安価なファストファッションの服を生産するために、人件費が安いバングラデシュでは多くの縫製工場で、過酷な労働を強いられている人々が多くいます。
その実態が明るみに出たのが、2013年に発生した大規模なビル崩壊事故のラナプラザの悲劇です。
ラナプラザの悲劇は、縫製工場の入る商業ビルが崩壊し、数千人規模の被害を出した大惨事でした。
今回は、バングラデシュで起きた悲惨な事故と、ファストファッションを支える人たちの労働環境について紹介します。
バングラデシュで起きた悲惨な事故
バングラデシュの主要産業になっているのが、縫製です。
バングラデシュには、世界の名だたる企業の服を作る工場がたくさん存在しています。
ファストファッションの服を縫製する工場もたくさんありますが、その工場で悲惨な事故が発生し、ファストファッションのあり方について疑問視される出来事となりました。
ここでは、バングラデシュで起きた縫製工場での悲惨な事故について解説します。
ラナプラザの悲劇
2013年4月24日に、バングラデシュの首都ダッカの近くの建物が崩壊しました。
この建物はラナプラザと言う名の、いくつもの縫製工場が入居している商業ビルでした。
この崩壊事故による死者は1,100人以上、負傷者は2,500人以上にもなり、悲惨な事故として世界中で報道されました。
このラナプラザの崩壊事故では、違法建築と建物自体の耐久性が問題となります。
この事故が起きる前日に、ビルに大きな亀裂があることが発見され、ビルの使用を中止するように地元警察から警告が出ていました。
しかし、ビルのオーナーはその警告を無視します。
事故当日に停電が発生し、上層階にある発電機が動き、その振動が建物に伝わります。
また、縫製工場の大量のミシンの振動も加わり、ついに建物が耐えられずにビルが倒壊したのです。
実は、ラナプラザの上層階は違法建築されていて、ビル自体の耐久性にも元々問題があったのです
事故前日に退去命令が出ていたにも関わらず、工場を稼働し続けたのは、工場のマネージャーたちが仕事をしなければ解雇すると、従業員に脅迫していた事実も確認されました。
この事故の後、ラナプラザのビルのオーナーと縫製工場の経営者は逮捕されています。
ファストファッションのためにコストを下げるため、低賃金で働かざるを得ない従業員の尊い命が失われた悲惨な事故として、「ラナプラザの悲劇」として世界中から注目されたのでした。
その後、このラナプラザの悲劇は「ザ・トゥルー・コスト〜真の代償〜」という、ドキュメンタリーの映画化もされました。
ファストファッションの縫製工場が抱えている陰
ラナプラザの悲劇は、トレンドの服が安価にそして気軽に手に入るファストファッションのあり方について、考えさせられる出来事でした。
ファストファッションは、コストを下げるために人件費が安い新興国で服が作られています。
そして、コストを下げるために、縫製工場では人権を無視したような環境で働かざるを得ない人々が多数いるのです。
ここでは、普段私たちが気軽に手にしているファストファッションが抱えている闇の部分を紹介します。
人権侵害レベルの強制労働
ファストファッションの服を縫製する工場では、長時間労働が当たり前になっている場所が多いです。
ただの長時間労働だけではなく、深夜まで仕事をさせる工場もあるほど。
ノルマを達成するまで家に帰してもらえないこともあると言います。
また、トイレ休憩が無かったり、染色のための汚水が床に散らばっていたりなど、職場環境が劣悪なところもあると言います。
ラナプラザの悲劇の原因も、耐久性のない建物に大量の労働者をビルに集めて作業したことです。
人権を侵害するレベルの劣悪な労働環境であったことは、容易に想像できます。
その日暮らしがやっとな低賃金
ファストファッションの価格を安く抑えるために、人件費を抑えようと低賃金で長時間働かせることが横行しています。
バングラデシュの縫製工場の労働者の当時の平均月収は、3,900円ほどだと言われています。
一日中過酷な労働をしたとしても、手元に残るお金は微々たるもの。
それでも仕事を求めて縫製工場で働かざるを得ない人はたくさんいます。
私たちが安く購入できる裏側には、その日暮らしがやっとな低賃金で働く人がいるという事実があるのです。
ハラスメントが横行する職場環境
縫製工場でミシンを縫う労働者は女性が大半で、バングラデシュでも同様です。
マネージャーなど上司は男性が占めていることが多く、女性労働者はセクハラやパワハラを受けていることが多いと言います。
場合によっては暴力を振るわれることもあり、女性が働く職場としても、劣悪な職場環境だと言わざるを得ません。
ファストファッションを支えるバングラデシュで起きたことで変わる意識
ラナプラザの悲劇は、コストを削減するために起こった大惨事でした。
そして、この事故から世界中でファッション企業への社会的責任が注目され始めます。
ラナプラザの悲劇から1か月後には、「バングラデシュにおける火災予防および建設物の安全に関わる協定(The Accord on Fire and Building Safety in Bangladesh )」が設立されました。
この協定は、バングラデシュでの工場の安全性を保つための調査・監視機関があります。
バングラデシュの工場の調査で問題が発覚したとき、その改修などの費用は署名した企業が負担するものです。
ZARAやユニクロなど世界中のアパレル企業200社以上が署名しています。
この協定の有効期限は5年間でしたが、期限後はバングラデシュの後継機関が監視と調査を実施しています。
ファストファッションの陰の部分を知り、服の取り扱いを考えよう
ファストファッションは、トレンドの服を安価で手に入れることができます。
しかし、価格を抑えるために、新興国で縫製工場に勤める人々が過酷な労働に就かされている実態がありました。
そして利益のために、人権を無視したような労働環境がまかり通っていました。
このことが世界中に明るみに出たのは、バングラデシュで起きた、縫製工場の入った商業ビルの大規模崩壊事故でした。
私たちは気軽に服を買い替えるのではなく、これからは一つ一つの服を吟味して長く着続ける意識を持つべきかもしれません。