難民支援に関わる商品を選ぶことから試してみてください。
- アフリカの難民問題は南スーダン・スーダン・コンゴ民主共和国など複数国で同時進行している
- 難民の多くはヨーロッパではなくアフリカ大陸内の隣国にとどまっている
- 受け入れ国の負担は限界に近づいており、国際支援が追いついていない
- 日本からも継続寄付や消費の選択を通じて支援に関わることができる
本記事はMIRASUS編集チームが公的資料・企業公式情報をもとに作成しています。
参考文献
- UNHCR「Figures at a Glance」(UNHCR公式サイト・https://www.unhcr.org/figures-at-a-glance.html)
- UNHCR駐日事務所「UNHCR Japan」(https://www.unhcr.org/jp/)
- 外務省「南スーダン基礎データ」(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/s_sudan/data.html)

