「サーキュラーエコノミーに取り組む企業」と聞いて、結局はリサイクルに熱心な会社のことではないか、と感じる方は多いはずです。半分は合っていて、半分は違います。サーキュラーエコノミー(循環経済)は、資源を使い捨てにせず、設計、回収、再生までを事業の仕組みに組み込む経済のあり方です。リサイクル率を上げる活動はその一部にすぎません。
では、企業は具体的に何をしているのでしょうか。2026年4月には資源有効利用促進法の改正が施行され、一部の製造業には再生材の利用計画を国に出す義務も生まれました。この記事では、企業の取り組みを事例と制度の両面から確かめ、読む側が今日から試せる確認の方法までを順に答えていきます。
リサイクルをしている会社と、サーキュラーエコノミーの会社は何が違うのか
「分別して回収し、素材に戻しているのだから同じでは」と思うのは自然です。違いは、循環を考え始める場所にあります。
出口の対策か、設計から変える発想か
従来のリサイクルは、使い終わった製品をどう処理するかという出口の発想です。サーキュラーエコノミーは、製品をつくる段階で、回収しやすい素材を選び、再生材を使い、長く使える形にする入口の発想を含みます。
企業の開示資料を読んできた立場から言えば、この違いは取り組みの説明にそのまま表れます。「回収量」だけを誇る資料は出口の話にとどまります。「再生材の使用比率」や「設計の見直し」まで書かれていれば、循環が事業の中に入り込んでいると読めます。
世界の循環はどこまで進んでいるのか
世界の現状は、思いのほか厳しい数字です。Circle Economyがデロイトと発表した「Circularity Gap Report 2025」によると、世界経済に投入される素材のうち、再生材などの二次材が占める割合は6.9%でした。2018年の9.1%、2023年の7.2%から下がっています。年間約106億トンの素材のうち93%以上が、再生も再利用もされていない計算です。
再生材の使用量は増えているのに、割合は下がっています。新しく掘り出す資源の需要が、それ以上の速さで増えているためです。ここから、リサイクルを増やすだけでは足りず、使う資源の総量や製品の設計そのものを見直す必要がある、という問いが浮かびます。
日本の企業に、今どんな動きが求められているのか
「国が言っているだけで、企業には関係ないのでは」という疑問もあるでしょう。実際には、ここ数年で制度が大きく動いています。
国は循環経済を成長戦略と国家戦略に位置づけた
経済産業省は2023年3月、「成長志向型の資源自律経済戦略」を策定しました。循環経済関連の市場規模を、日本国内で2020年の50兆円から2030年に80兆円、2050年に120兆円へ拡大する目標を掲げています。世界全体では2030年に4.5兆ドル、2050年に25兆ドルという見通しです。環境負担を減らす話であると同時に、産業競争力の話として扱われています。
2024年8月2日には、第五次循環型社会形成推進基本計画が閣議決定されました。副題は「循環経済を国家戦略に」で、2030年度を節目に数値目標が置かれています。企業にとっては、取り組みの方向が政策と合っているかを確かめる物差しになります。
2026年4月に施行された資源有効利用促進法の改正
最も直接的に影響するのが、資源有効利用促進法の改正です。2025年5月に成立し、2026年4月1日に施行されました。再生資源の利用を促す判断基準が新たに設けられ、環境配慮設計に関する規定も加わっています。
対象は、プラスチック製容器包装、家電4品目(エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機)、自動車の3分野です。大栄環境グループの解説によれば、年間の製造・輸入量が一定以上の事業者には、再生プラスチックの利用計画を主務大臣へ提出する義務があります。目安は、容器包装が1万トン以上、家電が各5万台以上、自動車が1万台以上です。利用量や利用率の定期報告も求められ、怠ると罰則の対象になると解説されています。細かい要件は事業ごとに異なるため、該当しそうな企業は必ず原典の告示を確認してください。
回収・再資源化する側にも新しい制度ができた
つくる側だけではなく、再資源化する側にも法律があります。「再資源化事業等高度化法」は2024年5月に公布され、2025年11月21日に全面施行されました。産業廃棄物の処理量が特に大きい事業者に再資源化の実施状況の報告と公表を求め、高度な再資源化事業を国が認定する制度を設けています。
つくる企業が再生材を使いたくても、品質のそろった再生材が十分に供給されなければ成り立ちません。2つの法律は、需要側と供給側の両方から循環を後押しする設計になっています。
投資家との対話の枠組みも整ってきた
開示の面では、2021年1月に経済産業省と環境省が「サーキュラー・エコノミーに係るサステナブル・ファイナンス促進のための開示・対話ガイダンス」を公表しています。政府が策定した、サーキュラーエコノミーに特化した開示・対話の手引きとされています。取り組みを数字と言葉で説明できる企業ほど、投資家との対話で評価を得やすい構図です。
実際にどんな企業が、何をしているのか
制度の話だけでは実感が湧きません。公開されている取り組みを見ていきます。
ユニ・チャームの使用済み紙おむつの水平リサイクル「RefF」
ユニ・チャームは、使用済みの紙おむつを回収し、再び紙おむつの原料に戻す「水平リサイクル」に取り組んでいます。オゾンで殺菌、漂白、脱臭し、未使用のパルプと同等の品質の再生パルプを得る技術が核です。同社の公式サイトによれば、RefFマーク付きの製品は2024年から展開され、子ども用の「マミーポコパンツ」、大人用の「ライフリー」、猫用の「デオトイレ」へ広がっています。
この事例が示すのは、技術だけでは循環は閉じないという点です。使用済みおむつを集める仕組みが要るため、同社は浜松市などの自治体と実証事業を進めています。製品、技術、回収の3つがそろって、はじめて循環になります。
三井化学の素材転換とユニクロの服の回収
三井化学は、バイオマス由来の原料で脱炭素を目指す「BePLAYER」と、リサイクルで資源循環を目指す「RePLAYER」の2つの取り組みを掲げています。素材をつくる側が原料を変えれば、その先の多くの製品に影響が及びます。
衣料では、ユニクロが着られなくなった服を店舗で回収する「RE.UNIQLO」を続けていると紹介されています。回収した服のうち再び着られるものは服として再利用し、そうでないものは別の素材や燃料にまわす考え方です。店舗という既存の接点を回収拠点にしている点が特徴です。
取り組みは3つの型に整理できる
ここまでの事例を並べると、企業の動きは大きく3つに分けて読めます。公開情報を読み比べた上での整理であり、統計的な分類ではありません。
素材そのものを循環させる型
回収した製品から素材を取り出し、再び原料に戻す型です。ユニ・チャームの再生パルプや、三井化学のリサイクル原料がこれに当たります。技術投資が大きく、再生材の品質を安定させられるかが勝負どころです。
使い方と回収の接点を変える型
製品の寿命を延ばしたり、販売店や自治体を回収の入口にしたりする型です。衣料の店頭回収はこの代表で、素材技術よりも、消費者が実際に持ち込みたくなる動線づくりが成果を左右します。
設計と連携で変える型
製品の設計を変えて回収や再生をしやすくし、自治体や他社と組んで仕組みを広げる型です。2026年の法改正が求める環境配慮設計は、この型を制度として後押しするものといえます。
この3つは排他的ではなく、先に挙げた取り組みの多くは複数の型にまたがっています。開示資料を読むときは、「この会社はどの型で、どこが弱いか」と考えると、取り組みの深さが見えてきます。回収の仕組みが自治体頼みになっていないか、再生材のコストと品質をどう説明しているかが、よく見ると分かれ目になります。
サーキュラーエコノミーの企業について、よくある誤解と答え
ここからは、読者の疑問に1つずつ答えます。
「うちは中小企業だから関係ない」は本当か
法律上の計画提出義務は、製造・輸入量の大きい事業者が中心です。ただ、義務の対象企業は再生材の調達や回収の協力を取引先に求めていくことになります。直接の対象でなくても、サプライチェーンを通じて要請が届く可能性は十分にあります。「関係ない」と決めるより、取引先の動きを把握しておくほうが現実的です。
「リサイクル率が上がれば循環型と言える」は正しいか
先に見たとおり、世界の再生材の使用量は増えているのに循環の割合は下がっています。リサイクル率の改善は大切ですが、それだけで循環型とは言えません。使う資源の総量や、設計の段階の取り組みまで見て、はじめて実態に近づきます。
「結局コストが増えるだけではないか」
短期では、再生材の調達や回収の仕組みづくりでコストが増える場面があります。一方で国は、これを市場の成長機会として位置づけています。コストに見合うかどうかは、素材や業種によって差が大きいため、一律には断言できません。大事なのは、自社の主要な素材で何が起きるかを個別に試算することです。
読者の次の一歩|今日から試せる1つの確認アクション
知識を得たあとは、小さな確認を1つだけ試してみてください。気になる企業や勤務先の公開資料から、循環に関する指標を1つ見つける作業です。
- 気になる企業のサステナビリティレポートや統合報告書を1冊開く
- 「再生材使用率」「回収量」「環境配慮設計」のいずれかの言葉で検索する
- 数値と目標年が書かれているか、出口の話だけで終わっていないかを確かめる
数値が見つからなくても、それ自体が1つの発見です。投資家であれば対話のきっかけに、消費者であれば選ぶ基準に、働く人であれば社内で話題にする材料になります。まず1社、1つの指標だけで十分です。
まとめ
サーキュラーエコノミーに取り組む企業とは、リサイクルを頑張る企業ではなく、設計、回収、再生までを事業の仕組みに組み込もうとする企業です。世界の循環の割合は6.9%まで下がっており、再生材を増やすだけでは追いつかないことも分かりました。
日本では、成長戦略と国家戦略の両面から政策が整い、2026年4月施行の資源有効利用促進法の改正で、一部の製造業には再生材の利用計画の提出が義務になりました。ユニ・チャーム、三井化学、ユニクロなどの事例は、素材の循環、回収の接点、設計と連携という3つの型で読めます。
企業を評価するときは、出口の数字だけでなく、設計の変更や再生材の使用比率まで書かれているかを見るのがおすすめです。まず1社、1つの指標から試してみてください。
- サーキュラーエコノミーは出口のリサイクルだけでなく、設計と回収を含む仕組みの話
- 世界の循環の割合は6.9%で、再生材を増やすだけでは追いつかない状況
- 2026年4月施行の法改正で、一部の製造業に再生材の利用計画の提出が求められる
- 企業の取り組みは、素材の循環、回収の接点、設計と連携の3つの型で読み解ける
- まずは1社の開示資料で、再生材使用率などの指標を1つ探してみる
参考文献
- 経済産業省「『成長志向型の資源自律経済戦略』を策定しました」(2023年)
- 経済産業省「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律及び資源の有効な利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案が閣議決定されました」(2025年)
- Deloitte「2025 The Global Circularity Gap Report」(2025年)
- ユニ・チャーム「紙パンツ・紙おむつの水平リサイクル RefF」(公式サイト)
- 大栄環境グループ「再生プラスチックの利用義務化で、改正資源有効利用促進法が2026年4月施行へ」
- 経済産業省・環境省「サーキュラー・エコノミーに係るサステナブル・ファイナンス促進のための開示・対話ガイダンス」(2021年)

