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どちらも選べることが幸せ。キユーピーがGREEN KEWPIEで目指す共存する食卓

マヨネーズでおなじみのキユーピー株式会社(以下、キユーピー)は、2023年3月にプラントベースフードなど「サステナブルな食」を展開するブランド「GREEN KEWPIE(グリーンキユーピー)」を立ち上げました。「動物性、植物性の境界が消える新しい食品。」を掲げるこのブランドが、どのように生まれ、どういった考えを大事にしているのか、MIRASUS編集部がお話を聞きました。

<プロフィール>
キユーピー株式会社
GREEN KEWPIE プロジェクトリーダー 綿貫 智香 様 (右)
GREEN KEWPIE プロジェクト 立川 海 様 (左)

HOBOTAMAに寄せられた声が、新しいブランドを立ち上げる原動力になった

──GREEN KEWPIEの立ち上げの経緯を教えてください。

綿貫様:出発点は、「2030ビジョン」の策定に関わったときに、今の商品ラインナップだけでは向き合えないお客様がいると考えたことです。本格的に研究開発へ着手したのが2019年でした。

当社のプラントベースフードの最初の商品が、2021年6月に業務用として発売したHOBOTAMA(ほぼたま)です。植物性原材料をベースに、独自の技術で卵の味わいを再現した“ほぼたまご”というコンセプトで、HOBOTAMAです。私は長く研究開発に在籍していましたので、この開発にも関わってきました。卵が大好きな日本の皆さんにどう捉えられえるのか。お客様からも一定の反響をいただきましたが、一品で終わらせてしまっては、その先が続きません。この反響が、ブランドの構想へとつながっていきました。

当初、私自身はブランドを立ち上げた経験など全くなかったので、社内はもちろんグループ会社の仲間にもたくさん相談を重ねました。そうして2023年3月に立ち上げたGREEN KEWPIEの最初の商品がドレッシングの2商品で、その後HOBOTAMAもGREEN KEWPIEに仲間入りしました。2024年にはマヨネーズタイプやパスタソースが加わりました。

──業務用のHOBOTAMAから、日常の食卓に並ぶ商品へ広げる決め手は何でしたか。

綿貫様:やはり一番は、業務用のHOBOTAMAを市販用でも発売してほしいという声が大きかったことです。急ピッチで開発を進め、「HOBOTAMA 加熱用液卵風」と「HOBOTAMA スクランブルエッグ風」を市販用として発売しました。

また、GREEN KEWPIEは、市販用も業務用も横串で展開し、海外へも広げると決めて立ち上げたブランドです。そのため、市販用へ広げること自体には、大きなハードルはありませんでした。キユーピーはもともと内食、中食、外食と販路をバランスよく持っていますので、市販用に出すこと自体は自然な流れでした。

インタビューに答えるGREEN KEWPIEプロジェクトのメンバー

──ブランドという形にすると決めた原動力は何でしたか。

綿貫様:何より、HOBOTAMAに対するお客様の反応です。業務用として発表した直後から、お客様相談室にはいつもの10倍ほどのお電話が寄せられ、メディアにも大きく取り上げられました。お客様からは「ありがとう、こういうものがあってよかった」「もっと早くやってほしかった」といった声が数多く届きました。いただいた声のうち、6割ほどは卵アレルギーに関わる方、2割ほどは地球環境への問題意識から植物性を選んでいる方からの声です。

こうした声をいただいて、プラントベースで魅力ある商品をもっと届けなければいけないと思いました。ただ、当社には卵をたっぷり使ったマヨネーズを長く親しんでいただいてきた歴史があります。その分、植物性の食を選びたい方にとっては、自分とは縁のない会社だと受け止められることもあるかもしれません。ですから、商品をキユーピーから出すだけでは、届けたい方には届かないだろうと思いました。きちんと届けるには、キユーピーに新しい一面をつくり、新しいお客様とコミュニケーションを取らなければいけない。そう考えて、ブランドという形にたどり着きました。

──新しいブランドを立ち上げるにあたり、社内ではどういった点の説明を求められましたか。

綿貫様:新しいブランドを立ち上げることは当社では少ないことでして、漠然とした不安や心理的なハードルはありました。また最初は反対意見や懸念もあり、ブランドを大切にしたいからこそ慎重に検討を重ねる場面もありました。それでも将来へのチャレンジとして、賛成の意見が多く、大きな壁は感じませんでした。

プラントベースフードが一時のブームだと会社側が捉えていたら、ブランドは立ち上がらなかったと思います。社会的な潮流だからこそ投資する意味がある。経営層が長期の目線で後押ししてくれたと感じています。

GREEN KEWPIEの商品を前に取材に応じるプロジェクトのお二人

「プラントベースだからこれでいい」とは判断しない、おいしさと届け方への向き合い方

──GREEN KEWPIEが掲げる「続けられるおいしさ」に届いたかどうかは、何をもって判断されていますか。

綿貫様:おいしさは、プラントベースフードにももちろん欠かせません。私たちが手がけるのは調味料やソース、卵そのものの素材ですから、そのおいしさがそのまま料理の仕上がりを左右します。プラントベースだからこれくらいでいい、という判断はしません。明確な基準は商品ごとに違うので一言では申し上げられないのですが、通常のキユーピーブランドと同じ社内基準、同じ工程で判断しています。ですので、HOBOTAMAの発売が決まるまでに2年ほどかかりました。

──立ち上げから今日までを振り返って、いま向き合っている課題と、手ごたえを感じている点を教えてください。

綿貫様:一番の課題は、プラントベースフードの認知度がまだそれほど上がっていないところです。ただ、認知度だけの問題でもありません。「プラントベースフード」は、どちらかというと商品のカテゴリーを表す言葉で、価値を表す言葉ではないからです。名前を知っていただくことと、価値が伝わることは別ですので、その価値をどう言葉にするか、そこは時間をかけて取り組む必要があると感じています。

一方で、GREEN KEWPIEのテレビCMなどマス広告を打ったことで、キユーピーが新しいことを始めたという認知はある程度得られました。ブランドを知ってくださっている方がいる。これは私たちにとって大きな財産です。

そのうえで、これからの届け方については、全国の売り場にとにかく広く並べることよりも、必要としてくださる方に確実に届く販路を重視しています。そのほうが食品ロスを抑えられますし、お客様一人ひとりに価値を丁寧にお伝えすることにもつながります。

──販路を絞るという判断と、多くの方に届けたいという思いは、どう両立させていくのでしょうか。

綿貫様:生活圏の買い物先に置いてあるかどうかで購買を決めるお客様もいますから、その売り場に入り込まなければ、将来この事業を大きくすることはできません。ですから、いずれは一般の流通でよく見かける商品に育てていく必要があると思っています。

今の若い方や子どもたちは、受けてきた教育が私たちの世代の頃とは少しずつ変わっていて、商品を見たときに感じることも違います。その世代が大人になったときに、当たり前に手に取っていただける状態をつくっておきたい。これからの社会を担う子どもたちや若い皆さんの力も借りながら、このブランドを育てていきたいです。

次の世代とともに、どちらも選べる食卓を育てていく

──GREEN KEWPIEは青山学院大学の学生の皆さんとも一緒に取り組まれています。社内からは出てこなかった視点などありましたか。

綿貫様:たくさんありました。AMCA(Aoyama Marketing and Creative Award)という、青山学院大学経営学部の学生団体が運営する広告企画コンテストの提案をいただき、「GREEN KEWPIEを日本に広めよう!」を課題テーマに、10学部から71チーム・総勢161人の学生が参加してくれました。

とくに印象に残っている1つが、最終発表会に進んだ8チームのうち、無意識のうちに植物性を選んでいる学生というターゲットを、自分たちで見つけて提案したチームです。プラントベースだから選んでいるのではなく、実は意識しないまま、当たり前の選択肢としてプラントベースを選んでいる人たちが大学生の中で一定いる。この視点は、私たちからは出てきません。本当においしいのかわからないものにはお金を出せない、という学生の素直な言葉も、大きな気づきになりました。

当初は予定していなかったのですが、とても良い提案をたくさんいただき、実際に企画を実行するまでに至りました。最終的に採用した「Green Campus」という企画では、2025年10月に青山キャンパスで「Try! Plant Based Foods」として、学生が考えたメニューを販売しました。

プロジェクト参加学生とキユーピー・青山学院大学関係者(キユーピー提供)


──GREEN KEWPIEの現在地とこれからの展望を教えてください。

綿貫様:キユーピーが新しいブランドを立ち上げ、どの層からも幅広く支持をいただいておりますが、特に若い世代から支持が大きいです。GREEN KEWPIEをエシカルの文脈で学習教材に取り上げていただいていることも理由だと思います。

展望としては、未来の自分たちの社会が、おいしさを諦めない。そして今のおいしさを、ちゃんと続けていける。そんな食卓になるような活動を、このブランドを通じてしていきたいと思っています。

よく「植物性のほうにシフトしてほしいということですか?」と聞かれますが、それは違います。卵もやっぱり楽しめる人には楽しんでもらいたい。目指すのは共存する未来で、どちらも選べることが幸せだと思うので、GREEN KEWPIEもこれまでのキユーピーもそれぞれがきちんとある。どちらも選択できて、みんなで楽しめる食卓。これが私たちの目指す未来の姿です。

GREEN KEWPIEの商品ラインナップとプロジェクトメンバー

選択肢をつくりたいという思いと、現場で見えてきたお客様の変化

──ここからはプロジェクトメンバーの立川様にお伺いします。GREEN KEWPIEのプロジェクトを希望された背景と、営業の経験が今の仕事に活きている点を教えてください。

立川様:もともと、多様な価値観に寄り添う商品を広めたいという志望動機で入社しました。アルバイト先のカフェで乳製品アレルギーの方と接する機会が多く、食の制限がある方に選択肢すらない状況を悲しく感じていたからです。キユーピーは当時、卵を使わない「キユーピー エッグケア(卵不使用)」やハラル認証を取得したマヨネーズ、業務用でプラントベースのタルタルソースを販売していて、選択肢をつくることで多様性を大事にしている会社だと感じました。

2022年の入社後は大阪支店の営業に配属され、1年後にGREEN KEWPIEが立ち上がってからは、この部署に行きたいと周りにも熱く語っていました。

営業の経験が活きているのかなと思うのは、現場を見てきたのでお客様の視点を持てるところです。営業時代からPOSの分析はしていましたが、今はさらにお客様を掘り下げて分析できます。

インタビューに答えるGREEN KEWPIEプロジェクトのメンバー

──現場で、世代による意識の差を感じることはありますか。

立川様:以前、環境やSDGsをテーマにしたイベントに出展した際、中学生から高校生くらいの方と話す機会が多くありました。私が学生の頃とは、環境について学ぶ内容や意識が全然違うと感じます。ブースでは「マヨネーズは何からできている?」という問いかけからプラントベースの話をして、GREEN KEWPIEを紹介すると、次はこれを選んでみたい、という反応が返ってきます。関心を持つだけで終わらず、自分の選択として受け止めてくださる。そうした出会いが、商品を選ぶときの軸をつくっていくのだろうと感じます。

──ここ数年で、お客様のサステナブルな食への意識に変化は感じますか。

立川様:一番大きいのは、味の受け止め方が変わってきたことです。プラントベースも「おいしい」という声を、多くいただきます。技術も味も日々進化していて、言われなかったらわからない、という感想もありますので、そこは着実に伝わってきていると感じます。

サステナブルという点では、GREEN KEWPIEでもドレッシングの容器はプラスチックの使用量を減らし、一部商品の小袋は紙素材に切り替えました。ただ、容器の工夫だけで手に取っていただけることは、正直なところ多くありません。プラントベースであることに容器への配慮が重なったときに、はじめて選んでいただく理由になる。そう感じています。

こうした取り組みはGREEN KEWPIEに限らず、キユーピー全体で進めていて、お客様のサステナブルな意識には、しっかり応えていけると考えています。

GREEN KEWPIEの商品を手にするプロジェクトメンバーのお二人

──今回はお話を聞かせていただきありがとうございました。

▼ キユーピー株式会社のページはこちら
ホームページ:https://www.kewpie.com/
サステナビリティ:https://www.kewpie.com/sustainability/
GREEN KEWPIE:https://www.kewpie.co.jp/greenkewpie/

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