気候変動とは、さまざまな時間の区切りで見た気候の変化を指します。
しかし地球温暖化の進行に伴って、現在は地球温暖化と同義のように扱われています。
世界全体の問題として解決が急がれる気候変動がこのまま進むと、私たち人間をはじめほとんどの生物が地球に住めなくなってしまいます。
大きな影響が懸念されている中、具体的にどんな影響があるのか説明ができる人は少ないのではないでしょうか?
そこで、気候変動が地球に与える影響をより身近で深刻な問題と捉えてもらうため、今実際に起きている影響やこれから起きうる影響について解説します。
気候変動の現状
環境省は、2014年の「政府間パネル(IPCC) 第5次評価報告書」により、1880年から2012年の期間に陸域と海上を合わせた世界平均地上気温が0.85℃上昇していると発表しました。
また、10年区切りで平均気温を見た場合、1850年以降のどの年よりも高い気温を記録しています。
2021年の「政府間パネル(IPCC) 第6次評価報告書」では、今後数十年で二酸化炭素(Co2)をはじめとする温室効果ガスの排出が大幅に減少しない場合、21 世紀中に1.5℃~2℃の気温上昇があると発表されました。
世界の平均気温が1℃上昇した場合、日本国内における猛暑日の発生回数は約1.8倍に増加します。
この点だけでも、今後の気温上昇による問題が深刻であることがわかります。
気候変動が起きる原因とは?
気候変動の原因は、大きく捉えると自然要因と人為的要因に分けられます。
まず自然要因では、図のように太陽からのエネルギーで地上の気温が上がり、地上から放射される熱を温室効果ガスが吸収・再放出して大気が温まります。
この流れにより温室効果ガスの濃度が高まると、温室効果がより強くなり気温上昇へと繋がります。
一方、人為的要因には人間の社会活動が挙げられます。
車の使用やゴミの廃棄に伴う温室効果ガスの排出、森林破壊が気候変動の要因となっています。
気候変動が地球に及ぼす影響
気候変動は、地球の自然環境や生態系、私たちの暮らしに多くの悪影響を及ぼします。
具体的に、どんな影響があるのか見ていきましょう。
海・河川への影響
気温の上昇は北極・南極の氷を溶かし、海面上昇をもたらします。
島国では海岸線が内陸に入り込み、国全体が消滅する危険にさらされています。
ハワイにあるワイキキビーチも水没の危機に瀕していて、島国である日本も他人事ではありません。
さらに、海面上昇で潮位が高くなっている場合に高波が発生すると、洪水の被害が甚大化します。
また、気温上昇によって降雪量は減少します。
降雪がなければ川の水が枯渇し、ヨーロッパや日本のように雪解け水を生活用水としている国では、必要量の水が得られなくなります。
森林への影響
気候変動による温暖化が進むと、森林火災が頻発します。
これは、気温上昇による空気の乾燥が原因です。
空気が乾燥すると樹木の葉の水分がなくなり、燃えやすい状態になります。
葉が風でこすれ合うことで摩擦の熱と葉に含まれた油分で火がつき、周囲に燃え広がることで山火事へと発展するのです。
山火事は森林に住む生態系を壊すだけでなく、土壌を壊して植物が育たない地質へと変えてしまいます。
また、樹木が燃えることでCO2を多量に排出する一方、CO2を吸収し酸素を排出してくれるはずの樹木を一挙に失うことになり、地球温暖化を加速させます。
生態系への影響
気候変動は、生態系にも大きな影響を及ぼします。
影響を受けるのは、海面上昇によって住処を失う北極・南極に住むシロクマやペンギンだけではありません。
海水や川の水に住むプランクトンが増加し、水質悪化を引き起こしたり、魚が住めない環境となります。
また、気候変動に伴う水温の上昇で海のサンゴは白化現象を起こし、サンゴ礁が衰退しています。
白化現象とは、サンゴに共生する褐虫藻が失われ、サンゴの白い骨格が透けて見える現象です。
この状態が続くと、サンゴに必要な光合成産物を受け取れず、サンゴは死滅します。
サンゴ礁がなくなるとそこに住む海の生物をはじめ、過半数の海洋生物がなくなると言われています。
気候変動によって、今後絶滅する動物・植物は増加するでしょう。
その他、地上ではこれまで育っていた植物が育たなくなり、その植物を食べていた鳥やシカがエサを失います。
そこでエサを求めて人間の暮らす地域に移動し、農作物を食べてしまって人間が食べるはずの農作物に影響を及ぼします。
人間の生活への影響
気候変動が私たちの生活に与える影響の一部として、例えば、気温上昇によって猛暑日が増加し、熱中症の増加に繋がります。
また、農作物の収穫量や漁獲量の減少で、現在より多くの人が食糧難に陥ります。
さらに、海面上昇や高波によって洪水の被害も甚大化が予測されています。
その他、感染症の蔓延も懸念されています。
これは、気温上昇でウイルスにとって生息しやすい気温となったり、食糧難によって生物の免疫が下がったりすることで感染症の感染リスクが高まるのです。
気候変動による影響に対しておこなわれている取り組み
気候変動による影響の大きさを受けて気候変動への対策はSDGsの目標にも採用され、世界各国で気候変動を鈍化させる取り組みがおこなわれています。
CO2を世界でもっとも多く排出する中国は、2030年までにGDP当たりのCO2排出量を60~65%削減するとしているほか、2060年までのカーボンニュートラル達成に向けて化石燃料から再生可能エネルギーへの移行に取り組もうとしています。
一方、日本は2021年4月に、温室効果ガスについて2030年までに2013年度比46%削減を目指すと発表しました。
その達成のため、再生可能エネルギーの導入率を上げて脱炭素電源の最大限の活用をおこなうとしています。
このように、各国では世界全体の達成目標を踏まえて独自の数値目標を掲げ、その達成に向けた取り組みをおこなっています。
気候変動による影響に対して私たちがすべきこと
世界では今、気候変動に歯止めがかからないことから、その影響に適応する準備を並行しておこなう必要があると言われています。
産業革命以降、私たちは自然環境を犠牲に目覚ましい経済発展を遂げてきました。
しかし、気候変動という大きな問題によって、これまで私たちが破壊してきた自然環境の代償を自ら払うこととなっています。
今後、自らの命、大切な人の命、そして動植物や地球環境を失わずに済むよう、そして気候変動の影響を少しでも小さくできるよう、ひとりひとりが考え行動するしなければなりません。
エコバッグの使用や節電・節水など、小さなことと感じても少しずつ着実に行動を起こすことが必要でしょう。
気候変動に関して、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
ぜひ、あわせてご参照ください。
参照元:
・地球温暖化の現状│環境省
・気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書(AR5)サイクル│環境省
・温暖化で平均気温が1度上がると国内の猛暑日は1.8倍に 気象研と東大がスパコンで予測│Science Portal
・気候変動対策について│環境省
・気候変動│国土交通省気象庁
・サンゴ礁の働きと現状│水産庁