ガソリン価格が各地で160〜190円台に高騰し、家計を直撃しています。その背景には、中東情勢の急激な悪化があります。こうした状況のなかで、石原宏高環境大臣が「化石燃料に頼らない国造りが必要」という趣旨の発言をしたと伝えられています。エネルギー安全保障と脱炭素——この二つを同時に実現することは、日本が長年向き合ってきた難題です。今この瞬間の原油高騰は、その課題をより切実なものとして私たちの前に突きつけています。
中東情勢と原油急騰|日本が直面するリスク
2026年2月28日(日本時間)に始まった中東情勢の緊迫を背景に、世界経済への影響、特に中東への依存度が高い原油価格への影響を懸念する声が広がっています。
原油先物市場の価格は、ホルムズ海峡封鎖以降に一時1バレルあたり119.48ドルとなり、ロシアによるウクライナ侵攻開始時(2022年)以来となる高値にまで高騰しました。国際エネルギー機関(IEA)全加盟国が石油の協調放出を行うことで合意したとしていますが、原油先物市場は再び1バレルあたり100ドルを超えるなど、価格高騰は収まる様子がありません。
国内では、政府が2026年3月11日にガソリン補助金の再開を発表し、3月19日出荷分から全国平均170円程度に抑制することを目標としています。一方、長野県では190〜200円台、離島では180〜190円台に達している地域もあるとされています。
日本は原油輸入の94%を中東地域に依存しており、石油については8割以上をサウジアラビアやアラブ首長国連邦などの中東からの輸入に頼っています。そのため、中東の情勢が混乱して原油価格が上がると、ガソリンなどと同様に火力発電の燃料価格も上昇してしまうリスクがあります。
石原環境大臣の発言|「化石燃料に頼らない国造り」
石原宏高環境大臣は、2026年3月13日の閣議後会見において、中東情勢の緊張を背景とした原油価格の急騰に言及し、化石燃料に依存しない社会づくりの重要性を強調したと伝えられています。石原宏高氏は2025年10月21日に環境大臣兼内閣府特命担当大臣(原子力防災担当)に就任しており、就任以来、再生可能エネルギーとエネルギーコストのバランス、脱炭素化と経済政策の両立について積極的に発言を続けてきた経緯があります。
今回の発言は、「気候のため」だけでなく「暮らしの安定のため」という観点から脱化石燃料を訴えたという点で、政策的なメッセージとして注目に値します。
日本の電源構成の現状|依然として化石燃料が主力
資源エネルギー庁が2025年4月に公表した最新データによると、2023年度の日本の電源構成は火力発電が約68.6%を占めています。内訳は天然ガス(LNG)が32.9%、石炭が28.3%、石油等が7.4%です。
日本の火力発電依存度は7割強で、欧米諸国はもちろん、石炭大国である中国よりも高い水準にあります。この高い依存度は、エネルギー安全保障上のリスクをはらんでいます。化石燃料の安定供給が国際情勢などの影響で途切れる可能性があり、それが電力不足を招くことにつながるからです。
一方、再生可能エネルギーは着実に拡大しています。
2013年度の10.9%から2023年度には22.9%まで増加しており、なかでも太陽光発電が9.8%と最も多く、2013年度の1.2%から大幅な増加となっています。
ただし、石炭火力が28.3%を占める状況は国際社会から批判を受けることも多く、欧州各国では再エネの割合が40%を超える国も多く、特にイギリスは風力発電を中心に再生可能エネルギーを推進し、2024年9月には石炭火力発電を廃止しています。
エネルギー安全保障と脱炭素の両立|政府の方針
2026年2月20日の施政方針演説において、高市首相は「エネルギーは国民生活及び国内産業の基盤であり、立地競争力強化のためにも、安定的で安価な供給が不可欠」と述べ、脱炭素電源の最大限活用と再生可能エネルギーのサプライチェーン国内構築を打ち出しています。
また、2025年2月18日に閣議決定された地球温暖化対策計画では、エネルギー基本計画及びGX2040ビジョンと一体的に対策・施策を実施し、2050年ネット・ゼロに向けた取組を進める方針が示されています。
中東依存への対処としての再エネ拡大という視点は、脱炭素論議に新しい軸を加えつつあります。太陽光・風力などの再生可能エネルギーは国内で発電できるため、供給不安や世界情勢によって化石燃料の価格が変動し、電気料金に直接影響して企業の経営を圧迫するリスクを低減できるという点でも価値が高まっています。
私たちにできること|選択と声を届ける
エネルギー政策の転換は政府や企業だけで決まるものではありません。消費者一人ひとりの選択も、方向性を少しずつ変えていく力を持っています。
- 電力会社・プランの見直し:再生可能エネルギー由来の電力プランを選ぶことで、需要面から再エネへの移行を後押しできます。
- 省エネの実践:照明のLED化、断熱改修、電気自動車への切り替えなど、日常の省エネは化石燃料の消費量を直接減らします。
- 関心を持って声を届ける:エネルギー政策に関するパブリックコメントや、地域の議論に参加することも有効な手段です。
原油価格の高騰が示すように、化石燃料への依存は気候変動だけでなく、生活コストや経済の安定にも直結します。「脱化石燃料」は遠い未来の話ではなく、今の暮らしを守るための現実的な課題として受け止めることができます。今できる小さな選択の積み重ねが、日本のエネルギー転換を支える土台になっていきます。

