ポイント
◇アラスカの永久凍土※1の森林におけるCO2放出・吸収量を、2003年から20年間観測。
◇後半10年間のCO2吸収量は、前半10年間と比較して約20%増加していた。
アラスカやシベリアなど北半球の高緯度地域には永久凍土があり、その上には森林が広がっています。温暖化が進むと、永久凍土が解けて、中に含まれた大量の有機炭素※2がCO2として放出される可能性がある一方、永久凍土上の森林が成長し、CO2の吸収量が増加する可能性もあります。そのため、温暖化が永久凍土全体に与える影響を調べるためには、長期間の観測が必要です。
大阪公立大学大学院農学研究科の植山 雅仁准教授と、信州大学学術研究院(理学系)の岩田 拓記准教授、新潟大学大学院自然科学研究科の永野 博彦助教らの共同研究グループは、森林のCO2の放出・吸収量をリアルタイムで観測できる気象観測タワー(図1)を用いて、アラスカの森林における推移を2003年から20年間観測。分析の結果、2013年~2023年におけるCO2吸収量は、その前の10年間に比べて約20%増加しており、その主な要因は近年の降水量増加と、CO2濃度の上昇による光合成量の増加であることが明らかになりました。
本研究成果は、2024年10月25日に、国際学術誌「Proceedings of the National Academy of Sciences」のオンライン速報版に掲載されました。
用語解説
※1 永久凍土…2年以上、連続して0℃以下の温度となっている地面。凍土地帯でも、夏季はその表層が融解するため、植物の生育が可能。
※2 有機炭素…植物は光合成によりCO2から有機炭素を作り出し、植物が落葉・枯死することで、その有機炭素は土壌で分解されてCO2に戻る。永久凍土地域は土壌が低温なため、植物遺体からなる有機炭素の分解が制限され、土壌に多く蓄積している。