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中東危機が問いかける「脱・化石燃料依存」|世界の再エネ同盟が緊急シフトを要求

中東危機が問いかける「脱・化石燃料依存」|世界の再エネ同盟が緊急シフトを要求

2026年3月、中東情勢の緊迫化が世界のエネルギー市場を再び揺さぶっています。この危機を受け、世界の再生可能エネルギー業界団体の連合体「グローバル・リニューアブルズ・アライアンス(GRA)」が、各国政府に対してクリーンエネルギーへの緊急シフトを求める声明を発表しました。繰り返す「エネルギー危機のサイクル」を断ち切るために、今こそ再エネ加速が必要だと訴えています。

ホルムズ海峡の事実上の封鎖が引き金に

米国とイスラエルによるイランへの攻撃を受け、イランが対抗措置としてホルムズ海峡を事実上封鎖する状況が3月初旬に発生し、石油・天然ガス価格が急騰、世界経済の減速懸念が広がりました。
原油の輸送量の約2割が通過するとされるこの海峡の通航が妨げられれば、輸入エネルギーへの依存度が高い国々は即座に打撃を受けます。
中東は戦略的に重要な海上水路(チョークポイント)が集結するエリアであり、原油の約9割を中東に頼る日本のエネルギー安全保障にも大きな影響をもたらします。

こうした状況を受け、業界団体であるグローバル・リニューアブルズ・アライアンス(GRA)は、中東危機のただ中で、太陽光をはじめとする再生可能エネルギーの導入を加速させる施策を実施するよう、各国の政策立案者に呼びかけました。

「同じ危機が繰り返される」――GRAが訴える構造問題

GRAは声明の中で、「今日の危機は化石燃料依存のエネルギーシステムの本質的な危険性を改めて浮き彫りにした。各国政府はこの石油・ガス価格ショックを転換点として捉え、再生可能エネルギーへの移行を緊急に加速すべきだ」と訴えました。
GRAは今回の危機を、1970年代のオイルショックや2022年のロシアによるウクライナ侵攻など、過去のエネルギー危機と同じ構造問題として指摘しました。これらの紛争はいずれも、化石燃料の輸入に依存する多くの国・地域が、価格高騰・供給途絶・経済的および政治的不安定にさらされるリスクを露呈させてきたといいます。
「世界の4分の3が輸入化石燃料に依存しており、化石燃料への継続的な依存は雇用と生活を脅かす深刻なリスクだ」とGRAは声明で述べています。

5つの緊急行動計画とは

GRAは今回のエネルギー危機への対応として、許認可・送電網・資金調達・電化・サプライチェーンの5分野にわたる施策の実施を求めました。具体的には以下の内容です。

1|許認可の緊急手続き

再生可能エネルギーおよびエネルギー貯蔵プロジェクトに関する許認可・同意手続きを緊急に合理化し、今後36か月以内に大幅な設備容量の拡大を実現することを求めています。

2|送電網・蓄電の課題解消

電力網と蓄電システムを拡張・近代化・最適化し、新たな再エネ容量を系統に統合するとともに、系統連系の長い待ち行列を大幅に短縮し、再エネへの優先給電を保証することで、系統アクセスを加速させることを求めています。

3|資金調達の即時動員

優遇金利・融資の導入、金融機関の融資制限の緩和、再エネ専用の融資枠の創設、そして炭素集約型産業からの資本転換によって、再エネ・蓄電プロジェクトおよび関連インフラへの公民連携投資を解放・リスク低減させることを求めています。

4|電化の推進

直接電化が困難なセクターについては、再生可能エネルギーで直接電化できない部門においては、グリーン水素が解決策になる
とも述べており、電化を軸にしながらも多様なアプローチの組み合わせを重視しています。

5|サプライチェーンの拡大

再生可能エネルギー・送電網・蓄電の導入拡大と備蓄を目指し、明確なマイルストーンを設けたサプライチェーン開発のための強固な産業戦略を構築することも求めています。

再エネは「最速・最安価のエネルギー安全保障策」

「再生可能エネルギーは、長期的なエネルギー安全保障・強靱性・繁栄に向けた最速かつ最もコスト競争力のある解決策だ。風力・太陽光・水力・地熱・エネルギー貯蔵プロジェクトの導入を加速させることで、各国を価格変動やエネルギー市場の機能不全から守ることができる」とGRAは述べています。
GRAは、風力・太陽光・水力・地熱・エネルギー貯蔵などの再エネ技術が、長期的なエネルギー強靱性と経済安定への最速・最もコスト競争力のある経路を提供すると強調しています。
GRAは「過去のエネルギー危機と同様に、今日の危機も再生可能エネルギーへの国際的な協調推進を促すべきだ」と訴え、すでに多くの国がこれに応じる形で再エネ導入計画の加速を再確認していると指摘しています。

中東自身も変わりつつある

皮肉なことに、今回の危機の震源地でもある中東産油国自体も、再エネへのシフトを急いでいます。
サウジアラビア、UAE、オマーン、モロッコ、ヨルダンなどは、太陽光・風力発電プロジェクト、エネルギー貯蔵技術、グリーン水素の取り組みに多額の投資を行っており、この地域の使命は世界のエネルギー転換に参加するだけでなく、それを形成することだとされています。
UAEのエネルギー・インフラ大臣スハイル・モハメド・アル・マズルーイ氏は、UAEが再生可能エネルギー設備容量の拡大を進めており、複数のプロジェクトが開発中であると述べているとされています。

ただし、実態と目標のギャップは依然として大きいという見方もあります。
中東の政府が広大な砂漠のソーラープロジェクトについて熱のこもった言葉を並べ初期段階の進展を示している一方で、この地域における再エネ比率はいまだ低水準にとどまっているという指摘があります。

日本への示唆|エネルギー安全保障と脱炭素を「両立」する視点

中東情勢の緊迫化は、原油の約9割を中東に頼る日本にとっても、エネルギー安全保障上の重大な懸念事項です。

日本政府は2025年に「第7次エネルギー基本計画」と「GX2040ビジョン」を相次いで閣議決定したとされており、再生可能エネルギーを主力電源として最大限導入すると同時に、特定の電源や燃料源に過度に依存しない「バランスのとれた電源構成」を目指す方針を示しているとされています。
今回のGRAの声明が改めて浮き彫りにしたのは、「エネルギー安全保障」と「脱炭素」は対立する概念ではなく、むしろ再エネへの移行こそが安全保障の強化につながるという考え方です。

まとめ|繰り返す危機を「転換点」にできるか

中東危機のたびに繰り返されるエネルギー価格の高騰と供給不安。
GRAのBruce Douglas CEOが指摘するとおり、「エネルギー危機が繰り返されるのは、世界のエネルギーシステムが過去に縛られているからだ」ということになります。

今回の声明が訴えているのは、許認可の迅速化から送電網の整備、資金調達の仕組みづくりまで、制度的・構造的な変革を今すぐ始めることです。一方、個人としても「自分が使うエネルギーはどこから来ているのか」を見直すことが、大きなシフトへの第一歩になります。再エネ電力プランへの切り替えや省エネ行動の積み重ねが、化石燃料依存からの脱却を後押しします。地政学リスクを「他人ごと」にせず、エネルギーの選択という身近な行動と結びつけて考えることが、今まさに求められていると言えます。

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