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海面上昇で沈む国はどこ?深刻な負の連鎖を徹底解説|ツバルの今と日本にできること

海面上昇で沈む国はどこ?深刻な負の連鎖を徹底解説

地球温暖化によって海水の体積が増え、氷床や氷河が解け続けると、かつて陸地だった場所が少しずつ海に飲み込まれていきます。なかでも標高の低いサンゴ礁の島国は、浸水や塩害といった被害を真っ先に受けています。「海面上昇で沈む国はどこなのか」という問いの答えは一つではなく、ツバルやモルディブ、キリバスなど複数の国がそれぞれ異なる形で危機に直面しています。この記事では、各国の最新の状況と、そこから広がる水不足・食料不足という負の連鎖、そして日本との関わりや私たちにできる行動まで、具体的に掘り下げていきます。

この記事で学べること

  • 海面上昇の影響を受けている国と、それぞれの最新の対応策
  • 浸水から水不足・食料不足へとつながる「負の連鎖」の仕組み
  • サンゴ礁の環礁国がほかの国より沈みやすい地形的な理由
  • 日本の太平洋島嶼国支援と、日本国内の海面上昇リスク
  • 気候変動の不公正な構造と、私たちが今日からできること

海面上昇で沈むとされる国はどこか|浸水が進む島々の最新状況

海面上昇の影響をとりわけ強く受けているとされるのが、モルディブ諸島、チャゴス諸島、ツバル、キリバス、マーシャル諸島、トケラウといった太平洋・インド洋の島国です。これらの国に共通するのは、国土の大半がサンゴ礁の上に形成された低地であることです。多くの沿岸地域で数十センチ規模の浸水が確認されており、生活圏そのものが縮小しつつあります。

海面がなぜ上昇するのかというと、海水温の上昇による熱膨張と、グリーンランドや南極などの氷床・氷河の融解が主な要因とされています。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告書では、世界平均海面水位は20世紀の間にすでに上昇しており、今後も排出シナリオによっては21世紀末にかけてさらに上昇が続く可能性が指摘されています。この海面上昇そのものが起こる仕組みについては、別記事でより詳しいメカニズムと最新データを扱っています。

なかでもツバルの浸水被害は、テレビや国際会議の場で繰り返し取り上げられてきました。首都機能が集まる環礁島「フナフティ」では、海水の侵食によって海岸沿いのヤシの木が倒れる様子が報告されています。陸地が狭くなる一方でツバルの人口は増加傾向にあり、やむを得ず海岸付近に住み続けている住民も少なくありません。

モルディブやキリバス、マーシャル諸島の状況

モルディブは島の平均標高が1メートル前後とされ、観光収入に依存する経済構造のなかで護岸工事や人工島の造成といった対応を進めています。キリバスは2014年に当時の大統領がフィジーの土地を購入し、「尊厳ある移住」を掲げる政策を打ち出したことで知られています。マーシャル諸島では、首都マジュロを中心に大規模な土地のかさ上げや海岸保全事業が各国の支援を受けて進められています。こうして並べてみると、同じ海面上昇という課題に対しても、国ごとに「残る」「かさ上げする」「移住を選択肢に入れる」という異なる戦略が取られていることが見えてきます。

海面上昇が引き起こす負の連鎖|食料・水・健康を奪うメカニズム

浸水だけが問題なのではありません。海面上昇は、島国の暮らしを支える水と食料を同時に奪っていく「負の連鎖」を引き起こします。この連鎖の仕組みを理解すると、なぜ島嶼国の被害がここまで深刻なのかが見えてきます。

淡水レンズの枯渇と水不足

環礁島のほとんどは、地下にたまった淡水の層である「淡水レンズ」から生活用水をまかなっています。淡水レンズは海水の上に薄く浮かぶように存在しているため、海面が上昇して海水が土壌に流れ込むと、淡水レンズ自体が押し上げられて貯められる水の量が減ってしまいます。さらに海水が混ざり込むことで水質そのものが悪化し、飲み水の確保がいっそう難しくなります。

塩害による農業と食料への打撃

ツバルをはじめとする島国では、タロイモなど熱帯性の作物栽培が暮らしを支えてきました。ところが土壌や地下水に海水が浸み込む塩害が起こると、作物が育たなくなり、食料の自給が難しくなります。輸入に頼らざるを得なくなれば、物価の変動や輸送コストの影響も受けやすくなり、家計への負担も増えていきます。

こうして水不足と食料不足が同時に進行すると、住む場所を失うだけでなく、健康的な生活を維持すること自体が難しくなっていきます。浸水という目に見える被害の裏側で、暮らしの土台そのものが静かに削られているのが、島嶼国が直面している現実です。

なぜサンゴ礁の環礁国から沈んでいくのか|地形の脆弱性

透き通った海で知られるサンゴ礁ですが、その成り立ちそのものが、島を海面上昇に弱くしている一因になっています。

環礁島はどうやってできた土地なのか

環礁島は、サンゴが作り出した石灰質の破片が波によって運ばれ、一定の場所に堆積してできた土地です。ツバルの国土の多くは、有孔虫と呼ばれる微小な生物の石灰質の殻が大量に積み重なってできています。地質学的に見ればごく新しい土地であるため、地盤としてはもともと脆弱で、海面上昇やエルニーニョ現象による海水温・海水位の変動の影響を真っ先に受けやすい構造になっています。

フナフティの標高とサイクロンリスク

ツバルの国土は9つのサンゴ礁からなり、とくに1月から3月にかけては潮位が高くなる時期にあたります。サンゴ礁はスポンジのように水を通しやすい性質を持つため、低地では地面から海水がしみ出してくることもあります。人口の半数近くが集まる都市フナフティは、平均標高が1.5メートルを下回るとされ、加えて熱帯低気圧(サイクロン)の通り道にもなっています。高潮と波浪が重なると、浸水被害はさらに拡大してしまいます。

2024年以降に動き出した世界の対応|デジタル国家構想と移住の枠組み

島嶼国側も、ただ被害を受け続けているわけではありません。国としての存続そのものを守るための新しい取り組みが、ここ数年で具体的な形を取り始めています。

ツバルは2022年の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP27)で、当時の法務・通信・外務大臣がメタバース空間からスピーチを行い、国土が水没しても国家としての機能や文化をデジタル上に残す「デジタル国家」構想を打ち出したことで世界的な注目を集めました。この構想は「Future Now Project」と呼ばれる取り組みの一環として進められています。

さらに2023年には、ツバルとオーストラリアのあいだで「ファレピリ・ユニオン」と呼ばれる条約が結ばれました。この条約には、オーストラリアがツバルの自然災害への対応を支援すること、そして国土が水没するような事態になってもツバルの国家としての継続性と主権を認め続けることが盛り込まれているとされています。あわせて、気候変動の影響を理由にオーストラリアへの移住を希望するツバル国民向けに、年間一定数の特別な移住枠を設ける仕組みも導入されたと報じられています。国家の存続を担保しながら、個人の移住という選択肢も用意する、これまでにない形の枠組みといえます。

国際的な資金面でも動きがありました。2023年のCOP28では、気候変動による「損失と損害」を支援するための基金の運用開始が合意され、各国から拠出の表明がありました。続く2024年のCOP29では、途上国向けの気候資金の新たな目標(NCQG)が議論の中心となりましたが、島嶼国側からは「必要な規模にはまだ届いていない」という声も上がっています。デジタル国家構想や移住の枠組みが整い始めた一方で、資金支援の規模をめぐる議論は、今もなお続いているのが実情です。

日本との関わり|太平洋島嶼国支援と国内の「沈むリスク」

海面上昇は遠い海外の問題だと感じるかもしれませんが、日本は太平洋島嶼国の支援国であると同時に、自国内にも似た構造のリスクを抱えています。

日本から太平洋島嶼国への協力

日本は3年に一度、太平洋島嶼国の首脳を招く「太平洋・島サミット(PALM)」を主催しており、2024年7月には東京で開催された会合のなかで、気候変動への適応や防災分野での協力が議題に上がりました。これまでもJICA(国際協力機構)を通じて、太平洋地域の国々に対し、海岸保全や水資源確保に関する技術協力が行われてきました。ツバルのように国土そのものが脆弱な国にとって、こうした防災インフラや水インフラへの支援は、浸水被害への対症療法にとどまらず、暮らしを維持するための土台づくりとしての意味を持っています。

日本国内にもある「ゼロメートル地帯」

一方で、日本国内にも海面より標高の低い「ゼロメートル地帯」が東京・大阪・名古屋などの大都市圏に広がっており、国土交通省の資料ではそうした地域に数百万人規模の人々が暮らしているとされています。地盤沈下と海面上昇が重なれば、高潮や豪雨時の浸水リスクが一段と高まることになります。島嶼国の問題を「遠い国の出来事」として眺めるのではなく、自分たちの暮らす沿岸都市にも通じるリスクとして捉え直すと、支援のあり方も見えやすくなるのではないでしょうか。

誤解されやすいポイント|排出していない国ほど沈んでいく不公正

海面上昇をめぐる話でしばしば見落とされがちなのが、被害を受けている国と、その原因となる温室効果ガスを多く排出してきた国が、必ずしも一致していないという点です。

ツバルやキリバス、マーシャル諸島のような小島嶼開発途上国は、世界の温室効果ガス排出量に占める割合が全体のごくわずかにとどまるとされています。それにもかかわらず、国土の水没という最も深刻な形で気候変動の影響を受けているのが現状です。この非対称な構造は「気候正義(クライメート・ジャスティス)」と呼ばれる考え方のなかで議論されており、COP28やCOP29での「損失と損害」をめぐる交渉も、この不公正をどう是正するかという問いが根底にあります。

もう一つ誤解されやすいのが、「島国の人たちはただ被害を受け入れているだけ」という見方です。実際にはツバルのデジタル国家構想やキリバスの移住政策のように、限られた資源のなかで国としての主体性を保とうとする判断が積み重ねられています。「排出量が少ない国だから影響も小さいはず」という直感も、「支援される側は受け身である」という思い込みも、どちらも島嶼国の現実とは異なる方向を向いていることを、まず押さえておきたいポイントです。

私たちにできること|寄付・消費の選択・情報を知り続けること

島国の人々が抱える課題を、遠い場所の出来事として終わらせないために、日本にいる私たちにもできることがあります。

一つは、信頼できる団体を通じた寄付です。日本ユニセフ協会をはじめとする国際的な支援団体は、太平洋島嶼国を含む各地域の子どもや住民の生活を支える活動を継続しています。支援したいテーマや地域を選んで寄付できる仕組みを設けている団体も多いため、公式サイトで活動内容を確認してみるとよいでしょう。もう一つは、日々の消費や選択を通じた間接的な関わりです。温室効果ガスの排出削減につながる行動、たとえば移動手段の選び方や電力の使い方を少し見直すことも、巡り巡って海面上昇のスピードに関わってきます。そして、COPでの合意内容や各国の対応がどう変化していくのかを、ニュースなどで継続して追っていくこと自体も、課題を忘れないための大切な一歩になります。

難しく考える必要はありません。まずは今日、気になった団体の公式サイトを一つ開いてみることから始めてみてください。

まとめ

海面上昇によって沈みつつある国は、ツバルだけではありません。モルディブ、キリバス、マーシャル諸島など、サンゴ礁の上に成り立つ複数の島国が、それぞれ異なる形で国土を守るための選択を迫られています。浸水という目に見える被害の裏側では、淡水レンズの枯渇や塩害による食料不足という負の連鎖が静かに進行しており、暮らしの土台そのものを脅かしています。

2022年のデジタル国家構想や2023年のファレピリ・ユニオンのように、国家の存続そのものを守るための新しい枠組みも生まれ始めていますが、気候資金の規模をめぐる議論は今も続いています。日本もまた、太平洋島嶼国への支援国であると同時に、国内にゼロメートル地帯を抱える当事者でもあります。遠い国の出来事として眺めるのではなく、自分たちの沿岸都市にも通じる課題として捉え直すことが、次の一歩につながっていくはずです。

  • ツバル・モルディブ・キリバス・マーシャル諸島など複数の島国が浸水被害に直面している
  • 海面上昇は水不足と食料不足を同時に引き起こす負の連鎖を生む
  • サンゴ礁の環礁国は地形的にもともと脆弱で、標高の低さとサイクロンの両方にさらされている
  • 2023年のファレピリ・ユニオンなど、国家存続と移住を両立させる新しい枠組みが生まれている
  • 日本は支援国であると同時に、国内のゼロメートル地帯という当事者性も持っている

参考文献

  • 記事を書いたライター
  • ライターの新着記事

コロナ禍の影響で仕事を休職し、生きづらさを感じていたとき、SDGsに出会いました。プライベートではエシカルグッズを集めてみたり、キッチンガーデンを楽しんでみたりしながら、巣ごもり生活を送っています。ひとりひとりが地球に優しい行動を取れるように、SDGsを広めていきたいです。

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