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「大学SDGsランキング」と呼ばれるのは、英国の高等教育専門誌Times Higher Education(THE)が毎年発表している「THEインパクトランキング」です。大学の研究・教育・運営・社会との連携がSDGsにどれだけ貢献しているかを評価します。2021年版では東北大学が日本勢の最上位となり、広島大学、筑波大学、京都大学、岡山大学、北海道大学、東京大学とともに総合101〜200位に入りました。2026年版では名称が「サステナビリティ・インパクト・レーティング」に変わり、日本勢の先頭にも変化が出ています。この記事では2021年の結果を起点に、その後の変化、ランキングの読み方、大学の取り組み事例、受験生や就活生の使い方を整理します。
2021年の大学SDGsランキングの結果|日本勢の顔ぶれ
2021年版のTHEインパクトランキングには、世界から1,240大学が参加したと報告されています。総合ランキングは、SDGsの17目標のうち、必須とされるSDG17(パートナーシップ)と、各大学が選んだ目標のスコアを組み合わせて決まる仕組みです。
日本勢で総合の最上位に入ったのは東北大学でした。広島大学、筑波大学、京都大学、岡山大学、北海道大学、東京大学も、同じ101〜200位の区分に並びました。世界の大学が1,000校以上参加するなかで、国内の国立大学が上位帯に複数入った年だったといえます。
目標別ランキングで光った分野
総合とは別に、17の目標ごとのランキングもあります。2021年は、イノベーションを扱うSDG9で東北大学や京都大学、名古屋大学、東京大学、大阪大学など複数校が上位に入ったと伝えられました。保健のSDG3や水・衛生のSDG6でも、日本の大学がそれぞれ上位に入っています。
ただし、当時の目標別の細かな順位は、報道や各大学の発表で数え方が揃っていない部分があります。個別の順位を引用するときは、THEの公式ページか各大学の発表で確認してください。
「強い分野で勝負できる」のが特徴
このランキングは、全部の目標で高得点を取る必要がありません。大学は自分の強みがある目標を選んでデータを提出できます。そのため、総合順位が中位でも、特定の目標では世界上位に入る大学が出てきます。「総合は何位か」だけでなく「どの目標で評価されているか」を見ると、大学の個性が読み取れます。
2025年・2026年の最新結果|日本の先頭はどう変わったか
2021年から5年で、ランキングの顔ぶれも名称も変わりました。ここでは直近2回の結果をまとめます。
2025年版の世界トップと日本
2025年版は6月18日に発表され、130の国・地域の2,526大学が対象でした。総合1位は豪州の西シドニー大学で、4年連続のトップです。アジアの大学が全体の半数以上を占め、17の目標別ランキングのうち10でアジアの大学が首位に立ったとされています。
日本勢では、北海道大学が総合44位で国内1位でした。2021年に日本勢の先頭だった東北大学は、このときも国内上位に位置しています。
2026年版は名称が変わり、北海道大学が7位タイへ
2026年版は「サステナビリティ・インパクト・レーティング(旧インパクトランキング)」として発表されました。2019年の開始から数えて8回目で、116の国・地域から1,646大学が参加しています。総合1位は英国のマンチェスター大学で、2位にグリフィス大学、3位に西シドニー大学が続きました。
日本からは30校が総合ランキングに入り、そのうち14校が私立です。上位は次のとおりです。
- 北海道大学は7位タイで、前年の44位から大きく上がり、2022年以来のトップ10復帰です
- 広島大学は77位です
- 九州大学は101〜200位です
- 慶應義塾大学と立命館大学は201〜300位、早稲田大学は301〜400位です
北海道大学は目標別でも、SDG2(飢餓をゼロに)で世界2位、SDG15(陸の豊かさも守ろう)で18位と評価されています。
2021年と2026年を単純に比べられない理由
2021年の日本勢の先頭は東北大学、2026年は北海道大学です。先頭が入れ替わったように見えますが、参加校の数や構成、評価の枠組みは年によって変わります。順位の上下だけで「大学の力が伸びた、落ちた」と結論づけるのは避けたほうが安全です。見るなら、同じ大学が複数年でどの目標を強みにしているかのほうが、読み取れることが多くなります。
大学SDGsランキングで誤解されやすい3つの点
ランキングは便利な指標ですが、読み方を誤ると判断を誤ります。誤解されやすい点を3つ挙げます。
偏差値や教育の質を示す順位ではない
このランキングが測るのは、SDGsに関する研究、運営、地域・社会との連携などの取り組みです。入試の難易度や、授業の良し悪しとは別の物差しです。上位の大学が自分に合う大学とは限りませんし、順位が低いことが教育の質の低さを意味するわけでもありません。
参加は大学の任意で、データは大学が提出する
ランキングに載るのは、参加を申し込んで必要なデータを提出した大学だけです。参加していない大学は、取り組みの有無にかかわらず載りません。また、評価の元になるのは大学が提出する情報が中心です。順位が高いことは取り組みを説明する力の高さも反映している、と受け止めておくのが現実的です。
総合順位より「どの目標で評価されたか」が大事
前の章でも触れたとおり、強みの目標は大学ごとに違います。農学や環境に強い大学、医療に強い大学、工学に強い大学で、評価される目標は変わります。自分の関心と大学の強みが重なる目標を探すと、ランキングが進路選びの手がかりになります。
国内の大学のSDGs取り組み事例
ここからは、日本の複数の大学の取り組みを見ていきます。各大学の公式サイトで公開されている内容をもとにしています。
東北大学|防災と「社会にインパクトある研究」
東北大学は、東日本大震災をきっかけに、「安心・安全で持続可能な社会」をめざす取り組みを進めてきました。その柱のひとつが防災で、災害復興の研究を担う組織を設けたほか、世界防災フォーラムなどの場づくりも続けています。また、2015年に「社会にインパクトある研究」を始め、持続可能な環境や健康長寿社会などのテーマで研究が進められています。
京都大学と名古屋大学|キャンパスと研究の両面から
京都大学には、学生と教職員でつくる「エコ~るど京大」という団体があります。環境問題を多様な視点で考え、持続可能なキャンパスをめざす活動をしており、環境パフォーマンスデータを環境報告書として公開しています。名古屋大学は2005年に環境方針をつくり、「持続可能な社会の実現に貢献する」ことを理念に掲げました。食料・健康・環境の課題に向けた研究が、社会実装を見据えて進められています。
東京大学と大阪大学|全学で取り組みを見える化する
東京大学には、SDGsに関連する活動を可視化し発信する「未来社会協創推進本部登録プロジェクト」の仕組みがあります。2021年11月時点で209のプロジェクトが登録されていました。大阪大学は「SDGs推進委員会」を立ち上げ、多様性の推進や人材育成を全学体制で進めています。産学連携の実証実験として、学内連絡バスに電気バスを導入した取り組みも公表されています。
立命館大学|学生団体が食から変える
立命館大学では、学生団体が活発に活動しています。「Uni-Com」は食堂などから出る有機廃棄物を堆肥にし、地域に還元する循環の仕組みづくりに取り組んでいます。「LiNK」は食の多様性と持続可能性をテーマに活動し、学内の生協食堂へのヴィーガンメニュー導入につなげました。大学が仕組みを整え、学生が現場で動くという分担の例として参考になります。
学生が参加できる「大学SDGs ACTION! AWARDS」
大学のSDGsは、ランキングを眺めるだけでなく、学生が主役になれる場もあります。朝日新聞社が主催する「大学SDGs ACTION! AWARDS」は、大学生や若手研究者がSDGs達成に向けたアイデアや活動を発表するコンテストです。
2021年から2025年までの受賞例
2021年は静岡大学の防災教育の取り組みがグランプリを受賞しました。準グランプリには、筑波大学のマングローブ共存型の養殖、東京大学大学院の環境配慮型コンクリートを使った海の教育プログラム、立命館大学の食品ロス循環プロジェクトが選ばれています。
2025年は3月7日に最終選考会が開かれ、神戸大学起業部のチーム「SkinNotes」が、アトピー性皮膚炎の小学生向けに緑茶染めのインナーシャツを開発した事業でグランプリに選ばれました。エントリーは109件でした。東北大学のチームも、研究室の課題を自動化で解決する「LabNeeds」でウェルビーイング・エクスペリエンス部門のグランプリ(オープンアップ賞)を受賞しています。
次の応募に向けて今からできること
2025年大会の例では、募集の締切は1月下旬、最終選考は3月でした。今の10月から準備を始めれば、冬の募集に間に合わせやすい時期です。ゼミやサークル、学生団体で取り組んでいる活動があれば、課題、行動、成果の3点を1枚にまとめてみると、応募の可否を判断しやすくなります。次回の日程と募集テーマは、必ず主催者の最新の案内で確認してください。
大学がSDGsに力を入れる理由と、受験生・就活生の見方
大学がSDGsの取り組みを前面に出す理由は、社会的な責任だけではありません。経営上の事情も関係しています。
大学側の事情は「学生と資金の確保」
文部科学省は、2018年以降、18歳人口の減少に伴って大学進学者数が減少局面に入ると見込んでいます。大学にとって、受験生に選ばれることは年々重要になっています。SDGsへの取り組みは、大学の姿勢を示す材料になり、企業との共同研究や研究資金の確保にもつながる可能性があります。ランキングへの参加は、その姿勢を国際的に示す手段のひとつです。
受験生が見るなら、ランキングの先にある情報
受験生には、順位そのものより、大学の公式サイトにあるSDGsの取り組みページや環境報告書、学生団体の活動紹介をあわせて読むことをおすすめします。自分が学びたい分野と、大学が力を入れている目標が重なっているか。授業や研究室に、その取り組みが入っているか。この2点を見ると、パンフレットの印象に左右されにくくなります。
就活生が見るなら、大学ではなく企業の開示
就職活動では、見るべき対象は大学の順位ではなく、志望する企業の開示です。サステナビリティ報告書や統合報告書で、方針と実績がどの程度具体的に書かれているかを確認すると、企業の将来性を考える材料になります。大学のSDGsの取り組みは、学生が自分の経験として語れる題材にもなります。学内の活動に参加しておけば、面接で具体的に話せる経験が増えます。
まとめ
2021年の大学SDGsランキングでは、東北大学を先頭に、日本の国立大学が総合101〜200位に並びました。その後、2026年版では名称が「サステナビリティ・インパクト・レーティング」に変わり、北海道大学が7位タイに入っています。参加校の数や評価の枠組みは年ごとに変わるため、順位の上下より、大学がどの目標で評価されているかを見るほうが実用的です。
ランキングは、偏差値や教育の質を測るものではなく、参加は大学の任意でデータも大学が提出します。そのため、数字だけで大学の良し悪しを決めず、各大学の取り組みの中身と照らし合わせて読むことが大切です。東北大学の防災、京都大学のキャンパス環境、立命館大学の学生団体のように、取り組みは大学ごとに形が違います。
受験生は大学の公式情報で、就活生は企業の開示で、学生は自分が参加できる場で、それぞれ確かめることができます。まず1つだけ、気になる大学のSDGsページを開いて、どの目標に力を入れているか確認してみてください。
- 2021年は東北大学が日本勢の最上位で、2026年は北海道大学が7位タイに入った
- 参加校や評価の枠組みが年ごとに変わるため、順位の上下だけで優劣は判断できない
- ランキングは偏差値や教育の質ではなく、SDGsへの取り組みを測る指標である
- 総合順位より、どの目標で評価されているかが進路選びの手がかりになる
- 学生は「大学SDGs ACTION! AWARDS」などの場で、自分の活動を形にできる
参考文献
- Times Higher Education「University Impact Rankings 2025」(2025年)
- Between情報サイト「THEが「サステナビリティ・インパクト・レーティング」(旧インパクトランキング)を発表、北大は7位タイ」(2026年)
- 北海道大学「Impact Ranking」(2026年)
- 神戸大学「大学SDGs ACTION! AWARDS 2025にて神戸大学起業部SkinNotesがグランプリ受賞」(2025年)
- 東北大学工学研究科・工学部「大学SDGs ACTION! AWARDS 2025でグランプリ(オープンアップ賞)を受賞」(2025年)

