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SOCIETY

放課後に広がる見えない格差|不登校35万人時代に問われる「学ぶ機会」の平等

放課後に広がる見えない格差|不登校35万人時代に問われる「学ぶ機会」の平等

学校に行けない子が増えている。文部科学省が公表した令和6年度の調査によると、小・中学校における不登校児童生徒数は約35.4万人に上り、今年も過去最多を更新しました。しかしこの数字の背後には、もう一つの深刻な問題が潜んでいます。学校にいられない子どもたちのうち、経済的に恵まれない家庭の子が「学ぶ場を選ぶ自由」すら持てないという現実です。貧困と教育格差、不登校が複雑に絡み合う今、社会は何を問われているのでしょうか。

不登校35万人の陰にある「学べない」現実

文部科学省が公表した令和6年度の調査によると、小・中学校における不登校児童生徒数(年間30日以上の欠席)は約35.4万人で、今年も過去最多を更新しています。特に深刻なのは、90日以上の長期欠席児童生徒数が不登校全体の約54%を占めている点です。

不登校の子どもたちには、学校に代わる学びの場として、フリースクールやオルタナティブスクールが存在します。しかし、そこには大きな壁があります。
文部科学省が平成27年(2015年)に実施した調査では、小・中学校に通っていない義務教育段階の子どもが通う民間の団体・施設は全国に474か所確認されており、住んでいる地域によっては通えない子どもたちがいます。また、教育費用は私費負担かつ公的支援は少なく、同調査によれば月額費用の平均は約33,000円です。

月3万円以上の費用は、経済的に苦しい家庭にとって容易に払える額ではありません。学校にもいられず、代替の学び場にも通えない子どもたちは、二重の意味で「教育の機会」を失っていくことになります。

放課後に生まれる「体験の格差」

学校に通えている子どもたちにも、家庭の経済状況による格差は忍び寄っています。それが「放課後の教育機会」の格差です。

文部科学省の「令和3年度子供の学習費調査」によると、家庭が自己負担する教育支出(学習費)のうち、約6〜7割が学校外活動費(学習塾や習い事等の費用)となっているとされており、日本では、経済格差による教育格差は、放課後に生まれやすくなっています。また、世帯収入による学校外教育支出の格差についても、複数の調査で家庭の経済状況によって大きな差が生じていることが指摘されています。

学力の差もまた、放課後の格差を映し出しています。
大学進学率や全国学力テストの正答率についても、世帯収入の多寡によって有意な差が生じているという調査・研究が複数存在します。

この格差は勉強だけにとどまりません。スポーツ、文化芸術、自然体験といった「体験活動」においても家庭の経済状況による差が確認されています。体験の格差は、子どもの自己肯定感や社会性の発達にも影響するとされており、学力格差と並ぶ深刻な問題として近年注目が高まっています。

「10歳の壁」と貧困の連鎖

教育格差がもたらす影響は、子ども時代だけで終わりません。
貧困状態にある子どもの学力は10歳(小学4年生)ごろから差が広がりやすいという見方があります。小学校3年生までは読み書き計算の基本的な学習が中心であるのに対し、小学校4年生になると基礎知識を活かした応用問題が増えてくるためとされています。
貧困は将来的な収入格差にも影響してきます。学歴による収入格差や生涯年収の差については、複数の調査・研究で指摘されており、教育機会の格差が経済格差に連動するという構造は広く認識されています。つまり子どもの頃に少しずつ生じた学力差は、やがて年収の差となり格差はさらに広がってしまうという見方があります。
家庭の経済格差は、子どもたちから学習の機会やさまざまな体験活動の機会を奪うことにつながります。教育機会に恵まれなかった結果、低学力・低学歴になってしまった子どもたちは、社会に出た時に低所得の職業につかざるを得ず、その結果、貧困は世代を超えて連鎖し、固定化していきます。

制度面での動き|奨学金・支援の拡充

こうした状況に対し、国や自治体はさまざまな制度的対応を進めています。

2025年度から多子世帯の学生等について、所得制限なく、国が定める一定の額まで大学等の授業料・入学金を無償とする制度が始まりました。また、大学院修士段階における授業料後払い制度の創設、貸与型奨学金における毎月の返還額を減額する制度の年収要件等の柔軟化なども行われています。

こども家庭庁も2026年度の施策強化に動いています。
道府県が行う域内の財政力が低い市町村のこども・子育て施策を計画的・継続的に補助する取り組みを支援するため、道府県による「地域こども政策推進計画」の策定とこども家庭庁への提出を通じた広域調整の仕組みが整備されています。

また、NPOや民間団体との連携も強化されています。
こども家庭庁は、「一般社団法人全国子どもの貧困・教育支援団体協議会」「認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ」「一般社団法人全国フードバンク推進協議会」の三つの団体と連携し、企業や個人から子どもへのモノや体験を提供する支援のマッチングを行うネットワーク推進協議会として活動しています。
地域レベルでも、幼児教育の無償化や就学援助制度、高校生への給付型奨学金の拡充が進められており、教育格差の是正に寄与しています。NPOや地域団体が運営する子ども食堂や学習支援、ひとり親家庭への食材・衣類配布、就労サポートなど、現場に即した支援活動も広がっています。

格差を「社会の問題」として捉えなおす

子どもやその親の貧困を「自己責任」と切り捨てる声もありますが、自己責任論は「機会の平等」があって初めて成り立つ理論です。人は生まれた時から生活環境、経済的余裕、食事、教育など様々な要素が平等ではありません。子どもの貧困の連鎖を断ち切るには、「社会全体で解決していく」という意識を不断に持ち続けることが重要と言えます。

「学ぶ機会」は、生まれた家庭の収入によって左右されるべきではない——そう言葉にするのは簡単ですが、現実の数字は依然として厳しい格差を示しています。制度の拡充は着実に進んでいますが、不登校の増加や体験格差といった新しい課題への対応はまだ途上にあります。

地域の子ども食堂や学習支援の場に関わるボランティア、フリースクールへの寄付や支援、あるいは地域の議論に参加すること——一人ひとりができることは小さくとも、それが積み重なることで、すべての子どもが「学ぶ機会」を持てる社会に近づいていきます。この問題を遠い話として眺めるのではなく、「社会全体の課題」として向き合う視点が、今まさに問われています。

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