「環境にやさしい」「脱炭素を推進中」——こうした企業のアピールを、あなたはどこまで信じますか。ESG投資への注目が高まる中、実態以上に環境・社会貢献をよく見せる「グリーンウォッシュ」への国際的な規制が急速に強まっています。2026年は、見せかけのESGが通用しなくなる節目の年といえます。
グリーンウォッシュとは何か
グリーンウォッシュとは、企業や組織が実態を伴わないまま環境・社会への配慮をアピールする行為を指します。環境に無害なイメージを与えるグリーン(緑)と、上辺だけを取り繕うホワイトウォッシュを組み合わせた言葉です。
たとえば、製品の一部の工程だけを「再生可能エネルギー由来」と表示したり、CO₂削減量を誇張して開示したりするケースが典型です。
実態以上に自社のサステナビリティ活動に関する情報を良く見せるグリーンウォッシュは、ESG投資に対する投資資金量に影響を与えるだけに留まらず、企業を取り巻く多様なステークホルダーの意思決定を誤らせ、企業とステークホルダーの信頼関係を破壊するものといえます。
投資家も消費者も、開示情報をもとに意思決定をしています。その情報が「飾り」であれば、社会全体の資源配分が歪むことになります。
規制の網が世界で広がっている
グリーンウォッシュへの規制強化は、すでに世界各地で具体化しています。
欧州証券市場監督局(ESMA)は2024年5月に、ファンドにESGの名称を付す場合のガイドラインを最終化・公表しました。
これにより、ESGファンドを名乗るには実質的な基準を満たすことが求められるようになっています。
日本でも動きが出ています。
金融庁は令和5年3月31日に公表した「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」の一部改正において、「ESG投信に関する留意事項」としてグリーンウォッシュ問題に言及しています。
さらに、サステナビリティ情報の開示そのものの義務化も進んでいます。
日本でも、有価証券報告書等への非財務情報(ESG情報)の記載義務化の動きが進んでいるとされています。特にEUの企業サステナビリティ報告指令(CSRD)の動向には注意が必要で、EU域内に子会社を持つ日本企業にも開示対応を求められる可能性があり、グローバル展開する企業には急務の課題となっています。
「開示するだけ」ではもう足りない
問題は、開示の量だけでなく「質」と「信頼性」です。
ESG情報の信頼性を高めることを目的に、各国では第三者機関による保証の範囲やレベルについて議論が進んでいます。もはや情報を開示するだけでは不十分で、その正確性や信頼性の担保が不可欠です。
不正確な情報開示は、投資家からの信頼失墜だけでなく、規制当局からの制裁や社会的評価の低下を招くリスクもはらんでいます。
つまり、グリーンウォッシュは単なる「倫理問題」ではなく、企業の経営リスクそのものになっているのです。
実際、米国SECは、ESG調査における方針や手続きの不備に関して罰金を支払うことに同意した事案を公表しています。
欧米では規制当局が個別案件で動き始めており、日本企業もその影響圏から無縁ではありません。
「反ESG」の風が問いかけること
一方で、特に米国ではトランプ政権の発足以降、ESG投資や環境規制の流れに変化が生じています。
米国では、トランプ政権の復活によりESG投資や環境規制の流れが大きく変化し、EUでは、これまで厳格化してきたサステナビリティ基準が緩和へとシフトしつつあります。
こうした「反ESG」の潮流は、ESGそのものの否定というより、「企業価値に本当につながっているか」を問う声として受け止めることができます。
海外の「反ESG」の風は、「そのESGは企業価値につながるのか」と問いかけており、企業価値につながるESGを追い求める不断の姿勢が、企業の強さを決めるという見方があります。
形式的な開示や象徴的なプロジェクトに終始するのではなく、事業戦略と一体になったESG経営こそが問われているといえます。
実効性ある取り組みに変えるために
企業がグリーンウォッシュの誹りを受けないために、また社会に対して本質的な貢献を果たすために、何が求められているのでしょうか。
まず重要なのは、データの精度と一貫性です。
アクロニスは2026年3月10日に公開した2025年ESGレポートで、外部のサステナビリティアドバイザーとの連携によるGHG算定の一貫性と信頼性強化を成果として挙げています。
第三者の目を入れることで、数字の信頼性を高める姿勢が重要です。
次に、スコープ3排出量など「見えにくい排出」への対応です。
ESG指標の提出率は向上傾向にある一方、Scope 3排出量については全体排出量の40%以上かどうかを問う確認欄が新たに追加されるなど、開示の拡充が求められており、特に再エネ活用や従業員エンゲージメントに関しては引き続き提出率が低い状況です。
さらに、ESGの改善が企業価値にどうつながるかを説明できるロジックの構築も求められています。
グリーンウォッシュ関連規制などの見せかけだけのサステナビリティ推進の否定は、本質的な活動をしている企業からすればポジティブに考えてもよいという見方もあります。
本物の取り組みを積み重ねてきた企業にとって、規制強化はむしろ追い風になる可能性があります。
まとめ|「本物」だけが残る時代へ
グリーンウォッシュへの規制強化と開示義務化の流れは、今後さらに加速していくと考えられます。企業に求められているのは、形式を整えることではなく、事業の中核にサステナビリティを組み込み、その成果を誠実に示し続けることです。
消費者や投資家の側から見ても、企業のESGレポートや環境訴求の表示を批判的に読む目を養うことが大切です。「環境にやさしい」という言葉の裏に、具体的な数値と第三者保証があるかどうか——そうした視点が、社会全体としてグリーンウォッシュをなくしていく力になります。

