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SOCIETY

放課後に広がる見えない格差|不登校35万人時代に問われる「学ぶ機会」の平等

放課後に広がる見えない格差|不登校35万人時代に問われる「学ぶ機会」の平等

学校に行けない子どもが増え続けています。文部科学省の令和6年度調査では、小・中学校の不登校児童生徒数は約35万4千人(353,970人)で、過去最多を更新しました。ただ、数字の裏には、学校に通えているかどうかとは別の「放課後に広がる見えない格差」があります。学校の外にある学びの場や体験に、家庭の経済状況で届きやすさが変わるという問題です。不登校35万人時代に問われる「学ぶ機会」の平等を、最新の公的データと自治体の動きから整理します。

この記事で学べること

  • 令和6年度の不登校の最新数字と、支援につながっていない子どもの規模
  • フリースクールの費用や放課後の体験をめぐる、家庭の経済状況による差
  • 東京都・神戸市・藤沢市など、利用料を助成する自治体の具体的な制度
  • 不登校をめぐって誤解されやすい点と、読者が今日からできる行動

不登校35万人時代の現在地|増加は鈍化したが、支援の届かない子が残る

数字は過去最多を更新しています。一方で、細かく見ると変化の兆しもあります。ここでは令和6年度の調査結果から、いまの状況を確認します。

令和6年度は約35万4千人、12年連続の増加

文部科学省の令和6年度調査では、不登校の小・中学生は353,970人でした。内訳は小学生137,704人、中学生216,266人です。不登校の児童生徒数は12年連続で増えています。

ただし、増え方は変わりました。前年度の増加率は15.9%でしたが、令和6年度は2.2%まで下がっています。新しく不登校になった児童生徒数が9年ぶりに減少し、不登校が続く割合も下がったためと説明されています。

数字が下げ止まりに向かう兆しがある一方で、約35万人という規模が大きいことに変わりはありません。令和7年度の結果は、例年この秋から初冬にかけて公表されます。この秋の発表で、増加の鈍化が続くかどうかが焦点になります。

約13万6千人が、学校内外の専門的な相談・指導を受けていない

もう一つ見ておきたいのが、支援とのつながりです。文部科学省によると、学校内外の機関等で専門的な相談・指導等を受けていない児童生徒は約13万6千人でした。そのうち90日以上欠席している子どもが約6万7千人とされています。

不登校の子どもの全員に、相談先や居場所が必要というわけではありません。休むこと自体が必要な時期もあります。ただ、本人や家族が望んだときに、選べる場所が近くにあるかどうかは別の問題です。支援の届き方に差があることが、この先の「見えない格差」につながります。

学校の中にも、居場所づくりが進んでいる

国は学校の中の受け皿も増やしています。校内教育支援センターは、1年で12,712校から15,874校に増えました。設置率は小学校49.1%、中学校77.5%です。

また、欠席中に行った学習の成果を指導要録に反映した児童生徒は約8万1千人でした。学校に通えない期間の学びを、評価として認める流れが広がっています。学校の中と外、両方の選択肢が少しずつ増えているのが現状です。

学校の外の「学び場」には値段がある|フリースクールの費用と地域差

学校に代わる学びの場として知られるのが、フリースクールなどの民間施設です。ところが、選択肢があることと、選べることは同じではありません。ここでは費用と地域の二つの壁を見ます。

月3万円前後という利用料

文部科学省が2015年に行った調査では、小・中学校に通っていない義務教育段階の子どもが通う民間の団体・施設は、全国で474団体が確認されました。利用料は月額3万3千円程度とされています。

最近の自治体調査でも、水準は大きく変わっていません。和歌山県の令和7年度調査では、無料の施設を除いた授業料等の平均支払額は1か月あたり32,823円でした。民間施設の多くは公的な運営費の支援が限られ、利用料が運営を支えています。

月3万円は、家計にとって軽くない金額です。ここに交通費や昼食代、教材費が加わることもあります。学校にいられない状況と、費用で学び場を選べない状況が重なると、子どもは二重に機会を失いかねません。

近くに通える場所があるとは限らない

もう一つの壁が地域です。民間施設は都市部に集まりやすく、住んでいる場所によっては、通える距離にない家庭があります。遠方に通えば、時間の負担も交通費の負担も増えます。

オンラインで参加できる居場所も広がっています。ただ、機器や通信環境、保護者の見守りが必要になる場合もあり、家庭の状況で使いやすさが変わります。「選べる場所があるか」は、費用と地域の両方に左右されるのです。

こうした費用と地域の差は、統計の数字には表れにくいものです。だからこそ、行政が把握しにくい「見えない格差」になりやすいといえます。

放課後に生まれる体験の格差|学校外活動費と「体験ゼロ」

学校に通えている子どもにも、家庭の事情による差は及びます。その差が表に出やすいのが、授業が終わったあとの時間です。ここでは二つの調査から、放課後の格差を確認します。

学習費の6割超は学校外活動費

文部科学省の令和5年度「子供の学習費調査」(2024年12月公表)では、公立小学校に通う子ども1人あたりの年間学習費は平均366,599円でした。内訳は、学校教育費74,336円、学校給食費35,774円、学校外活動費256,489円です。学校外活動費は学習費総額の60%以上を占めています。

学校外活動費には、学習塾や家庭教師などの補助学習費と、習い事などのその他の学校外活動費が含まれます。年額を単純に12で割ると、月に2万1千円ほどです。概算ですが、フリースクールの月額と比べると、放課後の学びにも決して小さくない費用がかかっていることが分かります。

授業料がかからない公立学校でも、家庭が負担する教育費の中心は学校の外にあります。平均値は家庭ごとの差を含んだ数字で、使える金額が少ない家庭では、この平均のぶんを払えない場合があります。

低所得世帯の約3人に1人が、1年間に体験ゼロ

体験の差を数字で示したのが、公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンの調査です。2022年10月に、小学1〜6年生の子どもがいる保護者2,097人に尋ねています。

過去1年間に学校外の体験がまったくなかった子どもは、世帯年収300万円未満で29.9%、600万円以上で11.3%でした。体験への年間支出も、300万円未満の平均が38,363円、600万円以上が106,674円と、約3倍の差があります。

この調査の対象は、不登校の子どもに限定されていません。小学生の保護者全体への調査です。学校に通っていても、放課後や休日の体験は家庭の事情で変わることを示しています。

教育格差を数字で読み解いた記事も、あわせて読むと全体像がつかみやすくなります。

不登校と放課後格差が重なると何が起きるか|誤解されやすい三つの点

ここまでの二つの話は、重なる場面で課題が見えやすくなります。ただし、重なり方を単純化すると、かえって当事者を傷つける恐れがあります。誤解されやすい点を三つ整理します。

不登校と貧困は、イコールではない

不登校の理由は一つではありません。人間関係、学習面の不安、心身の不調、家庭の状況など、きっかけは多岐にわたります。「貧困だから不登校になる」「不登校の家庭は経済的に苦しい」と決めつけるのは誤りです。

不登校と家庭の経済状況の関係を、全国規模で示した統計は多くありません。この記事で扱うのは、不登校になった子どもが学び場を探すとき、費用が選択肢を狭める場合があるという点です。因果ではなく、重なったときのリスクの話として読んでください。

「学校に戻すこと」だけが解決ではない

国の方針も、学校に戻すことだけをゴールにしていません。休養の必要性や、学校以外の学びの場を認める考え方が示されています。校内教育支援センターの増加や、欠席中の学習の評価も、その延長にあります。

そのため「通える場所があれば十分」という見方も、見直す余地があります。子どもに合う場所を選べるかどうか、そして費用で諦めなくて済むかどうかが、機会の平等の中身です。

「自己責任」とは言いにくい理由

家庭が学校外の学びにお金を払えないことを、保護者の努力不足とみる声があります。しかし、自己責任という考え方は、スタートラインが近い状態にあってはじめて成り立つものです。生まれた家庭の収入や、住んでいる地域は、子ども自身が選べません。

子どもの貧困と教育格差が世代を超えて連鎖する構造は、別の記事で詳しく扱っています。

自治体の動き|フリースクール利用料の助成が広がる

課題が見えてくるなかで、費用の壁を下げる動きが各地で始まっています。ここでは、2026年度に確認できる自治体の制度を見ます。

東京都・神戸市・藤沢市の制度を比べる

東京都は令和8年度(2026年度)事業として、フリースクール等に通う不登校の小・中学生の保護者に、利用料を月額2万円(上限)まで助成しています。申請の受付期間は2026年5月27日から2027年2月12日までです。入会金や施設維持費、教材費は対象に含まれません。

神戸市は、2026年4月から2027年3月までの利用分について、支払った利用料の半額を助成します。上限は月2万円で、オンラインの場合は1.5万円です。申請は期間ごとに受け付けられ、e-KOBE(神戸市スマート申請システム)から行います。

藤沢市は2026年4月、「フリースクール等利用児童生徒支援事業補助金」を創設しました。市登録のフリースクールに月1回以上通う児童生徒1人につき、月額1万円が上限です。

三つの制度は、金額も対象も異なります。月3万3千円の利用料を例にすると、東京都の上限2万円は概算でおよそ6割にあたり、藤沢市の上限1万円は3割ほどです。自治体によって負担の軽さが変わる点は、新しい地域差ともいえます。

制度を使うときに確認したいこと

助成を使うには、いくつか確認が必要です。対象の施設が自治体に登録されているか、利用の頻度に条件があるか、対象の費用はどこまでか、申請が事後か事前かを見ておきます。

たとえば神戸市は、利用期間ごとに申請の時期が分かれています。東京都は、受付期間の終わりが2027年2月です。いずれも、年度の途中からでも申請できる場合があるため、「もう遅いかも」と思わずに窓口へ問い合わせる価値があります。

制度の情報は自治体の公式ページで更新されます。住んでいる市区町村の教育委員会や、不登校支援を担当する窓口で、最新の内容を確認してください。

読者が今日からできること|知る、つなぐ、支える

制度や統計を知ったあと、多くの人が抱く疑問は「自分には何ができるのか」でしょう。生活のなかで取れる行動を、三つの場面で挙げます。

身近な人に「選択肢」を伝える

不登校の子どもがいる家庭は、制度の存在を知らないことがあります。友人や職場の同僚から相談されたときに、東京都や神戸市のような助成があること、自治体の窓口で調べられることを伝えるだけでも、助けになります。

その際、「学校に戻れるといいね」と言う前に、家庭がどんな選択肢を求めているかを聞くことが大切です。励ましよりも、情報を渡して、決めるのは当事者に任せる姿勢が合います。

寄付やボランティアで学び場を支える

フリースクールや子ども食堂、学習支援の場の多くは、寄付やボランティアに支えられています。団体の公式サイトで活動内容や会計報告を確認し、自分の関われる形を選んでください。金額の大きさより、継続できる形が団体にとって助けになります。

体験の機会を子どもに届ける仕組みもあります。企業や個人からモノや体験を子どもに届ける団体が、全国で活動しています。たとえば、使わなくなった道具の寄贈や、体験の場の提供もできます。

住んでいる自治体の制度を調べて、声を届ける

秋は二学期の半ばにあたり、年度後半の制度の申請が動く時期でもあります。まず、住んでいる市区町村にフリースクールの利用料助成があるかを調べてみてください。ない場合は、議会への陳情や、自治体の意見募集に声を届ける方法もあります。

制度の有無は、地域の関心の高さでも変わります。ひとりの声が小さくても、複数の声が重なると、行政が動く材料になります。

まとめ

不登校は約35万4千人と過去最多ですが、増加率は鈍化し、新しく不登校になる子どもの数は9年ぶりに減りました。その一方で、約13万6千人が学校内外の専門的な相談・指導を受けておらず、支援の届き方には差が残っています。

学校の外に目を向けると、フリースクールの利用料は月3万円前後で、放課後の体験にも家庭の経済状況による差があります。低所得世帯の約3人に1人は、1年間に学校外の体験がありませんでした。ただし、不登校と貧困を単純に結びつけず、学び場を選ぶときに費用が壁になりうるという視点で捉えることが大切です。

東京都、神戸市、藤沢市のように、利用料を助成する自治体も出てきました。制度の有無で負担が大きく変わるため、まず住んでいる地域の窓口で調べることが、最初の一歩になります。

  • 不登校は約35万4千人で過去最多だが、増加率は2.2%に鈍化した
  • 約13万6千人が学校内外の専門的な相談・指導を受けていない
  • フリースクールの利用料は月3万円前後で、放課後の体験にも家庭の差がある
  • 東京都・神戸市・藤沢市などが、利用料の助成を始めている
  • まず住んでいる自治体の制度を調べ、身近な人に選択肢を伝えることから始められる

参考文献

  • 記事を書いたライター
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