企業が取り組む食品ロス対策とは、まだ食べられる食品が捨てられることを、作る・運ぶ・売る・余らせるという事業の各段階で減らす工夫のことです。10月は食品ロス削減月間にあたります。農林水産省、環境省、消費者庁が2026年6月に公表した推計では、2024年度の食品ロスは約461万トンで、そのうち約237万トンが事業系でした。企業の対策が量を左右する状況は、今も変わっていません。
この記事では、最新の推計値を確認したうえで、セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマート、キユーピーなどの具体的な事例を5つ紹介します。あわせて、どの段階で食品ロスを止める対策なのかという軸で事例を比べ、取り組みの選び方と、消費者として参加できる場面も整理します。
企業の食品ロスは今どうなっているのか|2024年度の最新データ
事例に入る前に、日本の食品ロスの現状を確認します。古い数字のまま話を進めると、今の課題がずれて見えるためです。
2024年度は約461万トン、事業系が237万トン
2026年6月30日に公表された推計によると、2024年度の食品ロスは約461万トンで、前年度の464万トンから3万トン減りました。内訳は事業系が約237万トン、家庭系が約224万トンです。
家庭系は前年度の233万トンから9万トン減った一方、事業系は231万トンから6万トン増え、3年ぶりの増加になりました。食品ロス全体の半分強を事業系が占める構図は変わっていません。
食品ロスの定義や発生の仕組みを基礎から確認したい方は、次の記事もあわせてご覧ください。
事業系は目標を前倒しで達成したが、新目標はこれから
事業系食品ロスは2000年度の547万トンが基準で、2030年度までに半減する目標が立てられていました。2022年度の推計で236万トンとなり、この目標を8年前倒しで達成しました。
これを受けて2025年3月の第2次基本方針で、事業系の目標は2030年度までに2000年度比60%減(219万トン)へ引き上げられました。2024年度の237万トンは2000年度比で約57%減にあたり、新しい目標までは約18万トンの差があります。
数字の読み方|増えた年があっても取り組みが止まったわけではない
2024年度の事業系は6万トン増えましたが、これだけで企業の対策が後退したとは言えません。推計は事業者からの報告などをもとに算出されるため、年度ごとの増減には、生産量や販売量の変動も含まれます。
この記事で扱う事例も、1年単位の増減よりも、どの段階にどんな手を打っているのかを見ると理解しやすくなります。
企業が食品ロスを減らす4つの段階|どこで止めるかで対策は変わる
食品ロスの対策は種類が多く、事例を並べて読むと違いが分かりにくくなります。そこで、食品が「売れ残る前」から「余ったあと」までのどの段階で働きかけるかで、4つに分けて整理します。
作る前・仕入れる前に止める
需要予測を精度の高いものにして、作りすぎ・仕入れすぎを防ぐ段階です。AIによる発注支援や、製造量の計量管理がここに入ります。ロスの発生そのものを減らせる点が特長ですが、天候やイベントなど読み切れない要素が残ります。
売る前に止める(期限の工夫と商習慣の見直し)
賞味期限の延長や年月表示への切り替え、納品期限の緩和など、商品が売り場に並ぶ前に廃棄されるのを防ぐ段階です。メーカーと小売、卸の間のルールを変える取り組みも含まれます。
売り切る
期限が近づいた商品を値引きしたり、ポイントを付けたりして、買う人に届ける段階です。ここは消費者の行動が結果を左右するため、見せ方の工夫が重要になります。
余ったら活かす
どうしても余った食品を、フードバンクや子ども食堂への寄贈、飼料・肥料へのリサイクルに回す段階です。発生を抑えたうえでの最後の受け皿として位置づけられます。
以下の事例は、このどの段階に当たるのかを意識して読むと、各社の狙いの違いが見えてきます。
事例1|セブン-イレブン 期限が近い商品にnanacoポイントを付与
セブン-イレブンの「エシカルプロジェクト」は、「売り切る」段階の代表的な取り組みです。販売期限が近づいた商品にシールを貼り、nanacoで購入すると、税抜き価格の5%分のnanacoボーナスポイントが付与されます。
2019年10月に北海道と四国4県でテストを始め、2020年に全国へ広がりました。値引きではなくポイントで還元する形のため、店頭の価格を下げずに、購入のきっかけをつくる点が特徴です。
付与率や対象商品などの条件は変更される場合があるため、利用する際は店頭またはセブン-イレブンの公式サイトで最新情報をご確認ください。
事例2|ローソン AI発注・値引きシール・寄付をつなげた仕組み
ローソンの取り組みは、「作る前・仕入れる前」と「売り切る」と「余ったら活かす」を一続きにしている点が特徴です。
AIが推奨する発注と値引き
ローソンは、AIを使った次世代発注システム「AI.CO」を店舗に導入しています。消費期限の短いカテゴリーで発注の精度を高めるとともに、値引きの推奨も行います。消費期限が近づいた商品には、AIが推奨する値引き額などを記載した黄色いシールを貼ります。
値引き商品の購入が寄付につながる「FOOD GOOD SMILE」
食品ロス削減プログラム「FOOD GOOD SMILE」では、値引きシール付きのおにぎり・寿司・弁当を買うと、1個につき1円分が寄付として集計されます。2026年6月9日に始まった第3弾(8月31日まで)では、集計額分の「ローソンのおにぎり」を、夏休みなどの長期休暇中に昼食の確保が課題となる子どもたちへ届ける内容でした。
第3弾の開始時点で、連動した寄付施策の累計は4,184万2,000円分、提供量は米85.8トンなどとされています。買う人が選ぶことが、そのまま支援につながる設計です。
フードシェアリングの実証も開始
2026年5月11日からは、東京都内の2店舗(ローソンTOC大崎店、ナチュラルローソン六本木ヒルズ店)で、消費期限が近い食品を定価の半額以下で販売する実証事業が始まりました。食品ロス削減アプリ「Too Good To Go」を使った取り組みです。実証段階のため、全国への拡大は現時点で決まっていません。
事例3|ファミリーマート 「涙目シール」と消費期限の2時間延長
ファミリーマートは、値引きシールの見せ方と、商品そのものの期限設定の両面から対策を進めています。
値引きシールのデザインを変える
2024年10月の実証実験では、涙目のイラストを使った新しいシールで、従来のシールよりも値下げ商品の購入率が上がりました。購入した人からは「涙目で思わず助けたくなるイラストだったので手に取った」といった声があったと公表されています。2025年3月から全国に順次導入され、同年10月には「涙目デザイン」のイラストが無償のフリー素材として公開されています。
米飯約70品目の消費期限を2時間延長
あわせて、米飯の全商品(チルド温度帯の米飯類を除く)約70品目の消費期限を、2025年3月4日発売分から2時間延長しました。この対策による食品ロス削減の見込みは、実証実験の結果をもとに、全国展開した場合で年間約3,000トンと公表されています。
2025年度上期の店舗の廃棄量は、前年同期比で約5%減ったと報告されています。ただし、これは複数の施策を重ねた結果の数字で、シール単独の効果かどうかはこの数字だけでは判断できません。
コンビニ各社の取り組みを一覧で見比べたい方は、次の記事も参考になります。
事例4|キユーピー マヨネーズの賞味期限を年月表示へ
食品メーカーの事例として、キユーピーの「賞味期限の年月表示化」を紹介します。「売る前に止める」段階の対策です。
日付ごとの管理がなくなり、期限切れの廃棄が減る
賞味期限が3か月を超える食品は、「年月日」ではなく「年月」の表示が認められています。キユーピーは2024年12月に、マヨネーズの450gと350gで年月表示への変更を始めました。さらに2025年5月に、ポリボトルの小容量3品(50g・130g・200g)と、瓶入り3品に対象を広げると発表しました。2025年7月製造分から順次出荷されています。
年月表示にすると、日付ごとに商品を区別する手間が省けます。あわせて、納品前に期限切れとなる事態も防げるため、食品ロスの削減と物流の効率化につながるとされています。
賞味期間の延長で小売が扱いやすくなる
対象6商品のうち5商品は賞味期間が12か月から13か月に、「平飼い卵マヨネーズ」は10か月から13か月に延びました。延長に当たっては、保存テストで品質が保たれることを確認したと説明されています。
一方で、700gと1kgの大容量品とミニパック(6g×20個)は、この変更の対象外です。すべての商品に一斉に広げるのではなく、品質の確認を経て対象を段階的に増やしている点も、押さえておきたいポイントです。
事例5|納品期限・販売期限を見直す食品業界の動き
最後の事例は1社ではなく、食品業界全体の商習慣の見直しです。食品の製造日から賞味期限までの期間の3分の1以内で小売店に納品する慣例は「3分の1ルール」と呼ばれ、この基準を過ぎた商品が廃棄につながりやすいと指摘されてきました。
納品期限の緩和が広がっている
流通経済研究所が2025年10月30日に公表した調査によると、食品ロス削減などのために物流の改善に取り組む食品メーカーは、前年より65社増えて409社になりました。常温の加工食品について販売期限を延ばす小売事業者も、54社増えて271社と報告されています。
制度と現場の両方が動いている
メーカーが賞味期限を延ばしたり年月表示にしたりしても、小売や卸が受け入れる納品・販売期限が変わらなければ、廃棄は減りません。そのため、メーカーの表示の工夫と、小売・卸の期限ルールの緩和を組み合わせて進めることが重要になります。
この動きは、先に紹介したキユーピーの事例のように、メーカー単独では完結しない取り組みを支えています。国の側でも、食品ロス削減を後押しする枠組みが整えられています。
5つの事例を比べて見えること|誤解しやすい点と選び方
5つの事例を、先ほどの4段階に当てはめて比べます。
- セブン-イレブン 売り切る段階(ポイント還元で購入のきっかけをつくる)
- ローソン 作る前・売り切る・余ったら活かすをつなぐ(AI発注、値引き、寄付)
- ファミリーマート 売り切る段階と、売る前の期限設定(シールの見せ方、消費期限の2時間延長)
- キユーピー 売る前に止める段階(年月表示と賞味期間の延長)
- 業界の商習慣の見直し 売る前に止める段階(納品・販売期限の緩和)
「値引き」は安売りが目的ではない
値引きやポイント還元は、価格競争ではなく、廃棄になる前に買ってもらうための手段です。ローソンの寄付つきの仕組みのように、買うことが支援につながる形にすると、購入の動機も増やせます。
期限の延長は安全性を下げる話ではない
消費期限や賞味期間を延ばす場合、各社とも保存テストなどで品質を確認したうえで進めていると説明しています。期限の「見せ方」と「品質の確認」はセットで動いており、確認なしに延ばしているわけではありません。
寄付や飼料化は「最後の受け皿」である
フードバンクへの寄贈やリサイクルは重要ですが、食品ロスの発生そのものを減らす対策とは役割が違います。発生を抑えたうえで、それでも余った分を活かすという順序で考えると、取り組みの意味が整理しやすくなります。
消費者として参加できること|企業の仕組みを使いこなす
企業の対策は、消費者が使ってはじめて効果が出るものが少なくありません。
値引きシール・ポイント還元の商品を選ぶ
その日のうちに食べる予定があるなら、値引きシールやポイント還元の対象商品を選ぶことが、そのまま食品ロスの削減になります。
食べる予定に合わせて、棚の手前から取る
すぐに食べる商品は、期限の近い手前の商品から選ぶと、売れ残りを減らせます。買い物のたびに、食べる日と商品の期限を見比べる習慣が助けになります。
フードドライブやフードバンクを知る
まとめ
2024年度の食品ロスは約461万トンで、そのうち約237万トンを事業系が占めています。事業系は目標を前倒しで達成しましたが、新しい目標の219万トンまでは差があり、企業の対策の重みはこれからも変わりません。
セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマート、キユーピーの事例は、「作る前」「売る前」「売り切る」「余ったら活かす」のどの段階に働きかけるかが、それぞれ違っていました。ひとつの方法ですべてを解決するのではなく、複数の段階を重ねることで、ロスを減らす仕組みが厚くなります。
企業の工夫は、消費者が値引き商品や手前の商品を選ぶことで、はじめて効果を発揮します。まず1つ、次の買い物で値引きシールの付いた食品を手に取ってみてください。
- 2024年度の食品ロスは約461万トンで、事業系が約237万トンを占めている
- 事業系の新目標は2030年度までに2000年度比60%減(219万トン)で、2024年度は約57%減の水準
- 企業の対策は「作る前・売る前・売り切る・余ったら活かす」の4段階で整理できる
- 期限の延長や年月表示は、品質確認を経て段階的に広げられている
- 値引き商品や手前の商品を選ぶなど、消費者の行動が企業の対策を支える
参考文献
- 消費者庁「2024(令和6)年度食品ロス量推計値の公表について」(2026)
- 環境省「我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和6年度)の公表について」(2026)
- 全国スーパーマーケット協会「令和6年度 食品ロス量推計461万t、事業系は2000年度比57%削減」(2026)
- Impress Watch「ローソンの食品ロス削減プログラム『FOOD GOOD SMILE』第3弾」関連記事(2026)
- Impress「ローソンのTo Good To Goを使った食品ロス削減の実証事業」関連記事(2026)
- ファミリーマート「『涙目シール』の全国展開と消費期限延長」ニュースリリース(2025)
- ファミリーマート サステナビリティトピックス「食品ロス削減の取り組み」(2025)
- LNEWS「キユーピー マヨネーズの賞味期限年月表示・賞味期間延長の対象拡大」(2025)
- Impress Watch「セブン-イレブンのエシカルプロジェクト」関連記事(2020)
- LOGI-TODAY「流通経済研究所の食品ロス削減の取り組み調査」関連記事(2025)




