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SOCIETY

コミュニティビジネスとは?日本の事例と、続く事業の3つの分かれ目

Photo by John Unwin on Unsplash

「コミュニティビジネスって、結局ボランティアと何が違うの?」「地方の話で、自分の暮らしには関係ないのでは?」。こんな疑問を持つ方は多いはずです。

結論から言うと、コミュニティビジネスは、地域の困りごとを、地域の人と資源を使い、収入を得ながら解決していく事業です。都市部の商店街、団地、マンションの管理組合まで、舞台は地方に限りません。

企業の非財務開示を取材していると、「社会課題の解決」を掲げる事業ほど、数字の見せ方と持続性に大きな差が出ると感じます。この記事では、その視点から日本のコミュニティビジネスを整理します。

この記事で学べること

  • コミュニティビジネスとソーシャルビジネス、ボランティアとの違い
  • 日本で広がった背景と、代表的な4つの類型
  • 続く事業と続かない事業を分ける3つの問い
  • 読者が今日から試せる、具体的な最初の1アクション

コミュニティビジネスの意味と、混同されやすい言葉との違い

まず入口として定義を押さえます。コミュニティビジネスは、地域住民が主体となり、地域の課題を、地域の資源(空き家、農産物、技能、時間など)を活かしたビジネスの手法で解決する取り組みを指します。

利益を最大化することが目的ではなく、事業で得た収益を地域に還元し、課題解決を続けるための資金にします。この「地域に根ざす」「事業として回す」の2点が核になります。

ソーシャルビジネスとの違いは「地域性の強さ」

よくある誤解は、「コミュニティビジネスとソーシャルビジネスは別物」という理解です。実際には、経済産業省はソーシャルビジネスを「社会性」「事業性」「革新性」の3つの要件で整理しており、コミュニティビジネスはその中でも特に地域性の強いものとして語られることが多いです。

ソーシャルビジネスは、地域を限らず、難病支援や環境問題のような全国・世界規模の課題も対象にします。一方でコミュニティビジネスは、「この町の、この困りごと」に焦点を絞ります。

ボランティア、一般的な地域ビジネスとの違い

ボランティアは無償の善意が前提で、活動資金は寄付や助成金に頼りがちです。コミュニティビジネスは、対価を受け取り、人件費も含めて事業を設計します。「お金をもらうのは地域貢献に反するのでは」と不安に思う方もいますが、無理なく続けるための対価は、むしろ地域への責任といえます。

通常の地域ビジネスとの違いは、課題解決が事業の出発点にある点です。同じ飲食店でも、「採算の見込める立地で開く」のが通常のビジネス、「高齢者の昼食と居場所がない」という課題から開くのがコミュニティビジネスです。

法人格はひとつに決まっていない

「NPO法人でないとできないのでは」というのも誤解です。日本では、NPO法人、一般社団法人、株式会社、合同会社、協同組合など、さまざまな法人格で行われています。2022年10月に施行された労働者協同組合法により、働く人自身が出資し、運営にも携わる協同組合という選択肢も加わりました。

NPO法人は、1998年12月に施行された特定非営利活動促進法に基づく制度です。法人格の選び方は、資金の集め方と意思決定の仕方に直結します。最初から決め込まず、任意団体で小さく始めてから法人化する例も珍しくありません。

日本でコミュニティビジネスが広がった背景

「なぜ日本で必要とされるのか」という疑問には、地域の変化が答えになります。人口減少と高齢化が進み、地域によっては商店やバス路線、診療所が減っています。行政も民間企業も、採算が合わない地域から撤退せざるを得ない場面が増えました。

その空白を、「住民自身が担う」という形で埋めてきたのがコミュニティビジネスです。行政サービスの補完でも企業の代替でもなく、住民が課題の当事者として動く点に特徴があります。

制度面の追い風

制度の整備も、担い手を後押ししてきました。1998年のNPO法の施行で、市民団体が法人格を持ち、契約や雇用を行いやすくなりました。2009年度には総務省が地域おこし協力隊の制度を始め、都市部から地域に入って活動する人材が増えています。

こうした制度は、あくまで入り口を広げるものです。制度があっても、事業が続くかどうかは別の問題です。この点は、後半で詳しく扱います。

課題解決と収益の両立が求められる理由

もう一つの背景は、補助金や助成金だけに頼る運営の限界です。補助期間が終わると活動が止まる、という話は、地域活動の現場でよく聞かれます。そのため、事業収入で自走する設計が重視されるようになりました。

日本の主な4つの類型と、複数の代表的な取り組み

「具体的にはどんな事業があるのか」を、4つの類型で見ていきます。ここで挙げる事例は、いずれも公開情報にもとづく紹介で、優劣をつけるものではありません。

買い物・移動を支える型

商店が閉まった地域で、住民が出資して店を運営する形です。沖縄本島北部には、住民の共同出資で運営される共同売店が各地にあり、国頭村の奥共同店は1906年の創業で、日本最古級とされています。店は物販だけでなく、金融や郵便の取次、集落の集会所のような役割も担ってきました。

同じ系統には、住民出資の給油所、コミュニティバスやデマンド交通の住民運営があります。買い物や移動の困りごとは、都市部の団地でも起きており、応用の余地は広い類型です。

地域資源を商品にする型

地域にあるものを収入に変える類型です。徳島県上勝町の株式会社いろどりは、料理に添える葉や花を「つまもの」として商品化し、高齢の生産者が主役となる仕組みをつくりました。山の葉を価値ある商品に変える発想は、地域資源の捉え直しの例として知られています。

農産物の加工、里山の木材活用、空き家の改修なども、この型に入ります。売上だけでなく、誰が担い手になり、収益がどこに残るのかを見ることが重要です。

居場所・福祉をつくる型

子ども食堂、高齢者の通いの場、空き家を活用した多世代交流拠点などです。収益性が低く見えますが、利用者負担、会費、行政からの委託、寄付を組み合わせて運営する例があります。

この型は、「儲からないから事業ではない」と誤解されがちです。ただし、課題解決の成果を、利用者の声や参加人数などで丁寧に記録することが、資金を得るうえでも欠かせません。

観光・交流を生む型

農泊や体験型観光、地域ガイドなど、外から人を呼び込む類型です。収入を得やすい反面、観光客の増加が住民の暮らしの負担になる場合もあります。事業の目的が地域のためなのか、観光客のためなのかを、常に確認する必要があります。

続く事業と続かない事業を分ける3つの問い

ここでは、当メディアならではの整理として、公開されている事例紹介や支援機関の資料に共通して見られる傾向から、「続く事業」を考える3つの問いを示します。統計的に検証した結果ではなく、ESGや非財務開示の取材で見てきた「語られ方」からの整理です。

問い1 その課題の当事者は、企画の段階から関わっているか

支援する側の思い込みで始めた事業は、利用者が増えにくい傾向があります。たとえば、高齢者向けの送迎サービスを始めたものの、実際の困りごとは送迎ではなく、帰りの荷物運びだった、という食い違いは起こり得ます。企画の段階で、当事者に「何に一番困っていますか」と聞いているかが分かれ目になります。

問い2 収入の柱は、補助金以外に1本あるか

補助金は始めるときに有用ですが、それだけに頼る設計は、期間終了とともに止まる危険があります。利用料、会費、商品販売、委託など、少額でも事業収入の柱があるかを見ます。企業のサステナビリティ報告でも、収益構造が見えない取り組みは評価しにくいのと同じ構造です。

問い3 担い手が1人欠けても回るか

特定の人の熱意に依存した事業は、その人が疲れたり転居したりすると止まります。役割の分担、引き継ぎの記録、世代の異なる参加者の存在が、持続性を支えます。この3つの問いは、始める人にも、応援する人にも、そのまま使える確認項目です。

今日から試せる1つのアクション

「関心はあるけれど、いきなり事業を起こすのは無理」と感じる方も多いと思います。まず試してほしいのは、次の1つです。

自分が暮らす町の「困りごと」を3つ書き出し、そのうち1つについて、すでに取り組んでいる団体がないかを調べてみてください。調べる先は、市区町村の社会福祉協議会、NPO支援センター、自治体の地域づくり担当課のホームページが入り口になります。見つかったら、新しい事業を立ち上げるのではなく、その団体のイベントに一度参加したり、買い物や寄付で応援したりするところから始められます。

既存の団体を知ることは、地域の実情を知る最も確かな方法です。そこから「自分にできる役割」が見えてくることもあります。

まとめ

コミュニティビジネスは、地域の困りごとを、地域の人と資源を使って、収入を得ながら解決していく事業です。ソーシャルビジネスの中でも地域性が強く、ボランティアとは異なり、対価を受け取りながら持続させる点に特徴があります。法人格も、NPO法人、一般社団法人、株式会社、協同組合などから選べます。

日本では、人口減少や高齢化で商店や交通が減る中、住民が担い手となる動きが各地で広がってきました。買い物・移動、地域資源、居場所・福祉、観光・交流の4類型で見ると、自分の地域に近い事例を探しやすくなります。

ただし、事業が続くかどうかは、当事者の関わり、収入の柱、担い手の分散という3つの問いで大きく変わります。応援する側も、始める側も、この視点で見ると、取り組みの見え方が変わるはずです。まずは、地域で活動している団体を1つ調べてみてください。

  • コミュニティビジネスは、地域の課題を地域の資源で、事業として解決する取り組み
  • ソーシャルビジネスの一形態で、地域性が強い点が特徴
  • 日本では、買い物・移動、地域資源、居場所・福祉、観光・交流の4類型で見ると分かりやすい
  • 続く事業は、当事者の参加、補助金以外の収入、担い手の分散の3点を備える傾向がある
  • 最初の一歩は、地域の既存団体を1つ調べ、イベント参加や応援から始めること

参考文献

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