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水素還元製鉄とは?誰でもわかりやすくかんたん解説

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製鉄は、私たちの生活に欠かせない鋼材を作るプロセスですが、同時に世界のCO₂排出量の約9%を占める産業です。そんな製鉄業の脱炭素化を目指す革新的な技術が「水素還元製鉄」です。石炭の代わりに水素を使うことで、CO₂排出を大幅に削減できる製鉄法として、日本や世界で開発が進んでいます。では、この技術は具体的にどのような仕組みなのでしょうか。

水素還元製鉄とは|石炭に代わる水素で鉄を作る

水素還元製鉄は、酸素を除去して鉄の強度を高める「還元」と呼ばれる工程で、石炭の代わりに水素を利用して鉄を作る方法です。

現在、日本の製鉄所で一般的に使われている方法は「高炉法」です。
鉄鉱石とコークス(石炭)を「高炉」とよばれる炉に投入し、炉の中で鉄鉱石から鉄だけを取り出す(還元)と同時に、鉄鉱石を溶かす(溶解)工程を一貫でおこなう方法で、コークス(石炭)を使って鉄鉱石を還元するためCO₂が発生します。
一方、水素還元製鉄技術はコークスのかわりに水素を使って還元するため、CO₂の発生を削減することが可能です。

水素還元製鉄の仕組み|化学反応でわかりやすく

鉄鉱石に含まれる酸素を取り除く際、従来は石炭を使いますが、このとき酸素が炭素と結びついてCO₂が生成されます。これに対し、水素は酸素と結びつくため、還元に使っても水となり、理論上はCO₂が発生しません。
簡潔に言えば、石炭の代わりに水素を使うだけで、CO₂を出さない鉄作りが実現できるわけです。

さらに、水素ガスによる還元速度はCOガスを用いた場合よりも5倍も速いため、製鉄の効率も向上します。
また、製鉄プロセスの上流工程は全体のエネルギー消費の約8割を占めるため、重要な技術革新となります。

日本で進む「COURSE50」プロジェクト

日本では世界に先駆けて、2008年から「水素活用還元プロセス技術(COURSE50)」というプロジェクトを開始しています。
COURSE50では、製鉄所内で発生する水素を利用して高炉に直接水素を吹き込む水素還元技術を開発しており、製鉄所から発生するCO₂の約30%削減を目指しています。
現在進行中の「COURSE50」では、2030年までのなるべく早い段階で水素還元技術を確立し、2030年には商用第1号機を稼働することを目標としています。
また、2013年度から試験を開始し、還元工程でCO₂排出量の削減が可能であることを世界で初めて検証しました。

課題と今後の展開

ただし、水素還元製鉄にはいくつかの課題があります。
水素による還元反応は熱を吸収する反応(吸熱反応)であるため、還元反応が進むほど炉内温度が低下し、鉄が溶解しなくなるという状況が起こります。
つまり、十分な熱を供給する仕組みが必要なのです。

さらに、高炉法はエネルギー効率が高く、不純物を除去できるために日本の強みである高品位鋼の製造に適していますが、製造上、コークスをすべて排除することは難しいため、CO₂の発生をゼロにはできません。
そのため、カーボンニュートラルの実現に向けては、複数の技術的なアプローチをおこないながら、脱炭素に向けた技術の確立を目指すことが必要です。

実現に向けては、水素の安定供給も重要です。
社会実装に向けては、技術を確立すると同時に、それを支えるための社会インフラの整備が欠かせません。例えば、水素を活用していくため水素を安定的に供給するサプライチェーンの構築、排出されたCO₂を回収し、再利用するCCUSの促進などです。

まとめ|脱炭素社会に向けた希望の技術

水素還元製鉄は、製鉄業のCO₂排出を劇的に削減できる可能性を秘めています。
製鉄プロセスの脱炭素化は、重要な技術革新となります。
日本が世界に先駆けて開発を進める同技術が実用化されれば、自動車、建設、エネルギーなど、あらゆる産業を支える鋼材の生産方法が大きく変わるでしょう。

私たちが今すぐできることとしては、グリーンスチール(低炭素・脱炭素の鋼材)を採用する企業を支持することや、こうした新技術への投資・政策支援を社会全体で後押しすることが挙げられます。2030年の商用化に向け、官民一体となった取り組みがいよいよ本番を迎えつつあります。

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