ブラジルの電力は、その大部分を水力発電が占めています。
豊富な水資源があるからこそできる発電方法ですが、実は近年の環境規制や干ばつにより少なからず影響が出ているのが現状です。
その一方で、ブラジルの電気消費量は先進国と比べてかなり大きくなっています。
こうした状況に、ブラジル政府ではどのような対応策をとっているのでしょうか。
こちらの記事では、ブラジルの水力発電について解説するとともに、近年の状況についても触れていきます。
ブラジルの水力発電について
国際エネルギー機関(IEA)の情報によると、2018年におけるブラジルの発電様式のうち、実に64.7%は水力発電で占められていたといいます。
日本における水力発電の割合は、8.4%となっていることから、ブラジルでの水力発電がいかに大きな割合を占めているかがわかるでしょう。
ブラジルで電力発電が盛んに行われる理由を解説していきます。
参照元:Data and Statistics|IEA国際エネルギー機関
豊富な水資源
ブラジルといえば、アマゾン川やイグアスの滝からも連想されるように、豊富な水資源を抱える国です。
アマゾン川は世界最大規模を誇る河川であり、その流域は日本の18倍以上の面積に匹敵します。
一方、イグアスの滝は、世界三大瀑布の一つであり、滝幅は4kmにも及ぶ圧倒的な大きさです。
こうした環境を持つブラジルにとって、水力発電が大半を占めるのは自然な流れといえるでしょう。
発電能力の高いダムがある
豊かな自然環境を生かしたダムが多いのもブラジルの特徴です。
例えば、パラナ川にあるイタイプダムは、完成したダムの中でもトップクラスの発電容量を誇っています。
発電機が20機備わっており、すべて稼働した場合の発電量は、1,4000MW/時です。
パラナ川の下流にはイグアスの滝があることからも、その水量がイメージできるでしょう。
ブラジルには、イタイプダム以外にも、ブラジル北部にあるベロモンテダム、トゥクルイダムなど膨大な発電量を持つダムが存在しています。
近年のブラジルにおける電力について
実は、一昔前まで、ブラジルの水力発電が占める割合は現在よりも高い水準でした。
しかし、ここ近年は、環境規制や干ばつに影響により、水力発電にも陰りが見え始めています。
続いては、近年のブラジルにおける電力消費について紐解いていきましょう。
ダム開発による影響
イギリスの科学誌Natureに発表された論文では、ブラジルで建設が提案されている水力発電ダムは、これまでに建設されてきたダムの数倍にものぼる数であり、自然環境に大きな影響を与えかねないとしています。
ブラジルを流れるアマゾン川は世界最大規模であり、生物の多様性も地球上で最も密度が高い場所です。
しかし、巨大なダムを作り、支流を遮ってしまえば、下流の生態系にも影響を及ぼすでしょう。
また、ダムを作ることで下流に流れる堆積物も堰き止められます。
そのため、下流にある人口密度の高いデルタ地帯に対する悪影響も否めません。
健全なマングローブを脅かし、デルタ地帯の沈下も進んでしまうためです。
水力発電は暮らしに大きな恩恵を与える一方で、水力発電に欠かせないダム開発は、大きな問題を抱えています。
参照元:Nature
干ばつによる影響
ブラジルに限らず、世界各国で干ばつによる水不足の問題は深刻化しています。
クリーンエネルギーの柱ともなる水力発電は、こうした気候変動に伴い電力供給の縮小に追い込まれているのが現状です。
全電力の大半を水力発電で賄うブラジルにとって、危機的状況といえるでしょう。
水力発電を補う動き
ブラジルでは、干ばつによる水力発電の縮小を補うために、火力発電所の稼働を計画しています。
しかし、火力発電は温室効果ガスの排出量を増やす懸念がある上に、電力価格が高いため電気代が上がり、国民にとっても大きな打撃です。
この先、気候変動はますます顕著になることが予想され、干ばつも頻繁に起こるようになるでしょう。
これまで無限にあると考えられてきた水資源も、有限であると見直されつつあります。
ブラジルでは、水力発電に大きく依存していましたが、今後は太陽光や風力など電力の多様化に取り組んでいくようです。
とはいえ、一度に改革が進むわけではなく、水力発電の割合は依然とした大きく、小型ダムの建設に関する計画も引き続いています。
まとめ
日本も水資源の豊富な国です。
とはいえ、ブラジルのような広大な国土があるわけではなく、当然水量も全く異なります。
未だ、化石燃料による発電がほとんどを占める日本にとって、水力発電が国の全電力の半数以上を賄うという感覚は、馴染みのないものです。
しかし、取水や保全を目的としたダム建設は日本でも行われており、ブラジルと同じように環境に関する問題は多々取り沙汰されています。
目的は違うとしても、環境に関する課題は世界共通の問題であり、また気候変動に関しても同じです。
遠い国の問題として眺めるのではなく、どこの国でも起こりうる課題として受け止める必要があるでしょう。