近年メディアなどで「再生可能エネルギー」という言葉を耳にする機会も増え、聞きなじみのある言葉になってきたという方も多いかもしれません。
今回はそんな再生可能エネルギーについて詳しく解説していきます。
SDGsで掲げられる目標と関連させながら、なぜ再生可能エネルギーが注目されているのか、またそのメリット・デメリットについて紐解いていきます。
なんとなく環境に優しいエネルギーというイメージを持っていた方も、すでに関心がある方も再生可能エネルギーについての理解を深めていきましょう。
再生可能エネルギーって何?
再生可能エネルギーとは、石油や石炭などの限りある資源ではなく、太陽や風などの自然界に存在する資源を利用して生み出すエネルギーのことを言います。
具体的には、太陽光、風力、地熱、水力、バイオマスなどがあげられます。
これらはエネルギーを生産するときに二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを排出しないので、クリーンなエネルギーであるといわれています。
なぜ再生可能エネルギーが必要なのか?
再生可能エネルギーが注目されている背景には、世界の電力事情とSDGsが掲げる目標があります。
SDGsでは世界で取り組むべき17の目標を掲げていますが、その一つにエネルギーに関する目標があります。
それが目標7の「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」です。この目標では、2030年までに「安くて信頼できるエネルギーサービスの普遍的アクセスを確保すること」、「世界での再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させること」を目標としています。
世界には、電力を利用できない人が途上国をはじめとして約8億人いると言われています。また現状では、世界のエネルギー最終消費に再生可能エネルギーが占める割合は17%であり、世界中の実に30億人がクリーンなエネルギーを使用できずにいます。
良質でクリーンなエネルギーを全世界の人が安定して供給できるようにするために、再生可能エネルギーが必要とされているのです。
参照元:持続可能な開発目標(SDGs)報告2020|国際連合広報センターHP
再生可能エネルギーのメリットは?
では、再生可能エネルギーのメリットについて具体的に見ていきましょう。
エネルギー源が枯渇しない
再生可能エネルギーの一つ目のメリットは、枯渇せず無尽蔵のエネルギー供給が可能であるという点です。
現在世界中では、化石燃料を燃やしてエネルギーを生み出す火力発電が大半を占めています。ここで使用される石油や石炭などの資源は「枯渇性資源」と呼ばれ、量に限りがあります。
このまま使い続ければ石油は約50年、石炭は約132年で枯渇してしまうと予測されており、そう遠くない未来になくなってしまう資源です。
それに比べて再生可能エネルギーは、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど、自然界で常に再生されるエネルギー資源を利用しています。これらの資源は、限りある化石燃料とは異なり、持続的に利用可能であり、将来的なエネルギー需要の増加に対応できることが期待されています。
地球温暖化の進行を防ぐ
再生可能エネルギーは、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど、自然界に存在するエネルギー資源を利用して発電します。これらのエネルギー源は、燃焼過程がないため、化石燃料を利用した発電と比べて温室効果ガスの排出量が極めて少ないのが特徴です。
地球温暖化の主な原因は、温室効果ガスの増加によるものです。温室効果ガスの中でも約76%を占めるのが二酸化炭素(CO2)です。エネルギーを生み出すために化石燃料を大量に燃やし、排出されるCO2が地球温暖化を急速に進行させています。
再生可能エネルギーによって温室効果ガスの排出量削減を行うことで、地球温暖化の進行を抑制することができます。
参照元:温暖化とは?地球温暖化の原因と予測|全国地球温暖化防止達道推進センターHP
災害時の非常用として使える
災害時に使用できるということもメリットの一つです。再生可能エネルギーでは、発電所が機能しなくなったときに、非常用の電力を供給することが可能になります。
特に日本は災害の多い国であり、消費エネルギーの大半を火力発電でまかなっていることから、大災害が起きると、電気やガス、水道などのライフラインが停止してしまうことがあります。また東日本大地震発生後に、原子力発電所が機能停止になったことも記憶に新しい方も多いかもしれません。
再生可能エネルギーの供給の安定性が確保され、今後普及が進めば、災害時にライフラインの断続が長引いた時にも、人々は電力を使用することができるのです。
エネルギー自給率が上がる
再生可能エネルギーは、国内の自然資源を利用するため、エネルギー供給の安定性が向上します。これにより、エネルギー輸入に依存するリスクが低減され、国のエネルギー安全保障が強化されます。
エネルギー資源の多くを海外からの輸入に頼っている自給率の低い国にとって、国際情勢の影響等により資源の供給が困難になった場合、十分なエネルギーを確保することができません。
再生可能エネルギーの使用を拡大することは、国民が安心してエネルギーを消費できる環境を整えることにつながります。
エネルギー価格の安定
再生可能エネルギーは石油やガスなどの化石燃料を必要としません。そのため、燃料費がかからず、エネルギー価格が安定します。これにより、化石燃料価格の変動リスクが無く、消費者や企業がエネルギー価格の安定を享受できます。
また上述の通り、エネルギー輸入依存度が低減されます。これにより、エネルギー価格が国際市場の変動に左右されにくくなり、エネルギー価格の安定が実現されます。
再生可能エネルギーのデメリットや今後の課題
メリットが多い反面、デメリットや課題も少なくありません。
一つに、自然の環境によってどうしても供給量が安定しにくいという点です。
例えば太陽光発電や水力発電などは、日照時間や降水量などによって影響を受けやすくなります。
二つ目に、設置費用などのコストがかかるという点です。
太陽光発電などは企業や一般家庭でも導入する人が増えていますが、こうした設置代やメンテナンス費は高額になります。
今後のさらなる普及にはコスト面や供給量の安定性などの課題解決が、必要になってくるでしょう。
再生可能エネルギーの課題についてはこちらのコラムで詳しく解説しています。
日本の再生可能エネルギーの現状と今後の普及について
では、日本における再生可能エネルギーの現状と今後の展望について見ていきましょう。
再生可能エネルギーの現状
日本では、エネルギー消費の85.5%を石油や石炭などの化石燃料に依存しています。再生可能エネルギーの使用は11.7%に過ぎず、普及が進んでいるとは言えない状況です。
またエネルギーの自給率はわずか11.8%と低い水準となっています。(2018年時点)
ですが、日本の日照時間の長さや、山や川など自然豊かな地形は、再生可能エネルギーの利用に適しているといわれているため、今後のさらなる導入が期待されています。近年では企業や自治体など積極的に取り組んでいる例もみられます。
また、2011年の東日本大震災以降、再生可能エネルギーの導入を国としても積極的に進めています。主に太陽光発電、風力発電、地熱発電、水力発電、バイオマス発電の普及が進んでいて、特に、太陽光発電は住宅や商業施設での導入が急速に進んでいます。
しかし、再生可能エネルギーの割合は全エネルギー供給量に対してまだ十分とは言えず、さらなる普及が求められています。
参照元:2020-日本が抱えているエネルギー問題(前編)|経済産業省資源エネルギー庁HP
今後の普及に向けての取り組み
政府は、2030年までに再生可能エネルギーの割合を電力供給量に占める割合を約22-24%にする目標を掲げています。また、2050年には脱炭素社会の実現を目指しています。以下に具体的な取り組みを示します。
1. 政策面での支援
再生可能エネルギーの普及を促すため、政府はフィードインタリフ制度(FIT制度)を導入し、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー発電事業者に対して一定期間固定価格での電力買取を保証しています。
2. 技術開発
再生可能エネルギーのコスト削減や効率向上を目指し、技術開発が進められています。例えば、太陽電池の高効率化や風力タービンの大型化などが進んでいます。
3. オフショア風力発電
海域での風力発電事業が期待されており、政府はオフショア風力発電の普及を促すための支援策を検討しています。
4. 地域活性化
地方自治体や地域の企業が、地域資源を活用した再生可能エネルギー事業に取り組むことで、地域経済の活性化が期待されています。
以上のように、日本は再生可能エネルギーの普及に向けてさまざまな取り組みを行っており、今後もその努力が続くことで、エネルギーの持続可能性と安定供給が促進されると期待されています。
また、日本では地熱資源や水力資源などの利用可能な再生可能エネルギーがまだ十分に活用されていないことから、これらのエネルギー源に対する技術開発やインフラ整備が今後の課題となっています。
再生可能エネルギー普及のために私たちができること
私たちはこれから、既存のエネルギーから再生可能エネルギーを主とした移行が求められています。では私たち一人ひとりには何ができるでしょうか。
世界のエネルギー事情について理解を深める
冒頭でも解説したように、世界の貧しい国々では十分に電力を利用できない人が多くいます。そんな中、先進国である日本では、過剰なエネルギーの使用ばかりではなく、地球環境に悪影響を及ぼすエネルギー資源を大量に消費しています。
世界の電力事情、環境問題に目を向け、なぜ再生可能エネルギーというクリーンなエネルギーが求められているのか、今一度考えてみてください。
実際に再生可能エネルギーの導入
自宅や職場で太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーシステムを導入し、自分たちで環境にやさしいエネルギーを生み出すことができます。また、エネルギー供給会社を選ぶ際に、再生可能エネルギーに力を入れている企業を選ぶことも効果的です。
また、エコマークやエネルギースターなど、環境に配慮した製品を購入することで、省エネや環境保護に貢献できます。
日常生活で電気やガスなどエネルギー使用量を減らす
いきなり個人で再生可能エネルギーを導入するというのはハードルが高く、難しいと感じる方も多いと思います。
その場合は、まずは日常生活の中で身の回りの電力消費量を見直してみるのはいかがでしょうか。
家庭内には、冷暖房や冷蔵庫、照明やテレビなど消費電力の多い家電がたくさんあります。家電製品の中には、電源を入れなくてもプラグをつけているだけで電気を消費してしまうものもあります。こうした電力は、待機時消費電力と呼ばれ、家庭内のエネルギー消費量のうち年間6%と占めています。
エネルギー全体の消費を抑制することで、総エネルギー需要が減少します。これによって、再生可能エネルギーだけでも十分にエネルギー需要を賄える可能性が高まり、化石燃料に頼らないエネルギー供給が実現しやすくなります。
個人の小さな取り組みが再生可能エネルギー実現に対して貢献する役割は大きいです。
コンセントからプラグを抜くことや使わない電気は消すこと、省エネ性能のある製品を使うといったことを行動に移すだけでも、立派なエネルギー消費量の削減につながります。一人ひとりの小さな意識の積み重ねと行動が大切です。
参照元:待機時消費電力を減らしましょう。|経済産業省資源エネルギー庁HP
まとめ
この記事では再生可能エネルギーとはなにか、そのメリットなどを紹介してきました。
SDGsの目標で掲げられているように、いま世界に求められているのは「クリーンなエネルギーを世界の人々が安定的に供給できる」ということです。その役割を担っていくのが再生可能エネルギーなのです。
今後のさらなる普及には課題も少なくありませんが、エネルギー問題は地球の将来にかかわる問題であるということを、私たち一人一人が理解し、行動に移していくことが大切なのです。