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SDGs

味の素グループのサステナビリティ戦略|SDGs取り組み事例と2030年目標を徹底解説

「味の素」ブランドで知られる味の素グループは、アミノ酸を軸にした独自技術を社会課題の解決に結びつけることで、世界的なサステナビリティ先進企業として評価を高めています。 2030年までに「10億人の健康寿命延伸」と「環境負荷の50%削減」を両立して実現することを目指しており、その取り組みの幅は途上国の栄養改善から気候変動対策まで多岐にわたります。この記事では、味の素グループの経営哲学「ASV」の概要から、具体的な事業事例・最新の外部評価まで、2024〜2025年度の最新情報を交えて整理します。

「ASV」とは何か|味の素グループのサステナビリティ経営の土台

味の素グループのSDGs推進を理解する上で欠かせないのが「ASV(Ajinomoto Group Shared Value)」という独自の経営戦略です。 創業100年を機に企業理念体系を見直して「地球持続性」「食資源」「健康な生活」の3つの社会課題を経営の中心に据え、事業を通して貢献していこうと決めました。

ASVでは、社会課題の解決に取り組み、社会・地域と共有する価値を創造することで経済価値を高め成長につなげることが目的で、SDGsの具体的な内容をASVに盛み込んで取り組みの推進が行われています。 つまり「社会のために良いことをする」と「事業として成長する」を切り離さない考え方であり、この構造が味の素グループの取り組みを持続可能にしている根幹です。

味の素グループは、「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」ことを志(パーパス)として、サステナビリティをASV経営の根幹に位置づけています。 2030年に向けたロードマップでは6つの重要テーマが設定されており、気候変動・生物多様性・栄養・人権など幅広い領域が対象となっています。

また、 2021年4月から取締役会の下部機構として「サステナビリティ諮問会議」、経営会議の下部機構として「サステナビリティ委員会」を設置し、トップダウンとボトムアップの両面からサステナビリティを推進する体制が整えられています。国連グローバル・コンパクト(UNGC)への参加表明は2009年と早く、SDGsが採択される以前から国際的な枠組みに自主参加してきた実績があります。

途上国の栄養問題に挑む|ガーナ・ベトナムでの食支援事業

味の素グループのSDGs取り組みの中でも特に知名度が高いのが、アフリカ・東南アジアの栄養改善プロジェクトです。単なる寄付やボランティアではなく、現地での「ビジネス」として設計されている点が他の支援活動とは異なります。

ガーナでの乳幼児栄養改善「Koko Plus」

2009年からガーナ共和国で離乳食の栄養バランスを強化するアミノ酸入りサプリメント「Koko Plus」の開発・製造・販売を行い、離乳期の子どもの栄養改善を進めています。ガーナでは、伝統的な離乳食としてトウモロコシを発酵させたお粥「Koko」が食べられていますが、WHOの栄養必要量の基準と照らすとタンパク質や必須アミノ酸のリジンが非常に不足しているのです。

「Koko Plus」はこのお粥に混ぜて使う小袋型のサプリメントで、 貧困層の方であっても無理なく購入できる安価で栄養価の高い食品として設計されています。 2016年から本格的な生産・販売が始まり、低身長や貧血の予防効果が示されたとして提供が広がっています。

さらに注目すべきは販売モデルの設計です。 販売モデルの構築では、現地の女性スタッフを教育・雇用することで、所得機会の創出や女性の自立支援にもつながっているとのことで、途上国などへの国際的な事業活動であるBOPビジネスのお手本ともいえる事例になりました。 この仕組みは、SDGsの目標1(貧困)・目標2(飢餓)・目標5(ジェンダー平等)に同時に貢献する構造になっています。

ベトナムでの学校給食プロジェクト

ベトナムでは農村部と都市部で異なる栄養問題が存在します。農村部では栄養不足による低身長・低体重が課題であり、都市部では逆に肥満が増加しています。味の素グループは2012年にこの問題に向き合う「学校給食プロジェクト」を立ち上げました。

味の素は現地に給食センターを設立し、自社商品を活かした健康的でおいしい料理を提供しています。給食センターを中心とするこのプロジェクトは、ボランティアではなく事業として取り組まれている点もポイントで、事業とSDGsを両立し、社会貢献活動から新たな事業に結びつける良い例と言えます。

2017年には献立メニュー開発用ソフトウェアが調理施設を持つベトナム全土の学校(3,880校)に導入され、翌2018年には小学校の保護者向けに家庭用の献立作成ソフトウェアも公開されました。技術移転という形で「栄養の知識」を広く根づかせようとしている点が、単なる食料支援とは本質的に異なります。

GHG削減の具体的数値|「BRIDGE」プロジェクトと発酵技術革新

近年、食品メーカーに対する温室効果ガス(GHG)削減への要請はとりわけ厳しくなっています。 味の素グループ全体の調達の7割は農畜水産物であり、自然の恵みに支えられたアグリフードシステムに大きく依存しています。このシステムはGHG総排出量の2割超を占め、エネルギー産業に次ぐ大きな排出源です。 食品企業として気候変動への対応は避けられない課題です。

味の素グループはこの課題に対し、製造工程から取り組む具体策を展開しています。 グルタミン酸ナトリウム(MSG)・核酸製造時に排出されるGHGは、全社の約40%以上を占めていますが、気候変動リスク対策のために海外法人を巻き込んだグローバルワンチームでのバリューチェーン横断型プロジェクト(”BRIDGE”)を立ち上げ、持続的イノベーション創出の仕組みを構築することでGHG排出量を大きく削減することに挑戦しました。

R&Dや生産部門では世界最高レベルの低資源利用発酵技術を構築し、海外技術部・工場部門との協業により本技術の導入を加速化しました。また、各工場間でのナレッジの共有に基づく省エネ活動を強力に推進しました。その結果、MSG・核酸製造時のGHG排出量を大幅に削減することができました(スコープ1+2:▲132 kt、スコープ3:▲336 kt)。

2024年は観測史上最も暑い年となり、産業革命以前からの平均気温上昇が1.5℃を上回ったことが報告されています。 豊かな地球環境と健全な社会を次世代に受け継ぐことは私たちの責務であり、持続可能な事業活動にとって不可欠です。 上記のBRIDGEプロジェクトはその姿勢を具体的な数値として示した事例といえます。

包材・バイオリサイクルで実現するサーキュラーエコノミー

環境負荷の削減は製造工程だけで完結しません。消費者が手にする「包材」の見直しも、味の素グループが力を入れる領域の一つです。

「味の素®」「うま味だし・ハイミー®」が紙パッケージに切り替えられ、年間約12トンのプラスチック廃棄物が削減されています。 また、2024年度のリサイクル可能な包材比率は47% に達しており、さらなる引き上げに向けた取り組みが続けられています。

製造過程から出る副産物についても、廃棄ではなく資源として循環させる仕組みが設けられています。 「味の素®」はサトウキビなどの原料を発酵させて作られています。アミノ酸を取り出したあとの副生物は有機質の肥料として畑に戻すことで、再びサトウキビを育むなど地域に豊かな実りをもたらしており、この取り組みを「バイオサイクル」と呼んでいます。

この「バイオサイクル」は40年以上前から世界各地で実施されており、廃棄物を出発点として原料を育て直すという循環型の生産モデルを体現しています。SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」に直結する実践例として、食品製造業界の中でも先駆的な取り組みとされています。

また、 味の素冷凍食品(株)は「温室効果ガス削減」「フードロス減」「プラスチック削減」「サステナブル調達」の取り組みをグループとして一体的に進めており、事業会社ごとに取り組みが積み重なる形でグループ全体の環境負荷削減が進んでいます。

持続可能な漁業への挑戦|カツオの生態調査と「ほんだし®」のつながり

「ほんだし®」の主原料であるカツオは、かつては日本近海でのみ大量に漁獲されていましたが、世界的な需要増加にともない国際的な資源管理の必要性が高まっています。しかし、長らくカツオの生態は十分に解明されていませんでした。

味の素グループは2009年に「太平洋沿岸カツオ標識放流共同調査」を国の機関や大学などと連携して実施しました。カツオの体に記録型電子標識を取りつけて動きを追跡するというもので、この調査の結果、日本近海におけるカツオの回遊経路が初めて明らかになりました。

自社製品の原料確保という事業上の動機から始まった調査ですが、その成果は水産資源全体の持続的な管理に貢献する科学的データとなりました。SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」が求める「科学的知見に基づく資源管理」に対して、一企業が具体的な貢献をした事例として評価されています。

味の素グループ全体の調達の7割は農畜水産物であり、自然の恵み、つまり生態系サービスに支えられたアグリフードシステムに大きく依存しています。 その依存関係を理解した上で自然と向き合う姿勢が、このカツオ調査にも表れています。

世界が認めた実績|EcoVadisゴールド評価と2024年度業績

味の素グループの取り組みは、外部の評価機関からも認められています。

味の素株式会社は2024年のEcoVadisサステナビリティ調査において、世界中の評価対象企業のうち上位5%の企業が授与される「ゴールド」評価を獲得しました。 EcoVadisは180カ国以上・220を超える業種の企業を対象に、「環境」「労働と人権」「倫理」「持続可能な調達」の4つの側面からサステナビリティを評価しており 、ゴールド評価は全業種横断で上位5%に位置します。

今回はスコア・パーセンタイルランクともに評価対象となって以来過去最高となり、グループのサステナビリティに関する先駆的な取り組みや開示の包括性が評価されたものと考えています。

事業面では、 2024年度の売上高1兆5,270億円(前年比6.1%増)、事業利益1,580億円(前年比7.0%増)を記録しており、サステナビリティへの投資が中長期の事業成長とともに進んでいることが数値として示されています。社会課題の解決と企業成長を両立するASV経営の有効性を裏づける結果といえるでしょう。

また、 タイ・インドネシア・ベトナムでのトレードオンプロジェクトとして、環境や社会課題に貢献することがどう経済価値に繋がるかという検証をしたところ、プレミアム価格での販売でも購入してくれることに加え、従業員のエンゲージメントがものすごく上昇するという結果が出ました。 こうしたデータは、サステナビリティ投資が単なるコストではなく企業競争力の源泉となりうることを示しています。

2030年に向けた課題と次の一手

味の素グループのサステナビリティ戦略は前進を続けていますが、課題も残ります。 サーキュラーエコノミー(循環経済)、栄養バランスのとれた食生活、人権など、様々な課題は相互につながっており、同時に取り組んでいくことが必要とされており、個別の取り組みを統合的に進める難しさがあります。

包材のリサイクル可能比率は2024年度に47%であり、2030年目標の達成に向けては約53ポイントの改善余地があります。GHGについては削減が進む一方、農畜水産物調達に由来するスコープ3排出量の管理は、サプライチェーン全体を巻き込んだ長期的な取り組みが求められます。

SDGsの取り組みは、地球環境が悪化したり気候変動による災害が発生したりすれば、原料である農作物の収量が下がるなど、結果的に安定的な原料確保が難しくなり将来のコスト上昇につながるリスクもあります。それを今から抑える努力をすることにより、中長期で見ると実はコストダウンになるというメリットがあると考えています。

この視点は重要です。SDGsへの取り組みを「コスト」として捉えるのか、「リスクヘッジと長期投資」として捉えるのかで、企業の姿勢と行動は大きく変わります。味の素グループが長年にわたって積み上げてきた実績は、後者の考え方が実際に機能することを示す一つの証左となっています。

企業のSDGs事例をより広く知りたい方は、企業のサステナビリティ取り組み一覧もあわせてご覧ください。また、食と栄養の観点から社会課題を考えたい方はSDGs目標2「飢餓をゼロに」解説記事も参考になります。気候変動への企業対応を掘り下げたい場合は企業のGHG削減事例まとめもご参照ください。

まとめ|味の素グループのSDGs取り組みから読み解く7つのポイント

味の素グループの取り組みを横断的に整理すると、規模の大小を問わず他の企業や個人が参照できるヒントが浮かび上がります。

  • ASV(共有価値の創造)という独自の経営戦略がSDGs推進の土台となっている
  • 2030年目標として「10億人の健康寿命延伸」と「環境負荷50%削減」を数値で掲げている
  • ガーナの「Koko Plus」は、現地女性の雇用創出と連動したBOPビジネスの先行事例
  • ベトナムの学校給食プロジェクトは「食育ソフトウェアの普及」という技術移転型の支援
  • BRIDGEプロジェクトでMSG製造のGHGをスコープ1+2で▲132 kt削減した実績あり
  • バイオサイクルと紙パッケージ化でサーキュラーエコノミーを製品レベルで体現
  • 2024年EcoVadisゴールド評価(全業種上位5%)を獲得し、外部評価でも先進性を証明

今日の食事で使っている調味料が、どのような工程・原料・仕組みでつくられているかを一度調べてみることが、企業のサステナビリティを「自分ごと」として捉え直す第一歩になるかもしれません。

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