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グリーン物流は日本でどこまで進んだか|2024年問題と脱炭素、暮らしでできる選択

Photo by Marko Lengyel on Unsplash

「グリーン物流」と聞いても、結局は配送トラックを電気にする話でしょう、と受け取る方は多いはずです。ネット通販で毎週のように荷物を受け取っていると、自分とは遠い話に感じるかもしれません。

実際のグリーン物流は、トラックの動力だけを扱う話ではありません。運ぶ手段、荷物の積み方、発注のルール、受け取り方までを含めて、物流全体のCO2と負荷を減らす考え方です。日本ではドライバー不足への対応と脱炭素が同時に求められており、この2つの課題が重なっています。

この記事では、読者が抱きそうな疑問に順番に答える形で、日本の現状、主な手法、制度の動き、そして暮らしの側でできる選択を整理します。

この記事で学べること

  • 日本でグリーン物流が急がれている背景と、数字の読み方
  • モーダルシフトや共同配送など、4つの主な手法の中身
  • 「EVなら環境に良い」といった思い込みを避けるための見極め方
  • 荷物を受け取る側が、今日から試せる具体的な行動

グリーン物流とは何か、なぜ日本で急がれているのか

まず「グリーン物流」という言葉の範囲を確認します。ここは入口として短く押さえ、次の節から実際の動きを見ていきます。

グリーン物流は「エコな配送」だけの話なのか

グリーン物流は、荷物の輸送・保管・荷役・包装といった物流の各工程で、環境負荷を減らす取り組みの総称として使われます。日本では2005年ごろから、国土交通省・経済産業省と物流・荷主の業界団体が連携する「グリーン物流パートナーシップ会議」が活動してきました。

「環境のために少し遅く届く」といった個人の我慢だけを指す言葉ではありません。むしろ企業どうしの発注の仕方や、輸送の組み方を変える話が中心です。

日本の物流で、CO2はどのくらい出ているのか

「物流のCO2なんて、全体から見れば小さいのでは」と思う方もいるでしょう。環境省と国立環境研究所の温室効果ガスインベントリでは、運輸部門は日本のCO2排出量のおよそ2割弱を占めます。その運輸部門の中で、貨物輸送は3〜4割程度とされます。

人の移動に比べて目立ちにくいものの、無視できる規模ではありません。しかも貨物は、通販の拡大や小口配送の増加で、運び方が細かく分かれやすい分野です。

「2024年問題」は環境と関係があるのか

関係があります。2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働に年960時間の上限が適用されました。これにより、これまでと同じ運び方を続けると、運べる量が足りなくなる懸念が指摘されています。

営業用トラックの積載率は、全体でおよそ4割前後にとどまるとされます。空いている荷台が多いということは、同じ荷物を運ぶのに余分な走行が生じているということです。積載率を上げれば、人手不足への対応とCO2削減が同じ方向に動きます。グリーン物流が日本で「環境」と「働き方」の両方の文脈で語られるのは、このためです。

日本で進む4つの手法

次に、現場で実際に使われている主な手法を見ます。どれも単独で完結するものではなく、組み合わせて効果が出ます。

モーダルシフト

トラックで運んでいた長距離の貨物を、鉄道や船舶へ切り替える方法です。同じ重さの荷物を同じ距離だけ運ぶとき、鉄道や内航海運のCO2排出量は営業用トラックより大幅に少ないとされます。国土交通省は、鉄道でおよそ10分の1前後、内航海運で数分の1といった目安を示しています。

ただし、すべての荷物に向くわけではありません。鉄道コンテナや船は、駅や港までの積み替えが必要です。短距離や急ぎの荷物では、かえって効果が出にくい場合があります。長距離で、納期に少し余裕のある荷物から切り替えるのが現実的とされています。

共同配送と積載率の向上

複数の企業が荷物を混載し、1台のトラックで運ぶ方法です。競合関係にある食品メーカーが物流で協力する例もあります。たとえば味の素やカゴメなどが参加する食品物流の共同会社「F-LINE」では、北海道などで共同配送や中継輸送が行われていると報告されています。

積載率を上げるには、荷物の大きさや発注のタイミングをそろえることも欠かせません。トラックだけの努力では限界があり、荷主側の協力が前提になる手法です。

車両の低炭素化

EVや燃料電池車、ハイブリッド車への切り替えです。宅配大手のヤマト運輸は2030年までにEVを大量に導入する計画を公表し、佐川急便もEV軽自動車の導入を進めています。

もう1つ、全長約25メートルのダブル連結トラックも活用されています。1台で通常の大型トラック2台分に近い荷物を運べるため、ドライバー1人あたりの輸送量が増え、走行回数の削減にもつながります。

荷主側のルールの見直し

意外に効果が大きいのが、発注側の工夫です。パレットの規格をそろえて積み替えの手間を減らす、納品のリードタイム(発注から納品までの日数)を延ばして便をまとめる、待機時間を減らすために荷受けの予約制を導入する、といったものです。

トラックの燃料や車両を変えなくても、運び方のルールを変えるだけで、走行距離や待機中のアイドリングを減らせます。

制度はどう動いているのか

「企業の自主的な努力に任せるだけでは進まないのでは」という疑問は当然です。日本では制度面でも、荷主と物流事業者の双方に対応を求める方向へ進んでいます。

2024年に成立した物流関連の法改正(物資の流通の効率化に関する法律)では、荷主や物流事業者に、物流効率化の努力義務が課されました。一定規模以上の「特定荷主」には、物流統括管理者(CLO)の選任や、中長期計画の作成・報告が求められる仕組みも盛り込まれ、2026年度から本格的に運用が始まると整理されています。

大切なのは、この制度が「環境のため」だけでなく「物流が止まらないため」にも設計されていることです。積載率向上や荷待ち時間の削減は、CO2の削減と労働環境の改善の両方に効きます。制度の名称や義務の対象は改正が続くため、詳細は国土交通省の最新の案内で確認してください。

「グリーン」の看板をどう見極めるか

ここからは、MIRASUSが公開情報の傾向を踏まえて整理した読み解きのポイントです。物流の環境対策を調べていくと、読者がつまずきやすい点はおおむね3つのパターンに分けられます。特定の調査結果ではなく、公開されている議論から見える傾向としてお読みください。

「EVなら排出ゼロ」と考えてしまう

EVは走行中にCO2を出しませんが、充電する電気がどう作られたかで、全体の排出量は変わります。日本の電源は火力発電の比率がなお大きく、再生可能エネルギー由来の電気で充電しているかどうかが、評価の分かれ目になります。「EV導入」という言葉だけで判断せず、電力の調達方法も合わせて見る必要があります。

「モーダルシフト=いつでも環境に良い」と考えてしまう

先に述べたとおり、輸送距離や積み替えの回数によっては、効果が小さくなることがあります。数字を見るときは「どの区間で」「どのくらいの荷物量で」を確認することが大切です。

「企業の取り組みなら、自分は関係ない」と考えてしまう

物流の負荷は、私たちの注文の仕方とつながっています。再配達や、急ぎの個別配送、1点ずつの小口注文は、積載率を下げる方向に働きます。企業と個人の役割は別々ではなく、重なり合っています。

見極めるときの判断基準としては、次の3点が目安になります。

  • 削減量や導入台数など、数字で示されているか
  • 何と比べて減ったのか、比較の基準が書かれているか
  • 輸送の一部だけでなく、全体のどの範囲を対象にしているか

数字や根拠が見当たらない「環境に優しい配送」は、そのまま受け取らず、基準を探してみてください。

荷物を受け取る側にできること

「個人が少し気をつけたところで、変わるのか」と感じる方もいるでしょう。個人の行動だけで物流全体が変わるわけではありません。それでも、注文と受け取りの積み重ねは、積載率や再配達の回数に影響します。

再配達を減らす

国土交通省の調査では、宅配便の再配達率は近年1割前後から1割を下回る水準で推移しており、令和7年4月は約8.4%と報告されています。配達日時の指定、宅配ボックスの利用、置き配の選択、受け取り場所の変更は、再配達の削減に直結します。不在が多い生活リズムなら、コンビニ受け取りや宅配ロッカーを選ぶ方法もあります。

注文をまとめて、納期に余裕を持たせる

「お急ぎ便」を選ばず、複数の商品を1回の注文にまとめると、配送の回数が減りやすくなります。すべてを我慢する必要はありません。急ぎでないものだけ、日程に余裕のある選択肢を選ぶ、くらいが続けやすい範囲です。

事業者の情報を確認する

通販サイトや配送会社が、配送の環境対策をどう公表しているかを見るのも、1つの選択です。EV導入台数、共同配送の取り組み、再配達削減の施策などが、公式サイトで説明されているか確認してみてください。

今日から試せる1つのアクション

ここまで読んで、結局自分は何をすればいいのか、と迷った方もいるでしょう。1つだけ選ぶなら、最近使っている通販や宅配サービスの設定画面を開いて、「受け取り方法」を見直すことです。

たとえば、日時指定を活用する、宅配ボックスや置き配を選ぶ、コンビニ受け取りを登録する、といった設定が可能です。普段の注文のうち「急ぎではないもの」だけ、お急ぎ便の選択をやめるのも、取り組みやすい方法です。

設定の変更は数分で終わりますが、再配達の回数を減らすことは、ドライバーの負担とCO2の両方を減らす方向に働きます。すべてを一度に変える必要はありません。まず1つだけ試してみてください。

まとめ

グリーン物流は、トラックを電気にする話にとどまらず、運ぶ手段、積み方、発注ルール、受け取り方まで含めた、物流全体の見直しです。日本では、2024年問題によるドライバー不足と、運輸部門の脱炭素という2つの課題が重なっており、積載率の向上や荷待ち時間の削減が、両方の解決につながると考えられています。

一方で、EVの導入やモーダルシフトは、条件によって効果が変わります。「環境に優しい」という言葉だけで判断せず、何と比べて、どの範囲で、どれだけ減ったのかを確認する姿勢が大切です。個人にできることは小さく見えますが、再配達の削減や注文のまとめ方は、積載率に影響します。

制度面でも、荷主と物流事業者の双方に対応を求める流れが続いています。最新の情報は、国土交通省や環境省の公表資料で確認しながら、自分の受け取り方から見直してみてください。

  • グリーン物流は、輸送・積載・発注・受け取りまで含めた物流全体の見直し
  • 2024年問題への対応と脱炭素は、積載率の向上という共通の解決策を持つ
  • EVやモーダルシフトは条件次第で効果が変わるため、数字と比較基準を確認する
  • 再配達の削減や注文のまとめ方など、受け取る側にもできる選択がある

参考文献

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