「女性が活躍しやすい職場」という言葉が広まって久しい今、職場のジェンダー平等をめぐるルールがいよいよ本格的に変わります。2025年の国会で成立した女性活躍推進法の改正法が、2026年4月1日から施行されます。改正の背景にあるのは、日本が国際社会において依然として低いジェンダー平等の水準です。法改正で何が変わり、企業や働く人にとって何が求められるのか、整理してみましょう。
法改正の3本柱|ハラスメント・女性活躍・治療の両立
2025年の国会において、女性活躍推進法の改正法(正式名称:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律)が成立し、2026年中に全面施行される予定です。
今回の改正では、労働施策総合推進法や男女雇用機会均等法と併せて、①ハラスメント対策の強化、②女性活躍の推進、③治療と仕事の両立支援の推進、という3本柱が掲げられています。
これらはいずれも「多様な労働者が活躍できる就業環境の整備」という共通の目的のもとに位置づけられており、女性だけでなく、すべての働く人に関わる内容です。
改正法の公布日は2025年6月11日で、施行日は公布日・2026年4月1日、または公布の日から起算して1年6か月を超えない範囲内において政令で定める日、と段階的に定められています。
女性管理職比率の公表義務はどこまで広がるか
女性活躍推進法はもともと、企業に対して女性活躍に関する情報公開を義務づけてきた法律です。
日本政府は2016年4月に女性活躍推進法を施行し、従業員301名以上の企業に対して女性活躍に関する情報公開を義務づけました。その後2022年4月からは、対象が従業員101人以上の企業へと拡大されています。
今回の改正はその流れをさらに加速させるものです。2026年4月からは、従業員101人以上のすべての企業に対して、「男女間賃金差異」と「女性管理職比率」の公表が義務化されます。
こうした情報開示の強化は、職場の実態を「見える化」することで、求職者や投資家が企業を選ぶ際の判断材料になるとも期待されています。単なる義務対応にとどまらず、企業のブランドや採用力にも直結する取り組みとなっていきます。
世界と日本のギャップ|データが示す現実
法改正が急がれる背景には、日本の職場における女性活躍の遅れがあります。
グラントソントン加盟の太陽グラントソントンが2026年3月6日に公表した調査によると、日本の中堅企業の女性幹部登用率は21.5%でした。前年比3.1ポイント上昇したものの、調査対象35カ国の平均値32.9%に大きく水をあけられています。
政治の場でも状況は厳しいままです。
国会での女性議員数は伸び悩んでいます。直近の衆院選での当選者は68人で、全体に占める割合は14.6%でした。人数・割合ともに2024年の前回選挙(73人・15.7%)を下回っており、政治分野での女性参画の壁は依然として厚い状況です。
こうした状況は、世界全体の課題とも重なります。
UN Womenの発表によれば、世界全体で女性が持つ法的権利は男性が持つ権利の水準に達していないとされています。仕事、経済、安全、家族、財産など生活の基盤領域において、法律は体系的に女性を不利な立場に置いているという見方があります。
また、このままのペースで進んでいくとすると、法的保護の格差を埋めるまでに長い年月がかかるという見方もあります。
数字だけを見れば気が遠くなりますが、だからこそ法制度の整備と企業の実践が急がれるわけです。
「管理職に登用する」だけでは足りない
女性の活躍推進という言葉は広まりましたが、実態として何が変わっているのでしょうか。
資生堂が「資生堂 DE&I ラボサイト」で公開した研究では、「組織のリーダーのジェンダーバランスの偏りがアンコンシャスバイアスを強める可能性がある」とされています。この結果から、企業はリーダーのジェンダーバランスを均衡させ、特定の層だけに向けるのではなく、組織全体の課題として全社的なアプローチを行うことの重要性が示唆されています。
「女性だけが頑張る」構造ではなく、男性を含む組織全体が変わることの必要性は、研究によっても裏付けられているのです。
日本では育児や介護、療養、家族の転勤などの理由で一時的に仕事を離れた女性が、再び就業や再就職を果たすことは現在でも簡単ではない状況が続いています。
こうした「キャリアブレイク」の問題は、女性活躍推進が表面的な数値目標の達成にとどまる限り、解消されにくい構造的課題として残り続けます。
国連女性の地位委員会でも議論が進む
国際的な場でも、女性をめぐる法制度の整備が議題の中心に据えられています。
UN Womenの発表によれば、第70回国連女性の地位委員会(CSW70)が3月9日から19日にかけて開催されるとされています。このフォーラムでは、加盟国・国連機関・市民社会の代表者が「包括的かつ公平な法制度の促進、差別的な法律・政策・慣行の撤廃、構造的障壁への対処などを通じた、すべての女性と少女のための司法へのアクセスの確保と強化」をテーマに協議を行うとされています。
日本が国内で進める女性活躍推進法の改正と、国際社会でのこうした議論は、方向性を共有しています。国内の制度改革と国際的な議論のどちらも、「差別的な慣行を廃し、すべての人が平等に機会を持てる社会」という同じゴールを目指しているのです。
企業と個人、それぞれにできること
2026年4月の法改正施行を前に、今の時期は企業にとって準備の好機です。
新しい施策が定着するまでには時間がかかります。女性が働きやすく活躍できることが当たり前という状態になるよう、社員の意識や企業の風土自体が変わっていかなければならないとされています。そのためには男性社員や管理職も含めた制度設計や、長期的な視点での計画策定、社員の納得感を得られる変化への柔軟な対応が求められます。
個人としては、まず職場の情報開示の内容を確認してみることが一歩になります。自社の女性管理職比率や男女間の賃金格差はどの程度か、行動計画が策定されているかを確かめることは、企業を外から評価することにもつながります。
ジェンダー平等は、一つの法律で解決できるほど単純な課題ではありません。しかし、法制度の整備は確実に職場と社会を変える力を持っています。今回の女性活躍推進法改正を「遠い制度の話」ではなく、自分の職場や身近な社会に重ねて考えてみてください。

