サーキュラーエコノミー(循環経済)とは、「作る・使う・捨てる」で終わる経済から、資源を回し続ける経済へ移ろうという考え方です。環境省は、従来の3Rに加えて資源の投入量や消費量を抑え、ストックを活用しながらサービス化などで付加価値を生む経済活動だと説明しています。定義を知った人が次に知りたいのは、日本と世界で実際に何が動いているのか、そして自分は何を選べばよいのかでしょう。この記事では、2026年に入って変わった日本の制度、EUをはじめとする海外の動き、日本企業3社の実践を並べて紹介します。
日本の循環経済は2026年に「理念」から「義務と投資」の段階へ
日本では、ここ2年ほどで循環経済の位置づけが大きく変わりました。2026年4月には法律の改正と新しい行動計画が重なり、企業に求められることが具体的になっています。まず国の方針、次に2026年に動いた制度の順で見ていきます。
国家戦略になった第五次循環基本計画
2024年8月2日、政府は「第五次循環型社会形成推進基本計画」を閣議決定しました。この計画は、循環経済への移行を国家戦略に位置づけています。環境保全だけでなく、産業競争力の強化、経済安全保障、地方創生、質の高い暮らしの実現を同時に進めるための手段としているのが特徴です。
2030年度の目標も示されています。環境省の資料によると、資源生産性は約60万円/トン、入口側の循環利用率は約19%、出口側の循環利用率は約44%、最終処分量は約1,100万トンです。「どれだけ資源を節約し、どれだけ埋め立てを減らすか」が数字で決められたことになります。
2026年4月に動いた行動計画と法改正
2024年12月には「循環経済への移行加速化パッケージ」が公表されました。さらに2026年4月には、関係閣僚会議の決定として「循環経済行動計画」が公表されています。再生資源を供給するサプライチェーンの強靱化や、日本を拠点にした国際的な資源循環ネットワークづくりを進める内容です。金属やプラスチックの再資源化拠点の整備などに、官民で約1兆円の投資を目指すとされています。
制度面で影響が大きいのは、2026年4月1日に施行された改正資源有効利用促進法です。経済産業省関連の資料によると、再生プラスチックの利用義務を課す製品として自動車、家電4品目、容器包装が挙げられています。製造事業者は再生材の利用計画の提出と定期報告を求められます。あわせて、解体しやすい設計や長寿命化につながる設計を国が認定する仕組みもできました。
つまり日本は、「リサイクルしましょう」とお願いする段階から、作る側に再生材の使用と設計の見直しを求める段階に進んだといえます。循環型社会の全体像や3Rの優先順位をあらためて確認したい方は、次の記事も参考になります。
世界の動き|循環度は6.9%、EUは「売れ残りの廃棄禁止」まで踏み込んだ
日本の動きを理解するには、世界の現在地を知っておく必要があります。世界の取り組みは進んでいる一方で、循環そのものはまだ小さいのが実情です。
世界の循環度はわずか6.9%
オランダの非営利組織Circle Economyがまとめた「Circularity Gap Report 2025」によると、世界経済に投入される資源のうち、再生された二次資源が占める割合は6.9%でした。世界の資源使用量は年間1,000億トンを超えたと報告されています。この報告書は、2032年までに世界の循環度を17%へ引き上げる目標を掲げています。リサイクルの量が増えていても、資源の使用量全体がそれ以上に増えているため、割合は伸びにくいという構図です。
EUのエコデザイン規則と売れ残り衣類の廃棄禁止
EUは、製品の「作り方」を法律で変える方向に進んでいます。2024年7月に発効した「エコデザイン規則(ESPR)」は、製品ごとに耐久性、修理のしやすさ、再生材の使用などの基準を定められる枠組みです。その第一弾として、売れ残った衣類・衣料品の付属品・靴の廃棄が、2026年7月から大企業を対象に禁止されました。中規模企業は2030年から対象になる予定です。
あわせて、企業が捨てた売れ残り品の量と理由を開示する義務も、標準的な形式での報告が2027年2月から始まります。報道によると、欧州では売れ残った繊維製品のうち4〜9%が、一度も着られないまま廃棄されているとされています。禁止には、安全上の問題や製品の損傷といった限られた例外も設けられています。
成立前のEU循環経済法と、国をあげて目標を立てるオランダ
EUでは、再生材の供給を増やし、二次原材料の単一市場をつくることを狙う「循環経済法」の制定が予告されています。欧州委員会が2026年中の提案を予定していると伝えられていますが、執筆時点で成立は確認できていません。今後の動きは欧州委員会の発表で確認してください。
国単位で数値目標を掲げた例としては、オランダがあります。オランダ政府は2050年までに完全な循環経済を実現し、その中間目標として2030年までに一次原材料の使用を半減させる方針を示しています。国土が狭く、資源を輸入に頼る国ならではの危機感が背景にあります。
日本企業の取り組み事例|ブリヂストン・リコー・ユニクロを比べる
制度が整っても、実際に資源を回すのは企業です。ここでは業種の異なる3社を取り上げ、「何をどう回しているのか」を比べます。特定の1社を推奨する意図はなく、公開情報から読み取れる違いを整理します。
ブリヂストンのタイヤ(長く使う・原料に戻す)
ブリヂストンは、タイヤの溝のゴム部分(トレッド)を貼り替えて使い続けるリトレッドを事業の柱の一つにしています。報道された事例では、1本のタイヤの骨格を2回リトレッドして新品3本分の役割を果たした場合に、材料の使用量が約50%、CO2排出量が51%減るとされています。
さらに、使用済みタイヤを熱で分解して、新しいタイヤの原料に戻す技術の実用化を進めています。ENEOSや東海カーボンと共同で研究しており、2025年10月に岐阜県関市で実証プラントの起工式が行われました。2027年9月の稼働開始が予定されていると報じられています。
背景には、日本のタイヤリサイクルの特徴があります。2023年に日本で再利用された使用済みタイヤは約99万トンで、その約85%が燃料などの熱利用、約14%が素材としての再利用でした。燃やして熱を取り出す方法は、燃焼時にCO2が出るという課題を抱えています。この違いについては、次の記事が詳しいです。
リコーの再生複合機(回収して、もう一度商品にする)
リコーは1994年から、製品の製造から回収までのライフサイクル全体で環境負荷を減らす「コメットサークル」という考え方を掲げています。2025年1月には、A3カラー複合機の再生機を発売しました。再生率は86%とされています。使用済みの機器を回収して再生するだけでなく、最新の機能やセキュリティ対応を後から加えられる仕組みも導入しています。
注目したいのは、回収から再生までを自社で組み立てている点です。全国の回収拠点と再生・リサイクルのセンターが長年かけて整えられてきたことが、報道から読み取れます。商品を売って終わりにせず、手元に戻ってくる前提で設計と物流をつくる「戻す仕組み」の例です。
ユニクロの服の回収(着られる服は届け、着られない服は原料にする)
ユニクロは、全国の店舗で不要になった自社商品を回収する「RE.UNIQLO」を続けています。着られる服は必要とする地域に届け、着られない服は素材として再利用する流れです。たとえば、回収したダウンジャケットからダウンとフェザーを取り出し、原料としてあらためて使っています。
アパレルはサイズや流行の変化で売れ残りや不要品が出やすい分野です。回収を店舗という日常の接点に置いていることで、消費者が参加しやすくなっています。
3社の違いと共通点
3社を並べると、循環のつくり方が違うことが分かります。ブリヂストンは「長く使う」と「原料に戻す」、リコーは「回収して再商品化する」、ユニクロは「消費者から回収して届ける・原料にする」です。共通しているのは、リサイクル工場に任せきりにせず、自社の設計や販売網の中に回収の入口を組み込んでいる点です。製品を作る側が回収まで責任を持つほど、再生材の質も量も安定しやすくなります。
日本とEUを比べて見える違い
日本とEUの動きを並べると、力を入れている場所が少し違います。日本の強みは、回収網と現場の技術の積み重ねです。タイヤの例のように、回収された資源の大部分が何らかの形で使われています。一方で、使い方が熱利用に偏りやすく、「素材として何度も回す」循環にはまだ伸びしろがあります。
EUは、製品の設計段階と情報の開示を法律で縛る方向を選んでいます。売れ残り品の廃棄禁止や開示義務は、作りすぎを抑える圧力として働きます。ただし、廃棄を禁じても過剰生産そのものは解消されないという指摘もあり、効果の評価はこれからです。
日本も2026年の法改正で、再生材の利用義務と環境配慮設計の認定という、EUに近い「作る側への要求」を入れ始めました。両者が近づいていることは、海外に製品を輸出する日本企業にとっても、規則への対応が避けられない流れになっていることを意味します。
誤解されやすい3つのポイント
循環経済の話題には、誤解されやすい点があります。ここで整理しておくと、企業の発表やニュースを冷静に読めるようになります。
リサイクルしている=循環している、とは限らない
回収された資源が燃料として燃やされれば、資源は一度きりで失われます。素材として何度も使い続けられるか、品質を保ったまま戻せるかが、循環の本質です。数字を見るときは、「回収率」だけでなく「再び製品になった割合」にも注目しましょう。
循環度6.9%は、リサイクルが無意味だという意味ではない
世界全体では、資源の使用量が増え続けているために、再生された割合が相対的に小さく見えます。リサイクルを増やすだけでなく、そもそも使う量を減らす努力と組み合わせる必要がある、という警告として受け取るのが適切です。
企業の取り組みが多いほど環境に優しい、とは言えない
回収キャンペーンや再生素材の使用は大切な一歩ですが、全体の生産量が増えていれば環境負荷は下がりません。企業の発表を読むときは、再生素材の比率と、その算出方法、対象範囲が示されているかを確かめると、グリーンウォッシングを見分けやすくなります。
私たちにできること|買う・使う・手放すの選び方
制度や企業の取り組みを、暮らしの判断に結びつけてみましょう。大きな行動でなくても、選び方を少し変えるだけで循環に参加できます。
買うときに見る点
購入前に、修理しやすいか、替えの部品や消耗品が手に入るか、長く使える設計かを確かめます。再生素材や再生品を選ぶときは、「再生材使用」とだけ書かれているものより、比率や対象部分が具体的に示されているものを優先すると納得して選べます。
使うときの工夫
壊れたらすぐ買い替えるのではなく、修理や貸し借り、中古の活用を先に検討します。メーカーの修理窓口や回収サービスを調べておくと、いざというときに慌てません。冬物を出して衣替えをするこの時期は、着ていない服の見直しにちょうどよい機会です。
手放すときの選び方
まだ使えるものは、売る、譲る、寄贈するなど、次の使い手に渡る道を先に探します。使えないものは、メーカーや販売店の回収を利用すると、素材として戻る可能性が高まります。リサイクルとリユースの違い、そして3Rの先にある考え方も、手放す判断の助けになります。
まとめ
日本の循環経済は、2024年の第五次循環基本計画で国家戦略に位置づけられ、2026年4月の循環経済行動計画と改正資源有効利用促進法によって、再生材の利用義務や官民で約1兆円の投資という具体的な段階に入りました。世界に目を向けると、循環度は6.9%にとどまり、EUはエコデザイン規則で売れ残り衣類の廃棄禁止まで踏み込んでいます。
企業の事例を比べると、ブリヂストンは長く使うことと原料への再生、リコーは回収と再商品化、ユニクロは店頭回収と素材化と、それぞれ違う方法で資源を回していました。共通しているのは、回収の入口を自社の設計や販売の仕組みに組み込んでいることです。
私たち消費者は、買う・使う・手放すの3つの場面で、長く使えるか、修理できるか、次に渡せるかを基準に加えられます。まず1つだけ、手元の持ち物のうち手放す予定のものについて、回収や譲渡の方法を調べてみてください。
- 日本は2024年に循環経済を国家戦略とし、2026年4月から再生材の利用義務と環境配慮設計の認定が始まった
- 世界の循環度は6.9%で、EUは2026年7月から大企業の売れ残り衣類・靴の廃棄を禁止した
- 企業の循環は、設計・回収・再商品化を自社の仕組みに組み込むことで進む
- 回収率だけでなく、再び製品になった割合や再生素材の比率の根拠を確かめる
- 買う・使う・手放すの各場面で、長く使えるか、修理できるか、次に渡せるかを選ぶ基準にする
参考文献
- 環境省「循環型社会形成推進基本計画」(2024年)
- 環境省「令和8年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 第1部第1章第2節 国家戦略としての循環経済への移行」(2026年)
- 中部経済産業局「改正資源有効利用促進法に関する資料」(2026年)
- Circle Economy「Global circularity rate fell to 6.9%, despite growing recycling」(2025年)
- ESG Today「EU Bans Destruction of Unsold Clothing, Footwear」(2026年)
- MONOist「使用済みタイヤを新品の“材料”とするブリヂストンの精密熱分解技術とは?」(2025年)
- MONOist「リコーがリユース率86%の再生複合機を発売 最新の機能を使える仕組みを導入」(2025年)
- ユニクロ「RE.UNIQLO」




