SDGsは世界全体で達成すべき目標であり、「持続可能な開発」という意味があります。
国連がSDGsをつくったのは、これまで人間たちが環境や人権などを犠牲にしてまで経済成長をすすめた結果、地球がさまざまな課題を抱えてしまったからです。
持続可能な開発をするためには、経済活動はもちろんですが、社会で誰一人取り残されないようすべての人を尊重すること、環境を保護することが欠かせません。
これは、人間活動においての基本で非常に重要な活動であることから、高校教育においてもSDGsは積極的に取り入れられています。
今回は、高校でのSDGs達成に向けた取り組み事例を紹介します。
SDGsの取り組みを行う高校の取り組み事例を5つ紹介
SDGsにおける取り組みは、全国各地の高校でも見られるようになりました。
今回は、特色ある活動をする5つの高校を取り上げて事例を紹介します。
岩倉高等学校のSDGsの取り組み事例
東京都台東区にある岩倉高等学校は、SDGsの目標達成に向けて「未来の姿」を考え、実践的に取り組んでいます。
SDGsの取り組みとして、課外学習をたくさん実践していることが特徴です。
カンボジアのアンコールツアーや日本語学校の人たちと、オンラインでの交流会をこれまでに複数回開催しています。
最近では、日本の遊びとして知られる「指遊び」や「しりとり」のルールをカンボジアの人たちに説明をした上で実践しました。
カンボジアの人たちと笑顔が溢れる交流をオンラインで重ねることで、コロナ禍でも行動すれば世界が広がることを体験しています。
総合探求では、「SDGs×起業プログラム」のテーマで、起業家の方々から授業をしてもらいました。
社会に貢献するために培ったスキルをSDGsにも活かそうという話を聞き、生徒たちはびっしりとメモをとりました。
また、企業や団体からの協力も得て、企業・団体・教育で合同のワークショップを開催したり、生徒が直接企業の社長やスタッフとやりとりをしたりと、多くの刺激を受ける場となっています。
参照元:岩倉高等学校HP
光が丘女子高等学校のSDGsの取り組み事例
愛知県にある光が丘女子高等学校では、主要5教科だけでなく全ての教科から世界が抱える問題にアプローチするよう挑戦しています。
クラブ活動や学校行事でも同様です。
近年、海洋プラスチック問題が世界の課題となっています。
ハブラシの主な原料はプラスチックであるため、ゴミとして焼却されると二酸化炭素が発生します。
そこで、生徒会が主導して2018年から、家庭用品メーカー「ライオン」と世界的なリサイクル企業「テラサイクル」の共同事業「ハブラシ回収プロジェクト」に参加し、環境問題について学びながら回収に取り組んできました。
全校で回収したハブラシは企業に送り、ハブラシからできた再生プラスチックの植木鉢をもらうことで、循環する体験をしています。
ハブラシからできた再生プラスチックの植木鉢では、「国際女性デー」のシンボルとして飾られることが多い「ミモザ」の苗木を植えて大切に育てています。
こうした取り組みが、環境を保護することやジェンダー平等などについて学ぶきっかけとなっているのです。
参照元:光が丘女子高等学校HP
御殿場西高等学校のSDGsの取り組み事例
静岡県にある御殿場西高等学校には「SDGs委員会」があります。
各クラスから委員会メンバーを選出し、メンバーが中心となって、各クラスの月ごとの行動目標を定めて実行していくというものです。
この取り組みにより、生徒一人ひとりが当事者意識を高くもち、主体的な行動につながっています。
SDGs委員会のメンバーは、「SDGs新聞」や「SDGs動画」も作成し、各クラスの生徒一人ひとりに向けて配信しています。
また、授業の中でも英語学習や総合的な探求をする際に、SDGsについて学びます。
学校内でのさまざまな課題をSDGsの枠組みとして考え、課題解決を目指しているのです。
エネルギー問題、ジェンダー問題、ごみ処理をはじめ、あらゆる問題において、生徒の目線から解決へ導く提案があり、それは次年度の学校運営に反映されました。
御殿場西高等学校では、各教室の黒板やホワイトボードに、SDGsにおける17の目標のステッカーを用意し、あらゆる教科の授業で、SDGsとの関連性を意識するようにしています。
参照元:御殿場西高等学校HP
岡山工業高校のSDGsの取り組み事例
岡山工業高校では、工業高校ならではのサスティナブルな取り組みが行われています。
校内にはたくさんの桜の木があり、春には満開の桜が咲き誇ります。
桜の木は秋になるとたくさんの葉を落とすため、以前は落ち葉の処分に困っていましたが、今では落ち葉を集めて腐葉土にしています。
校内にある花壇の肥料として再利用するようになったのです。
こうした取り組みをとおして、陸の豊かさを守るということを体験から学んでいます。
また最近では、人や国の不平等をなくしたいという想いで、カンボジアの姉妹校に手作りのマスクを送りました。
伝統的な和柄の布を使って、学生たちが一枚一枚丁寧に作ったマスクです。
また、新型コロナウィルスの感染対策として、各教室の出入り口に手指消毒機を設置しています。
情報技術科の学生たちが専門的に学んだ技術を生かし、手をかざすと自動で消毒液がでる機械を製作しました。
電力は、ミニソーラーパネルで作っていることもポイントです。
参照元:岡山県立岡山工業高等学校HP
武田高等学校のSDGsの取り組み事例
広島県にある武田中学校・高等学校では、SDGsの達成に向けた活動の実践校となることを宣言しています。
世界の諸問題を自分ごととして捉えて行動する生徒の育成を教育指標とし、社会が抱える課題の解決につながる価値観や行動が育まれています。
高校一年生の授業では、現代文・英語・保健・家庭科の教科で、食品ロスや貧困問題、健康を守る食事、発展途上国や災害時に必要な「食」などにおいて、さまざまな角度から考える、SDGsの横断型学習が行われました。
生徒たちによるSDGsのプロジェクトも生まれており、学園祭ではペットボトルキャップを回収して、エコキャップアートが作られました。
ペットボトルキャップを回収するために全校に呼びかけて回収箱を作ったことで実現しています。
学園祭後には、ペットボトルキャップを業者に送ることで発展途上国へワクチンを送られる運動に参加しました。
他にも、UNIQLOとGUの「“服のチカラ”プロジェクト」にも参加しています。
洋服の回収を保護者にも呼びかけながら取り組んでおり、レポートを作成・提出しています。
参照元:武田中学校・高等学校HP
まとめ
SDGsの取り組みは、個人や企業だけではなく、高校や大学でも多く取り組まれています。
高校では、校内の環境を見直すことや、家族にも呼びかけて協力して行う取り組み事例が多く見られます。
中には、発展途上国へ向けて発信するような取り組みをする高校もあるのです。
これから進路を決めて社会を担う高校生たちが、世界が抱えている問題を自分ごととして捉えることができれば、持続可能な開発はより前進するでしょう。
高校でのSDGsの取り組みは、2030年に向けてより広がっていくのではないでしょうか。
大人たちがこれから社会を担う高校生たちの模範となれるよう、このような取り組みにも目を向けてみてください。